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ヘモグロビンA1c(HbA1c)とがん罹患との関連について。多目的コホート研究(JPHC研究)。
こんばんは。

国立がん研究センターがん予防・健診研究センター・予防研究グループの多目的コホート研究(JPHC研究)から、興味深い報告がなされ、論文化されました。

これまでのコホート研究により糖尿病患者では大腸がん、膵がん、肝がん、子宮内膜がんなどのがん罹患リスクが1.5~4倍高く、全がんも約1.2倍高いと報告されています。

今回の報告では、非糖尿病域の高HbA1c値でも全がんリスクが高いことが判明しました。

こうなると軽度の高血糖でもがんリスクが高まるので、注意が必要ですが、スーパー糖質制限食なら、糖尿病は勿論のこと、非糖尿病領域の軽度の高血糖もたちどころに改善させますので、全がんリスクは低下すると考えられます。

HbA1c:5.0%未満  推定平均血糖値:96.8mg/dl未満
HbA1c:5.0~5.4% 推定平均血糖値:96.8~108.28mg/dl
HbA1c:5.5~5.9% 推定平均血糖値:111.15~122.63mg/dl
HbA1c:6.0~6.4% 推定平均血糖値:125.5~136.98mg/dl
HbA1c:6.5%以上  推定平均血糖値:139.85mg/dl以上

HbA1c 5.0~5.4%を基準とすると、5%未満、5.5~5.9%、6.0~6.4%、6.5%以上、および既知の糖尿病の5群のがんリスクは、それぞれ1.27 (1.06-1.52) 、1.01 (0.90-1.14)、1.28 (1.09-1.49)、1.43 (1.14-1.80)、1.23 (1.02-1.47)であり、非糖尿病域および糖尿病域の高HbA1c値の群で全がんリスクが上昇していました。

HbA1c は1-2か月間の血糖値を反映する血液検査値であり、本研究結果は、慢性的な高血糖が全がんリスクと関連することを示唆しています。

高血糖はミトコンドリア代謝などを介して酸化ストレスを亢進させることでDNAを損傷し、発がんにつながる可能性が想定されています。

また、がん細胞の増殖には、大量の糖を必要とするため、慢性的な高血糖状態はがん細胞の増殖を助長する可能性も考えられます。


5%未満でも、がんのリスクが上昇していますが、肝硬変などがあると見かけ上HbA1cが低下することが多いことが関係している可能性があります。

低HbA1c値群には、臨床的には診断されていない肝がんや膵がんを有する人が含まれていて、追跡期間中にがんと診断された可能性があります。

肝がんを除外すると、HbA1c値は直線的に全がんリスク上昇と関連していました。


糖尿病は勿論のことですが、正常範囲内の軽度の高血糖でも油断は禁物ということでますます、「スーパー糖質制限食」の役割は大きくなりました。


江部康二


☆☆☆
以下、国立がん研究センターのサイトから一部抜粋です。

http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3753.html

ヘモグロビンA1c(HbA1c)とがん罹患との関連について

-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告-


私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などとの関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2015年現在)管内にお住まいで、1998~2000年度および2003~2005年度に実施された糖尿病調査にご協力いただいた方々のうち、ヘモグロビンA1c(HbA1c)のデータがあり、初回の調査時までにがんに罹患していなかった29,629人(男性11,336人、女性18,293人)を対象としてHbA1cとがん罹患リスクとの関係を調べました。その結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(International Journal of Cancer 2015年11月WEB先行公開)。

これまでのコホート研究により糖尿病患者では大腸がん、膵がん、肝がん、子宮内膜がんなどのがん罹患リスクが1.5~4倍高く、全がんも約1.2倍高いと報告されています。糖尿病は慢性的な高血糖を特徴とする病気で、HbA1c は1-2か月間の血糖値を反映する血液検査値として知られています。そのため、HbA1c(6.5%以上)は、糖尿病の診断基準の一つとしても採用されています。

糖尿病ががんのリスク因子だとすると、HbA1cはがんリスクと関連することが予想されますが、HbA1c値とがんリスクとの関連は十分に明らかにされていません。そこで、本研究では、この関係を、「多目的コホート」の糖尿病調査のデータを用いて調べることを目的としました。

非糖尿病域の高HbA1c値でも全がんリスクが高い

糖尿病調査で測定したHbA1cの値を用いて、5.0%未満、5.0~5.4%、5.5~5.9%、6.0~6.4%、6.5%以上、および既知の糖尿病の6つの群に分けて、その後の全がんリスク、臓器別リスクを分析しました。なお、2回の糖尿病調査に参加していた場合(研究対象者の35%)、2つのHbA1cの平均値を用いました。本研究の追跡期間中に、1955件のがんが発生していました。

年齢,性別、居住地域,BMI,喫煙歴,飲酒歴,身体活動、野菜摂取、総エネルギー摂取、コーヒー摂取、および心血管疾患の既往を統計学的に調整したうえで、がんリスク(95%信頼区間)を計算しました。HbA1c 5.0~5.4%を基準とすると、5%未満、5.5~5.9%、6.0~6.4%、6.5%以上、および既知の糖尿病の5群のがんリスクは、それぞれ1.27 (1.06-1.52) 、1.01 (0.90-1.14)、1.28 (1.09-1.49)、1.43 (1.14-1.80)、1.23 (1.02-1.47)であり、非糖尿病域および糖尿病域の高HbA1c値の群で全がんリスクが上昇していました(図1)。また、低HbA1c値の群でも全がんリスクの上昇がみられました。

がん種別に分析したところ、非糖尿病域および糖尿病域の高HbA1c値の群で大腸がん(特に結腸がん)リスクが上昇しており、肝がんや膵がんでは、低HbA1c値群(5%未満)でもリスク上昇がみられました(図2)。また、肝がんを除外すると、HbA1c値は直線的に全がんリスク上昇と関連していました(図3)。

高HbA1c値群におけるがんリスクのメカニズム

HbA1c は1-2か月間の血糖値を反映する血液検査値であり、本研究結果は、慢性的な高血糖が全がんリスクと関連することを裏付けるものと考えられます。高血糖はミトコンドリア代謝などを介して酸化ストレスを亢進させることでDNAを損傷し、発がんにつながる可能性が想定されています。また,がん細胞の増殖には、大量の糖を必要とするため,慢性的な高血糖状態はがん細胞の増殖を助長する可能性も考えられます。

一部のがん種(肝がんや膵がん)のリスクが低HbA1c値群で上昇していた理由


肝硬変などでは、実際の血糖値に比べてHbA1cが低値を示すことが多く、肝硬変は肝がんになりやすい状態です。その結果として、低HbA1群で、肝がんリスクが上昇していた可能性が考えられます。また、低HbA1c値は不健康の指標とも考えられています。低HbA1c値群には、臨床的には診断されていない肝がんや膵がんを有する方が含まれていて、追跡期間中にがんと診断されたのかもしれません。そのほか、解析結果のぶれ(誤差)をあらわす95%信頼区間の幅が大きいことから、偶然リスク上昇がみられた可能性も考えられます。

この研究について

本研究では、非糖尿病域の高HbA1c値も全がんリスクと関連していることを報告した最初の論文です。多目的コホート研究を含む多くの疫学研究から糖尿病と全がんリスクとの関連が報告されており、がん予防のためにも糖尿病を予防することが重要であると考えられています。非糖尿病域の高HbA1c値群における全がんリスク上昇を示した本研究により、糖尿病予防対策の重要性が一層示唆されました。


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
確認
今晩は。ここのところ私のHbA1cは6.1~6.2%程度です。24日のブログで、HbA1c:6.0~6.4% 推定平均血糖値:125.5~108.28mg/dl に該当するのですが、「~108.28mg/dl」は正しいでしょうか。
2015/12/24(Thu) 21:20 | URL | デュピュイ取る | 【編集
Re: 確認
デュピュイ取る さん

ご指摘ありがとうございます。
すいません。
ミスタイプです。
修正しました。

125.5~136.98mg/dl

です。
2015/12/24(Thu) 22:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
人類の歴史と糖質制限食
昨日、病院検査で2ヶ月連続でヘモグロビンA1cが5.6、5.4と下がり、丸薬を半分に減らしてもらったと報告した心筋梗塞のコバタケです。
ところで日頃疑問に思うことですが、なぜ皆さん人類の歴史に興味が薄いのでしょうか?大きな書店に行っても、そういう類いの書物がほとんど置いてありません。
アフリカのジャングルでチンパンジーと別種となり直立二足歩行を始めたとか、手の形や歯の堅さから、原始人類は肉食動物が食べ残した骨を食料にした可能性が高いとの学者の本を江部先生のHPで紹介され興味深く読みました。
また、夏井先生の本も興味深く読みました。出アフリカが6万年前、メソポタミアでの小麦栽培が1万2千年前、南アジアでの米栽培が数千年前と新しく、ゆえに糖質多食は人類の体に合わないことを教えられました。
よくテレビで健康食品やサプリメントの広告を見せられますが、なぜ体に良いのか根拠が不明で、画面の片隅に小さく「あくまでも個人の感想であり、効能を保証するものではありません」なんてバカらしい断り書きを入れてますが、そんなに自信なければ広告しなければええやんといつも思います。
親族の集まりでも「肉食の欧米人と違って、やっぱり日本人にはご飯が一番大切や」なんて言いながらパクパク食べてる人が多いですが、人類の歴史を学ばなかったから、こんなウソを信じてるんだと呆れます。
2015/12/25(Fri) 17:35 | URL | コバタケ | 【編集
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