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ケトン体は炎症を抑制する(ネイチャー・メディスンの論文)
【15/12/15 福助

Re: 山田悟先生の新書を読みました。

ヘルミ さん

「血管内皮細胞を傷つける」=炎症性サイトカインによるものと思われますが、 ケトン体が抗炎症作用があることは聞いても、その逆は聞いたことがありませんね。

こちらも参考になると思います。
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「絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのはBHBのお陰」
http://kenkounews.rotala-wallichii.com/fasting_inflammation_bhb/
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こんにちは。

福助さんから、ケトン体についてとても興味深い情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。

「絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのはBHBのお陰」

という「最新健康ニュース」の記事の出典論文ですが、Nature Medicineという国際医学雑誌に掲載されたものです。(*)

ネイチャー・メディスンはインパクトファクターが27と高くて大変権威ある医学雑誌です。

論文によれば、β-ヒドロキシ酪酸(BHB)が、インフラマソームと呼ばれる炎症関連の分子複合体の一部であるNLRP3を直接的に阻害していたということです。

β-ヒドロキシ酪酸(BHB)は、ケトン基は持っていないのですが、慣例上ケトン体の一種に分類されています。

インフラマソームは、炎症の要となる細胞質内タンパク質複合体で、炎症シグナルの指揮者のようなものです。

インフラマソームは、病原成分などの外来性因子やコレステロール結晶などの内在性因子により活性化され、感染症・糖尿病・動脈硬化・自己免疫疾患・虚血傷害など、様々な疾患の発症と進行に中心的役割を果たしています。

結論としては、

『ケトン体の一種であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が炎症の要となるインフラマソームを直接阻害することで炎症を抑制する』

ということです。

炎症を抑制することにより、感染症・糖尿病・動脈硬化・自己免疫疾患・虚血傷害など、様々な疾患の改善に、BHBが役に立つ可能性があることとなります。

ケトン体て本来、とてもいい奴なのですが、学術論文的にも、未来は前途洋々ですね。


☆☆☆

以下最新健康ニュースのサイトから、引用です。

http://kenkounews.rotala-wallichii.com/fasting_inflammation_bhb/

最新健康ニュース

海外の健康関連ニュース

絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのはBHBのお陰

(2015年2月) "Nature Medicine" 誌オンライン版に掲載されたイェール大学の研究で、カロリー制限や激しい運動などによって炎症が抑制されるメカニズムの解明が進みました。 β-ヒドロキシ酪酸(BHB)という化合物が、インフラマソームと呼ばれる炎症関連の分子複合体の一部であるNLRP3を直接的に阻害していたのです。

β-ヒドロキシ酪酸(BHB)
BHBは絶食や、カロリー制限、ケトン食(炭水化物が少ないのが特徴)、高強度の運動に反応して体内で生産される代謝物です。
インフラマソームは、2型糖尿病・アテローム性動脈硬化・アルツハイマー病・自己炎症性障害などにおいて炎症応答を促進します。

研究の内容
この研究では、ヒトの細胞やマウスを用いた実験を行い、
マクロファージ(大食細胞)がケトン体に暴露されたときの反応と、その反応がインフラマソームに影響を及ぼすかどうかを調べました。

研究者は次のように述べています:
「今回の結果から、低炭水化物食を食べたり、絶食をしたり、高強度の運動をしたときに体内で生産されるBHBのような代謝物によってNLRP3を低減できる可能性が示唆されます」


(*)
http://www.nature.com/nm/journal/v21/n3/full/nm.3804.html
ARTICLE PREVIEW
NATURE MEDICINE | LETTER
The ketone metabolite β-hydroxybutyrate blocks NLRP3 inflammasome–mediated inflammatory disease
Yun-Hee Youm, Kim Y Nguyen, Ryan W Grant, Emily L Goldberg, Monica Bodogai, Dongin Kim, Dominic D'Agostino, Noah Planavsky, Christopher Lupfer, Thirumala D Kanneganti,Seokwon Kang, Tamas L Horvath, Tarek M Fahmy, Peter A Crawford, Arya Biragyn, Emad Alnemri & Vishwa Deep Dixit
AffiliationsContributionsCorresponding author
Nature Medicine 21, 263–269 (2015) doi:10.1038/nm.3804
Received 27 October 2014 Accepted 16 January 2015 Published online 16 February 2015

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
エリステロールについて
癌の進みを抑えるため糖質制限をしている者です。エリステロールは取っても構わないのでしょうか?
2015/12/16(Wed) 13:56 | URL | 後藤 | 【編集
糖質カットサプリについて。
江部先生。
いつもブログを拝読しております。私は、糖質依存から長年身体の不調に見舞われ、糖質制限をはじめました。糖質制限をしてから、すこぶる体調がよくなり、今では全く糖質は欲しなくなりました。
先生の御本やブログに大変感謝しております。
糖質制限食にしてから、半年ほどになりますが便秘に悩まされております。私は、元々細身体型です。
又、私はアレルギーがありチーズが食べられません。その分、生クリームで代用しております。
私は、スーパー糖質制限をしておりますが、どうしても仕事上の食事会等で、少量でも糖質をとらなければならない場合があります。
その様な時に、糖質カットサプリを常用しておりますが、このようなサプリメントは効果があるもでしょうか?
便秘についてと、糖質カットサプリについて、江部先生のご見解、ご教授を頂ければ幸いでございます。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
2015/12/16(Wed) 15:32 | URL | 葵 | 【編集
いつも甘いものが食べたくなった時シュガーカットゼロと寒天でゼリーを作っていますが糖質制限でシュガーカットゼロは使わない方がいいのでしょうか?シュガーカットゼロの栄養成分表示に小さじ1で糖質0.3になっています。
2015/12/16(Wed) 17:36 | URL | N.K | 【編集
Re: エリステロールについて
後藤 さん

糖アルコールの「エリスリトール」は、カロリーゼロで、血糖値も上昇させません。

糖質制限食OK食材です。
2015/12/16(Wed) 21:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖質カットサプリについて。
葵 さん

糖質カットサプリ、それなりに少しは有効と思いますが、多くは期待できないと思います。
2015/12/16(Wed) 21:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
N.K さん

浅田飴の「シュガーカットゼロ」は主成分はエリスリトールで、ほんの少しスクラロースが入っています。

エリスリトールやスクラロースは糖質に分類されますが、血糖上昇はなくて、カロリーもゼロです。

従って、糖質制限食OK食材です。
2015/12/16(Wed) 21:12 | URL | ドクター江部 | 【編集
来年の糖尿病学会総会
2015/12/17(Thu) 11:30 | URL | 精神科医師A | 【編集
東京女子医科大学について
1) West症候群に対するケトン食療法の有効性について
東京女子医科大学雑誌

http://ir.twmu.ac.jp/dspace/handle/10470/31220


2) DIABETES NEWS No.150
http://twmu-diabetes.jp/network/diabetes-news-no150.php

 LDLコレステロールには血管内皮細胞障害作用がありますので、既に高血糖で障害されている網膜の毛細血管をさらに障害し、血管から漏出を増大させるのではないかと考えられます。
2015/12/17(Thu) 11:46 | URL | 精神科医師A | 【編集
アドバイスよろしくお願いします。
こんばんは、いつもブログ拝見させていただいています。先月健康診断で、ヘモグロビンA1cが5.8で空腹時血糖93でした。不安になって、ブドウ糖負荷試験(75g)を専門のクリニックで受けたところ、境界型糖尿病予備軍といわれてしまいました。 

数値は、空腹時血糖104、インスリン3.2、30分後血糖150、インスリン15.5、60分後血糖187、インスリン26.2、120分後血糖162、インスリン22.9でした。父親が糖尿なので、多分遺伝だろうといわれました。検査前一ヶ月前から飼っている猫が騒いで良く眠れず、検査前日はほとんど一睡も出来ませんでした。なので、少し高めに出た可能性があると言われました。

今後食生活はどうすればよいのでしょうか? 特に夕食をどうしたらよいかが難しく、医者からは120グラムくらいはご飯は食べても良いと言われました。 一食あたりの糖質はどのくらいで、間食もどのくらいの回数と量を食べてよいのかまったく分かりません。担当医からは、先に野菜を食べて、ゆっくり噛んで食べ、運動でとりあえずOKですというアドバイスでした。

42歳男性、身長171センチ、体重54キロ、痩せ型です。よろしくお願いいたします。
2015/12/17(Thu) 17:53 | URL | マエダ | 【編集
Re: 来年の糖尿病学会総会
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
2015/12/17(Thu) 18:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 東京女子医科大学について
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。

近年、難治性てんかんに対するケトン食が見直されているようですね。
2015/12/17(Thu) 18:56 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: アドバイスよろしくお願いします。
マエダ さん

境界型ですが、1時間値が180mg/dlを超えているので、将来糖尿病になりやすいパターンです。
緩やかな糖質制限でもOKと思います。

1回の糖質摂取量が、30~40gくらい、
1回の間食の糖質摂取量が、10~20gくらい、

なら、将来の糖尿病発症を予防できると思います。
2015/12/17(Thu) 19:52 | URL | ドクター江部 | 【編集
早々と返信ありがとうございます。
先生、夕食のご飯が120グラム食べろと言われましたが、(75gのご飯にしたら1.5キロやせて今52キロです) ごはんだけで糖質44グラムですよね。これで大丈夫でしょうか? 主治医は繊維質を先に食べてゆっくり食べれば、ブドウ糖負荷試験よりも上がりにくい糖質だから大丈夫みたいなことをおっしゃいます。夜が心配なのと、あと、間食の回数は一日何回でしょうか? 食べる時間などは自由でしょうか? 再びよろしくお願いいたします。
2015/12/17(Thu) 20:52 | URL | マエダ | 【編集
追加の質問すみません。
追加の質問なのですが、間食を糖質5グラムにして主食の糖質を50グラムみたいなことは可能ですか? (特に夜です。夕食後の間食はしないほうが良いと主治医がおっしゃるので)
2015/12/17(Thu) 21:07 | URL | マエダ | 【編集
現代病への影響
宗田先生の「ケトン体が人類を救う」を拝読しました。
それと本件を合わせて考えると、最近になってガンや動脈硬化などの現代病が増えてきた、
という指摘もあながち間違いではないと感じます。
現代医学が進歩したおかげで表面化してきたものとばかり思っていましたが、
現代人よりもずっとケトン体が高かった(はず)の過去は、
炎症作用が抑えられていたことでこれらの病気が少なかった可能性も
出てきたのではないでしょうか。

昨今、炎症は医学界でも注目されてきていると感じます。
ガンの発生に炎症が関わっているという研究もありました。
人体がケトン体をエネルギーのベースとして進化してきたのなら、
炎症作用もケトン体による抑制が前提で組み込まれているはずです。
それが現代人の高糖質食によるケトン体値の低下により、
抑えられていた炎症が吹き出してしまっているとしたら。

人体の仕組み上、抑止されるはずの炎症がそうならず、過剰な反応になっているとしたら、
現代病の一翼を糖質が担ってしまっていることになります。
栄養学はただ健康を維持するためだけでなく、予防医学としての側面を
より強めていかなくてはいけないと感じます。

糖質を制限することで炎症が抑えられるなら、低容量アスピリンを飲まずとも
大腸がんを抑制できるかもしれません。
昨今の医療費高騰への影響力まで見えてきそうで、とても楽しみです。
2015/12/17(Thu) 21:31 | URL | scalar | 【編集
Re: 現代病への影響
scalar さん

「ケトン体が炎症を抑制して、様々な生活習慣病の発症を予防する」

とても興味深い仮説ですね。
2015/12/18(Fri) 08:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 現代病への影響
scalar さん

私も激しく同意します。

アスピリンは低用量で飲んでますが、同様の効果を発揮するものを実は体内で生成できる訳で、一刻も早くケトン体の冤罪が晴れて欲しいですね。
2015/12/18(Fri) 11:24 | URL | 福助 | 【編集
尿酸も炎症を抑える
江部先生

ケトン体の炎症抑制作用を調べていたところ、尿酸について非常に興味深い研究結果に辿りつきました。

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『尿酸の新たな輸送タンパク質を発見』
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id302.html
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尿酸の神経保護作用について、尿酸の新規排出タンパク質(NPT3)が、体外へ尿酸を排出する腎臓のような臓器以外にも、脳、胎盤、甲状腺、肺気管上皮、肝臓等さまざまな組織に発現しているとのことです。

尿酸は、体内において強力な抗酸化物質であり、神経保護作用、抗炎症作用がこのNPT3によってもたらされているようです。
(尿酸値の高い人がパーキンソン病になりづらいとは初耳でした。)

ケトン体が酸性化でアシドーシスを起こす悪者となるように、尿酸も酸性化で結晶化し痛風を引き起こす悪者に化けます。
でもそれは環境の悪化(高血糖、高インシュリン)によってもたらされる訳で、悪の権化であり親玉の糖質をしょっぴくことで平和な世の中になりますね。(^^v
2015/12/18(Fri) 11:57 | URL | 福助 | 【編集
Re: 尿酸も炎症を抑える
福助 さん

情報をありがとうございます。

「尿酸は、体内において強力な抗酸化物質」ということですね。

実は私の尿酸値は、3.0前後と低いのですが、私の体内には酸化ストレスが少ないので
そうなっているのかなと、楽天的に考えています。

2015/12/19(Sat) 15:14 | URL | ドクター江部 | 【編集
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