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インフルエンザと解熱剤。使ってもいいのはアセトアミノフェンだけ。
おはようございます。

インフルエンザが心配な季節です。

2016年12月14日現在で、全国で警報レベルを超えている地域はまだありませんが、注意報レベルを超えている地域は、北海道、大阪府と、あと10県あります。

京都は、今のところ注意報には至っていません。

インフルエンザに関して、ブログ読者の皆さんを始め、日本中の人に知っておいて欲しいことがあります。

それはインフルエンザ罹患のとき、使ってもいい解熱剤はアセトアミノフェンだけということです。

商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。

それ以外の、ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・これらの一般的なNSAIDSは、脳症のリスクがあるので全て使用してはいけません。


<脳炎と脳症の違い>

病理学的には、脳炎( encepahlitis)と は、ウィルスが直接脳に侵入、脳細胞に感染して増殖し炎症を起こすもので、脳神経細胞がウィルスによって直接破壊されます。

脳症( encephalopathy) は、脳の中にウィルスが存在しないのに脳が腫脹します。

インフルエンザウィルス感染により、まれに脳症が生じますが、原因は不明とされています。

インフルエンザウィルス自体による脳細胞の直接障害ではなく、何らかの原因により高サイトカイン血症などが引き起こされて、脳に浮腫などの障害をひき起こします。

すなわち、病理学的にはインフルエンザ脳炎は存在せず、インフルエンザ脳症が存在するということになります。

<インフルエンザウィルスは血中に入れない>

現時点でインフルエンザウィルスはA型もB型も新型も血中に入れません。

従って、インフルエンザウィルスが脳に直接感染することはないのです。

インフルエンザウィルスは、上気道・下気道・肺と消化管以外には感染できません。

マスコミでインフルエンザ脳炎とかインフルエンザ脳症と言っているのは、正確には「インフルエンザ関連脳症」という病名が一番適切です。

<麻疹ウィルスやヘルペスウィルスは血中に入れる>

麻疹ウィルスは血中に入れるので、脳にも感染して、まれではありますが、麻疹脳炎を生じ得ます。

ウイルス感染性脳炎としては単純ヘルペス脳炎が最も多いです。

日本脳炎ウィルスや狂犬病ウィルスも、脳炎を起こします。

<インフルエンザ脳症とサイトカインストーム>

インフルエンザ脳症の鍵となる現象は、サイトカイン・ストームと呼ばれる免疫系の異常反応です。

免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。

サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。

全身の細胞から通常量をはるかに超えるサイトカインが放出され、体内を嵐のように駆け巡ります。

この過剰なサイトカインストームにより、インフルエンザ関連脳症が生じると考えられています。

サイトカインストームが起こる原因は、今のところ不明です。

しかし解熱剤がサイトカインストームに悪影響を与えている可能性が示唆されています。


<解熱剤>

平成21年の厚生労働省のインフルエンザ脳症ガイドラインには、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタール)の内服は、インフルエンザ脳症の予後不良因子の一つに挙げられています。

これらの解熱剤が、インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させている可能性が示唆されています。

また、これらの解熱剤が、サイトカインストームを生じたきっかけになっている可能性も否定できません。

結局、安全性が確立している、解熱剤は、アセトアミノフェンだけです。

アセトアミノフェンの商品名は、カロナール、コカール、アンヒバ座薬などです。

インフルエンザにかかったときは、アセトアミノフェン以外の他の解熱剤(ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、ブレシン、アスピリン・・・)は使用してはいけません。

要するにアセトアミノフェンだけです。

なお、風邪などのウィルス感染でも同様の危険性は有り得ますので、私は、子どもは勿論のこと、大人にも解熱剤は、基本的的にアセトアミノフェンしか処方しません。


☆☆☆

http://www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/05.html
独立行政法人 科学技術振興機構のサイトから抜粋

免疫系におけるサイトカインの役割

 病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の不活化などがあります。このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。サイトカインには白血球が分泌し、免疫系の調節に機能するインターロイキン類、白血球の遊走を誘導するケモカイン類、ウイルスや細胞の増殖を抑制するインターフェロン類など、様々な種類があり、今も発見が続いています。サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。サイトカインは本来の病原体から身を守る役割のほかに、様々な疾患に関与していることが明らかになってきています。

 平野チームは、自ら発見したサイトカインの一種であるIL-6が自己免疫疾患の発症制御において、中心的な役割を担っていることを独自に開発した疾患モデルマウスを用いて明らかにしています。また、免疫細胞の中枢神経系への侵入口を発見したことから、神経系自己免疫疾患の発症仮説を提唱しています。岩倉チームは、炎症性サイトカインであるIL-17ファミリー分子の機能的役割を解析する中で、これらファミリー分子が感染防御と炎症抑制において、役割分担されていることを見出しています。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
極度の糖質制限は危険
極度の糖質制限は危険―がん患者が取るべき「正しい栄養」

http://www.wound-treatment.jp/title_new.htm
2016/12/22(Thu) 10:10 | URL | 精神科医師A | 【編集
食品新聞
 既に糖質ダイエットのような食習慣が顕在化し、米や小麦粉関連製品を敬遠する動きがある。
 今後は食事そのものを控えるよりも置き換え可能な食品、食事へのシフトが進むだろうし、そうした健康意識の高い人たちのニーズに応える料理指導などの提案が求められてくる。

https://www.shokuhin.net/2016/12/21/ryutu/orosi/%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%81%AF%E5%A4%9A%E6%A7%98%E5%8C%96%E3%81%B8-%E4%B8%89%E8%8F%B1%E9%A3%9F%E5%93%81-%E5%8E%9F%E6%AD%A3%E6%B5%A9%E6%B0%8F/3621/
2016/12/22(Thu) 11:06 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 極度の糖質制限は危険
 精神科医師A さん

夏井先生によれば、
『江部先生が死ぬとしたら,105歳ころに老衰で死ぬとか,何かの事故の巻き添えで死ぬとか,山に登って熊に襲われて死ぬとか,強盗に襲われて殺されるとか,落ちてきた隕石に直撃されて死ぬとか,そういう死に方でないと何を言われるかわからないよね。いずれにしても,病気では死ねないな。』

だそうです。

スーパー糖質制限食実践で、がんも動脈硬化も肺炎もなりにくいので、
病気では、なかなか死にそうにないですが・・・。
2016/12/22(Thu) 17:36 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 食品新聞
精神科医師A さん

民間業界では、糖質制限食はすでに、当たり前という位置づけに進化してきているようですね。
2016/12/22(Thu) 17:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
初めまして
江部先生、初めまして。
コメント失礼いたします。
今月から糖質制限しているものです。

今回の健康診断で、
HbA1c 5.6 空腹時 85
2年前は
HbA1c 5.5 空腹時 93
去年は何度か病院で検査を受けた時に記載されてた随時血糖値が102 HbA1c 5.7 でした。

ここ3年でHbA1cが5.6くらいをうろうろしており、随時血糖値は食後4時間なのに114というものがありました。
食後高血糖を疑っています。

身長162 体重42 BMI16 です。
糖質制限をしたら1週間と少しで1.5キロ減り、食後3時間越えてくると息苦しさやめまいがするようになりました。
ゼーゼーいうような感じです。
1度病院できちんと検査を受けたいと思っているのですが、なかなか行けないでおります。

糖尿病になりたくないとの思いから、糖質をかなり制限しており、ご飯も麺もいも類なども食べておりません。
たまに低糖質なパンは食べます。
質問なのですが、上記の症状は摂取カロリーが足りないと言うことでしょうか?
痩せているので、脂肪をあまり燃焼させたくないと思います。
なるべく食べるようにしているのですが、カロリーがあまり摂れず、頑張って食べようとして胃を悪くしてしまいました。

それと、私の状態はゆるめの糖質制限でも大丈夫でしょうか?
2016/12/22(Thu) 18:10 | URL | みみこ | 【編集
東京湾の絶景夜景を眺めながらのヨガ
Good Sleep Night YOGA~魅惑のロカボディナー付き~

http://www.hankyu-hanshin.co.jp/file_sys/news/4705.pdf
2016/12/22(Thu) 18:20 | URL | 精神科医師A | 【編集
医薬ビジランスセンター
http://www.npojip.org/
の浜六郎理事長(大阪大学医学部卒、医師、内科、疫学)が、
ウイルスや細菌など、何らかの感染症があるところに非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)(ボルタレン(ジクロフェナク)、アスピリン、イブプロフェンなど)が用いられると、サイトカインストームにより脳症(敗血症)-多臓器不全型ショックを生じ、多くが死亡に至ることを、次の3つの論説にまとめられていますので、関心がおありでしたらご覧ください。
敗血症-多臓器不全型ショック(1)
http://www.npojip.org/sokuho/no142-03-a.pdf
敗血症-多臓器不全型ショック(2)
http://www.npojip.org/sokuho/no142-03-b.pdf
敗血症-多臓器不全型ショック(3)
http://www.npojip.org/sokuho/no142-03-c.pdf
2016/12/22(Thu) 19:50 | URL |  | 【編集
Re: 初めまして
みみこ さん

カロリー不足と思います。
緩めの糖質制限で充分ですし、動物性脂肪や動物性蛋白をしっかり良く噛んで食べて、摂取カロリーを増やしましょう。
2016/12/23(Fri) 08:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 東京湾の絶景夜景を眺めながらのヨガ
精神科医師A さん


ロカボディナー、39.6gの糖質では、
糖尿病の人の食後血糖値は、200mg/dlを超えてしましまいます、残念。
2016/12/23(Fri) 08:32 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし

ありがとうございます。
2016/12/23(Fri) 09:03 | URL | ドクター江部 | 【編集
市販薬ロキソニンについて
教えていただけると、ありがたいです。

生理痛や腰痛の時、よく市販薬ロキソニンSもしくロキソニンSplusを飲むのですが脳炎に関して本文上記のロキソニンと同様でしょうか?
2016/12/23(Fri) 11:46 | URL | 杉 金 | 【編集
Re: 市販薬ロキソニンについて
杉 金 さん

市販薬ロキソニンSもしくロキソニンSplusも、主成分はロキソプロフェンナトリウムですので、
医師が処方するロキソニンと変わりません。

従ってウィルス、細菌感染症の発熱には、使用してはいけません。
生理痛で頓服なら、害は少ないです。
しかし、1日3回内服とかすると、胃に良くないし、腎臓にもよくありません。

発熱には、アセトアミノフェンを、成人なら、1回に300~500~600mg、1日2回のほうが安全です。
年齢、症状により適宜増減で、原則として1日最大1,500mgです。

腰痛や生理痛なら、
成人はアセトアミノフェンとして、1回300~1000mgを経口服用し、服用間隔は4~6時間以上とし、年齢、症状により適宜増減しますが、1日総量として4000mgが限度です。
2016/12/23(Fri) 12:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
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