2016年05月19日 (木)
【16/05/16 ある大学人
日本栄養・食糧学会大会に参加して
初めまして。いつも楽しく拝見しております。
私は大学で栄養関連の教育をしている者ですが、13~15日にかけて開催された日本栄養・食糧学会大会でのことを少々。
この学会は歴史もあり日本では栄養学の学会として最大規模だと思います。しかし、糖質制限が話題になることはほとんどありません。今回も糖質制限に関する演題は、動物実験を扱った一つのみ。代わりに医学系学会との合同シンポジウムでは、「糖尿病治療法での炭水化物の意義」として杏林大医の石田均氏が糖質制限を批判しておりました。糖質制限賛成派の演題はなし。
学会の大口賛助会員には日清製粉やら山崎製パンなどが含まれているので、糖質制限を学会として認めるわけにはいかないのかも知れません。なんだか暗澹たる気持ちになった3日間でした。
ちなみに栄養士教育では、糖質制限を取り上げることはありません。管理栄養士試験に落ちてしまいますから(笑)】
こんにちは。
ある大学人 さんから、第70回日本栄養・食糧学会大会に関するコメントを頂きました。
興味深い情報をありがとうございます。
2016年5月13日(金)~15日(日)
神戸ポートピアホテル ポートピアホールと武庫川女子大学 中央キャンパス
で開催された第70回日本栄養・食糧学会大会に
参加されたのですね。
医学系学会との合同シンポジウム 【MSY】
MSY1 「糖尿病における食事療法の意義と課題」
日時:2016年5月14日(土) 14:40~16:40
会場:武庫川女子大学中央キャンパス K会場(S-24)
座長:宇都宮一典(東京慈恵会医科大学)
石田 均(杏林大学医学部)
14:40 MSY101 糖尿病食事療法での炭水化物の意義
石田 均(杏林大学医学部第三内科/糖尿病・内分泌・代謝内科)
15:03 MSY102 脂質栄養と脂質異常症
吉田 博(東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座)
15:26 MSY103 食塩と高血圧
下澤 達雄(東京大学医学部附属病院検査部)
15:49 MSY104 たんぱく質と糖尿病腎症
古家 大祐(金沢医科大学糖尿病内分泌内科学)
16:12 総合討論
医学系学会との合同シンポジウムMSY1において、石田均氏が糖質制限食批判ですか。
座長の宇都宮一典氏も、石田均氏も、強硬な糖質制限食批判派です。
このような方々しか呼ばない時点で、日本栄養・食糧学会が、糖質制限食に対して好意的でないことがわかります。
海外の例として、まずは米国糖尿病学会の糖質制限食に対する立場の変遷を確認しましょう。
1)2007年までは、糖質制限食を否定です。
2)2008年に、肥満を伴う糖尿病患者に1年間の期限つきで有効性を認めました。
3)2011年に、肥満を伴う糖尿病患者に2年間の期限つきで有効性を認めました。
4)2013年10月、成人糖尿病患者の食事療法に関する声明を2008年以来5年ぶりに改訂し、
適切な三大栄養素比率は確立されていないことを明言しました。
そして「糖質130g/日が平均的な最小必要量」という文言を削除し、
肥満の有無は関係なく、期限なしで、正式に糖質制限食を容認しました。
つまり、米国糖尿病学会は2008年以降、数々のエビデンスに基づいて糖質制限を容認の方向に踏み出しました。
その後、5年間のエビデンスの蓄積(糖質制限食肯定も否定も含めて)を経て糖質制限食を正式容認です。
2型糖尿病に対する食事療法として、米国では今や糖質制限食は重要な位置を占めるようなってきています。
例えば、米国のデューク大学(米ノースカロライナ州ダーラム)は、糖質制限食に関する臨床研究を積極的に行っています。
デューク大学のWilliam S. Yancy Jr.准教授は2013年10月のADA声明改訂委員の1人でもあります。
一般内科のEric C. Westman准教授は同大学生活習慣医学クリニック所長です。
Westman准教授は、炭水化物20g/日未満をクリニックで実践しています。
このようにデューク大学では、高雄病院のスーパー糖質制限食よりさらに厳格なケトジェニックダイエットを糖尿病治療食の標準として実践しています。
一方、日本の関連学会は米国に比べると、糖質制限食に関してほぼ無理解です。
それにしても 米国糖尿病学会が2013年の「栄養療法に関する声明」において、地中海食やベジタリアン食などと共に 糖質制限食を正式に容認していることを、日本栄養・食糧学会が完全に無視するのはあまりにも変です。
単なる勉強不足なのか、意図的なのか、日本糖尿病学会も日本栄養・食糧学会も、米国の糖質制限食容認を日本国民に広報しないのは、アンフェアです。
なお、スウェーデンでは、2008年1月、LCHF食事療法(糖質制限食)を、保健福祉庁が容認しました。
そしてイギリスでも、2011年、英国糖尿病学会が食事療法に関するガイドラインを改訂するに当たって、糖質制限食を選択肢の一つとして認めました。
江部康二
日本栄養・食糧学会大会に参加して
初めまして。いつも楽しく拝見しております。
私は大学で栄養関連の教育をしている者ですが、13~15日にかけて開催された日本栄養・食糧学会大会でのことを少々。
この学会は歴史もあり日本では栄養学の学会として最大規模だと思います。しかし、糖質制限が話題になることはほとんどありません。今回も糖質制限に関する演題は、動物実験を扱った一つのみ。代わりに医学系学会との合同シンポジウムでは、「糖尿病治療法での炭水化物の意義」として杏林大医の石田均氏が糖質制限を批判しておりました。糖質制限賛成派の演題はなし。
学会の大口賛助会員には日清製粉やら山崎製パンなどが含まれているので、糖質制限を学会として認めるわけにはいかないのかも知れません。なんだか暗澹たる気持ちになった3日間でした。
ちなみに栄養士教育では、糖質制限を取り上げることはありません。管理栄養士試験に落ちてしまいますから(笑)】
こんにちは。
ある大学人 さんから、第70回日本栄養・食糧学会大会に関するコメントを頂きました。
興味深い情報をありがとうございます。
2016年5月13日(金)~15日(日)
神戸ポートピアホテル ポートピアホールと武庫川女子大学 中央キャンパス
で開催された第70回日本栄養・食糧学会大会に
参加されたのですね。
医学系学会との合同シンポジウム 【MSY】
MSY1 「糖尿病における食事療法の意義と課題」
日時:2016年5月14日(土) 14:40~16:40
会場:武庫川女子大学中央キャンパス K会場(S-24)
座長:宇都宮一典(東京慈恵会医科大学)
石田 均(杏林大学医学部)
14:40 MSY101 糖尿病食事療法での炭水化物の意義
石田 均(杏林大学医学部第三内科/糖尿病・内分泌・代謝内科)
15:03 MSY102 脂質栄養と脂質異常症
吉田 博(東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座)
15:26 MSY103 食塩と高血圧
下澤 達雄(東京大学医学部附属病院検査部)
15:49 MSY104 たんぱく質と糖尿病腎症
古家 大祐(金沢医科大学糖尿病内分泌内科学)
16:12 総合討論
医学系学会との合同シンポジウムMSY1において、石田均氏が糖質制限食批判ですか。
座長の宇都宮一典氏も、石田均氏も、強硬な糖質制限食批判派です。
このような方々しか呼ばない時点で、日本栄養・食糧学会が、糖質制限食に対して好意的でないことがわかります。
海外の例として、まずは米国糖尿病学会の糖質制限食に対する立場の変遷を確認しましょう。
1)2007年までは、糖質制限食を否定です。
2)2008年に、肥満を伴う糖尿病患者に1年間の期限つきで有効性を認めました。
3)2011年に、肥満を伴う糖尿病患者に2年間の期限つきで有効性を認めました。
4)2013年10月、成人糖尿病患者の食事療法に関する声明を2008年以来5年ぶりに改訂し、
適切な三大栄養素比率は確立されていないことを明言しました。
そして「糖質130g/日が平均的な最小必要量」という文言を削除し、
肥満の有無は関係なく、期限なしで、正式に糖質制限食を容認しました。
つまり、米国糖尿病学会は2008年以降、数々のエビデンスに基づいて糖質制限を容認の方向に踏み出しました。
その後、5年間のエビデンスの蓄積(糖質制限食肯定も否定も含めて)を経て糖質制限食を正式容認です。
2型糖尿病に対する食事療法として、米国では今や糖質制限食は重要な位置を占めるようなってきています。
例えば、米国のデューク大学(米ノースカロライナ州ダーラム)は、糖質制限食に関する臨床研究を積極的に行っています。
デューク大学のWilliam S. Yancy Jr.准教授は2013年10月のADA声明改訂委員の1人でもあります。
一般内科のEric C. Westman准教授は同大学生活習慣医学クリニック所長です。
Westman准教授は、炭水化物20g/日未満をクリニックで実践しています。
このようにデューク大学では、高雄病院のスーパー糖質制限食よりさらに厳格なケトジェニックダイエットを糖尿病治療食の標準として実践しています。
一方、日本の関連学会は米国に比べると、糖質制限食に関してほぼ無理解です。
それにしても 米国糖尿病学会が2013年の「栄養療法に関する声明」において、地中海食やベジタリアン食などと共に 糖質制限食を正式に容認していることを、日本栄養・食糧学会が完全に無視するのはあまりにも変です。
単なる勉強不足なのか、意図的なのか、日本糖尿病学会も日本栄養・食糧学会も、米国の糖質制限食容認を日本国民に広報しないのは、アンフェアです。
なお、スウェーデンでは、2008年1月、LCHF食事療法(糖質制限食)を、保健福祉庁が容認しました。
そしてイギリスでも、2011年、英国糖尿病学会が食事療法に関するガイドラインを改訂するに当たって、糖質制限食を選択肢の一つとして認めました。
江部康二
江部先生こんばんわ。
糖質制限批判派、「過度な糖質制限 危険」と5月19日日経夕刊9面の「がん社会を診る」のなかで、東京大学病院準教授 中川恵一氏が述べています。
ネットで調べると、中川氏はがん放射線治療の専門家で、日経に上述の「がん社会を診る」を連載していることも書かれています。
高血糖が続くとがんの発症率が高くなることは述べられています。
今回の記事で、中川氏も糖尿病予備軍と診断され、管理栄養士による1600キロカロリ-、その内炭水化物によるカロリ-を60%と指導されているとのことです。食いしん坊の私にはつらい数字ですと述べておられるので、実行中と思われます。
糖質制限食が広がっていることは述べていますが以下のような批判を行っています。
1.糖質制限ダイエットの第一人者桐山秀樹氏が心不全で急死、波紋が広がって いる。
2.極端な糖質制限を長期に続けるリスクを指摘する声は学会などから上がって いる。
3.脳や神経組織などはエネルギ-源として糖しか使えないので総カロリ-の半 分程度の糖摂取は必要。
4.27万人以上のデ-タで、糖質摂取割合の低いグル-プの方が死亡率が高 い。
放射線が専門とはいえ、糖尿病やエネルギ-に関する知識不足勉強不足は驚くばかりです。
糖質摂取割合と死亡率の結果も、内容は精査せず、誰かの書いたものをそのまま写したものと思われます。
一般読者は、専門家か書いたものであると信じてしまうので、このような記述は極めて問題と思います。
更に、中川氏自身、糖質過多のカロリ-制限で糖尿病が悪化しないよう気を付けていただきたいものです。
名古屋・h
糖質制限批判派、「過度な糖質制限 危険」と5月19日日経夕刊9面の「がん社会を診る」のなかで、東京大学病院準教授 中川恵一氏が述べています。
ネットで調べると、中川氏はがん放射線治療の専門家で、日経に上述の「がん社会を診る」を連載していることも書かれています。
高血糖が続くとがんの発症率が高くなることは述べられています。
今回の記事で、中川氏も糖尿病予備軍と診断され、管理栄養士による1600キロカロリ-、その内炭水化物によるカロリ-を60%と指導されているとのことです。食いしん坊の私にはつらい数字ですと述べておられるので、実行中と思われます。
糖質制限食が広がっていることは述べていますが以下のような批判を行っています。
1.糖質制限ダイエットの第一人者桐山秀樹氏が心不全で急死、波紋が広がって いる。
2.極端な糖質制限を長期に続けるリスクを指摘する声は学会などから上がって いる。
3.脳や神経組織などはエネルギ-源として糖しか使えないので総カロリ-の半 分程度の糖摂取は必要。
4.27万人以上のデ-タで、糖質摂取割合の低いグル-プの方が死亡率が高 い。
放射線が専門とはいえ、糖尿病やエネルギ-に関する知識不足勉強不足は驚くばかりです。
糖質摂取割合と死亡率の結果も、内容は精査せず、誰かの書いたものをそのまま写したものと思われます。
一般読者は、専門家か書いたものであると信じてしまうので、このような記述は極めて問題と思います。
更に、中川氏自身、糖質過多のカロリ-制限で糖尿病が悪化しないよう気を付けていただきたいものです。
名古屋・h
やはり資本が絡んでいるのですね。
マーガリンについては、大分前のドイツではヤコボ病との関連があるのでは?と使用禁止になっています。
ニューヨークなども、最近マーガリン、ショートニングが禁止になりました。
日本でも動きはあるのですが、山崎パンなどの資本が根回しされ頓挫しています。
古典医学・古典栄養学がはびこる日本。
自己防衛しかないような気がします。
糖質制限の理論をしっかり体得したいと思います。
マーガリンについては、大分前のドイツではヤコボ病との関連があるのでは?と使用禁止になっています。
ニューヨークなども、最近マーガリン、ショートニングが禁止になりました。
日本でも動きはあるのですが、山崎パンなどの資本が根回しされ頓挫しています。
古典医学・古典栄養学がはびこる日本。
自己防衛しかないような気がします。
糖質制限の理論をしっかり体得したいと思います。
2016/05/20(Fri) 08:46 | URL | 今井 | 【編集】
江部先生、初めまして。
2002年11月に母の重篤な糖尿病(血糖値460mg。最初お医者さんは測定器の故障だと思い、機械を取り替えながら三回計測されました。三台同時に壊れていることは有り得ないので、首を傾げつつも渋々診断)が発覚し、私も体重95kgの肥満体であったため直ちに検査いたしましたところ、HbA1c5.0%、空腹時血糖値91mgながら、糖負荷試験で2時間後200mg超えの立派すぎる耐糖能異常であることが判明、その日を以て食事から炭水化物を完全排除し、以来、身長175cm、体重64kgを維持して50才の今日に至っております。血中のブドウ糖が毒なら、その毒の元を絶てば良い、という素人の単純な発想で始めましたが、先生のブログに出会い、日々確信を深め、決意を新たにしております。さてお伺いしたいのは、糖質制限をすると血管がボロボロになって短命に終わる、という主張についてです。もし仮にそれが本当であったとしても、私は既に糖尿病なので炭水化物を摂るという選択肢はもはや有り得ませんし、高血糖で目は潰れるわ、足は腐るわ、腎臓も破壊されて人工透析になるわ、全身の神経や組織はグズグズに傷むわ、ガン、心筋梗塞、脳梗塞のリスクは途方も無く高まるわ、ついには認知症で人間が人間である所以たる精神を失うわ、等々を勘案いたしますと、今さら米や小麦を食べる気には到底なれません。ですが「短命」と脅されますと、さすがに不安を禁じ得ないのです。一体、この主張は真実でしょうか。先生のお考えをお聞かせください。
2002年11月に母の重篤な糖尿病(血糖値460mg。最初お医者さんは測定器の故障だと思い、機械を取り替えながら三回計測されました。三台同時に壊れていることは有り得ないので、首を傾げつつも渋々診断)が発覚し、私も体重95kgの肥満体であったため直ちに検査いたしましたところ、HbA1c5.0%、空腹時血糖値91mgながら、糖負荷試験で2時間後200mg超えの立派すぎる耐糖能異常であることが判明、その日を以て食事から炭水化物を完全排除し、以来、身長175cm、体重64kgを維持して50才の今日に至っております。血中のブドウ糖が毒なら、その毒の元を絶てば良い、という素人の単純な発想で始めましたが、先生のブログに出会い、日々確信を深め、決意を新たにしております。さてお伺いしたいのは、糖質制限をすると血管がボロボロになって短命に終わる、という主張についてです。もし仮にそれが本当であったとしても、私は既に糖尿病なので炭水化物を摂るという選択肢はもはや有り得ませんし、高血糖で目は潰れるわ、足は腐るわ、腎臓も破壊されて人工透析になるわ、全身の神経や組織はグズグズに傷むわ、ガン、心筋梗塞、脳梗塞のリスクは途方も無く高まるわ、ついには認知症で人間が人間である所以たる精神を失うわ、等々を勘案いたしますと、今さら米や小麦を食べる気には到底なれません。ですが「短命」と脅されますと、さすがに不安を禁じ得ないのです。一体、この主張は真実でしょうか。先生のお考えをお聞かせください。
2016/05/20(Fri) 16:54 | URL | 東京けいてぃー | 【編集】
スケジュールの都合で 2日目からの参加になりましたが,その感想です.
■午前
午前は2つのDebateを聴きました.
1.「糖尿病の第1選択薬はメトホルミンかDPP-4阻害薬か」
メトホルミンである:NTT 東日本札幌病院 吉岡先生
DPP-4阻害薬である:東京女子医科大学 佐倉先生
2.「糖尿病の大血管障害抑制はSGLT2阻害薬(SGLT2i)か従来治療薬か」
SGLT2iである:佐賀大学医学部 野出先生
従来治療薬である:東京医科大学 小田原先生
それぞれの発表は 内容的にも聴きごたえのあるものでした.
Debate-1の方は,座長自らの発言は控えめで,Debatorの追加意見や,会場からの質問に時間を割くなど,非常にFairな運営でした.
しかしDebate-2でそれぞれのDebatorが発表を終えた後のDiscussion,これがひどいものでした.
座長の河盛先生は,ほとんどSGLT2i賛成の野出先生ばかりに発言させ(野出先生も迷惑だったでしょう),しかもそれだけでは生ぬるいと思ったのか,自らの意見開陳を延々とやりました.
河盛:『SGLT2iは腎臓への負荷を軽くする.これが何らかの機序で心不全を防止したかもしれない』
河盛:『心筋にはSGLT2はないが,SGLT2iはSGLT1にも若干の阻害作用がある.これが何らかの効果を生み出している可能性も否定できない』
河盛:『SGLT2は膵臓α細胞にも発現している.これがグルカゴンの分泌を高めているのだが,SGLT2iはこれも防いでいる』
河盛:『SGLT2iの副作用として血中ケトン体濃度の上昇が言われているが,実はケトン体は心筋に対するとても大事な,いわばSafetyなエネルギー源だ.SGLT2iが投与直後にケトン体を増やし,これが心臓を元気づけたのではないか』
『可能性を否定できない』ものまで動員して,なりふり構わずSGLT2iを持ち上げていましたが,最後の発言は傑作ですね.河盛先生,あなたは 『糖質制限食はケトン体が上昇するから危険だ』と言い続けてきたではないですか. SGLT2iがケトン体を増やして心臓を力づけるというのであれば,糖質制限食は心疾患予防になるのですね. これほどの手のひら返しを行って,なお平然としていられるその神経には脱帽です.
Discussionの最後の方で,アリバイ作りのためか小田原先生にも意見を求め,これで辻褄を合わせたつもりなのでしょうが,そこで時間切れとなり,会場からの質問はまったくシャットアウト.これではまるで河盛先生の独演会.こうなると発表者だけでなく,今後は 座長のCOIも事前に開示すべきでしょうね.
■午後
シンポジウム17「食事療法の新たなエビデンスを求めて」を聴いてみました.
座長が 石田均/宇都宮一典 両先生で,Speaker トップバッターが 能登洋先生,2番手が 府立医大 福井道明先生ときては,これはもう いつもの 糖質制限ネガキャンに終始するのだろうなと 予想したのですが,意外にも内容は穏やかなものでした. もちろん お二方も「糖質制限賛成」とまでは言わないのですが,かなりトーンダウンした印象です.
例えば;
能登先生は,「PlosOneに発表した,[糖質制限で死亡リスクが上がる]というメタ解析結果は,観察研究が多いのでエビデンスレベルは低い」と認めていました.
また,2~3年前までは 二言目には 『肉と油でギトギトの糖質制限食』と言っていた 福井先生が,今回は
『糖質制限食を実行すると,必然的に 高蛋白・高脂質になる. しかし,実行するのであれば,蛋白質と脂質の中身が問題. 動物性蛋白・脂肪に偏るとリスクは増大するが,植物性蛋白・脂肪を取り入れれば,むしろメリットが大きい』と,これがあの福井先生かと耳を疑う変身ぶりでした.
ついに糖尿病学会も,そっと方向転換するための助走を始めたのかな?と感じました.
しかし、もしそうしたら 梯子を外された人は怒るでしょうね.
以上
■午前
午前は2つのDebateを聴きました.
1.「糖尿病の第1選択薬はメトホルミンかDPP-4阻害薬か」
メトホルミンである:NTT 東日本札幌病院 吉岡先生
DPP-4阻害薬である:東京女子医科大学 佐倉先生
2.「糖尿病の大血管障害抑制はSGLT2阻害薬(SGLT2i)か従来治療薬か」
SGLT2iである:佐賀大学医学部 野出先生
従来治療薬である:東京医科大学 小田原先生
それぞれの発表は 内容的にも聴きごたえのあるものでした.
Debate-1の方は,座長自らの発言は控えめで,Debatorの追加意見や,会場からの質問に時間を割くなど,非常にFairな運営でした.
しかしDebate-2でそれぞれのDebatorが発表を終えた後のDiscussion,これがひどいものでした.
座長の河盛先生は,ほとんどSGLT2i賛成の野出先生ばかりに発言させ(野出先生も迷惑だったでしょう),しかもそれだけでは生ぬるいと思ったのか,自らの意見開陳を延々とやりました.
河盛:『SGLT2iは腎臓への負荷を軽くする.これが何らかの機序で心不全を防止したかもしれない』
河盛:『心筋にはSGLT2はないが,SGLT2iはSGLT1にも若干の阻害作用がある.これが何らかの効果を生み出している可能性も否定できない』
河盛:『SGLT2は膵臓α細胞にも発現している.これがグルカゴンの分泌を高めているのだが,SGLT2iはこれも防いでいる』
河盛:『SGLT2iの副作用として血中ケトン体濃度の上昇が言われているが,実はケトン体は心筋に対するとても大事な,いわばSafetyなエネルギー源だ.SGLT2iが投与直後にケトン体を増やし,これが心臓を元気づけたのではないか』
『可能性を否定できない』ものまで動員して,なりふり構わずSGLT2iを持ち上げていましたが,最後の発言は傑作ですね.河盛先生,あなたは 『糖質制限食はケトン体が上昇するから危険だ』と言い続けてきたではないですか. SGLT2iがケトン体を増やして心臓を力づけるというのであれば,糖質制限食は心疾患予防になるのですね. これほどの手のひら返しを行って,なお平然としていられるその神経には脱帽です.
Discussionの最後の方で,アリバイ作りのためか小田原先生にも意見を求め,これで辻褄を合わせたつもりなのでしょうが,そこで時間切れとなり,会場からの質問はまったくシャットアウト.これではまるで河盛先生の独演会.こうなると発表者だけでなく,今後は 座長のCOIも事前に開示すべきでしょうね.
■午後
シンポジウム17「食事療法の新たなエビデンスを求めて」を聴いてみました.
座長が 石田均/宇都宮一典 両先生で,Speaker トップバッターが 能登洋先生,2番手が 府立医大 福井道明先生ときては,これはもう いつもの 糖質制限ネガキャンに終始するのだろうなと 予想したのですが,意外にも内容は穏やかなものでした. もちろん お二方も「糖質制限賛成」とまでは言わないのですが,かなりトーンダウンした印象です.
例えば;
能登先生は,「PlosOneに発表した,[糖質制限で死亡リスクが上がる]というメタ解析結果は,観察研究が多いのでエビデンスレベルは低い」と認めていました.
また,2~3年前までは 二言目には 『肉と油でギトギトの糖質制限食』と言っていた 福井先生が,今回は
『糖質制限食を実行すると,必然的に 高蛋白・高脂質になる. しかし,実行するのであれば,蛋白質と脂質の中身が問題. 動物性蛋白・脂肪に偏るとリスクは増大するが,植物性蛋白・脂肪を取り入れれば,むしろメリットが大きい』と,これがあの福井先生かと耳を疑う変身ぶりでした.
ついに糖尿病学会も,そっと方向転換するための助走を始めたのかな?と感じました.
しかし、もしそうしたら 梯子を外された人は怒るでしょうね.
以上
2016/05/20(Fri) 17:50 | URL | しらねのぞるば | 【編集】
名古屋・h さん
中川恵一先生は放射線科の専門医で、がんにもお詳しいです。
私も中川恵一先生の本を3冊くらい持ってます。
新聞の連載の時も毎回読んでました。
そっち方面では中川恵一先生のことを尊敬しているのですが、
今回は残念ですね。
私も、折角の優れた人材が、カロリー制限高糖質食で、合併症を誘発しないようにお祈りするのみです。
中川恵一先生は放射線科の専門医で、がんにもお詳しいです。
私も中川恵一先生の本を3冊くらい持ってます。
新聞の連載の時も毎回読んでました。
そっち方面では中川恵一先生のことを尊敬しているのですが、
今回は残念ですね。
私も、折角の優れた人材が、カロリー制限高糖質食で、合併症を誘発しないようにお祈りするのみです。
2016/05/20(Fri) 20:55 | URL | ドクター江部 | 【編集】
東京けいてぃー さん
「糖質制限をすると血管がボロボロになって短命に終わる」
そのようなエビデンスはありませんのでご安心ください。
イヌイットが伝統的な食生活を送っていたころ、
糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞が極めて少なかったというエビデンスがあります。
即ち糖尿病及び動脈硬化疾患が極めて少なかったのです。
伝統的食生活(1855年の調査)を保っていたころのイヌイットの3大栄養素摂取比率は、
「たんぱく質:47.1%、炭水化物:7.4%、脂質:45.5%」でした。
1976年の調査では、「たんぱく質:23%、炭水化物:38%、脂質:39%」になります。
デンマークの研究者のダイアベルグらは、63年から67年に、
グリーンランドのイヌイット、デンマーク本土在住のイヌイット、デンマークの白人の3者の死亡率などを比較検討して
1971年に報告しました。
その結果、グリーンランドのイヌイットでは、デンマークの白人に比べて心筋梗塞が極めて少ないことがわかりました。
2012年04月09日 (月)の本ブログ記事
「飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は関係がない」
もご参照いただけば幸いです。
「糖質制限をすると血管がボロボロになって短命に終わる」
そのようなエビデンスはありませんのでご安心ください。
イヌイットが伝統的な食生活を送っていたころ、
糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞が極めて少なかったというエビデンスがあります。
即ち糖尿病及び動脈硬化疾患が極めて少なかったのです。
伝統的食生活(1855年の調査)を保っていたころのイヌイットの3大栄養素摂取比率は、
「たんぱく質:47.1%、炭水化物:7.4%、脂質:45.5%」でした。
1976年の調査では、「たんぱく質:23%、炭水化物:38%、脂質:39%」になります。
デンマークの研究者のダイアベルグらは、63年から67年に、
グリーンランドのイヌイット、デンマーク本土在住のイヌイット、デンマークの白人の3者の死亡率などを比較検討して
1971年に報告しました。
その結果、グリーンランドのイヌイットでは、デンマークの白人に比べて心筋梗塞が極めて少ないことがわかりました。
2012年04月09日 (月)の本ブログ記事
「飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は関係がない」
もご参照いただけば幸いです。
2016/05/20(Fri) 21:15 | URL | ドクター江部 | 【編集】
しらねのぞるば さん
とても興味深い情報をありがとうございます。
これは是非とも記事にしたいと思います。
とても興味深い情報をありがとうございます。
これは是非とも記事にしたいと思います。
2016/05/20(Fri) 21:16 | URL | ドクター江部 | 【編集】
5/20に投稿しました「やはり資本が絡んでいるのですね」の中で、マーガリンについて、ヤコブ病(ヤコボと書いてしまいました。)ではなくクロー病の間違いでした。失礼しました。
マーガリンなどのトランス脂肪酸、人工的に水素を付加して作ります。自然界にもともと存在していない物質で、19世紀末ごろ、ナポレオン3世がバターの代替品(不足のため)として募集をかけたものだそうです。
店頭で見かけるマーガリン・ショートニングなどの成分表には植物由来などとなっているようですが、植物油は常温で液体ですが、マーガリン・ショートニングは固まっています。
又、日本ではトランス脂肪酸の表記は義務付けられていないそうです。
西ドイツのある地域で、マーガリンの販売開始時期と、クローン病(腸の慢性炎症疾患)患者の出現時期が一致したそうで、ドイツでは現在トランス脂肪酸を含むマーガリンを製造禁止に指定しているそうです。
心臓病の死亡率に関しても大きく関与しているそうで、デンマーク・オランダでは発売禁止だそうです。
トランス脂肪酸のことなど、2000年末に知人から聞き、バターを主流にしました。
ですが、サンドイッチを作る時はマーガリンが便利でした。糖質制限を始めてから、サンドイッチを作ることもないので、今年の2月、家にある買い溜めしておいた物も含めマーガリンをすべて処分しました。
5/7、東京・菊川の「みんなのパン」屋さんの学習会の折、購入したふすまパンなどをサンドイッチの薄さにスライスしていただき、久しぶりにサンドイッチを作りました。バターを常温で放置し、使いやすい柔らかさにしました。
資本が絡んでくることは、これからもっとリアルになっていくと思います。
農業委員会などは「銀シャリ・米食」を推進しますし、医師会等は「保険点数・薬価点数」ですね?
メディアは国民皆保制度の破綻を叫びますし。
「腹切り日本」がトレードマークのはずなのに、資本のご機嫌を窺いながら・・・・・。
我が道を行く・・・・・精神で糖質制限を続けます。
これからも宜しくお願い申し上げます。
糖質制限を始めて、頭の切れ味も良くなったような・・・・・(笑)(^-^;
マーガリンなどのトランス脂肪酸、人工的に水素を付加して作ります。自然界にもともと存在していない物質で、19世紀末ごろ、ナポレオン3世がバターの代替品(不足のため)として募集をかけたものだそうです。
店頭で見かけるマーガリン・ショートニングなどの成分表には植物由来などとなっているようですが、植物油は常温で液体ですが、マーガリン・ショートニングは固まっています。
又、日本ではトランス脂肪酸の表記は義務付けられていないそうです。
西ドイツのある地域で、マーガリンの販売開始時期と、クローン病(腸の慢性炎症疾患)患者の出現時期が一致したそうで、ドイツでは現在トランス脂肪酸を含むマーガリンを製造禁止に指定しているそうです。
心臓病の死亡率に関しても大きく関与しているそうで、デンマーク・オランダでは発売禁止だそうです。
トランス脂肪酸のことなど、2000年末に知人から聞き、バターを主流にしました。
ですが、サンドイッチを作る時はマーガリンが便利でした。糖質制限を始めてから、サンドイッチを作ることもないので、今年の2月、家にある買い溜めしておいた物も含めマーガリンをすべて処分しました。
5/7、東京・菊川の「みんなのパン」屋さんの学習会の折、購入したふすまパンなどをサンドイッチの薄さにスライスしていただき、久しぶりにサンドイッチを作りました。バターを常温で放置し、使いやすい柔らかさにしました。
資本が絡んでくることは、これからもっとリアルになっていくと思います。
農業委員会などは「銀シャリ・米食」を推進しますし、医師会等は「保険点数・薬価点数」ですね?
メディアは国民皆保制度の破綻を叫びますし。
「腹切り日本」がトレードマークのはずなのに、資本のご機嫌を窺いながら・・・・・。
我が道を行く・・・・・精神で糖質制限を続けます。
これからも宜しくお願い申し上げます。
糖質制限を始めて、頭の切れ味も良くなったような・・・・・(笑)(^-^;
2016/05/21(Sat) 23:04 | URL | 今井 | 【編集】
ご多忙のところ、早速のご回答ありがとうございます。
イヌイットの伝統食である鯨や海獣類の脂肪酸構成がEPAやDHA豊富ゆえ「飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は関係がない」 で念押し、と言う訳ですね。
いずれにいたしましても、糖質制限食にたとえどんな副作用があろうとも、糖質食の副作用がおよそ人体に起こりうる最悪の事態のオンパレードであることを鑑みれば、それらの害の合計を上回ることはありそうにないと感じられますので、14年目に入りましたが、食物繊維以外の炭水化物排除を今後も継続してゆこうと思います。三大栄養素の炭水化物を食物繊維と解釈すれば、矛盾解決、義理も立つ、ですからネ。
イヌイットの伝統食である鯨や海獣類の脂肪酸構成がEPAやDHA豊富ゆえ「飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は関係がない」 で念押し、と言う訳ですね。
いずれにいたしましても、糖質制限食にたとえどんな副作用があろうとも、糖質食の副作用がおよそ人体に起こりうる最悪の事態のオンパレードであることを鑑みれば、それらの害の合計を上回ることはありそうにないと感じられますので、14年目に入りましたが、食物繊維以外の炭水化物排除を今後も継続してゆこうと思います。三大栄養素の炭水化物を食物繊維と解釈すれば、矛盾解決、義理も立つ、ですからネ。
2016/05/24(Tue) 12:32 | URL | 東京けいてぃー | 【編集】
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