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<糖質制限食に関するお知らせ・お願い・ご注意など> 2016年4月
【患者の皆様、ブログ・本の読者の皆様へのお願い】

皆様から、直接、様々な内容(ご質問、ご相談、近況報告など)のお手紙やFAXを頂くことが多々あるのですが、返事を出すことは困難であることをご理解頂きたいと思います。

糖質制限食や病状に関するご質問についてですが、高雄病院や江部診療所に受診された患者さんに対しては、診察室で、個別に説明し対応させて頂いております。

お手紙やFAXでの個人的なご相談は、どうかご遠慮頂きますよう重ねてお願い申し上げます。



ブログ読者の皆さんの質問に関しては、本ブログ内にて、糖質制限食に詳しい医師として、ボランティアで回答させていただいています。

ブログでの回答に関しては、診察をしておりませんので、責任も取れません。

私の回答は、あくまでも一般論としての参考意見とお考え頂けば幸いです。

また、ブログ記事や本に関しても同様に、糖質制限食に関する一般論としての参考意見とお考え下さい。

従いまして、読者の皆さんが私の参考意見を読まれて、どのように利用されるかは、自己責任でよろしくお願い申し上げます。m(_ _)m

そして読者の皆さんからもご意見いただきましたが、普通のお医者さんに相談可能な個人的な内容の質問は、ご自分の主治医にご相談頂けば助かります。

またネットで簡単に検索可能なことは、ご自分でお調べください。

糖質制限食と関わりがないと判断した質問にはお答えできない場合もありますので、ご了承ください。m(_ _)m

普通のお医者さんでは解答不能の、糖質制限食に関わる質問は、何でもどんどんしていただけば嬉しいです。 (^_^)

掲載OKの質問に関して、読者の皆さんに共有していただきたい情報の場合は、ブログ本文記事にて、できるだけ順番にお答えしたいと思います。

質問によっては、コメント欄でお早めにお答えする場合もありますのでご了承ください。

質問が増えてきております。

糖質制限食に関わりのある全ての質問に、本文かコメントでお答えするようできるだけ努力はしていますが、できないときはご容赦願います。m(_ _)m



【糖質制限食を実践される時のご注意】

糖質制限食実践によりリアルタイムに血糖値が改善します。

このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、減薬しないと低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。

一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。

内服薬やインスリン注射なしの糖尿人が糖質制限食を実践すると、食後高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。

血糖値が正常範囲である程度下がると、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロール(脂肪の分解物)などから、ブドウ糖を作るからです。

これを糖新生といいます。

診断基準を満たす膵炎がある場合、肝硬変の場合、そして長鎖脂肪酸代謝異常症は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。

糖質制限食は相対的に高脂肪食になるので、診断基準を満たしている膵炎の患者さんには適応とならないのです。

進行した肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。

長鎖脂肪酸代謝異常症では、肉や魚などに含まれる長鎖脂肪酸が上手く利用できないので、適応となりません。

腎機能に関して、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」において、eGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、たんぱく質は過剰な摂取をしないという表現となっていて、制限という記載はなしです。

従いまして、糖尿病腎症第3期でも、eGFR60ml/分以上なら、糖質制限食OKです。

また、米国糖尿病学会(ADA)は

Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版

において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。

根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。

今後は、糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応することとなります。


なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。

また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。

糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。



【糖質制限食とは】

米国糖尿病協会(ADA)の患者教育用のテキストブックLife With Diabetes(2004年版)には、以下の記載があります。

「摂取後直接血糖に影響を与えるのは糖質のみである。
糖質は速やかに吸収され、直接100%血糖に変わり、ほぼ120分以内に吸収は終了する。
蛋白質・脂質は、摂取後、直接血糖に影響を及ぼすことはない。
『炭水化物・タンパク質・脂肪はカロリーを含有している。
炭水化物だけが、血糖値に直接影響を及ぼす。』」


これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。 

1997年版のLife With Diabetes(ADA刊行)では、

「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」

という記載がありましたが、2004年版以降は変更されています。

このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが直接、血糖値を上昇させます。

従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。

脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。

タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。

現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。

食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。

また一日における、食前・食後・空腹時など血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。

そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。

1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。

炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。

一方、和牛サーロインステーキ(脂身つき)を200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。 

なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。

糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。

簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。

抜く必要がある主食とは 、米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。

3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。

一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。

従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。

糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。


なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。

日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド2014-2015」の

男性1400~2000kcal
女性1200~1800kcal

ほど厳しいカロリー制限は必要ありませんが、

「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

推定エネルギー必要量(一日あたり)
              男性                  女性
15-17才        2500 2850 3150           2050 2300 2550kcal
18-29才        2300 2650  3050          1650  1950   2200
30-49才        2300 2650  3050            1750  2000  2300
50-69才        2100 2450  2800           1650  1900 2200 
70才          1850 2200  2500            1500  1750 2000

身体活動レベル    低い 普通 高い         低い  普通  高い

くらいが目安です。


そして2013年に糖尿病食事療法に関して画期的な変化がありました。

米国糖尿病学会が、
2013年10月発表の『栄養療法に関する声明』において、全ての糖尿病患者に適した唯一無二の治療食は存在しないと明記したのです。

これはそのまま、1969年の食品交換表第2版以降一貫して、糖尿病治療食として、唯一無二の「カロリー制限・高糖質食」を推奨し続けている日本糖尿病学会への痛烈な批判となっています。

さらに、米国糖尿病学会は『栄養療法に関する声明2013』において地中海食、ベジタリアン食、DASH食、低脂質食などと共に
「糖質制限食」も正式に受容しました。

このことは糖質制限食を推進する私達にとって、大変大きな追い風となりました。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
インターネットで見つけた記事です。
参考までにお知らせいたします。

“糖質制限ダイエット”って結局、効果あるの?試した315人の結果は…
http://joshi-spa.jp/492166

話題の糖質オフダイエット、経験者は6人に1人


 総合マーケティング支援を行なう株式会社ネオマーケティングは、全国の20~50代の女性1880名を対象に「食事制限ダイエットに関する調査」を行いました。

 まず、「どのようなダイエットに取り組んできたか」について。全体の16.3%(315人)、約6人に1人が最近話題の糖質オフ(制限)ダイエットをしたことがあると回答しています。全体の3%は、三食で糖質を完全に排除する「スーパー糖質制限」を経験していることがわかりました。
2016/04/09(Sat) 20:52 | URL | ぐうたら糖質制限 | 【編集
人類最強の糖質制限論読みました
去年の6月から糖質制限を始め、今ではほぼスーパー糖質制限中です。体重は10キロ減り、頭の回転も良くなり、良いことばかり。こちらの本はわかりやすくて良かったです。おだやかな江部先生の人柄がでていると感じました。
二つの大きな病気をかかえているわたしですが、糖質制限は体にあっているようで、うれしい限りです。
2016/04/09(Sat) 22:57 | URL | しろみけ | 【編集
Re: タイトルなし
ぐうたら糖質制限 さん

情報をありがとうございます。

この記事で、「糖質制限ダイエット」を実践したと
思いこんでいる人の半数以上が、実際には「糖質制限+カロリー制限」となってしまっていて、
体調不良を訴えています。

「集中力がなくなった、頭がぼーっとする、無気力になった、イライラしやすくなった、肌がぼろぼろになった、生理不順になった」

これらは、全て、摂取カロリー不足による症状であり、糖質制限のせいではありません。

私の本などをしっかり読んで頂き、きっちり糖質制限食を行えば、
集中力がでて、頭がすっきりして、気力は充実し、心は穏やかとなり、肌はしっとりして、生理も順調です。




2016/04/10(Sun) 19:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 人類最強の糖質制限論読みました
しろみけ さん

拙著のご購入、ありがとうございます。

また体調も良好で良かったです。
2016/04/10(Sun) 19:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
先生
糖質制限中に糖質を食べた時に食後なのに空腹時のような吐き気があります。
これは何を意味してるのでしょうか?
すごい不快感で糖質がどれだけ影響してるかがわかりましたが、どうして起こるのかなぁと思いまして。

2016/04/10(Sun) 19:52 | URL | ぷりん | 【編集
Re: タイトルなし
ぷりん さん

どうして起こるのかはわかりませんが、

糖質に対する拒否反応のように思います。

要するに、糖質などいらないという身体の意思表示のように思えます。
2016/04/10(Sun) 22:49 | URL | ドクター江部 | 【編集
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