日本外科代謝栄養学会。糖質制限マウスにおいて生存率改善。
こんにちは。

精神科医師Aさんから興味深い情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。

日本外科代謝栄養学会において
「糖質制限食が腸管虚血再灌流後の生体反応に及ぼす影響について」
という発表がありました。

マウスを通常食群(N=30)と糖質制限食群群(N=29)の2群に分けそれぞれ食餌を3週間自由摂取。

食餌の組成内容は

通常食: 炭水化物65%  脂質16%  アミノ酸19%、
糖質制限食: 炭水化物20%  脂質62%  アミノ酸18%

両群のマウスの上腸間膜動脈をしばって、60分間血流を止めます。
その後、血流を再開して、生存率を調べた研究です。

再灌流後の生存率は
12時間後 通常食:糖質制限食群 80% vs 100%
24時間後 通常食:糖質制限食群 53% vs69%
48時間後 通常食:糖質制限食群 30% vs52%

いずれも糖質制限食群で良好で、
特に12時間での生存率では有意差を認めました。

再灌流後6時間の血清中アデイポネクチン値、レプチン値、 腸管組織のSOD活性値に有意差なしなので、なぜ糖質制限食マウスで生存率が改善したかはさらなる検討が必要とのことです。

いつも私が言っているように、マウスの主食は本来は穀物なので高脂肪食を食べさせるのは、かなりのハンディになるはずです。

それにも関わらず、結果は、糖質制限・高脂肪食マウスの生存率が改善ですので高脂肪・低糖質食そのものに、なんらかの生存率を向上させる効能があったと考えられます。

あくまでも仮説ですが、ケトン体高値が生存率改善に関与している可能性がありますね。
血中ケトン体値を調べてあれば、と思いました。

江部康二



『16/07/26  精神科医師A

日本外科代謝栄養学会(1)
外科と代謝・栄養50巻3号 2016年6月15日発行
日本外科代謝栄養学会第53回学術集会プログラム・予稿

P178

糖質制限食が腸管虚血再灌流後の生体反応に及ぼす影響について
○渡邊智記1)2)、深柄和彦2)、村越智2)、 守屋智之 1)、李基成2)、山本順 司1)、長谷和生1)、安原洋2)

1)防衛医科大学校外科 2)東京大学医学部附属病院手術部

【背景】

近年、肥満患者に対する糖質制限食(Low carbohydrate-high fat diet 以下LCHFD)による栄養介入が、体重減少・耐糖能の改善や循環器疾患リスクの軽減に有効と報告されている。しかし、高脂肪食による炎症反応増悪の報告もあり、LCHFD摂取患者が外科侵襲後に予期せぬ転帰をたどる危険性も否定できない。今回我々は、LCHFD の摂取が外科侵襲時に及ぼす影響に関してマウス腸管虚血再灌流モデルで検討した。

【方法】

1) マウスを通常食群 (以下N群)(N=30)とLCHFD群(以下LCHFD群)(N=29)の2群に分けそれぞれ食餌を3週間自由摂取させた。
食餌の組成内容は通常食: 炭水化物65% 脂質16% アミノ酸19%、LCHFD食: 炭水化物20% 脂質62% アミノ酸18%であった。その後麻酔下に上腸間膜動脈をクランプ、60分後にクランプを解除し再灌流後の生存を48時間観察した。

2) マウスをN 群(N=9)、LCHFD群(N=9)の2群に分け、1)と同様に3週間の自由摂取の後に60分間の腸管虚血を施行。再灌流後6時間に致死せしめ、血液・腸管組織を採取。血清中のアデイポサイトカイン値、腸管組織のSOD活性値を測定しおよび腸管傷害度をChiu分類にて評価した。

【結果】

1) 再灌流後の生存率はN群、LCHFD群の順に12時間(80% vs 100%)、24時間(53% vs 69%)、48時間(30% vs 52%)であり、いずれもLCHFD群で良好で特に12時間での生存率では有意差を認 めた (Fisher's exact test: p=0.02)。生存時間においてもLCHFD群で良好な傾向がみられた (log rank test: p=0.07 )

2) 再灌流後6時間での各項目の値はN群、LCHFD群の順にアデイポネクチン: 5.8±0.7μl/ml vs 5.9±0.6μl/ml、レプチン: 4.4±0.5ng/ml vs 4.3±0.4ng/ml、 SOD活性値: 27.8±5.6u/g vs 34.1±4.7u/gと同等で、Chiu分類による腸管障害度の評価もN群平均Grade2.3、LCHFD群 平均Grade2.2であった。

【結語】

糖質制限食の比較的長期間(3週間)の自由摂取は腸管虚血再灌流後の予後改善をもたらした。しかし、血清中のアデイポサイトカイン値、腸管組織中SOD活性、腸管傷害の程度は大きな違いを認めず、生存改善の機序についてはさらなる検討が必要である。』
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
早速ナチュラル・ボーン・ヒーローズを取寄せました。P385に、心臓協会の「ノース式ダイエットは危険だ」のネガキャンに対し、次の趣旨の記載がありました。「これはダイエットでない。なぜなら食事量やカロリーを制限しないからだ。」
本邦においても根拠の脆弱な誹謗中傷(マスコミのミスリードも含め)に惑わされる多くの方に糖質制限の本質を理解してもらうための切り口が必要と感じました。
例えば「痩せる目的ではない、その人本来の適正体重や体調を取り戻すためだ。」とか。
ただ痩身目的の人は途端に興味を失うかも知れませんが。
2016/07/27(Wed) 15:30 | URL | tama | 【編集
糖尿病
江部先生初めまして。今現在とても不安な気持ちでいっぱいで突然ではありますが、ご相談させて下さい。

2週間程前に病院で検査を受けましてその際に判明しました。

42歳(女)糖尿病と診断結果が出た数値は
空腹時血糖値 277 HbA1c 9.7 でした。

紹介状を出すので教育入院をするようにとの事だったのですが
入院をするのが嫌で色々調べて、こちらへ辿り着きました。

私の母が肝硬変の合併で糖尿病になっていたのですが
20年以上も前に他界していますので、詳しくはわからないというのが現状です。薬は服用し低血糖になる事があるのでスティックシュガーを持ち歩いていたのを記憶しています。

糖尿病とわかった翌日からスーパー糖質制限食を実行しているのですが
空腹時血糖~食後1時間ないし2時間の数値は
125~169の数値なのですが、食べても170を超える事も無いですが
逆に空腹時でも125以下にはならないという状態なのです。

運動量が少ないので、1日のカロリーは1200kcalを目安にしています。

このまま続けえていけば空腹時血糖は今の数値よりも下がるようになるのでしょうか。

元々肥満体型だったのですが15年前までは病棟勤務で毎日走り回ってたせいか毎年の健康診断に引っかかるという事はありませんでした。

しかし結婚退職後全く健康診断を行っておりませんで
今回身体の不調が重なりました。まずは虫歯の進行が驚くほど早く
これはおかしいかもと思ったのと。
右横腹から背中の方までの激しい痛みで病院での検査を優先させ
糖尿病だとの結果が出たという状態です。血尿も出ているが濁りは無く
胆石はない。尿路結石の疑いがあるが原因不明との事でした。
現在痛みはありません。

このまま食事療法を続けて1ヶ月後等に病院で再検査をしてもらおうかと思っているのですが、それともきちんと専門の病院へ早めにかかった方が良いのでしょうか。

お忙しいとは思いますが是非アドバイスを頂けたらと思います。
宜しくお願い致します。
2016/07/27(Wed) 16:43 | URL | ももちゃ | 【編集
ガッテン
こんにちは。今、新聞のラテ欄を見ていたら、今夜7時半からNHK総合のガッテンで、「オクラネバネバパワー新伝説、血糖値抑制の~」とありました。
2016/07/27(Wed) 17:10 | URL | デュピュイ取るモバイル | 【編集
マウスの本来の食性
いつも本ブログで勉強させていただいております。

マウスが主食を穀物としたのも、人類が農耕を開始して以降という可能性はありますでしょうか?
人類の農耕開始以前は、マウス達もかなりの糖質制限食で進化してきた可能性もあり得るのかと思えます。
例えばウサギほどには草食に適応していないようですし。
2016/07/27(Wed) 18:28 | URL | アカツカ | 【編集
Re: 糖尿病
ももちゃ さん

糖尿病に関しては、スーパー糖質制限食実践でどんどん改善すると思います。

一度早朝空腹時のインスリン値と血糖値を測定して、HOMA-RやHOMA-βを計算してみましょう。

血尿に関しては糖尿病は無関係なので、泌尿器科主治医と
経過観察でよいのか、さらに精査がいるのかを相談してください。
2016/07/27(Wed) 22:21 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: マウスの本来の食性
アカツカ さん

マウスやラットなどネズミ類は、本来の主食は草の種子(即ち今の穀物)です。

草原が地球上の有力な植生として現れる鮮新世(510万年前)以降、ネズミ科の動物が出現して爆発的に繁栄します。

ネズミ類は、510万年間、草原の草の種子(穀物)を食べ続けてきたと思います。

2014年03月01日 (土)の本ブログ記事
高脂肪食とねずみ(マウス、ラット)、「薬物の動物実験」と「食物の動物実験」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2876.html
をご参照頂けば幸いです。
2016/07/27(Wed) 22:25 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖質制限食を行うと、インスリン分泌も抑えられ体重が減少すると理解しておりましたが、別サイトでこのような記事を見つけました。
http://athletebody.jp/2016/04/05/insulin-myth-1/
江部先生はどのように考えられますか。
お忙しいところ申し訳ありません。
よろしくお願い致します。
2016/07/28(Thu) 11:38 | URL | えぬ | 【編集
従来療法に対する意地悪な質問
従来療法をしている糖尿病専門医もご飯、パンなど糖質たっぷりの食品を普通に食べて糖尿病にかかる人はいると思います。そういう人はカロリー制限、運動、薬物療法、インスリン注射などを施しながら合併症へと悪化することもあるでしょう。なら、どこかおかしいと気づかないのでしょうか?普通の食事を普通に食べて、ひどい病気になって、従来療法はどこかおかしいと疑問に思わないのでしょうか?江部先生に対する質問ではありません。以前、同じ投稿をしたことがあります。口悪いですが、医者にもバカは多いと思うので、再び発言したくなりました。
2016/07/28(Thu) 12:56 | URL | コバタケ | 【編集
えぬ さん

2016年04月07日に T.suke さんが同様の質問をしてます。参照して下さい。質問の前にネット検索しましょう。
2016/07/28(Thu) 15:38 | URL |  | 【編集
Re: タイトルなし
えぬ さん

以下が、以前の質問と回答です。


これは正しいのでしょうか?
T.sukeと申します。
江部先生こんにちは。
僕は普段筋トレをしていて、これから脂肪を落とす時だけ糖質制限をしようと思っています。

先日トレーニングの参考にしているサイトで、
こんな記事がありました。

『糖質制限でインスリンをコントロールするという迷信』
http://athletebody.jp/2016/04/05/insulin-myth-1/

自分なりに内容をまとめると、
1 脂肪もホルモン感受性リパーゼの働きを抑制するので、
糖質制限中に脂肪をとりすぎると脂肪分解を抑制することになる。

2 たんぱく質もインスリンを分泌し、種類によっては糖質と同じぐらいの分泌もありえる。
(ホエイが一番インスリンを分泌させる)

3 血糖値や糖新生が関与しなくても分泌はされる。(基礎分泌以外で)

4 ロイシンはインスリンの分泌を直接働きかける。

5 たんぱく質を摂取してインスリンが分泌されたとしても、グルカゴンが脂肪分解をうながすからインスリンの効果を打ち消すというのは間違いである。
グルカゴンは脂肪分解うながさないから。

これらは正しいのでしょうか?

自分の考えでは、ダイエットを考える時
高たんぱく質、低糖質にし、脂質は良質の物を程よく摂取。
この食事であればインスリンの分泌はあるが、糖新生、熱産制がアップし、また満腹感があり総カロリーを抑えることもできる。
この考えは大丈夫でしょうか。

どうかご教授ください。
2016/04/08(Fri) 17:38 | URL | T.suke | 【編集】





Re: これは正しいのでしょうか?
T.suke さん

1 これは聞いたことがありません。インスリンがホルモン感受性利パーゼの働きを抑制します。
  脂肪摂取は、インスリン分泌を促しません。

2 たんぱく質もインスリン分泌を促しますが、同時にグルカゴン分泌も促すので血糖値が上昇しません。
  インスリンがでると血糖値が中性脂肪に変わり脂肪細胞に蓄えられます。
  たんぱく質は血糖値が上昇しないので、脂肪蓄積にならないということです。

3 これは正しいです。たんぱく質もインスリン分泌を促します。

4 アミノ酸の「ロイシン、リジン、アルギニン」は、インスリン分泌及びグルカゴン分泌を促します。

5 グルカゴンは脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼを活性化して、脂肪分解を促進して遊離脂肪酸放出を増加させます。

『高たんぱく質、低糖質にし、脂質は良質の物を程よく摂取。
この食事であればインスリンの分泌はあるが、糖新生、熱産制がアップし、
また満腹感があり総カロリーを抑えることもできる。』

総摂取エネルギーを、厚生労働省の言う<推定エネルギー必要量>くらいにして
たんぱく質と脂質はしっかり摂取し糖質を制限することで、肥満した人の体重は減少します。
2016/04/08(Fri) 19:14 | URL | ドクター江部 | 【編集】
2016/07/28(Thu) 19:25 | URL | ドクター江部 | 【編集
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