2016年10月06日 (木)
こんにちは。
米国の医学雑誌・代謝(Metabolism)に、2016年3月、興味深い論文が掲載されました。
『糖質制限食は、ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて普通の高糖質食と比べて、遜色なし』
という内容です。
普段から
(A)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70>の糖質制限食を食べている10人
(B)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25>の高炭水化物食を食べている10人
いずれの群もエリートランナーです。
(A)(B)群を比較したところ、糖質制限群(A)は、(B)群と比較して、運動中のエネルギー源として脂肪酸化の利用が極めて高率でした。
一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満のパターンは、運動中も3時間のランニング後も、(A)(B)群で同様でした。
つまり、普通に糖質制限食をしているランナーがそのまま、ウルトラマラソンやトライアスロンをしても、筋肉中のグリコーゲンの量及び増減と回復パターンは、糖質摂取群と比べて、全く遜色ないという結論です。
江部康二
ケトン適合したウルトラ持久力ランナーの代謝特性について
要約
背景
多くの成功したウルトラ持久力アスリートが、高炭水化物から低炭水化物食に切り替えた、しかし彼らは代謝適合の度合いを決定するために前もって研究はされてはいない。
方法
20人のエリートウルトラマラソンランナーとアイアンマン距離のトライアスリートが、代謝反応を決定するために最大強度の運動テストと180分間の64% VO2maxのサブ最大強度のトレッドミル運動を実行した。
1グループは従来の常に高炭水化物食(HC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25),
もう1つのグループは、低炭水化物食(LC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70),
で、平均20ヶ月(9~36ヶ月の範囲)実践した。
結果
ピークの脂肪酸化はLCグループ((1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000))が2~3倍高く、VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000)もより高かった。
サブ最高強度の運動中で平均脂肪酸化は、LCグループ(1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000)で、脂肪のが大きな貢献(88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000)に対応して59%高かった。
燃料使用量における、LCとHCの著明な相違にも関わらず、休息中の筋肉中のグリコーゲンと180分間ランニング (−64% from pre-exercise) 後のグリコーゲンレベルの低下と120分の回復(−36% from pre-exercise)において有意差はなかった。.
結論
HC(高糖質)食を実践している高度に訓練されたウルトラ持久力アスリートと比較して、長期のケトン適合食は著明に脂肪酸化の比率が高かった。
一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満パターンは運動中も3時間のランニング後も同様であった。
METABOLISM CLINICAL AND EXPERIMENTAL 65 (2016) 100 – 110
Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners
ABSTRACT
Background.
Many successful ultra-endurance athletes have switched from a highcarbohydrate
to a low-carbohydrate diet, but they have not previously been studied to
determine the extent of metabolic adaptations.
Methods.
Twenty elite ultra-marathoners and ironman distance triathletes performed a
maximal graded exercise test and a 180 min submaximal run at 64% VO2max on a treadmill
to determine metabolic responses.
One group habitually consumed a traditional highcarbohydrate
(HC: n = 10, %carbohydrate:protein:fat = 59:14:25) diet, and the other a lowcarbohydrate
(LC; n = 10, 10:19:70) diet for an average of 20 months (range 9 to 36 months).
Results.
Peak fat oxidation was 2.3-fold higher in the LC group (1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000) and it occurred at a higher percentage of VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000).
Mean fat oxidation during submaximal exercise was 59% higher in the LC
group (1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000) corresponding to a greater relative
contribution of fat (88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000). Despite these marked differences in fuel
use between LC and HC athletes, there were no significant differences in resting muscle
glycogen and the level of depletion after 180 min of running (−64% from pre-exercise) and
120 min of recovery (−36% from pre-exercise).
Conclusion.
Compared to highly trained ultra-endurance athletes consuming an HC diet,
long-term keto-adaptation results in extraordinarily high rates of fat oxidation, whereas
muscle glycogen utilization and repletion patterns during and after a 3 hour run are similar
米国の医学雑誌・代謝(Metabolism)に、2016年3月、興味深い論文が掲載されました。
『糖質制限食は、ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて普通の高糖質食と比べて、遜色なし』
という内容です。
普段から
(A)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70>の糖質制限食を食べている10人
(B)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25>の高炭水化物食を食べている10人
いずれの群もエリートランナーです。
(A)(B)群を比較したところ、糖質制限群(A)は、(B)群と比較して、運動中のエネルギー源として脂肪酸化の利用が極めて高率でした。
一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満のパターンは、運動中も3時間のランニング後も、(A)(B)群で同様でした。
つまり、普通に糖質制限食をしているランナーがそのまま、ウルトラマラソンやトライアスロンをしても、筋肉中のグリコーゲンの量及び増減と回復パターンは、糖質摂取群と比べて、全く遜色ないという結論です。
江部康二
ケトン適合したウルトラ持久力ランナーの代謝特性について
要約
背景
多くの成功したウルトラ持久力アスリートが、高炭水化物から低炭水化物食に切り替えた、しかし彼らは代謝適合の度合いを決定するために前もって研究はされてはいない。
方法
20人のエリートウルトラマラソンランナーとアイアンマン距離のトライアスリートが、代謝反応を決定するために最大強度の運動テストと180分間の64% VO2maxのサブ最大強度のトレッドミル運動を実行した。
1グループは従来の常に高炭水化物食(HC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25),
もう1つのグループは、低炭水化物食(LC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70),
で、平均20ヶ月(9~36ヶ月の範囲)実践した。
結果
ピークの脂肪酸化はLCグループ((1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000))が2~3倍高く、VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000)もより高かった。
サブ最高強度の運動中で平均脂肪酸化は、LCグループ(1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000)で、脂肪のが大きな貢献(88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000)に対応して59%高かった。
燃料使用量における、LCとHCの著明な相違にも関わらず、休息中の筋肉中のグリコーゲンと180分間ランニング (−64% from pre-exercise) 後のグリコーゲンレベルの低下と120分の回復(−36% from pre-exercise)において有意差はなかった。.
結論
HC(高糖質)食を実践している高度に訓練されたウルトラ持久力アスリートと比較して、長期のケトン適合食は著明に脂肪酸化の比率が高かった。
一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満パターンは運動中も3時間のランニング後も同様であった。
METABOLISM CLINICAL AND EXPERIMENTAL 65 (2016) 100 – 110
Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners
ABSTRACT
Background.
Many successful ultra-endurance athletes have switched from a highcarbohydrate
to a low-carbohydrate diet, but they have not previously been studied to
determine the extent of metabolic adaptations.
Methods.
Twenty elite ultra-marathoners and ironman distance triathletes performed a
maximal graded exercise test and a 180 min submaximal run at 64% VO2max on a treadmill
to determine metabolic responses.
One group habitually consumed a traditional highcarbohydrate
(HC: n = 10, %carbohydrate:protein:fat = 59:14:25) diet, and the other a lowcarbohydrate
(LC; n = 10, 10:19:70) diet for an average of 20 months (range 9 to 36 months).
Results.
Peak fat oxidation was 2.3-fold higher in the LC group (1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000) and it occurred at a higher percentage of VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000).
Mean fat oxidation during submaximal exercise was 59% higher in the LC
group (1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000) corresponding to a greater relative
contribution of fat (88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000). Despite these marked differences in fuel
use between LC and HC athletes, there were no significant differences in resting muscle
glycogen and the level of depletion after 180 min of running (−64% from pre-exercise) and
120 min of recovery (−36% from pre-exercise).
Conclusion.
Compared to highly trained ultra-endurance athletes consuming an HC diet,
long-term keto-adaptation results in extraordinarily high rates of fat oxidation, whereas
muscle glycogen utilization and repletion patterns during and after a 3 hour run are similar
長期のケトン適合食が肝と感じました。どのくらいの期間、続けられたら、脂肪酸化の比率がたかくなるのか?またケトン適合食の日本での献立例も知りたいところです。
趣味が登山なので、日常の食事をケトン食にきりかえて、脂肪酸化の比率を高くすれば、登山中の行動食、食事のかなりの軽量化がはかれるのではないか?結果歩行スピードがあがり、安全性がまし、疲労が軽減され、よりグレードの高いコースにいくことができたらよいな思いました。同じカロリーなら、炭水化物より脂肪のほうがはるかに軽いですから。
実証的な研究論文については、初めてみましたので参考にさせていただきます。
趣味が登山なので、日常の食事をケトン食にきりかえて、脂肪酸化の比率を高くすれば、登山中の行動食、食事のかなりの軽量化がはかれるのではないか?結果歩行スピードがあがり、安全性がまし、疲労が軽減され、よりグレードの高いコースにいくことができたらよいな思いました。同じカロリーなら、炭水化物より脂肪のほうがはるかに軽いですから。
実証的な研究論文については、初めてみましたので参考にさせていただきます。
2016/10/07(Fri) 09:24 | URL | ハイカー | 【編集】
先生こんにちは。お久しぶりです。
既出でしたらすみません。
錦織圭の元管理栄養士が語る「なぜ“糖質制限”は危険なのか」
http://jisin.jp/serial/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88/healty/25828
投稿日: 2016年10月06日 06:00 JST
浅田真央選手と錦織選手の栄養士さんが同じなのですね。
浅田真央選手の大ファンなのですが、真央ちゃんのお食事(スイーツ大好き、マクロビに興味ある…等々)は、前々からすごく気になっています…
既出でしたらすみません。
錦織圭の元管理栄養士が語る「なぜ“糖質制限”は危険なのか」
http://jisin.jp/serial/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88/healty/25828
投稿日: 2016年10月06日 06:00 JST
浅田真央選手と錦織選手の栄養士さんが同じなのですね。
浅田真央選手の大ファンなのですが、真央ちゃんのお食事(スイーツ大好き、マクロビに興味ある…等々)は、前々からすごく気になっています…
2016/10/07(Fri) 12:43 | URL | loco | 【編集】
NHKが明日に放送するようですが、yahoo.ニュースで読みました。
食後高血糖の状態が長年続くと、健康診断では正常値でも突然死に襲われると・・。
要は、糖質制限しろということなんですが、遠回しにセイゲニストの仲間入りをしたいのでしょうか、NHKは・・。
とにかく、このメディアがピックアップするのは大きなことですね。記事内容↓
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6216886
NHKスペシャルで放送みたいです。
大きな前進になるのでは?
内容は見てみないとわかりませんが、また変なコメンテイターがいるでしょうね。
食後高血糖の状態が長年続くと、健康診断では正常値でも突然死に襲われると・・。
要は、糖質制限しろということなんですが、遠回しにセイゲニストの仲間入りをしたいのでしょうか、NHKは・・。
とにかく、このメディアがピックアップするのは大きなことですね。記事内容↓
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6216886
NHKスペシャルで放送みたいです。
大きな前進になるのでは?
内容は見てみないとわかりませんが、また変なコメンテイターがいるでしょうね。
2016/10/07(Fri) 13:13 | URL | クワトロ | 【編集】
loco さん
以前から、錦織選手の怪我の多さが気になっています。
この栄養士さん、根本的な知識が不足しています。
近いうちに反論しようと思います。
以前から、錦織選手の怪我の多さが気になっています。
この栄養士さん、根本的な知識が不足しています。
近いうちに反論しようと思います。
2016/10/07(Fri) 16:43 | URL | ドクター江部 | 【編集】
クワトロ さん
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6216886
ヤフーニュースで、前もって、番組内容を公開してますが、
サラダで食物繊維を先に食べるとか
おにぎり2個を1個に減らして唐揚げにするとか
まあ、いいのですが、かすってますね。
どうして素直に「糖質制限」と言えないのか不思議ですね。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6216886
ヤフーニュースで、前もって、番組内容を公開してますが、
サラダで食物繊維を先に食べるとか
おにぎり2個を1個に減らして唐揚げにするとか
まあ、いいのですが、かすってますね。
どうして素直に「糖質制限」と言えないのか不思議ですね。
2016/10/07(Fri) 17:05 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生 こんにちは
またまた興味深い情報をありがとうございます。
糖質制限アスリートの筋肉中のグリコーゲンの利用と蓄積は運動3時間は糖質摂取アスリートと同じだった。ということは3時間までは大丈夫。でもロングのトライアスロンなど10時間を超えるような運動の場合はまだ何とも分からないんですね。残念。
またまた興味深い情報をありがとうございます。
糖質制限アスリートの筋肉中のグリコーゲンの利用と蓄積は運動3時間は糖質摂取アスリートと同じだった。ということは3時間までは大丈夫。でもロングのトライアスロンなど10時間を超えるような運動の場合はまだ何とも分からないんですね。残念。
2016/10/08(Sat) 11:25 | URL | IRONマン | 【編集】
「糖質食えよ。先に、野菜と肉魚の後に」
って番組でした><
◎プロデューサーは「袖の下」いくらもらったの > 日本糖尿病学会から
って、言う番組。
BS-TBSの「ちょうの健康」よりに比肩できない「糖尿病患者を増加させるための番組でした><
って番組でした><
◎プロデューサーは「袖の下」いくらもらったの > 日本糖尿病学会から
って、言う番組。
BS-TBSの「ちょうの健康」よりに比肩できない「糖尿病患者を増加させるための番組でした><
2016/10/08(Sat) 22:55 | URL | らこ | 【編集】
IRONマン さん
この論文は、
ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて
普段の食事が「糖質制限食」か「糖質あり食」でレースをしているアスリートにおける
比較・研究のお話しです。
それも、それぞれ一流ランナーを10名ずつです。
ですから、普段もレース中も糖質制限食で、トライアスロンやウルトラマラソンをしている、
一流ランナー10名ということです。
この論文は、
ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて
普段の食事が「糖質制限食」か「糖質あり食」でレースをしているアスリートにおける
比較・研究のお話しです。
それも、それぞれ一流ランナーを10名ずつです。
ですから、普段もレース中も糖質制限食で、トライアスロンやウルトラマラソンをしている、
一流ランナー10名ということです。
2016/10/09(Sun) 08:30 | URL | ドクター江部 | 【編集】
らこ さん
グルコーススパイクの危険性を強調したことは、まあ良かったと思います。
しかし、その対策がお粗末でしたね。
グルコーススパイクの危険性を強調したことは、まあ良かったと思います。
しかし、その対策がお粗末でしたね。
2016/10/09(Sun) 09:27 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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