非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)と腎障害、胃潰瘍。
こんにちは。

今朝、嵯峨の家を出る時は、1度でした。
高雄病院に着いたら、0度でした。
山は、しっかり雪景色です。
京都では、今冬一番の冷え込みのように思います。
インフルエンザや風邪に要注意です。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に関して、サイトカインストームを生じて、脳症になるリスクがあるので、インフルエンザに使用してはいけないということを、記事にしました。

より正確には、ウィルス、細菌、原虫などの感染症が存在しての発熱には、NSAIDsは使用してはいけないということです。

また、この薬は、プロスタグランジンという物質の産生を抑えるために腎臓への血液の流れが悪くなり、急性腎不全を起こすことがあります。

結構頻度が高く、薬を飲んだ後に尿量が減るようでしたら、要注意です。

実際に、私の糖尿病のご高齢の患者さんで、帯状疱疹になり、受診した医療機関で、抗ウィルス薬と共に、ロキソニン3錠/日、一日3回食後に内服となった方がおられました。

7日分の薬を処方されて、すでに5日間内服した時点で、高雄病院を受診されました。

血液検査したところ、すでにクレアチニン値が悪化していて、腎不全の状態でした。

軽症でしたので、すぐにロキソニンを中止して、クレアチニン値はあるていど改善しました。

プロスタグランジンは全身の様々な組織や器官の細胞に存在します。

結局、NSAIDs単純に熱を下げるだけではなく、全身の細胞において、プロスタグランジンという物質の生合成を抑制するのです。

プロスタグランジンは、血圧低下作用や筋肉の収縮作用、黄体退行作用、血管拡張作用など色々な役割をもつホルモンです。

NSAIDsは、プロスタグランジンの生合成を抑制するのですから、様々な副作用が出て当たり前なのです。

さらに、痛みや炎症や、解熱の目的で長期に飲み続けると、胃炎や胃潰瘍の副作用が起こることがあります。

NSAIDsは痛みの元となる物質を作り出す酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX:コックス)の働きを妨げて、解熱や鎮痛、抗炎症作用を発揮する薬です。

COXには2つの種類があり、COX-1は胃粘膜や血管にあって生体の恒常性の維持に、COX-2は主に刺激があった時に作られ、痛みや炎症に関係しています。

NSAIDsは、COX-2の働きを抑えて、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示しますが、ほとんどのNSAIDsは、COX-2だけでなく、COX-1の働きも抑えるため、胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりして、胃炎や胃潰瘍を起こす原因になるのです。

胃炎や胃潰瘍が起こると胃の痛み、吐き気などの症状が起こりますが、ピロリ菌が元凶の一般的な胃潰瘍に比べ、NSAIDsによる潰瘍は症状が出にくいのです。

そのため何も症状を感じないうちに、突然、胃から出血して吐血や下血することがあります。

調査によれば、リウマチなどでNSAIDsを4週間以上内服している場合、胃粘膜保護剤を内服していても、6割以上の人で、胃粘膜障害が認められたということです。

このように考察してくると、ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・これらの一般的なNSAIDsは、有害事象が非常に多いので、使用は極めて慎重にということです。

長期投与は勿論、基本的には不可です。

例えば、ロキソニン3錠/日とかは、非常に副作用リスクが高いです。

ロキソニン1~2錠/日は、リウマチなど、症例により、やむをえず投与することもあると思います。

私は、生理痛とか、頭痛に頓用でなら、許容範囲と思って、処方しています。

安全に使用できる、解熱剤、鎮痛剤は、アセトアミノフェンだけということです。

商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。

発熱には、アセトアミノフェンを、成人なら、1回に300~500~600mg、1日2回なら安全です。

年齢、症状により適宜増減で、原則として1日最大1,500mgです。

腰痛や生理痛なら、 成人はアセトアミノフェンとして、

1回300~1000mgを経口服用し、服用間隔は4~6時間以上とし、年齢、症状により適宜増減しますが、1日総量として4000mgが限度です。

あと、痛みが強いときは、トラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン)が有効です。
トラマドールは非麻薬性オピオイド受容体刺激薬です。
トラムセットには、NSAIDsのような副作用はありませんが、吐き気がすることがあります。
それで、初期の1~2週間は、吐き気止めと一緒に内服します。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
プラクティス最新号
34巻1号 2017年1月号

特集 知って得するケトン体の不思議

-ケトン体:敵か,味方か?-

https://www.ishiyaku.co.jp/magazines/practice/PracticeBookDetail.aspx?BC=003401
2016/12/29(Thu) 19:59 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: プラクティス最新号
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
2016/12/30(Fri) 09:16 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生こんにちは。以前コメントさせていただいた咳喘息のNMです。子宮筋腫がありまして、糖質制限を始めてから、初めて検診に行ってきました。ですが、その子宮筋腫がなくなっていました。

13年前に初めて見つかった時は1㎝で小さいのですが、少しずつ大きくなって、出来ている場所が悪く、子宮内膜に到達したら手術だったと思います。もうギリギリでいつ問題を起こすが分からない状態でした。前回の超音波診断の画像では2.8㎝のはっきりとしたこぶがありましたが、今回はなくなっていました。13年間確かにあった子宮筋腫がなくなり、手術の心配がなくなりました。

糖質制限で悪性の癌が治るなら、良性の子宮筋腫も消えてなくなりますか?。糖質制限の影響でしょうか?。

糖質制限で抱え持っていた病気が一つ一つ消えてなくなっていって、残されるのは健康な体と、病気が治って癒されていく心でしょうか。

これからも糖質制限を続けながら、江部先生のブログで勉強させていただきます。いつもありがとうございます。
2016/12/30(Fri) 12:19 | URL | NM | 【編集
Re: タイトルなし
NM さん

13年間確かにあった子宮筋腫がなくなったとは、素晴らしいです。
私も、初めて聞きました。

通常、周囲の組織はともかく、中心の筋腫核はなかなか消えないはずなのですが、婦人科の先生はどう仰ってましたか?

2016/12/30(Fri) 13:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
お返事ありがとうございます。

筋腫核の事はうかがっていません。

こぶがなくなって、ですが筋腫のあった場所に厚みがあると仰っていました。「軽度の子宮内膜症?」みたいな感じで仰っていました。今度、筋腫核の事聞いてみます。

江部先生のレシピ本購入してみました。年が明けたら、糖質制限ドットコムで色々お取り寄せしてみようと思います。楽しみです。

いつもありがとうございます。
2016/12/30(Fri) 14:46 | URL | NM | 【編集
Re: タイトルなし
NM さん。

すいません。
うろ覚えで「筋腫核出術」というのがあるので、錯覚してました。
筋腫核手術というのは、筋腫だけをとって、子宮は温存する方式のことのようです。

筋腫が消えたのなら、大丈夫と思います。
2016/12/30(Fri) 18:36 | URL | ドクター江部 | 【編集
お返事ありがとうございます。

癌は糖質制限ではなく、ケトン食じゃないと治らないのでしょうか…。

とりあえず糖質制限で、この時期も風邪は引きにくく、咳喘息は出ません。子宮筋腫も完治です。

ありがとうございました。
2016/12/30(Fri) 19:30 | URL | NM | 【編集
NSAIDs
江部先生

ご無沙汰しております。

今回の記事、深く考えさせられました。
ロキソニンやボルタレン、PL顆粒など、よく見かけますが、インフルエンザの流行っているこの時期には安易に使わないように慎重にしています。そしてこの時期に限らず特に高齢者には気をつけています。(勤務先が高齢者施設です)
ですが、私1人がそう思っていても、いつの間にかインフルエンザ疑いの方にボルタレン坐薬が使われていたり、NSAIDsが処方されていたりする事が現状です。どんなに危険性を訴えても、なかなか受け入れて貰う事が出来ません。ここでは語れない話も多いです。
来月京都でオフ会をしますので、その時にその辺の深い話をしたいです。遠くからVIPな先生方に加え、在宅中心に活動されてる医師、薬剤師の方も参加して下さいますので、日頃考えてる薬の危険性について色々な話が出来そうです。
江部先生のブログで、糖質制限だけでなく、こうして、日頃から感じている薬の危険性に関してなども勉強させていただく事が出来、とても参考になります。

今日と明日は、糖質制限お節作りで大忙しです。お正月、美味しく飲んで食べれるようにあともうちょっと頑張ります(^^*)

今年もお世話になりました。
どうぞ良いお年を!
2016/12/30(Fri) 21:29 | URL | さちこ | 【編集
ケトン体:敵か,味方か?
精神科医師Aさん
情報有難うございます。

PRACTICE 34巻1号 2017年1月号
知って得するケトン体の不思議
-ケトン体:敵か,味方か?-
図がわかりやすく、ケトン体を理解するうえで参考になります。

早速注文しました。有難うございました。
2016/12/30(Fri) 23:05 | URL | オスティナート | 【編集
Re: NSAIDs
さちこ さん

NSAIDsの危険性が、もう少し医学界に広がればいいですね。

糖質制限なおせちで、良いお年を。
2016/12/31(Sat) 12:48 | URL | ドクター江部 | 【編集
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