2016年05月20日 (金)
こんばんは。
今日は、江部診療所の診察が終了したあと、第59回日本糖尿病学会年次学術集会に参加しました。
1型糖尿病で管理栄養士の山本心さんも、江部診療所で栄養指導を終えたあと、一緒に参加です。
山本心さんは、2016年5月19日(木)、20日(金)、21日(土)と糖尿病学会に参加予定で皆勤賞です。
江部診療所から会場の国立京都国際会館まで、車で、5~6分です。
どのシンポジウムに参加するか迷いましたが、成り行きでシンポジウム14
「2型糖尿病のメカニズムを理解するためのオミックスアプローチ」
を選びました。
入口で、同時通訳用のヘッドホンを借りて、講演を聴きました。
外人さんが英語で講演していて、しかも
「microRNA function in pancreatic βcell」
-膵臓のβ細胞におけるミクロRNAの機能-
という、基礎理論の話で、とても難しかったです。
まあそれでも
1)
数種のミクロRNAが、発現し活動すると、β細胞がダメージを受けて糖尿病を発症するようなメカニズムがある。
2)
メタボリックシンドロームがあると酸化ストレスなどで
数種のミクロRNAが、発現し活動するので糖尿病発症となりえる。
3)
これらのミクロRNAは、狩猟・採集時代には、
過剰なインスリンの分泌をコントロールして、ポジティブに役立っていた。
4)
現代のメタボを発症するような食生活が、
善玉だったミクロRNAを悪玉にしてしまった。
というような講演要旨だったように思います。
特に、3)4)は興味深かったですね。
狩猟・採集時代の食生活(糖質制限食)に戻せば、これらのミクロRNAは善玉になるということです。
その後は、SGLT2阻害剤の研究発表を集中的に聞きました。
SGLT2阻害剤の投与で、
a)小粒子LDL-Cが減る。
b)脂肪肝が改善する。
c)中性脂肪が減る。
d)インスリン抵抗性が改善する。
e)体重が減少する。
という内容が、ほとんどでした。
a)b)c)d)e)はいずれも、糖質制限食でも改善する項目です。
SGLT2阻害剤は薬ではありますが、毎日約100gのブドウ糖を尿中に排泄するわけですから、食事療法みたいなものですね。
つまり200g/日の糖質を普通に食べていた人が、SGLT2阻害剤を内服したら、100g/日の糖質制限食をしたこととなります。
ですから、a)b)c)d)e)有効というのは当たり前といえば当たり前です。
でも、それなら最初からスーパー糖質制限食を実践すれば、40~60g/日の糖質摂取量で済むので効果はもっとあるし、医療費も削減です。
それとほとんどの発表が、6ヶ月間の研究でした。
これは、6ヶ月間経過すると、再び体重が増加し始めるのでそこで打ち切った可能性があります。
以前から言っているように、体重が増え始めるということは、人体が基礎代謝を減らして適応している可能性があるので、問題があり得るのです。
なお、北里研究所病院糖尿病センター長・山田悟先生と会場でバッタリお会いしました。
糖質制限食の立ち話を4~5分間して、旧交を温めることができました。
良かったです。
江部康二
今日は、江部診療所の診察が終了したあと、第59回日本糖尿病学会年次学術集会に参加しました。
1型糖尿病で管理栄養士の山本心さんも、江部診療所で栄養指導を終えたあと、一緒に参加です。
山本心さんは、2016年5月19日(木)、20日(金)、21日(土)と糖尿病学会に参加予定で皆勤賞です。
江部診療所から会場の国立京都国際会館まで、車で、5~6分です。
どのシンポジウムに参加するか迷いましたが、成り行きでシンポジウム14
「2型糖尿病のメカニズムを理解するためのオミックスアプローチ」
を選びました。
入口で、同時通訳用のヘッドホンを借りて、講演を聴きました。
外人さんが英語で講演していて、しかも
「microRNA function in pancreatic βcell」
-膵臓のβ細胞におけるミクロRNAの機能-
という、基礎理論の話で、とても難しかったです。
まあそれでも
1)
数種のミクロRNAが、発現し活動すると、β細胞がダメージを受けて糖尿病を発症するようなメカニズムがある。
2)
メタボリックシンドロームがあると酸化ストレスなどで
数種のミクロRNAが、発現し活動するので糖尿病発症となりえる。
3)
これらのミクロRNAは、狩猟・採集時代には、
過剰なインスリンの分泌をコントロールして、ポジティブに役立っていた。
4)
現代のメタボを発症するような食生活が、
善玉だったミクロRNAを悪玉にしてしまった。
というような講演要旨だったように思います。
特に、3)4)は興味深かったですね。
狩猟・採集時代の食生活(糖質制限食)に戻せば、これらのミクロRNAは善玉になるということです。
その後は、SGLT2阻害剤の研究発表を集中的に聞きました。
SGLT2阻害剤の投与で、
a)小粒子LDL-Cが減る。
b)脂肪肝が改善する。
c)中性脂肪が減る。
d)インスリン抵抗性が改善する。
e)体重が減少する。
という内容が、ほとんどでした。
a)b)c)d)e)はいずれも、糖質制限食でも改善する項目です。
SGLT2阻害剤は薬ではありますが、毎日約100gのブドウ糖を尿中に排泄するわけですから、食事療法みたいなものですね。
つまり200g/日の糖質を普通に食べていた人が、SGLT2阻害剤を内服したら、100g/日の糖質制限食をしたこととなります。
ですから、a)b)c)d)e)有効というのは当たり前といえば当たり前です。
でも、それなら最初からスーパー糖質制限食を実践すれば、40~60g/日の糖質摂取量で済むので効果はもっとあるし、医療費も削減です。
それとほとんどの発表が、6ヶ月間の研究でした。
これは、6ヶ月間経過すると、再び体重が増加し始めるのでそこで打ち切った可能性があります。
以前から言っているように、体重が増え始めるということは、人体が基礎代謝を減らして適応している可能性があるので、問題があり得るのです。
なお、北里研究所病院糖尿病センター長・山田悟先生と会場でバッタリお会いしました。
糖質制限食の立ち話を4~5分間して、旧交を温めることができました。
良かったです。
江部康二
厚労省推奨の食事で糖尿人になりかけた N夫(52)です。母(82)に糖質制限を勧めるといつも喧嘩になります。自分の数ヶ月の糖質制限で改善した健診の結果を以てしても説得は容易ではありません。マスコミを通じた毎日の洗脳が、いかに強力かという証左ですね。(身内の説得さえ困難なのに、利害関係が対立する中での先生の御尽力については想像すらできません)
母が私より糖尿病発症に近いと考える理由が、年初に行った OGTT の結果です。(ちなみに私と母の HbA1c はここ10年間 5.8 ± 0.2 で推移しています。昨年、かかりつけ医に 5.8 は平均より高いので OGTT やりたいと言ったら、高くても安定してるから必要ないと断られ、糖尿病専門医の所に行きました)
私 母
空腹時 87 (1.2) 86 (3.7)
30分 137 (32) 140 (52)
60分 87 (19) 126 (70)
120分 77 (19) 96 (30)
HOMA-β 18 58
分泌指数 0.62 0.89
HOMA-R 0.26 0.79
自分の(貧弱な)知識で判断すると・・・
私: HOMA-β が 18、基礎分泌も 1.2 と低い
-> インスリンが少ない分には問題なし
60分で血糖値が下がっているのに分泌が続 -> あまり望ましくない
母: 指標は全て正常
-> 30-60分の分泌が多い、抵抗性の症状か
http://www.uemura-clinic.com/dmlecture/type2dm.htm のグラフ
「血糖曲線(左)とインスリン反応(右)」内の「インスリン正常範囲(緑色)」を参考にすると、母の場合は、正常範囲の上限ギリギリで、いつ糖尿病に移行しても不思議ではないように思えます。
母にはアルツハイマーにも癌にもなってほしくないので勧めるわけですが、母自身は健康だと言い張ります。私の場合は機能性低血糖の症状があったので糖質制限を受容することができたのですが、母にはないそうです。1日中、そんなに空腹を感じることもないし、満腹感もない、食後も眠くならない、疲れない。確かに傍からは元気そうに見えます。OGTT の値はそれ程良さそうには思えないのに、体調は糖質制限に匹敵などということがあるのでしょうか?
母が私より糖尿病発症に近いと考える理由が、年初に行った OGTT の結果です。(ちなみに私と母の HbA1c はここ10年間 5.8 ± 0.2 で推移しています。昨年、かかりつけ医に 5.8 は平均より高いので OGTT やりたいと言ったら、高くても安定してるから必要ないと断られ、糖尿病専門医の所に行きました)
私 母
空腹時 87 (1.2) 86 (3.7)
30分 137 (32) 140 (52)
60分 87 (19) 126 (70)
120分 77 (19) 96 (30)
HOMA-β 18 58
分泌指数 0.62 0.89
HOMA-R 0.26 0.79
自分の(貧弱な)知識で判断すると・・・
私: HOMA-β が 18、基礎分泌も 1.2 と低い
-> インスリンが少ない分には問題なし
60分で血糖値が下がっているのに分泌が続 -> あまり望ましくない
母: 指標は全て正常
-> 30-60分の分泌が多い、抵抗性の症状か
http://www.uemura-clinic.com/dmlecture/type2dm.htm のグラフ
「血糖曲線(左)とインスリン反応(右)」内の「インスリン正常範囲(緑色)」を参考にすると、母の場合は、正常範囲の上限ギリギリで、いつ糖尿病に移行しても不思議ではないように思えます。
母にはアルツハイマーにも癌にもなってほしくないので勧めるわけですが、母自身は健康だと言い張ります。私の場合は機能性低血糖の症状があったので糖質制限を受容することができたのですが、母にはないそうです。1日中、そんなに空腹を感じることもないし、満腹感もない、食後も眠くならない、疲れない。確かに傍からは元気そうに見えます。OGTT の値はそれ程良さそうには思えないのに、体調は糖質制限に匹敵などということがあるのでしょうか?
2016/05/21(Sat) 13:53 | URL | N夫 | 【編集】
N夫 さん
御母上は、82歳でもあり、OGTTも正常で、機能性低血糖の症状もないのであれば
このままでよいと思います。
本人が納得されればともかくとして、価値観を押しつけるパターンはお気の毒と思います。
N夫 さんは、 HOMA-β が 18、基礎分泌も 1.2 と低い のですが
血糖コントロールは良好ですので、望ましい状態と思います。
血糖コントロールができている限り、インスリン分泌量は少ないほど、身体には優しいのです。
N夫 さんの場合は機能性低血糖があるので、糖質制限食で健康を保つのが良いと思います。
御母上は、82歳でもあり、OGTTも正常で、機能性低血糖の症状もないのであれば
このままでよいと思います。
本人が納得されればともかくとして、価値観を押しつけるパターンはお気の毒と思います。
N夫 さんは、 HOMA-β が 18、基礎分泌も 1.2 と低い のですが
血糖コントロールは良好ですので、望ましい状態と思います。
血糖コントロールができている限り、インスリン分泌量は少ないほど、身体には優しいのです。
N夫 さんの場合は機能性低血糖があるので、糖質制限食で健康を保つのが良いと思います。
2016/05/21(Sat) 14:25 | URL | ドクター江部 | 【編集】
私が聴講した中で糖質の話は、ランチョン43で「高TGの原因は高脂質食と思われがちだが糖質過剰である」と明言されていたことぐらいでした。国際会館の書籍販売に「糖質オフのダイエット弁当」が並んでいたのが今日一番の嬉しい出来事でした!
会場のスクリーンに出ていた広告を見たところ、次回の病態栄養学会は糖質制限の話題が多そうですね。
会場のスクリーンに出ていた広告を見たところ、次回の病態栄養学会は糖質制限の話題が多そうですね。
2016/05/21(Sat) 16:25 | URL | YT | 【編集】
YT さん
1)
ランチョン43で「高TGの原因は高脂質食と思われがちだが糖質過剰である」と明言
2)
国際会館の書籍販売に「糖質オフのダイエット弁当」が並んでいた
情報をありがとうございます。
1)2)ともに、とても嬉しいですね。
1)
ランチョン43で「高TGの原因は高脂質食と思われがちだが糖質過剰である」と明言
2)
国際会館の書籍販売に「糖質オフのダイエット弁当」が並んでいた
情報をありがとうございます。
1)2)ともに、とても嬉しいですね。
2016/05/22(Sun) 21:48 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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