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運動とエネルギー源⑩ 筋力トレーニングと血糖値
おはようございます。

たかたろうさんから、筋力トレーニングと血糖値に関する追加コメントをいただきました。筋力トレーニングやウオーキングと血糖値の関係、勿論個人差はあると思いますが、おおいに参考になります。

『08/03/01 たかたろう

江部先生、こんにちは、たかたろうです。
私の体験を記事に取り上げて頂きまして、ありがとうございます。皆様の参考になればとてもうれしいです。
少し補足させて頂きます。
「筋力トレーニング直後の糖質補給は血糖値をそれほど上げません」と申し上げましたが、この効果は高負荷(数十キロの負荷を数回繰り返す)トレーニングの方が顕著で、低負荷(数キロの負荷を数十回繰り返す)トレーニングの場合は高負荷時ほどの効果はありません。どうやら、無酸素運動の方が食後のピーク血糖値を押さえるのに有効なようです。グリコーゲン消費量と関係しているのかもしれませんね。
ちなみに、筋力トレーニング直後以外の食事で意図せずに糖質を摂りすぎてしまったときなどは、食事開始後30~60分頃に30分程ウォーキングをして血糖値を下げるようにしていてますが、加減が難しいと感じています。私の場合、200mg前後の血糖値が30分のウォーキングで100mg前後まで下がりますが、ウォーキング終了後30分後にはまた200mg位まで上がってしまっていることがあります。つまり、血糖値の乱高下が起こることがあるのです。私の勝手な思いこみですが、
1.遅れて分泌されたインスリンと運動の効果と相まって一気に血糖値が下がる
2.一気に血糖値が下がると、それ以上下がらないようインスリンの分泌が止まる
3.インスリンの分泌は止まったが、食べたものの消化吸収は続いているので、再び血糖値が上昇する
といったことがおきているのではないかと思っています。
もっとも、しっかり糖質制限していればこんな乱高下が起きることはありませんね。これからも、先生の著書やブログを参考にさせて頂いて、糖質制限食を中心とした血糖コントロールを行っていこうと思っています。』


たかたろうさん。貴重な体験報告、ありがとうございます。

「筋力トレーニング後に糖質を摂取しても血糖値が上昇しない効果は、高負荷(数十キロの負荷を数回繰り返す)トレーニングの方が顕著で、低負荷(数キロの負荷を数十回繰り返す)トレーニングの場合は高負荷時ほどの効果はありません。」とのこと。

最高強度の運動の時は、即エネルギ-源が必要なので、筋肉細胞はまず自前で貯蔵していたATPやクレアチニンリン酸の生み出すATPを使います。そのあとは、グリコーゲン分解と解糖からのATP供給が5秒で最大となり、20秒くらい持続します。これらは、ほとんど全て嫌気的エネルギーで、無酸素運動で供給速度が速いです。

ご指摘の如く、高負荷の筋力トレーニングであれば、最高強度の運動であり、脂肪酸はエネルギー源としてほとんど使われないので、筋肉中のグリコーゲン消費量は多くなり、数回繰り返せば一旦枯渇するくらいまで減少すると考えられます。

これに対して、低負荷のトレーニングの場合は、脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム(好気的システム)も結構利用されるので、筋肉中のグリコーゲン消費量は少ないと考えられます。勿論低負荷のトレーニングではグリコーゲン-ブドウ糖システム(好気的システム)もあるていど利用されると思います。

高負荷の筋力トレーニング後に糖質を摂取すれば、枯渇した筋肉中のグリコーゲンを補充するためにドンドン血糖が取り込まれるのでしょう。

「筋力トレーニング直後以外の食事で意図せずに糖質を摂りすぎてしまったときなどは、食事開始後30~60分頃に30分程ウォーキングをして血糖値を下げるようにしていてますが、加減が難しいと感じています。私の場合、200mg前後の血糖値が30分のウォーキングで100mg前後まで下がりますが、ウォーキング終了後30分後にはまた200mg位まで上がってしまっていることがあります。」

そうなのですか。運動でいったん下がった血糖値が、また上昇することがあるのですね。そこまで連続して測定したデータはありませんので知りませんでした。大変貴重なデータで参考になります。

糖尿病は薬なしで治せる」の著者・渡邊昌先生は、食事開始後30分で30分運動すれば、運動後も血糖は吸収され続けると記載しておられますが、個人差があるのでしょうね。

また糖尿病専門医ガイドブック(2006年)の98ページに、
「肥満2型糖尿病患者で、低強度運動30分実施後、2時間にわたってインスリン感受性が改善した」という報告が記載されています。

たかたろうさんの場合、運動後も血糖値が下がったままの時もあるのですね。運動後30分で再び血糖値上昇のパターンとどちらが多いのでしょう?

30分のウオーキングの場合、筋肉の主たるエネルギー源は脂肪酸-ケトン体システムなので、脂肪酸筋肉中のグリコーゲンはあまり減少しません。歩行中は筋肉の収縮により、Glut4が筋肉細胞表面にでてくるので血糖を取り込みますが、それがどのくらい持続するのかですね?

筋収縮によりGlut4が筋肉細胞表面に出ているのは、新潟医療福祉大学の川中健太郎先生によれば、運動終了後2~3時間持続とのことです。

先生の論文に引用してある文献によれば「ラットに2時間の水泳運動を負荷したあと、運動終了3時間後でも、一定量のインスリン刺激に対してよりたくさんのGlut4が細胞膜表面にトランスロケーションできる」そうです。

つまり一旦、2~3時間で細胞内に戻ったGlut4ですが、その後もしばらくはトランスロケーションしやすくなっているのですね。

たかたろうさんの高負荷トレーニングでも明らかなように、運動後の筋肉の糖取り込みの持続にはグリコーゲンの減少程度もかなり関係していると思います。

しかし運動と血糖値、まだまだよくわかっていないところも多く、これからの課題です。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
たかたろうさんのコメントに「筋力トレーニング直後以外の食事で意図せずに糖質を摂りすぎてしまったときなどは、食事開始後30~60分頃に30分程ウォーキングをして血糖値を下げるようにしていてますが、加減が難しいと感じています。私の場合、200mg前後の血糖値が30分のウォーキングで100mg前後まで下がりますが、ウォーキング終了後30分後にはまた200mg位まで上がってしまっていることがあります。」とありましたが、自分も同じ経験をしています。
なぜなのかとても不思議です。
2008/03/04(Tue) 16:16 | URL | 街のクマ | 【編集
街のクマさん。

そうですか。同じ経験ですか。
運動と血糖値、なかなか一筋縄ではいきませんね。
2008/03/04(Tue) 22:21 | URL | 江部康二 | 【編集
はじめまして。先生のご本を購入、拝読し昨年4月から糖質制限食(スタンダード:昼食にご飯2口程度)を実践しています。二つの質問があって投稿しました。一つ目は、今回の「主食を抜けば糖尿病は良くなる! 実践編」では、とじこみの「食べてよい食品と要注意食品」一覧表で、これまで「食べてよい食品」に分類されていたナッツ類が「要注意食品」に分類されていますが、何か不都合なことが発見されたのでしょうか?ナッツ、チーズ&するめは私にとって間食の常連さんなものですから・・・。二つ目は、昨年7月頃に会社の健康診断で初めて「貧血」(赤血球数:390、ヘモグロビン:12.0)と診断されました。今年2月では赤血球数:423、ヘモグロビン:12.8でした。糖質制限食と何か関連はあるのでしょうか?
2008/03/04(Tue) 23:12 | URL | カナ | 【編集
私も難しいと感じています。
先生、街のくまさん、こんばんは。
私は1型で枯渇組なのですが、
やはり、食後1時間でBG200―250で時速6キロ、3%の傾斜のウォーキングを30分程度行います。
BGは100くらい落ちます。
クマさんと一緒ですね。

ですが、私の場合、上昇しません。
さらに、その後は何もしなくても50くらい、下がります。

難しいデス。
2008/03/04(Tue) 23:23 | URL | my | 【編集
糖尿が進むと自律神経の働きが悪くなり、消化器系の働きが遷延することがあると伺いました。胸焼け胃もたれがいい証拠らしいです。
投薬・運動なしでも、2H後血糖は高くないのに、消化吸収が進むそれ以降で、血糖値が上昇するというケースを読んだことがあるのですが、たかたろおうさんや私のケースでは当てはまるような気が致します。
特に消化が遅れる油脂の多い食事の場合では。
先生も糖質を摂取なさって、同一条件でお試しになられたら、興味深い結果が得られるのではないのでしょうか。

自分は運動の有無を問わず、先生の提唱なさるスーパー糖質制限食こそ糖尿人を救うことになると信じています。
ちなみに朝晩合計23kmの自転車通勤と、昼休みの40分速歩でも、1週間に二回ほど昼食に糖質を摂取したところ、HaA1cが6.2まで上がってしまいました。
軽度の糖尿人には食後運動は効果があるのかもしれませんが、中等度を超えると、やはり糖質制限食の方が体に優しいのではないかと感じました。素人が生意気言って済みません。どうかお許し下さい。

話は変わるのですが、単調になりがちな糖質制限食を救うにあっては、(自分の昼食は毎日キャベツの千切りと鯖の水煮缶と、半丁の豆腐です。いい加減に厭きました。)だからこそ、美味しげな糖質・制限食コムでの食品開発はたいへんに有難いものに思われます。今日アップされたラーメン食べたいです。よだれが出て困りました。
あらてつさん、是非とも頑張ってください。
2008/03/04(Tue) 23:25 | URL | 街のクマ | 【編集
こんばんは、たかたろうです。

街のクマさんのコメントに「特に消化が遅れる油脂の多い食事の場合では。」とありますが、そういわれてみれば、比較的あっさりした物を食べたときには再び血糖値が上昇することは無かったような気がします(記憶が曖昧でスミマセン)。

筋収縮によるGlut4トランスロケーションについてですが、インスリン依存のGlut4トランスロケーションは筋肉細胞・脂肪細胞の両方で起きますが、筋収縮によるインスリン非依存のGlut4トランスロケーションは筋肉細胞においてのみ起きるという理解で正しいでしょうか?また、安静時かつ筋グリコーゲン満タン時には筋肉細胞による糖の取り込みは行われないという理解も正しいでしょうか? だとすると、単純にそのときそのときで、(消化吸収による糖の血液への放出)-(筋肉細胞による糖の取り込み)=(血糖値の上下)、ということになるような気がします。
消化吸収が速いときは、運動終了までに糖の血液への放出が終了し、運動中の筋肉細胞が血糖を消費してしまうため、運動終了後に血糖値は上がらない。
消化吸収が遅いときは、運動終了までに糖の血液への放出は終了せず、運動中の筋肉細胞は血糖を消費するが、運動終了後の筋肉細胞は糖を消費しないので、運動終了後に血糖値が上がる。
(実際に糖尿人の運動中の呼吸商とかを測定してエネルギー代謝の割合を観測すれば新たな発見があるかもしれませんね。)

済みません、調子に乗って生意気なこと言ってしまいましたが、素人の戯言だと思ってお許し下さい。

P.S. ハンターXハンターの連載が再開されましたね。ストーリーを思い出すのに一苦労です。「ハギャ」が誰なのか思い出せません。
2008/03/05(Wed) 02:39 | URL | たかたろう | 【編集
カナさん。

お待たせしています。
近日中にお答えいたしますので・・・
すいません。
2008/03/05(Wed) 08:19 | URL | 江部康二 | 【編集
筋トレと糖質制限の併用は?
筋トレ運動も一種のストレスで
アドレナリンなどの上昇ホルモン
の影響を唱える
説を読んだ記憶がありますが
ホルモンの影響はどの程度なのでしょうか?

すいません
ここからが本題ですが

医師から筋トレを薦められましたが
*筋トレ時の糖質制限の併用はどうでしょうか?
やはり筋トレ後はある程度糖質をとった方がよいのでしょうか?
2010/09/29(Wed) 10:56 | URL | 海物語 | 【編集
Re: 筋トレと糖質制限の併用は?
海物語 さん。

ホルモンの影響は個人差があると思います。
私もテニス直後は、空腹時なのに140mgになってたことがありました。

筋トレ後は、少々糖質を摂っても、筋肉細胞がどんどん血糖を取り込むので、
血糖値は上昇しないと思います。

筋肉量に関しては「2008年02月25日 (月) のブログ、
「運動とエネルギー源⑨ 糖質制限食と筋力トレーニング」
もご参照いただけば幸いです。
2010/09/29(Wed) 12:43 | URL | ドクター江部 | 【編集
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