赤肉・加工肉のがんリスクについて。一般的日本人。糖質セイゲニスト。
〔15/10/29 精神科医師A

赤肉・加工肉のがんリスクについて
【国立がん研究センター発表】

http://www.ncc.go.jp/jp/information/20151029.html

大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さい

赤肉はたんぱく質やビタミンB、鉄、亜鉛など私たちの健康維持にとって有用な成分もたくさん含んでいる

総合的にみても、今回の評価を受けて極端に量を制限する必要性はない 〕



おはようございます。

2015年10月26日(月)
世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)から

『加工肉摂取に「がんリスク」=毎日50グラムで18%増』

という発表があり、本ブログの記事(10月29日)にしました。

大腸がん(直腸がんや結腸がん)のリスクということです。

このIARCの発表に対して、国立がん研究センターが、2015年10月29日に見解を発表しました。
http://www.ncc.go.jp/jp/information/20151029.html

精神科医師Aさんから、情報をいただきました。
ありがとうございます。

全容を見たい方は、上記URLを訪問していただけば幸いです。

まず、「Red meat:赤肉」 は、牛・豚・羊肉などの肉のことで、脂肪分が少ない部位を示すいわゆる「赤身肉」とは異なりますので注意が必要です。


国立がん研究センターの見解としては、精神科医師Aさんのご指摘のように、

『日本人においては、加工肉・赤肉に関して、極端に量を制限する必要性はない』

としています。

1)
IARCの評価の基となった全世界地域の論文の赤肉摂取の範囲はおおむね一日50-100gで、中には200g以上わたる非常に高い地域もあった。2013年の国民健康・栄養調査によると日本人の赤肉・加工肉の摂取量は一日あたり63g(うち、赤肉は50g、加工肉は13g)で、世界的に見て最も摂取量の低い国の一つであった。

2)
当センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループでは、国内の45-74歳の男女約8万人を対象に赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて追跡調査を行ったコホート研究の結果を、2011年に発表。

当センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループでは、同研究は、赤肉・加工肉の摂取量に応じて低い方から高い方に5グループに分けてその後の大腸がんの発生リスクとの関連を検討した研究で、女性では毎日赤肉を80g**(調理前の重量。調理後は20%程度重量が減少する)以上食べるグループで結腸がんのリスクが高く、それ以下の摂取量ではリスク上昇はみられていない。男性では鶏肉も含む肉全体では摂取量の最も高い第5グループでリスク上昇がみらたが、赤肉では特に関連はみられていない。また、加工肉については男女ともに関連はみられていない。

3)
大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さい。

1)2)3)が、上記国立がん研究センター見解の根拠となっています。

つまり、日本は世界標準に比べて「加工肉・赤肉」の摂取量が最も少ない国のひとつなので、現状の摂取量で、一般的な日本人において大腸癌のリスクとなる根拠はないということです。


一方、我々糖質セイゲニストは、少なくとも赤肉の摂取量は、一般的な日本人の標準量よりは、かなり多いと思います。

この場合、大腸がんのリスクはどうなのでしょう?

赤肉摂取量は多いのですが、糖質セイゲニストの場合は、糖質摂取に伴う「食後血糖値上昇」「食後高インスリン血症」がほとんどありません。

「食後血糖値上昇」「食後高インスリン血症」には、明確な発がんリスクがあります。

IARCの見解は
糖質を普通に食べて、赤肉も多く食べると「食後血糖値上昇」「食後高インスリン血症」を生じて大腸がんのリスクの可能性があるということだと思います。

結論です。

糖質セイゲニストにおいては、赤肉をたくさん食べても、大腸がんのリスクにはならない可能性が高いと思われます。


江部康二



☆☆☆

以下は、国立がん研究センターのサイトから一部抜粋して転載です。


国立研究開発法人国立がん研究センター
情報提供
赤肉・加工肉のがんリスクについて

2015年10月29日
国立研究開発法人国立がん研究センター

この度の国際がん研究組織(IARC)による以下の発表について、当センターによる解説と当センターが2011年に発表した日本人における赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについてお知らせいたします。

IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat
http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2015/pdfs/pr240_E.pdf外部サイトへのリンク

1.解説

IARC主催の10か国、22人の専門家による会議で赤肉*(牛・豚・羊などの肉)、加工肉の人への発がん性についての評価が行われました。評価は全世界地域の人を対象とした疫学研究(エビデンス)、動物実験研究、メカニズム研究からなる科学的証拠に基づく総合的な判定です。
その結果、加工肉について“人に対して発がん性がある(Group1)”と、主に大腸がんに対する疫学研究の十分な証拠に基づいて判定されました。赤肉については疫学研究からの証拠は限定的ながら、メカニズムを裏付ける相応の証拠があることから、“おそらく人に対して発がん性がある(Group2A)”と判定しています。 疫学研究からの証拠を評価する際には、複数の疫学研究を精査して、バイアスや偶然、他の要因の影響(交絡)の可能性を否定出来る質の高い研究に、より重きが置かれるため、ここでいう十分な証拠とはそのような影響を排除した上で成立したものと言えます。そのような影響を否定できない場合は総合判定でGroup 2A以下となります。

また、すでに2007年に世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による評価報告書で、赤肉、加工肉の摂取は大腸がんのリスクを上げることが“確実”と判定されており、赤肉は調理後の重量で週500g以内、加工肉はできるだけ控えるように、と勧告しています。高用量の摂取地域を含む海外の評価における結果はある程度一致しているとも言えます。

表1に分類の定義を示します。 Group1に位置付けられたものは他に喫煙やアスベストなどこれまでに100以上あります。IARCではある条件下(たとえば事故や職業などの特殊環境下での大量曝露、地域特有の食事摂取状況)であっても発がん性の有無を警告する意味において行いますので (いわゆる“ハザードの同定”)、同じグループに分類されたものでも公衆衛生上のインパクトは要因の分布や疾病構造によります。要因が疾病に与えるインパクトを算出する疾病負担研究プロジェクトでは喫煙に起因する全世界のがん死亡は年間100万であったのに対し、アルコールは60万、大気汚染は20万、加工肉では3万4千人であったことが示されています。
今回の結果を踏まえて以後どのように公衆衛生上の目標を定めるかは、各国の赤肉などの摂取状況とその摂取量範囲でのリスクの大きさに基づいた“リスク評価“、さらには、がんや他の疾患への影響などを踏まえて行われるべきものです。

2.日本人における赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて

IARCの評価の基となった全世界地域の論文の赤肉摂取の範囲はおおむね一日50-100gで、中には200g以上わたる非常に高い地域もありました。2013年の国民健康・栄養調査によると日本人の赤肉・加工肉の摂取量は一日あたり63g(うち、赤肉は50g、加工肉は13g)で、世界的に見て最も摂取量の低い国の一つです。 当センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループでは、国内の45-74歳の男女約8万人を対象に赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて追跡調査を行ったコホート研究の結果を、2011年に発表しています。
同研究は、赤肉・加工肉の摂取量に応じて低い方から高い方に5グループに分けてその後の大腸がんの発生リスクとの関連を検討した研究で、女性では毎日赤肉を80g**(調理前の重量。調理後は20%程度重量が減少する)以上食べるグループで結腸がんのリスクが高く、それ以下の摂取量ではリスク上昇はみられていません。男性では鶏肉も含む肉全体では摂取量の最も高い第5グループでリスク上昇がみられましたが、赤肉では特に関連はみられていません。また、加工肉については男女ともに関連はみられていません。大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さいと言えます。

多目的コホート研究 2011/11/28 赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて
http://epi.ncc.go.jp/jphc/584/2870.htmlncc管轄サイトへのリンク

3.日本人のためのがん予防法について

同予防研究グループでは、様々な生活習慣とがんとの関連について日本人を対象とした研究を基にIARCやWCRF/AICRによる報告書の手法を準用して評価を行っています。
表2に示す分類に基づいて赤肉、加工肉と大腸がんとの関連については、日本人の科学的証拠は6件のコホート研究および13件の症例・対照研究に基づき“可能性あり”と判定しています。海外に比べて弱い判定結果ですが、日本人における赤肉、加工肉の摂取量が低いことの影響が考えられます。
このような生活習慣要因の判定結果を基に、現状において推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法「日本人のためのがん予防法」も提示しています。食事要因については「塩蔵品を控えること」「野菜・果物不足にならないこと」「熱い飲食物をとらないこと」を目標に定めています。2007年のWCRFとAICRの報告書の判定を踏まえてかつては赤肉、加工肉についても摂取を控えるように目標に入れていた時期もありますが、日本人での科学的証拠がそれほど明確でないため、また、総合的な健康影響からはある程度の摂取が必要と判断して現在は取り下げている現状にあります。

また、生活習慣とがんリスクの関係については、「リスクチェック」も公開し、生活習慣の改善によるがん予防に役立てていただいております。

がん情報サービス「日本人のためのがん予防法」
http://ganjoho.jp/public/pre_scr/prevention/evidence_based.htmlがん情報サービスへのリンク

科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究 http://epi.ncc.go.jp/can_prevncc管轄サイトへのリンク

がんリスクチェック
http://epi.ncc.go.jp/riskcheck/index.htmlncc管轄サイトへのリンク


日本人の赤肉・加工肉の摂取量は世界的に見ても低く、平均的摂取の範囲であれば大腸がんのリスクへの影響はほとんど考えにくいでしょう。ただし、欧米でも多いとされる量の摂取であればリスクを上げる可能性は高いと思われます。また、今回、IARCにより発がん性ありと判定された加工肉についての科学的証拠は大腸がんを主体としたものであり、健康全般を考慮した観点に立った場合には、他の疾患への影響も考慮する必要があります。赤肉はたんぱく質やビタミンB、鉄、亜鉛など私たちの健康維持にとって有用な成分もたくさん含んでいます。飽和脂肪酸も含まれ、摂りすぎは動脈硬化、その結果としての心筋梗塞のリスクを高めますが、少なすぎると脳卒中(特に、出血性)のリスクを高めることが分かっています。日本においては心筋梗塞より脳卒中の罹患率の方が高いことから、総合的にみても、今回の評価を受けて極端に量を制限する必要性はないと言えるでしょう。 がんをはじめとした生活習慣病予防、総合的健康の観点からは、まずは「日本人のためのがん予防法」で定められた健康習慣全般に気を配ることが大切です。


*Red meat は、牛・豚・羊肉などの肉のことで、脂肪分が少ない部位を示す「赤身肉」とは異なります。
**大規模食生活調査および詳細な食事記録調査に基づく近似値


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
食後血糖値のピーク
先生、先日はお答えいただきありがとうございました。

その後の事で教えていただきたいのですが、ここ2日ほど食後血糖値のピークが2時間後にずれています。

ある日は糖質少なめ(ご飯二口くらい)におかずで30分後73、1時間後79、1時間半後93、2時間後94でした。
それから今朝は、鶏団子に野菜たっぷりのみぞれ鍋をお椀にたっぷりとリンゴ2切れ、雑穀入りご飯を100グラムくらい。これで30分後83、1時間後102、1時間半後129、2時間後158でした(この数値だと境界型ですよね…)。食事は30分かけてゆっくり食べたのと、ご飯は一番最後に食べました。

それと、膵臓の腫れの調子がだいぶんよかったのですが、2日前にクッキーを久々に食べてしまい下がっていた熱が再度37度に上がっています。この事も関係ありますか?
一時的にピークがずれることってあるのでしょうか?それとも、もう膵臓の機能が弱ってきているということでしょうか?

おこたえどうぞよろしくお願いいたします。
2015/10/30(Fri) 12:55 | URL | さと | 【編集
とあるTV番組では・・・
脂質の過剰摂取が大腸がんになると・・・。
テレビの力は大きいですね。
衝撃を受けます。
さて、私が今学んでいるJMOOCという大学の講義を無料で・・というキャッチフレーズの講座があるのですが、その中で4週シリーズで始まった『大人のたしなみ栄養学」の講義を受講しているのですが、まさか・・まだですか・・でした。
脳・神経系のエネルギー源はグルコースのみだからです、というご講義を賜りました。
今時分の栄養学のさわりはどうなのかなぁという感じで受講してみましたが、炭水化物神話からは諸事情もあるのでしょう、脱却には時間がかかるのかと思いました。
2015/10/30(Fri) 14:21 | URL | クワトロ | 【編集
Re: 食後血糖値のピーク
さと さん

30分かけて食べて、ご飯は一番最後なら、ピークが30分ずれてもおかしくないと思います。

膵臓もクッキーていどで影響がくることは考えにくいです。

いずれも気にしなくてよいと思います。

2015/10/30(Fri) 16:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: とあるTV番組では・・・
クワトロ さん

JMOOCさん、

「脳・神経系のエネルギー源はグルコースのみ」

とは残念です。

「脳はケトン体をエネルギー源としていくらでも利用する」
という生理学的事実が、知識として広がっていかないのは、もどかしい限りですね。
2015/10/30(Fri) 16:10 | URL | ドクター江部 | 【編集
日本地図で考えてみる食事の影響
燻製した加工肉はベンゾピレンが含まれるので発癌との関連は大いにありそうです。自作する程大好物なので複雑ですが。

赤肉についてはわかりませんが、肥満との関係は我が国では濃厚のようです。
地図から比較するに赤肉の摂取量はあまり関係なさそうです。加工肉は関係しそうですね。

都道府県別大腸癌死亡率(2012)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/16785
都道府県別大腸癌死亡率(2012)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/10434
都道府県別女性大腸癌死亡率(2012)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/10439
都道府県別男性肥満率(2010)※女性版はありませんでした。
ttp://todo-ran.com/t/kiji/14169
都道府県別男子小中学生肥満率(2010)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/13490
都道府県別女子小中学生肥満率(2010)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/13494
都道府県別糖尿病1万人あたり糖尿病患者数
ttp://todo-ran.com/t/kiji/14753

赤肉について
都道府県別肉消費量(2013)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/17985
都道府県別豚肉消費量(2013)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/13461
都道府県別牛肉消費量(2013)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/13457

加工肉について
都道府県別ベーコン消費量(2013)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/18124
都道府県別ハム消費量(2013)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/18118
都道府県別ソーセージ(魚肉等を除く)消費量(2013)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/17996

おまけ 牛乳・乳製品
都道府県別牛乳消費量(2009)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/13556
都道府県別バター消費量(2009)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/13575
都道府県別チーズ消費量(2009)
ttp://todo-ran.com/t/kiji/13562

気付いた事、思った事
・肥満・大腸癌の上位にいる沖縄が糖尿病では最下位。
・四国の炭水化物大好き県である香川・徳島はともに糖尿病上位だが、香川の肥満は少ない。大腸癌は2県とも多くない。
・ベーコン消費量と大腸癌死亡率が類似している。ハム・ソーセージはあまり影響してない?
・ハム・ソーセージは製造工程で燻製していないか、燻製の際にケーシングするので直接煙に触れないのでベンズピレンの影響が少ないのかも。
・大腸癌牛乳・乳製品悪玉説についてはこれも関係無さそう。


URL数が多くて投稿できないので加工しました。
2015/10/30(Fri) 17:29 | URL | 田中鈴木佐藤 | 【編集
低糖質メニュー
低糖質メニューが集客の鍵に。4つの人気店が実施する糖質対策とは?

http://www.inshokuten.com/foodist/article/1222/
2015/10/30(Fri) 19:33 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 低糖質メニュー
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。

我らが「ボタニカ」がトップで載っていますね。

ボタニカが、東京の糖質制限レストランの草分けだと思います。
2015/10/31(Sat) 11:28 | URL | ドクター江部 | 【編集
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