狩猟採集民は農耕民より長命だった。
こんにちは。

今回の記事は『狩猟採集民は農耕民より長命だった』という研究を紹介します。

A)
ケンタッキー州,インディアン・ノール貝塚出土の285体の人骨
前者は紀元前3400年から同2000年ころ
狩猟,漁労,植物採取をしていた人々の残した貝塚で出土


B)
ケンタッキー州,ハーディン・ビレッジ遺構出土の人骨296体
西暦1500年から1675年ころの間
トウモロコシ,豆類,カボチャ類を栽培した人々が住んだ村落


A)とB)を比較した研究です。

米国、ケンタッキー州で出土した、狩猟・漁労・採集が生業の人骨285体と 、トウモロコシ・豆類・カボチャ栽培が生業の人骨296体を比較したところ、狩猟採集民のほうが、農耕民より長命であったことが判明しました。

男女ともにインディアン・ノールの狩猟採取民の方が長命でした。

死亡年齢で特に対照的なのは、4歳未満の小児死亡率の分布でした。

インディアン・ノールでは、70%が新生児と12ヶ月未満の乳児でしたが、狩猟採集民は、新生児の間引きをする習慣があるので、その影響があると考えられます。

一方ハーディン・ビレッジではその逆で、1~3歳の幼児が60%に達っしました。

すなわち、農耕民のほうは、離乳期に入ってからが危機であることが明らかです。

ハーディン・ビレッジの農耕民はトウモロコシ粉を水溶きしたようなものを離乳食に用いたと考えられます。

それが生涯を通じての栄養的欠陥の始まりになったと思われます。

アフリカや中央アメリカの農耕社会では柔らかいでんぷん質の食事が離乳食として与えられると、下痢が始まり、各種の細菌侵入による疾患が起こり、タンパク質欠乏症を示すことが多いとされています。

ハーディン・ビレッジの農耕民でも同様のパターンが生じて、短命に繋がった可能性があります。


江部康二


☆☆☆
骨で見分ける古代人の生活ぶり
http://www.wound-treatment.jp/dr/glucide_data/kagaku-asahi_1981.htm
科学朝日,41巻12号,1981年 記載の
カナダ・マックギル大教授/人類学 井川史子氏の論文から
以下一部抜粋。

狩猟採集民は農耕民より長命
人骨の研究から古代の狩猟採取民と農耕民の栄養状態を比較した試みとして,現在メリーランド大講師のクレア・カシディの仕事がある。

大昔,農耕を知らなかったころの人は,野獣を追い,木の実や草の根をかじってやっと飢えをしのいでいたと考えられていた。

つい最近まで,狩猟・採集に頼る生活をしていたアフリカのブッシュマンやオーストラリア原住民について研究が進み,彼らの生活は,農耕民に比べて労働時間は短く,栄養上のバランスもよく,健康状態もすぐれているらしいことが明らかになった。

狩猟採集生活の欠陥は,一定面積内では居住可能な人口が制限されることである。

逆にいえば,農耕が始まって,人口が高密度で定着するようになり,その人口がカロリー減としてのでんぷん質の食料に依存するようになってから,病気の伝染する機会も増え,病気に対する抵抗力も低下したと考えられる。

カシディが対象として選んだのは,ケンタッキー州,インディアン・ノール貝塚出土の285体の人骨と,同州,ハーディン・ビレッジ遺構出土の人骨296体である。

前者は紀元前3400年から同2000年ころに,狩猟,漁労,植物採取をしていた人々の残した貝塚で,後者は西暦1500年から1675年ころの間に,トウモロコシ,豆類,カボチャ類を栽培した人々が住んだ村落である。

比較研究の条件として,相当数の人骨資料があることのほかに,人種的,環境的条件が同じであること,そしてヨーロッパ伝来の疾病が新しい要因として入っていないことに留意している。

ハーディン・ビレッジの居住期間中,ヨーロッパ人の侵入はこの地域に関する限り無視してよいという前提で考察している。

人骨の推定死亡年齢から平均余命を算出すると,男女ともにインディアン・ノールの狩猟採取民の方が長命である。

死亡年齢で特に対照的なのは,4歳未満の小児死亡率の分布である。

インディアン・ノールでは,このうちの70%が新生児と12ヶ月未満の乳児であるのに対して,ハーディン・ビレッジではその逆で,1~3歳の幼児が60%に達する。

狩猟採取民は新生児の間引きをすることが民族例から知られているから,インディアン・ノールの新生児と乳児死亡例の幾分かは,そのように理解すべきものかもしれない。

これに対しハーディン・ビレッジの場合は離乳期に入ってからが危機であることが明らかである。アフリカや中央アメリカの農耕社会では,柔らかいでんぷん質の食事が離乳食として与えられる。そこで下痢が始まり,各種の細菌侵入による疾患が起こり,タンパク質欠乏症を示すことが多い。ハーディン・ビレッジの農民も,トウモロコシ粉を水溶きしたようなものを離乳食に用いたのであろう。それが生涯を通じての栄養的欠陥の始まりになったのだろう,とカシディは言っている。


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
日本の研究
日本の縄文時代の人間は意外と長生き

http://www.wound-treatment.jp/new_2016-07.htm#0725-7



世の中には、いまだに1967年の小林論文に執着する人物もいます

http://low-carbo-diet.com/low_carbo_food/to_dr/contents-of-review/foods-jomon/
2016/10/26(Wed) 20:26 | URL | 精神科医師A | 【編集
先生、初めてコメント差し上げます。

私は片頭痛持ちで、片頭痛外来に通っています。
子どもの頃からの頭痛持ちです。
検査をしてもどこも異常は無いのですが、時折ヘルメットでおしつけられたような痛みというか重さを感じていました。
一カ月ほど前から糖質制限を始めたところ、嘘のように身体が軽くなり、肩こり頭痛がおきなくなりました。
気のせいかもしれませんが、試しに白米をお茶碗に一杯食べてみると、ずんッと肩が重くなるのです。
この記事を読んでいて思わず書き込んでしまいました。
2016/10/26(Wed) 20:58 | URL | 若狭 | 【編集
nhkスペシャル 宇宙 地球大進化~46億年 第6集 ヒト果てしなき冒険者
こんばんは

「人類の脳の巨大化に肉食が関係している」と(1:10分頃から)とあのNHKスペシャルが2004年に放送してたのですね。ある意味驚きでした!

nhkスペシャル 宇宙 地球大進化~46億年 第6集 ヒト果てしなき冒険者

https://www.youtube.com/watch?v=pC9nDosxPDI
2016/10/26(Wed) 21:51 | URL | 岸和田のセイゲニスト | 【編集
Re: 日本の研究
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
2016/10/26(Wed) 21:52 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
若狭 さん

片頭痛のほとんどが糖質制限食で改善します。
私の患者さんだけでも、20~30人はおられます。
2016/10/26(Wed) 21:55 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: nhkスペシャル 宇宙 地球大進化~46億年 第6集 ヒト果てしなき冒険者
岸和田のセイゲニスト さん

興味深い情報をありがとうございます。


nhkスペシャル 宇宙 地球大進化~46億年 第6集 ヒト果てしなき冒険者


時間がある時に視聴します。
2016/10/26(Wed) 21:59 | URL | ドクター江部 | 【編集
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