日本と欧米の糖尿病治療の厳しい現状。NHK文化センター京都講演のご報告。
こんばんは。

2016/1/30(土)
016年1月30日(土) 15:00~17:00
NHK文化センター京都(075-254-8701)

『美味しく楽しく健康 に!糖質制限食のすすめ』
~糖質制限食で治す糖尿病・メタボ・生活習慣病~

と題しての講演会、おかげさまで76名の参加者で満員御礼の盛況でした。

ブログ読者の皆さんには、講演会へのご参加、いつもありがとうございます。

講演では、現行の日本の糖尿病治療「カロリー制限高糖質食+薬物療法」では、『食後高血糖』と『平均血糖変動幅増大』が防げないので、合併症予防は理論的に不可能であることを強調しました。

<日本の糖尿病治療の現状>
結局、糖尿病が元で、毎年新たに、人工透析16000人、失明3000人、足切断3000人発症という厳しい現実を前にしては、いくら日本糖尿病学会が、「日本の糖尿病治療は世界最高水準」などと強調しても空しく響くだけです。

こんなことは、言いたくはないのですが、敢えて言わせて貰います。

「カロリー制限高糖質食」は、「合併症製造食」あるいは「慢性殺人食」としかいいようがありません。

日本の糖尿病治療の現状を憂えつつ、家に帰って、欧米の糖尿病治療の現況はどうなのかと文献を検討してみました。

そうすると、欧米の糖尿病治療の現実も極めて厳しいものであることが判明しました。

<欧米の糖尿病治療の現状>
「2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずか」と言う結論の
RCT研究論文のメタ解析報告が、
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌(BMJ誌)
2011年7月30日号に掲載されていたのです。

フランスLyon第一大学のRemy Boussageon氏らの報告です。

Medline、Embase、コクランレビューに1950年から2010年7月までに登録された無作為化試験(RCT)の中から、厳しい条件を満たした研究を選出しました。

その結果以下の13件の研究が残りました。

UGDP(phenoformin、tolbutamide、insulinの3件)、Kumamoto、Veteran Affairs Feasibility study、
UKPDS(33と34の2件)、PROactive、Dargieらの2007年の研究、ACCORD、ADVANCE、VADT、HOME。

これら13件の研究をメタ解析したのがこの論文です。(☆)

この論文の結論は

「2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずか、低血糖リスクに相殺される程度」

ということです。

2型糖尿病患者に対して厳格な血糖管理を行っても、全死因死亡、心血管死亡リスクの低減効果はあったとしてもわずかで、重症低血糖リスクは2倍以上になることが、明らかとなっています。

13の厳選された信頼度の高いRCT論文のメタ解析ですので、エビデンスレベルは最高ランクであり、客観的・科学的・数量的・総括的な評価を目指した論文と言えます。

今回のメタ解析の結果、厳格な血糖管理の利益はあったとしてもわずかで、重症低血糖がもたらす害により相殺される程度であることが示唆されました。

死亡に対する影響も、「全死因死亡リスクは9%低下または19%上昇」「心血管死亡リスクは14%低下または43%上昇」という可能性が残るということでした。

つまり、厳格血糖管理群で、かえって死亡リスクが高まる可能性も充分あり得るという、厳しい結論です。(=_=;)  

2008年報告のACCORD試験(今回のBMJ誌のメタ解析にも選ばれています)では、厳格管理群の総死亡率が標準治療群より有意に上昇し、物議をかもしたのは記憶に新しいところです

ACCORD試験の結果は、

「糖質を摂取しながら、厳格に糖尿病薬物治療を行えばかえって死亡リスクが高まった」

という恐るべき結論です。

そして、今回のBMJ誌の論文でも、糖質を摂取しながらの厳格薬物治療の利益はほとんどないに等しいし、場合により死亡リスクを高める可能性さえあるということです。


<結論>

糖質を普通に摂取して、薬物療法を行えば、日本では、合併症のオンパレードが待っています。

欧米でも、糖質を普通に摂取していたら、2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずかで、低血糖リスクに相殺される程度ということです。

『食後高血糖』と『平均血糖変動幅増大』を防ぎ、合併症予防や総死亡率減少が期待できるのは、糖質制限食だけです。

糖尿人のご同輩、くれぐれも、美味しく楽しく末長く、糖質制限食ですね。

自分の頭で考えて、判断し、選択して、身を守って頂けば幸いです。



(☆)Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials
BMJ 2011; 343 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.d4169 (Published 26 July 2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21791495



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
東京聖栄大学の研究
1) Journal of Nutritional Science and Vitaminology Vol.61(2015) No.5 p114-121

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnsv/60/2/60_114/_article

Effects of Nutrient Composition of Dinner on Sleep Architecture and Energy Metabolism during Sleep

 睡眠ポリグラフィとヒューマン・カロリーメータを用いて、高炭水化物食を摂ったあとのslow wave sleep が減少する背景に、炭水化物酸化量の増加が引き起こされている現象を明らかにした。

2) 東京聖栄大学紀要7号(2015)pp13-20

http://www.tsc-05.ac.jp/pdf_library/2015.pdf

「夕食時における高炭水化物食ならびに低炭水化物食が睡眠の深さに与える影響―周波数解析を用いた検討―」

 睡眠ポリグラフィとヒューマン・カロリーメータを用いて、夕食の介入による睡眠時の酸化基質の変化が脳活動に及ぼす影響、特に深い睡眠を示す生理学的マーカーであるdeltaパワーへの影響を検討した。
 低炭水化物(LCD)群と比較し高炭水化物(HCD)群では、睡眠の第一周期のdeltaパワーが有意に減少した。睡眠の前半の深い眠りは質の高い睡眠の指標とされているため、高炭水化物の夕食が睡眠の質を低下させる可能性が、周波数解析の結果からも示唆された
2016/01/31(Sun) 22:01 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 東京聖栄大学の研究
精神科医師A さん

大変興味深い情報をありがとうございます。
2016/01/31(Sun) 22:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖類の1日摂取目安量も明記 米国の「食事摂取基準」最新版 2016.1.30
いつもお世話になっております。高知市の高橋純一でございます。もう既に江部先生のお耳には入っておられるかと思いますが、必要でない場合は、御削除下さい。
以下は、あるサイト内の情報のご報告でございます。
糖類の1日摂取目安量も明記 米国の「食事摂取基準」最新版 2016.1.30
米国では糖類摂取量を抑えていく流れに
米保健福祉省(HHS)と米国農務省(USDA)が公表した「米国人のための食生活ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans 2015-2020)」の中で、脂質や塩分に加え、新たに砂糖などの糖類も摂取基準値が記載された。
「米国人のための食生活ガイドライン」は、米国人の健康維持や疾患の予防のために、日常の食生活で摂取が推奨、もしくは控えるべき品目や栄養素を記載したもので、専門家が精査した栄養や健康に関する情報のエビデンス(研究結果などの科学的根拠)を基に、5年ごとに改訂されている。
最新版では、米国人の糖類摂取量が過多であると指摘し、摂取量を1日のカロリー量の10%に抑えるように明記。糖類や加糖食品の摂取を抑えると、心疾患や2型糖尿病、いくつかのがんり患リスク低下を示す精度の高い研究があることが、今回の基準値の根拠となった。糖類に含まれるのは砂糖や蜂蜜、各種シロップなどで、果物に含まれる果糖は除外されているが、調味料や食品に含まれる糖類は対象となるという。
ガイドラインでは年齢や性別、運動量に応じて1日に必要なカロリー量を表示しているが、例えば31~50歳の男性で、平均2200キロカロリー。女性は1800キロカロリーとされ、1日に摂取できる糖類の量は、男性で約60グラム以下、女性で約50グラム以下となる。
ガイドラインは2015年12月28日に発表され、現在は細かな修正などが入った第8版が公開されている。

2016/02/01(Mon) 09:18 | URL | 高橋純一 | 【編集
初めましてHbA1C 5.6 で・・・
先生、はじめまして。一月中旬に職場健診を受け、HbA1cが5.6で驚き、(昨年は5.3)こちらにたどりつきました。
私は35歳女性で、検査技師をしています。DMの恐ろしさを日々仕事をしながらも感じているのでかなりショックでした。
身長148、体重38kg、やせ形、食は細いほうで、食べ過ぎると胃がもたれるので腹8分目にしています。白米はあまり好きでなく、昼と夜の主食は子供茶碗に一杯程度、朝はもう何年もパン一枚にバナナとヨーグルト(加糖)、無糖コーヒーです。ですが、菓子パンやスナック菓子が大好きで、夕食を作っている間にお菓子のつまみ食い、職場の昼食後に常備してあるお菓子をつまみ食い、週末は外食でラーメンが多く、自分のごほうびに夕食後にスナック菓子1袋・・・最悪感ありながら太らないしいいかとおもっていたらHbA1C 5.6と去年から0.3も上昇・・・ちなみに空腹時BGは87でした。
5.6はわりと高めですよね。こんな自分に何か検査したほうがよい項目ありますか?
2016/02/01(Mon) 09:46 | URL | 5歳の子の母です | 【編集
つづきです
それとも、間食をやめる程度でもいいものでしょうか?
2016/02/01(Mon) 10:01 | URL | 5歳の子の母です | 【編集
こまぎれですみません
いまは、間食はやめました。かしぱんも。プチ糖質制限食もはじめるべきでしょうか。禁止ワードで何度もひっかかりこのように何度も送ることになりました
2016/02/01(Mon) 10:04 | URL | 5歳の子の母です | 【編集
糖質制限と断食について
先生、日本糖質制限医療推進協会の掲示板に記載させて頂きましたが、念のためこちらにも掲載させて頂きます。下記です。

江部先生、ご無沙汰しております。本田です。先生の書籍を読み漁り、講演会にも参加させて頂き、超スーパー糖質制限を始めてもうすぐ一年になります。ステロイドの副作用(私の場合は高血圧、脈拍が急に高くなる、血糖値が高めになる、急に滝のような汗が流れてくる等)がすぐに治り、かなりひどい月経痛と出血過多、夜中に何度も起きる、こちらもすべて改善され感謝の日々です。今は、平均すると一日5~10gの糖質制限です。とても快適です。

糖質制限に出会うまで、年間3回程度の断食をしておりました。石原先生の人参&リンゴジュース断食というものです。道場に入って行ったのではなく、本を読んで日常生活の中で行ってきました。通常3~4日、最長40日です。この方法は、糖質制限とバッティングしてしまうため、ここ一年は行っておりません。先生も断食をされていたと以前お伺いした記憶があります。その際にはどのような方法でしょうか?こちらに書いて良いのかどうかわかりませんが、お時間ある際にご教示頂ければ幸いです。
*もちろん自己責任で行います!!

(今、ほぼ毎日一時間程度、筋トレを行っております(もうライザップは終わりましたので(笑)、他のジムです)。糖質制限をしながら運動+一週間ほどデトックスのため断食をしてみようと思います)

余談ですが、石原先生が去年でしょうか、糖質制限への批判本を出版されました。反対側からの意見も知りたいと思い、そのような本も何冊か読みましたが、石原先生の本は、答えになっていない箇所が多く、感情論で批判を書いている感じでした。改めて江部先生の凄さを実感しました。
2016/02/01(Mon) 14:26 | URL | ほんだ | 【編集
Re: 糖類の1日摂取目安量も明記 米国の「食事摂取基準」最新版 2016.1.30
高橋純一 先生

情報をありがとうございます。

「Consume less than 10 percent of calories per day from added sugars」

砂糖などの糖類摂取量を1日のカロリー量の10%に抑えるように明記ですね。


WHOが2015年3月、砂糖などの糖類摂取量を1日のカロリー量の10%・・・5%ならさらによいとしています。

世界保健機関(WHO)は4日、肥満や虫歯を予防するために、砂糖などの糖類を一日に摂取するカロリーの5%未満に抑えるべきだとする新指針を発表した。平均的な成人で25グラム(ティースプーン6杯分)程度。従来は10%までと推奨していたが、各種の研究結果から基準を引き下げた。

 WHOが摂取量の制限を推奨するのは、糖類のうち単糖類と2糖類のショ糖(砂糖)に限る。主に加工食品や清涼飲料に加えられる砂糖のほか、蜂蜜や果汁飲料などに含まれる。未加工の青果類や牛乳に含まれる糖分は対象外だ。

 新指針では引き続き「10%までを推奨する」としつつも、「5%より低ければ、さらに健康増進効果を得られる」と追加した。


色付きの文字
2016/02/01(Mon) 18:29 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 初めましてHbA1C 5.6 で・・・
5歳の子の母 さん

グリコアルブミンがよい検査です。
食後高血糖をよく反映します。

11.8~16.0%が基準値ですので、それを超えていたら
食後高血糖があることとなります。

HbA1cは食後短時間の高血糖を反映しません。

あとは、実際に、食前血糖値・・・ラーメン食後1時間血糖値・・・食後2時間血糖値を測定してみては如何でしょう。
2016/02/01(Mon) 18:34 | URL | ドクター江部 | 【編集
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