久山町研究、海馬萎縮と糖尿病と食後高血糖。HbA1cとGA。
こんばんは。

精神科医師Aさんから、

『糖尿病は海馬萎縮のリスク因子―罹病期間が長いほど萎縮進む』

という、久山町研究の最新報告について、コメント頂きました。
ありがとうございます。

65歳以上の福岡県久山町住民1,238人を対象に頭部MRI検査を実施して調査です。

糖尿病患者では脳萎縮、なかでも海馬萎縮が進んでいることがわかりました。

全脳萎縮、海馬萎縮、海馬優位の脳萎縮の3者に関して、食後2時間血糖値の上昇が有意に関与しており、空腹時血糖値との関連はみられませんでした。

糖尿病罹病期間が長くなるほど萎縮が進み、罹病期間が17年以上の患者では非糖尿病患者に比べて有意差が認められました。

中年期に糖尿病と診断された患者では、高齢になってから診断された患者に比べて海馬の萎縮が有意に進んでいました。

空腹時血糖値ではなく、食後高血糖が海馬萎縮(アルツハイマー病の特徴)に関与していることが今回の久山町研究で判明したわけです。

空腹時血糖値だけではなくて、食後2時間血糖値を測定したのは、九州大学医学部の先生方、good job ですね。

これで、食後高血糖がアルツハイマー病のリスクなるというエビデンスが一つ増えたことになります。

さて、そうすると、現在日本の病院の糖尿病外来や会社の健康診断の多くで行われている「HbA1cと早朝空腹時血糖値」を基本にした糖尿病の評価基準は、大きな問題をはらんでいると言えます。

すなわち、「HbA1cと早朝空腹時血糖値」検査では、食後高血糖の存在を見逃す可能性が高いのです。

HbA1cは、食後1~2時間の短時間の食後高血糖を捉えることができない検査です。

食後高血糖は、海馬萎縮(アルツハイマー病の特徴)のリスクだけではなく、酸化ストレスを生じて、動脈硬化・老化・癌・糖尿病合併症・パーキンソン病などのリスクになります。

現実には、日本の糖尿病患者のほとんどが、医師・栄養士の指導のもと、カロリー制限・高糖質食を一日3回、食べさせられています。

糖尿病で入院したときなどは、一日3回、丼飯が出るなど、もはや乱暴・狼藉状態ですね。

これでは、一日3回、必ず食後高血糖を生じます。

だからこそ、糖尿病で治療を受けているにも関わらず、毎年新たに、人工透析16000人、失明3000人、足切断3000人という悲惨な状況が、長年続いているわけです。

グリコアルブミン(GA)を調べれば、短時間の食後高血糖も捉えることができます。

従来の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)を摂取している糖尿人は、是非一度、グリコアルブミン(GA)を調べて、食後高血糖の有無をチェックするのが無難と思います。

1型の糖尿病患者さんで、HbA1cは6.6~6.8%(6.9%未満良好)とコントロール良好なのにGAは28~30%(20%未満良好)というパターンのかたが時におられます。

食後高血糖が低血糖気味の時と相殺されて、平均値のHbA1cは見かけ上はコントロール良好ですが、実態はコントロール全く不良なのです。

これでは、合併症は防げません。

2型の場合も1型ほどではないにしても、特にSU剤やインスリン注射を打っている糖尿人は、HbA1cは良好でもGAは不良というパターンは結構あると思いますので注意が必要です。

ともあれ、食後高血糖を予防できる唯一の食事療法は糖質制限食であることを、肝に銘じておく必要が有ると思います。


江部康二


【16/07/26 精神科医師A

最近の文献(2)

糖尿病は海馬萎縮のリスク因子―罹病期間が長いほど萎縮進む、久山町研究
http://www.carenet.com/news/general/hdnj/42303

糖尿病があると記憶に関わる脳の海馬の萎縮が進みやすく、罹病期間が長く、診断時期が早いほどそのリスクが高まることが、九州大学大学院衛生・公衆衛生学分野の久山町研究グループにより明らかにされた。この知見では、脳や海馬の萎縮には、空腹時血糖値ではなく食後2時間血糖値が有意に関連していたことから、糖尿病患者の海馬萎縮、認知症の発症予防には食後高血糖の是正が鍵となる可能性がある。詳細は「Diabetes Care」オンライン版に7月6日掲載された。

これまで欧米を中心とした研究で、糖尿病患者ではアルツハイマー病の発症リスクが高まることや、非糖尿病患者に比べてアルツハイマー病の特徴とされる海馬の萎縮が進んでいることが報告されている。久山町研究では、糖尿病および食後2時間血糖高値がアルツハイマー病の発症や老人斑の形成と有意に関連することが報告されているが、今回、同研究グループは、頭部MRIを用いて脳容積を測定し、糖尿病の有無との関連を検討した。

本研究では、65歳以上の福岡県久山町住民1,238人を対象に頭部MRI検査を行い、全脳容積(TBV)、頭蓋内容積(ICV)、海馬容積(HV)を測定。全脳萎縮の指標にTBV/ICV比、海馬萎縮の指標にHV/ICV比、海馬優位の脳萎縮の指標にHV/TBV比を算出し、糖尿病の指標との関連を調べた。対象者のうち23%(286人)が糖尿病患者であった。

その結果、年齢や性などの因子を調整した解析により、糖尿病患者では、非糖尿病患者に比べてTBV/ICV比、HV/ICV比、HV/TBV比はいずれも有意に小さく、糖尿病患者では脳萎縮、なかでも海馬萎縮が進んでいることがわかった(それぞれ77.6%対78.2%、0.513%対0.529%、0.660%対0.676%、いずれもP<0.01)。

また、これらの3つの指標はいずれも、食後2時間血糖値の上昇に伴って有意に小さくなったが、空腹時血糖値との関連はみられなかった。さらに、糖尿病罹病期間が長くなるほど3つの指標は小さくなる傾向がみられ、罹病期間が17年以上の患者では非糖尿病患者に比べて有意差が認められた。中年期に糖尿病と診断された患者では、高齢になってから診断された患者に比べて海馬の萎縮が有意に進んでいることもわかった。

Association Between Diabetes and Hippocampal Atrophy in Elderly Japanese: The Hisayama Study
http://care.diabetesjournals.org/content/early/2016/07/01/dc15-2800


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
鳥越俊太郎と糖質制限
幻冬舎の低インスリン療法解説本が話題 出版記念イベントに鳥越俊太郎氏が登場

http://www.kyodo.co.jp/yawaosi-eizo/2016-06-06_1548463/


「私は糖質制限もやって、身体もスリムになり、今はガンになる前よりも健康だ。まだまだ戦いは続きますけれども、このまま戦い抜いて、この錦糸町駅で、都知事になったという報告をしたい。いかがですかみなさん!」

https://twitter.com/shuntorigoe/status/754247777459113984
2016/07/28(Thu) 22:09 | URL |  | 【編集
こんばんは。
薬の服用につきましてお尋ねいたします。
私は現在エクア錠50mgを1日2回朝夕食後服用しております。
朝空腹時の血糖値は100~120で、ヘモグロビンa1c値は7前後、
GAは18.7と若干高めです。
朝食は水200ccとゆで卵・野菜、豆腐、果物(糖質の少ないもの)を入れたジュース
昼食はお腹がすいたら市販のサンドイッチや唐揚げが多く食べないこともあります。
間食にナッツ類・糖質制限ビターチョコ・コーヒーなど
夜は野菜炒めにスープ。肉・魚・海藻類。アルコールを少量飲んでおります。

食後2時間の血糖値を上げないのが重要ということで、今の私の食生活と薬の種類・服用の仕方が自分に合っているのかな?と思います。
朝食後、エクアを服用すると少しぼっとして午前中、頭の回転が悪いようにも感じております。(気のせいかもしれません)
ご意見をお伺いしたく、よろしくお願い致します。
2016/07/28(Thu) 23:28 | URL | 2型糖尿病 | 【編集
健康診断の尿蛋白が2+でした
初めまして。
体質改善とダイエットを目的として低糖質高タンパクな食生活を始めて2ヶ月が経ちました。浮腫みや倦怠感もさっぱりなくなり、肌の調子もよく冷え性まで改善されてきました。体調は今までにないくらいよいです。
しかし、7/8に(低糖高タンパク食開始から1ヶ月の頃)行った健康診断の結果で尿蛋白がE判定(2+)が出てしまいました。(尿酸値などは問題ありませんでした)
昨年の健康診断もc判定でひっかかりましたが(糖質たっぷりの普通の食事をしていた頃です)その際、心療内科の主治医に報告したところ、(現在も通院中で、睡眠導入剤としてマイスリーを服用中)他の数値もみながら「肝機能は問題ないので現在処方している睡眠導入剤は続ける。尿蛋白に関してはコンタミの範囲でしょう」ということでした。
しかし、2年連続でひっかかり、しかも悪化というのはさすがに気になるので精密検査に行こうと考えております。

ここで質問なのですが、低糖質高タンパクの食事を始めたばかりだとこのようなことはよくあるのでしょうか?ブログを遡らせていただいたのですが、理解しきれない部分もあり…ネットで探してみても、高タンパク食が腎臓に負担をかけるか否かに関して情報が錯綜しており、精査できない状態です。
26歳女性、156.5センチ体重47キロほどです。腎機能は今までも今回も測ったことがないので、参考になる数値がありません。

拙い文章で大変申し訳ありませんが、ご回答いただけますと幸いです。
2016/07/29(Fri) 02:48 | URL | ねぎとろ | 【編集
医歯薬出版の最新号
1) プラクティス 33巻4号 2016年7月号
食事療法 
第1回 栄養学の歴史的転換点を迎えて 糖尿病食事療法の歴史を振り返る  山田悟
https://www.ishiyaku.co.jp/magazines/practice/PracticeBookDetail.aspx?BC=003304


2) 臨床栄養 129巻2号 2016年8月号
てんかん患者への栄養食事指導のポイント 竹浪千景
昆虫食の現状と将来-FAO報告書からの国際的動向と日本の現状 松井欣也
https://www.ishiyaku.co.jp/magazines/eiyo/EiyoBookDetail.aspx?BC=061292
2016/07/29(Fri) 08:42 | URL | 精神科医師A | 【編集
「LDLが高い!」と、脅されてビビっている方へ!
江部先生 ご報告です! 

 自称スーパー糖質制限食2年目に突入しました狭心症の還暦男です。
 
 本日、健康診断を受診しました。

 ここの検診は、検査終了時点で担当医が血液検査などの結果を教えてくれる、というスピーディーなサービスは素晴らしいのです。
 が、その担当医のご指導がなかなかのものでして・・・

糖質制限スタート時と今回の値
 LDL  151→225
 HDL  49→57
 中性 159→51

 LDLは高値ですが、HDLや中性脂肪の値は改善傾向にあり心配ない!
 とこちらのブログで勉強していた私としては安心の結果だったのですが

 担当医「危険な値ですから今すぐ病院に行って下さい!」

 とのことでした。

 何も知らない人でしたら、慌てて病院に行き、クレストールでも服用させられることでしょう。(過去に服用してました。)

 それでいて「医療費を減らしましょう!」と
 私が1年間でいくら医療費を使ったか嫌味なお知らせがくるのです。

 必要ない薬をのませているのは誰なのか?
 お知らせを送る相手を間違えているのではないでしょうか?

 誰の言うことを信じるかは、自己責任だと思っています。
 自分なりにあれこれ勉強した結果、こちらにたどり着きました。
 今後ともよろしくお願いいたします。
2016/07/29(Fri) 16:07 | URL | hanuman | 【編集
Re: 鳥越俊太郎と糖質制限
鳥越俊太郎さん、そうですか。
糖質制限食ですか。
がん予防に関しては賢明な選択です。

それなら応援したい気もしますが、苦戦中ですね。
2016/07/29(Fri) 18:11 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
2型糖尿病 さん

スーパー糖質制限食をきっちり実践したら、
エクアなしで、コントロール良好となる可能性がありますね。
2016/07/29(Fri) 18:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 健康診断の尿蛋白が2+でした
ねぎとろ さん

尿蛋白に関しては、早朝尿が正確です。
歩いた後とか走った後とかは、誰でも陽性になることがあります。

健康診断でOKなら血液検査での腎機能は正常です。

糖質制限食を続けられて問題ないと思います。
2016/07/29(Fri) 18:17 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 医歯薬出版の最新号
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
2016/07/29(Fri) 18:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 「LDLが高い!」と、脅されてビビっている方へ!
hanuman さん

スタチンを内服する必要があるのは、「家族性高コレステロール血症」の患者さんです。
200~500人に一人とされています。

それ以外の人はコレステロール値が高値でもスタチンは不要と私は考えています。

一方、心筋梗塞の既往がある場合は、ほぼ全ての循環器専門医は、スタチンを投与しますね。
このような場合こだけは、私も迷うところです。
2016/07/29(Fri) 18:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
hanumanさんへ
藤田保健衛生大学 医学部 公衆衛生学が提示している、<今後10年間の心筋梗塞 脳梗塞のリスクチェック>というのがあります。私もLDL-Cが200以上ありますが、リスクはわずか数パーセントでしたよ。これをやって次の受診時に主治医にお見せになってみたら?
http://www.fujita-hu.ac.jp/~deppub/risk.html
2016/07/29(Fri) 18:30 | URL | お邪魔虫 | 【編集
Re: hanumanさんへ
お邪魔虫 さん

興味深い情報をありがとうございます。
2016/07/30(Sat) 07:34 | URL | ドクター江部 | 【編集
10年間の心筋梗塞と、、、、
これは
糖尿病ネットワーク
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/025490.php

で知りました。
2016/07/30(Sat) 09:19 | URL | お邪魔虫 | 【編集
正直、一番ビビっているのは「私自身」です!
「狭心症でステントひとつ」の還暦男です。

江部先生 いつもながらの早速のコメントありがとうございます。
     度々お忙しい中すみません。読み捨てて戴いて構いませんので・・・ 

お邪魔虫 さん 貴重な情報ありがとうございました。
     早速やってみた結果 心筋梗塞のリスクは 5.5% でした。
     値を変えると即座に結果が出るのがいいですね。
     今後も利用させて戴きます。

 実はクレストールを始めてすぐに違和感があり副作用の事も知っていたのですが、止める勇気もなく悩んでいました。
 たまたま近くに「不要な薬は出さない!」というクリニックの噂を聞き受診しました。

 パソコンではなく患者の目を見て話す先生でした。
 これまでの私の狭心症などのデータも時間をかけてみていただき、最後には聴診器をあてて心臓の音も聴いてくれて 
 「クレストールは止めましょう!」 

 正直、見た目は安普請の怪しげ(すみません!)なクリニックです。
 いつも空いている(すみません!)ので、たっぷり時間をかけて話を聞いてくれます。こちらのクリニックに来て薬を減らしてから、確実に血圧も下がりました。

 江部先生とこのクリニックのおかげで、今の元気を戴いたと思っています。
 これからの楽しく自称スーパー糖質制限を続けていこうと思っています。

 一応「軽い運動と青魚」を勧められたので始めてみます。
2016/07/30(Sat) 09:54 | URL | hanuman | 【編集
高LDL改善しました
糖尿病発覚から早3年、糖質制限のお蔭で毎回担当医師に褒められています。糖質制限を始めて1年くらいでLDLが上がりはじめ、260近くまで行きました。江部先生にもブログでご相談させていただいたり、他の投稿を見たりして、「2年くらいで落ち着いてくる」というお言葉を信じてあまり気にしなかったのですが、さすがに担当医師に強硬にスタチン系の薬を勧められ、断りきれず。。しかし「筋肉痛が出ました」→「では別の薬」を数回繰り返し、江部先生に勧めていただいたゼチーアの処方をお願いしたところ、すんなり受諾していただけました。
薬の効果なのか、糖質制限で落ち着いてきたからなのか、LDLは1年前260→現在110です。担当医師も「この薬でこんなに下がるとは。。」とびっくりしていました。
毎回丁寧にブログでの質問にも対応して下さる江部先生のお蔭です。ありがとうございました。
糖質制限を続けていれば、いつかはゼチーアも不要になるでしょうか?
2016/07/30(Sat) 11:40 | URL | Peco | 【編集
Re: 正直、一番ビビっているのは「私自身」です!
hanuman さん

「軽い運動と青魚」
いいと思います。
2016/07/31(Sun) 16:06 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 高LDL改善しました
Peco さん

糖質制限食実践者の場合は、ゼチーアが非常によく効きます。

今後、まずは一日おきの投与とかで、徐々に減らしていけばいいとおもいます。
2016/07/31(Sun) 16:10 | URL | ドクター江部 | 【編集
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