2015年12月04日 (金)
こんにちは
そろそろ、インフルエンザが気になる季節ですが、インフルエンザのとき、使ってもいい解熱剤はアセトアミノフェンだけです。
商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。
それ以外の、ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・これらの一般的なNSAIDSは、脳症のリスクがあるので全て使用してはいけません。
<脳炎と脳症の違い>
病理学的には、脳炎( encepahlitis)と は、ウィルスが直接脳に侵入、脳細胞に感染して増殖し炎症を起こすもので、脳神経細胞がウィルスによって直接破壊されます。
脳症( encephalopathy) は、脳の中にウィルスが存在しないのに脳が腫脹します。
インフルエンザウィルス感染により、まれに脳症が生じますが、原因は不明とされています。
インフルエンザウィルス自体による脳細胞の直接障害ではなく、何らかの原因により高サイトカイン血症などが引き起こされて、脳に浮腫などの障害をひき起こします。
すなわち、病理学的にはインフルエンザ脳炎は存在せず、インフルエンザ脳症が存在するということになります。
<インフルエンザウィルスは血中に入れない>
現時点でインフルエンザウィルスはA型もB型も新型も血中に入れません。
従って、インフルエンザウィルスが脳に直接感染することはないのです。
インフルエンザウィルスは、上気道・下気道・肺と消化管以外には感染できません。
マスコミでインフルエンザ脳炎とかインフルエンザ脳症と言っているのは、正確には「インフルエンザ関連脳症」という病名が一番適切です。
<麻疹ウィルスやヘルペスウィルスは血中に入れる>
麻疹ウィルスは血中に入れるので、脳にも感染して、まれではありますが、麻疹脳炎を生じ得ます。
ウイルス感染性脳炎としては単純ヘルペス脳炎が最も多いです。
日本脳炎ウィルスや狂犬病ウィルスも、脳炎を起こします。
<インフルエンザ脳症とサイトカインストーム>
インフルエンザ脳症の鍵となる現象は、サイトカイン・ストームと呼ばれる免疫系の異常反応です。
免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。
サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。
全身の細胞から通常量をはるかに超えるサイトカインが放出され、体内を嵐のように駆け巡ります。
この過剰なサイトカインストームにより、インフルエンザ関連脳症が生じると考えられています。
サイトカインストームが起こる原因は、今のところ不明です。
しかし解熱剤がサイトカインストームに悪影響を与えている可能性が示唆されています。
<解熱剤>
平成21年の厚生労働省のインフルエンザ脳症ガイドラインには、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタール)の内服は、インフルエンザ脳症の予後不良因子の一つに挙げられています。
これらの解熱剤が、インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させている可能性が示唆されています。
また、これらの解熱剤が、サイトカインストームを生じたきっかけになっている可能性も否定できません。
結局、安全性が確立している、解熱剤は、アセトアミノフェンだけです。
アセトアミノフェンの商品名は、カロナール、コカール、アンヒバ座薬などです。
インフルエンザにかかったときは、アセトアミノフェン以外の他の解熱剤(ロキソニン、インダシン、ブレシン、アスピリン・・・)も使用してはいけません。
要するにアセトアミノフェンだけです。
なお、風邪などのウィルス感染でも同様の危険性は有り得ますので、私は、子どもは勿論のこと、大人にも解熱剤は、基本的的にアセトアミノフェンしか処方しません。
☆☆☆
http://www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/05.html
独立行政法人 科学技術振興機構のサイトから抜粋
免疫系におけるサイトカインの役割
病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の不活化などがあります。このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。サイトカインには白血球が分泌し、免疫系の調節に機能するインターロイキン類、白血球の遊走を誘導するケモカイン類、ウイルスや細胞の増殖を抑制するインターフェロン類など、様々な種類があり、今も発見が続いています。サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。サイトカインは本来の病原体から身を守る役割のほかに、様々な疾患に関与していることが明らかになってきています。
平野チームは、自ら発見したサイトカインの一種であるIL-6が自己免疫疾患の発症制御において、中心的な役割を担っていることを独自に開発した疾患モデルマウスを用いて明らかにしています。また、免疫細胞の中枢神経系への侵入口を発見したことから、神経系自己免疫疾患の発症仮説を提唱しています。岩倉チームは、炎症性サイトカインであるIL-17ファミリー分子の機能的役割を解析する中で、これらファミリー分子が感染防御と炎症抑制において、役割分担されていることを見出しています。
江部康二
そろそろ、インフルエンザが気になる季節ですが、インフルエンザのとき、使ってもいい解熱剤はアセトアミノフェンだけです。
商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。
それ以外の、ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・これらの一般的なNSAIDSは、脳症のリスクがあるので全て使用してはいけません。
<脳炎と脳症の違い>
病理学的には、脳炎( encepahlitis)と は、ウィルスが直接脳に侵入、脳細胞に感染して増殖し炎症を起こすもので、脳神経細胞がウィルスによって直接破壊されます。
脳症( encephalopathy) は、脳の中にウィルスが存在しないのに脳が腫脹します。
インフルエンザウィルス感染により、まれに脳症が生じますが、原因は不明とされています。
インフルエンザウィルス自体による脳細胞の直接障害ではなく、何らかの原因により高サイトカイン血症などが引き起こされて、脳に浮腫などの障害をひき起こします。
すなわち、病理学的にはインフルエンザ脳炎は存在せず、インフルエンザ脳症が存在するということになります。
<インフルエンザウィルスは血中に入れない>
現時点でインフルエンザウィルスはA型もB型も新型も血中に入れません。
従って、インフルエンザウィルスが脳に直接感染することはないのです。
インフルエンザウィルスは、上気道・下気道・肺と消化管以外には感染できません。
マスコミでインフルエンザ脳炎とかインフルエンザ脳症と言っているのは、正確には「インフルエンザ関連脳症」という病名が一番適切です。
<麻疹ウィルスやヘルペスウィルスは血中に入れる>
麻疹ウィルスは血中に入れるので、脳にも感染して、まれではありますが、麻疹脳炎を生じ得ます。
ウイルス感染性脳炎としては単純ヘルペス脳炎が最も多いです。
日本脳炎ウィルスや狂犬病ウィルスも、脳炎を起こします。
<インフルエンザ脳症とサイトカインストーム>
インフルエンザ脳症の鍵となる現象は、サイトカイン・ストームと呼ばれる免疫系の異常反応です。
免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。
サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。
全身の細胞から通常量をはるかに超えるサイトカインが放出され、体内を嵐のように駆け巡ります。
この過剰なサイトカインストームにより、インフルエンザ関連脳症が生じると考えられています。
サイトカインストームが起こる原因は、今のところ不明です。
しかし解熱剤がサイトカインストームに悪影響を与えている可能性が示唆されています。
<解熱剤>
平成21年の厚生労働省のインフルエンザ脳症ガイドラインには、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタール)の内服は、インフルエンザ脳症の予後不良因子の一つに挙げられています。
これらの解熱剤が、インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させている可能性が示唆されています。
また、これらの解熱剤が、サイトカインストームを生じたきっかけになっている可能性も否定できません。
結局、安全性が確立している、解熱剤は、アセトアミノフェンだけです。
アセトアミノフェンの商品名は、カロナール、コカール、アンヒバ座薬などです。
インフルエンザにかかったときは、アセトアミノフェン以外の他の解熱剤(ロキソニン、インダシン、ブレシン、アスピリン・・・)も使用してはいけません。
要するにアセトアミノフェンだけです。
なお、風邪などのウィルス感染でも同様の危険性は有り得ますので、私は、子どもは勿論のこと、大人にも解熱剤は、基本的的にアセトアミノフェンしか処方しません。
☆☆☆
http://www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/05.html
独立行政法人 科学技術振興機構のサイトから抜粋
免疫系におけるサイトカインの役割
病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の不活化などがあります。このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。サイトカインには白血球が分泌し、免疫系の調節に機能するインターロイキン類、白血球の遊走を誘導するケモカイン類、ウイルスや細胞の増殖を抑制するインターフェロン類など、様々な種類があり、今も発見が続いています。サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。サイトカインは本来の病原体から身を守る役割のほかに、様々な疾患に関与していることが明らかになってきています。
平野チームは、自ら発見したサイトカインの一種であるIL-6が自己免疫疾患の発症制御において、中心的な役割を担っていることを独自に開発した疾患モデルマウスを用いて明らかにしています。また、免疫細胞の中枢神経系への侵入口を発見したことから、神経系自己免疫疾患の発症仮説を提唱しています。岩倉チームは、炎症性サイトカインであるIL-17ファミリー分子の機能的役割を解析する中で、これらファミリー分子が感染防御と炎症抑制において、役割分担されていることを見出しています。
江部康二
運動についての血糖値の変動について質問させてください
食前100mg/dl前後
食後40分(140mg/dl前後)
踏み台昇降を15分(100mg/dl前後)→休憩15分(140mg/dl前後)→昇降15分(100mg/dl前後)→休憩15分(140mg/dl前後)→昇降15分(100mg/dl前後)
これ以降は上がらないです
おそらく運動しないとピークで160から180ぐらいには血糖値が上がると思います
このように上下するのを日々続けても大丈夫でしょうか?
食前100mg/dl前後
食後40分(140mg/dl前後)
踏み台昇降を15分(100mg/dl前後)→休憩15分(140mg/dl前後)→昇降15分(100mg/dl前後)→休憩15分(140mg/dl前後)→昇降15分(100mg/dl前後)
これ以降は上がらないです
おそらく運動しないとピークで160から180ぐらいには血糖値が上がると思います
このように上下するのを日々続けても大丈夫でしょうか?
2015/12/04(Fri) 22:45 | URL | kuro | 【編集】
11/30日の先生のブログを拝見し、遠方ながら、小生の糖尿病を高雄病院で一度色々と調べていただきたく「教育入院」なるものを是非希望したいと思い、先日直接、高雄病院さんへお電話をしましたところ、診察の予約→診察し、当日の担当医師の判断→後日→教育入院可否 との受付さんのお話でした。そして、新規外来は江部康二先生は担当されないという由は、お忙しいので理解いたしましたが、教育入院も、必ずしもできるとは限らないとの事でしたので、いささか落ち込んだ次第です。入院希望は喫緊ではありませんが、患者の思うとおりは難しいのだと思いましたことを書かせていただきました。
2015/12/05(Sat) 06:22 | URL | 魚田フラント | 【編集】
kuro さん
問題ないと思います。
運動すると血糖変動幅は40mgくらいで、運津しなかったた60~80mgですから
運動したほうがいいですね。
問題ないと思います。
運動すると血糖変動幅は40mgくらいで、運津しなかったた60~80mgですから
運動したほうがいいですね。
2015/12/05(Sat) 08:17 | URL | ドクター江部 | 【編集】
魚田フラント さん
「診察の予約→診察し、当日の担当医師の判断→後日→教育入院可否 」
これは、原則はその通りです。
近くの糖尿人は、上記流れでお願いしています。
一方遠方の糖尿人の場合、
主治医の「診療情報提供書」があれば、直接入院も可能です。
高雄病院医事課職員の応対が、説明不足で申し訳ありませんでした。
「診察の予約→診察し、当日の担当医師の判断→後日→教育入院可否 」
これは、原則はその通りです。
近くの糖尿人は、上記流れでお願いしています。
一方遠方の糖尿人の場合、
主治医の「診療情報提供書」があれば、直接入院も可能です。
高雄病院医事課職員の応対が、説明不足で申し訳ありませんでした。
2015/12/05(Sat) 08:22 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、ご回答を深謝致します。
病院の方は丁寧に対応してくださいましたが、遠方からの患者の趣旨は伝わらなかったのかもです。先生の
お言葉の「主治医の「診療情報提供書」があれば、直接入院も可能です。 」ですが、これは所謂、主治医の紹介状のことでしょうか?もし左様でしたら、これはとてもお願いするのが難しいので、替わるものはありますでしょうか?小生が今までいただいてきた医師からの患者への「DATA」ならば手元に全て記録、保持しておるのですが…。
遠方よりの検査、教育入院に関する何か他のよい手立てがございましたら、ご指導くださいませ。
病院の方は丁寧に対応してくださいましたが、遠方からの患者の趣旨は伝わらなかったのかもです。先生の
お言葉の「主治医の「診療情報提供書」があれば、直接入院も可能です。 」ですが、これは所謂、主治医の紹介状のことでしょうか?もし左様でしたら、これはとてもお願いするのが難しいので、替わるものはありますでしょうか?小生が今までいただいてきた医師からの患者への「DATA」ならば手元に全て記録、保持しておるのですが…。
遠方よりの検査、教育入院に関する何か他のよい手立てがございましたら、ご指導くださいませ。
2015/12/05(Sat) 09:06 | URL | 魚田フラント | 【編集】
魚田フラント さん
主治医の紹介状のことです。
「糖尿病でコントロール・教育入院したいので、紹介状を書いて頂けないでしょうか?」
ということで、主治医に書いて貰えたら一番スムースなのです。
もし主治医が無理なら、風邪とかで診て貰っているかかりつけ医でも、知り合いの医師がおられたらその方でも
親戚の医師でもいいです。
医師による「診療情報提供書(紹介状)」があると直接入院の算段がスムースです。
主治医の紹介状のことです。
「糖尿病でコントロール・教育入院したいので、紹介状を書いて頂けないでしょうか?」
ということで、主治医に書いて貰えたら一番スムースなのです。
もし主治医が無理なら、風邪とかで診て貰っているかかりつけ医でも、知り合いの医師がおられたらその方でも
親戚の医師でもいいです。
医師による「診療情報提供書(紹介状)」があると直接入院の算段がスムースです。
2015/12/05(Sat) 18:01 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、お忙しい中ご無理を承知でご回答のお願いをさせていただき申し訳御座いませんでした。お陰で五里霧中のなか、光明が差して参りました。
ありがとう存じます。
ありがとう存じます。
2015/12/05(Sat) 21:52 | URL | 魚田フラント | 【編集】
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