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絶食、糖質制限食、ケトン体、インフラマソーム阻害・・・炎症の抑制
こんにちは。

たがしゅう さんとYamamoto_ma  さんから
インフラマソームに関するコメントをいただきました。
ありがとうございます。
東京銀座クリニックの福田先生のサイト、大変参考になります。

たがしゅう先生は、神経内科医なので、
私よりはミトコンドリアやサーチュインに関して詳しいと思います。

2016/2/4(木)の本ブログ記事
「炎症シグナルの指揮者インフラマソームとケトン体。」で紹介した論文
および、たがしゅう先生のコメントにある今回の論文
の結果をを合わせて考えてみると


『ケトン体の一種であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が炎症の要となるインフラマソームを直接阻害することで炎症を抑制する可能性が示唆された』


『絶食で過剰な炎症産生源となったインフラマソームの働きを抑制するのは、
ケトン体がサーチュインを介してミトコンドリア機能を改善させる事によって起こるのではないか』

となります。

①②に関して、
たがしゅう先生のご考察に私も賛成です。

私自身は、34歳のときに本断食を行い、
その後12~13回、甲田光雄先生のすまし汁断食を行いました。

古来から断食(絶食)はなぜかわからないけど、
様々な病気や症状に治療効果があるという事が知られていました。
だからこそ私も十数回も断食したわけです。

絶食療法(断食)の効果の謎だった部分が、
ケトン体の存在により、一定解明されてきたことは極めて興味深いです。
たがしゅう先生、ご指摘ありがとうございます。


そしてスーパー糖質制限食やケトン食なら
絶食療法(断食)をしなくても
血中ケトン体は高値となるので、
①と②の効果が期待できます。

ケトン体高値が、
インフラマソームの関与する慢性炎症を抑制することにより、
感染症・糖尿病・動脈硬化・自己免疫疾患・虚血傷害など、様々な疾患の改善に、
役に立つ可能性があります。

スーパー糖質制限食で、糖尿病や肥満だけではなく、アレルギー疾患など含めて様々な生活習慣病が改善する理由の一つと言えると思います。


江部康二



【16/02/04 たがしゅう
謎が解き明かされてゆく
江部先生

いつもお世話になります。
興味深い情報を有難うございます。

インフラマソームと言えば、私も最近次のような論文を読みました。

Traba J, et al. Fasting and refeeding differentially regulate NLRP3 inflammasome activation in human subjects. J Clin Invest. 2015 Nov 3;2015. pii: 83260. doi: 10.1172/JCI83260.

背景:
NLRP3インフラマソームの活性化は代謝機能障害と関連があり、

間欠的絶食はNLRP3インフラマソーム関連疾患の臨床症状発現を改善させる事が示されてきている。

傷害関連分子パターンとしての機能があるミトコンドリアの混乱がNLRP3インフラマソームの活性化を悪化させるので、

我々は絶食がサーチュインに介在されるミトコンドリア完全性の増大を介してインフラマソームの活性化を鈍化させるかどうかを調査した。

方法:
我々は19名の健常ボランティアに対し臨床研究を行った。

それぞれのボランティアに24時間の絶食を行い、その後カロリーが固定された食事を与えた。

血液検査を絶食中と絶食後の食事を与えた状態とで行い、NLRP3インフラマソームについて解析を行った。

さらにサーチュインアクチベーター、ニコチンアミドリボシドのNLRP3インフラマソームに対する影響を評価するために追加で8名の健常ボランティアを登録した。

結果:
絶食/再摂食研究では、個々人は絶食期には再摂食期に比べてNLRP3インフラマソームの活性化が少なくなる事が判明した。

ヒトマクロファージの系列では、ミトコンドリアに富むサーチュイン脱アセチル化酵素、SIRT3の欠失がミトコンドリアでの活性酸素種の過剰産生を介してNLRP3インフラマソームの活性化を増加させた。

さらに遺伝的および薬理学的にSIRT3の活性化は健康ボランティアや対象者の絶食中ではなく


再摂食時に集められた検体から抽出された培養細胞や白血球でのミトコンドリア機能の向上と並行してNLRP3活性を鈍化させた。

結論:
まとめると我々のデータは、栄養水準がNLRP3インフラマソームを制御し、それは部分的にSIRT3を介したミトコンドリアの恒常性制御を通じて行われている事を示している。

さらにこれらの結果は脱アセチル化酵素に依存するインフラマソームの減衰がヒトの疾患を標的にする事に従うかもしれない。



ケトン体にはミトコンドリア機能改善作用がある事も示されていますので
(Stafstrom CE, Rho JM. The ketogenic diet as a treatment paradigm for diverse neurological disorders. Front Pharmacol. 2012;3:59. Epub 2012 Apr 9. )

これらの話を総合しますと、

「絶食で過剰な炎症産生源となったインフラマソームの働きを抑制するのは、
ケトン体がサーチュインを介してミトコンドリア機能を改善させる事によって起こるのではないか」

と理解を深める事ができます。

そうであるならば、同じくケトン体を産生できるスーパー糖質制限食にも同様の効果が期待できる事は容易に理解できます。


古来から断食(絶食)はなぜかわからないけど効果があるという事は人から人へと伝わり、

時代の流れの中で脈々と受け継がれてきました。

その謎だった部分が、糖質制限の理論を通じて解き明かされていく様子には非常に興味深いものがありますね。】


【16/02/05 Yamamoto_ma
参考まで・・
江部先生

インフラマソーム関連で、
東京銀座クリニックの福田先生が丁寧に記事にされておりましたので紹介いたします。

「471)糖尿病とインフラマソームとケトン食」
http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/75825570b06b5aa215c208932221cc



コメント
アスリートの糖質制限
江部先生

初めまして。私は大学の体育会アメリカンフットボール部でトレーナーの栄養班を担当しています。
江部先生にお聞きしたいことがあり失礼を承知でコメントを投稿させていただきます。
糖質制限はアスリート、特に多くのエネルギーを必要としある程度の体格、重量が必要となるアメリカンフットボールの選手が行っても効果はあるのでしょうか。
2016/02/06(Sat) 19:05 | URL | NTTR | 【編集
さらなる糖質制限の発展へ
江部先生

記事にまでして頂き有難うございます。

糖質制限と出会ったおかげで、私は糖質制限と断食(絶食療法)がケトン体の有効利用という点で一本の線でつながるという事を理解する事ができました。

今回紹介した論文のように、たとえ糖質制限に関して直接の言及がなくとも、

絶食療法に関する論文をみても糖質制限への理解を深める事ができます。

また糖質制限の臨床効果を実感を持って知っているからこそ、こうした論文の考察を興味深く読む事ができます。

あるいは、糖質の中毒性について学ぼうと思えば、禁煙関係の論文を読むと理解が深まります。

なぜならば糖質もタバコに含まれるニコチンも、脳の側坐核を中心とした報酬経路をドーパミンという神経伝達物質を介して刺激するという共通点があるからです。

たとえば、禁煙継続の鍵は1年以上継続できるかどうかであるという事を疫学的に実証した研究がありますが(Garcia-Rodriguez O, et al. Probability and predictors of relapse to smoking: results of the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC). Drug Alcohol Depend. 2013 Oct 1;132(3):479-85. PMID: 23570817)、

この事は理論的な理解なくして高糖質食から糖質制限食へ移行する事の難しさを示唆していると思います。

糖質の中毒性に関して研究された論文は見かけませんが、喫煙の中毒性に関して研究された論文は他にも数多くあります。そこから学べることは多いです。

そういう意味では、糖質制限がいろいろな分野の話との架け橋となり、既存の医学的事実を見直す大きなきっかけを与えてくれていると思います。

私も糖質制限を知らなければ、おそらく絶食療法の論文や禁煙関係の論文など読もうとすら思わなかったことでしょう。

糖質制限がよいという結論は、多くの実践者が知るところでしょうけれど、

その理論的な裏付けが高まれば高まるほど、実践者にとってさらなる安心を与え、

また一人の人間ができる事には限りがありますが、各分野の専門家がそれぞれの分野の視点からの考察を加えれば、

今までには全くなかった別の視点が見えてくるようになり、さらなる糖質制限の発展へとつながるに違いありません。

そのためにも理論的な裏付けが増える事は大事ですね。今後も先生のブログで勉強させて頂きながら、

私自身の視点からも引き続き考察を続けていきたいと思います。

今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
2016/02/06(Sat) 19:34 | URL | たがしゅう | 【編集
帯状疱疹治療中
初めてコメントさせて頂きます。
昨年7月頃にMEC食ダイエットを開始し、いろいろ調べていたら先生のブログにたどり着き、父・祖母が糖尿で、私自身も肥満体質なのでMEC食に江部先生の糖質制限食を取り入れつつ楽しく毎日低糖質食を実践しております。
先日左胸部の肋骨(丁度ブラジャーが当たる位置の骨)が急に痛くなり、覚えがないのに骨折でもしたのかと思っていたのですが、その4-5日後頃に左の胸の下に汗疹のような湿疹ができ、さらにその3-4日後に痛む肋骨沿いの左背部に痒みを伴う発疹ができました。
皮膚科受診し帯状疱疹と診断され、内服と塗り薬が処方されました。
食事の事も消化の良いうどんや柔らかいご飯などを摂るようにと指示がありましたが、うどんや白米を食べる気になれません。
食欲はあり、発熱もひどい痛みもない初期症状なのですが、治療中の食事について、摂取したほうが良い物や控えたほうが良い物などありましたら、お忙しいとは思いますがご教授頂けると幸いです。
2016/02/06(Sat) 21:45 | URL | しぃちゃん | 【編集
胃腸炎時の食事
江部先生、じょんさまへ
寒いですね。私の場合、あまり風邪で寝込むことはないのですが、お腹を壊した時など、ダイショーのとろとろ湯豆腐用だしの素」を使っています。スープに少し糖質が入りますが、あとはお豆腐だけです。
大腸検査の前の晩の食事にも使えますよ。
2016/02/07(Sun) 11:12 | URL | 中年サムライ | 【編集
Re: アスリートの糖質制限
NTTR さん

まず私はアメリカンフットボール選手の栄養指導をしたことがありません。
それで、以下はあくまでも理論面からの参考意見として頂けば幸いです。

アスリートが糖質制限食を導入すると「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム」が活性化するので、
通常の運動強度における持久力は向上します。
筋力も、糖質制限食はたんぱく質摂取が多いので、維持できますが、
筋力アップには少量の糖質があったほうがいいようです。
最大強度の運動だけは普通食がよいようです。


テニスのジョコビッチ選手の食事も参考になると思います。
小麦なしで糖質制限食的ですが、玄米など少量の糖質は摂取しています。

2015年01月25日 (日)の本ブログ記事
「アスリートと糖質制限食」
をご参照いただけば幸いです。

以前はボクシングは向かないかと思っていましたが、3階級制覇世界チャンピオンの井岡選手も
2015/12/31の防衛戦は、糖質制限食でした。

2016年01月01日 (金)の本ブログ記事
「井岡一翔選手、糖質制限食実践で、世界戦TKO勝利!!」
をご参照いただけば幸いです。
2016/02/07(Sun) 12:16 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: さらなる糖質制限の発展へ
たがしゅう さん

コメントをありがとうございます。
全く同感です。
2016/02/07(Sun) 12:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 帯状疱疹治療中
しぃちゃん 様

帯状疱疹でも、普通に糖質制限食でOKです。
糖質制限食なら血流代謝がよいので治りも早いと思います。
2016/02/07(Sun) 12:20 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 胃腸炎時の食事
中年サムライ さん

情報をありがとうございます。
2016/02/07(Sun) 12:21 | URL | ドクター江部 | 【編集
中年サムライさん
情報をいただき、ありがとうございます。
糖質制限でも、いろいろ食べることができることを江部先生、中年サムライさんに教わりました。楽しみながら続けることが大切と思います。
2016/02/07(Sun) 17:43 | URL | じょん | 【編集
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