2015年08月27日 (木)
こんにちは。
今回は、もう一回復習を兼ねて、人工甘味料と血糖値、インスリンの正確な情報のお話です。
根拠となる論文も示しますが、個人的見解が少し変わりました。
まず変わらない結論ですが、
人工甘味料は血糖値を上昇させることはありません。
人工甘味料はインスリンを分泌させることもありません。
ネットでは、相変わらず、
「人工甘味料が血糖を上昇させる」
「人工甘味料がインスリンを分泌させる」
といった、間違った情報が日常的に発信されていますので、私も繰り返し正確な情報を発信する必要があるようです。
2013年8月29日の本ブログ記事で
『人工甘味料が直接、人の膵臓のβ細胞に作用して、大量のインスリン追加分泌を出させる』
というのは、全く事実無根の誤解ということを述べました。
すなわち、人工甘味料が直接、インスリンを分泌させるということはありません。
次いで人工甘味料の定期的摂取に関してです。
2015年7月22日のブログ記事では
『人工甘味料飲料を定期的に摂取すると、砂糖摂取と同程度に肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントリスクを高める恐れがあるので、やめた方がいいようです。』
と、そのときの私の見解を述べました。
しかし、その根拠となる Trends in Endocrinology & Metabolism(TEM)に掲載された論文(☆)は、
糖質を普通に摂取している集団において、
A)人工甘味料飲料水定期摂取グループ
B)砂糖飲料水定期摂取グループ
C)甘味飲料を定期摂取していないグループ
A)B)C)の3グループを比較研究したものです。
私自身、サントリーオールフリー350ml缶(アセスルファムKを含有)を、夏は毎日のように定期摂取していますが、スーパー糖質制限食実践中なので、肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドロームなどのリスクは全くないと思います。
あくまでも私見ですが、糖質セイゲニストにおいては、人工甘味料飲料水を定期的に、通常量(350ml×1~3回/日)とか摂取しても肥満しないし、2型糖尿病にもならないし、メタボにも心筋梗塞にもならないと思います。
このように、人工甘味料飲料を定期的に摂取して、肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントリスクを高める恐れがあるのは普通に糖質を摂取している人における話と思います。
さて上述の
「ノンカロリー人工甘味料は、予想に反して代謝を障害し疾患リスクを増加させる」
という人工甘味料に関する総説論文に関して検討してみましょう。
Trends in Endocrinology & Metabolism(TEM)に掲載された論文(☆)です。
TEMの2012年のインパクトファクターは8.901ですのでなかなかの医学雑誌です。
まず、人工甘味料のみでは、インスリンやインクレチン分泌が促進されることはないことが記載されています。
人工甘味料を直接胃や腸に注入しても、通常の食後に起こるホルモン(インスリンやGLP-1のようなインクレチン)分泌の急性変化は起きないことが知られているとのことです。
しかし、人工甘味料飲料が、体重減少に役立ったり、2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントを防止したりするといった証拠はほとんど得られていないし、人工甘味料飲料を定期的に摂取している人は、そうでない人よりそれらの疾患のリスクが上昇するとのことです。
そのリスクの増加は、従来の砂糖による飲料と同程度だそうです。
TEM掲載論文(☆掲)の結論です。
1)人工甘味料は、インスリンを追加分泌させない。
2)しかし、人工甘味料飲料を定期的に摂取すると、肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントリスクを
高める恐れがある。
3)飲料以外に含まれる人工甘味料が、どのような影響を及ぼすかは、はっきりしていない。
少なくとも、糖質を普通に食べている人においては、人工甘味料清涼飲料水を毎日飲んだりするのは、辞めた方がいいようですね。
一方、あくまでも私見ですが
糖質セイゲニストに関しては、人工甘味料飲料を定期的に常用量を摂取しいても肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントリスクを高める恐れはないと思います。
スーパー糖質制限食そのものが、「肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベント」のリスクを大幅に減らしています。
あとは、読者の皆さん、人工甘味料や人工甘味料飲料に関しては、自分で考えて、自己責任でお願いします。 m(_ _)m
江部康二
【(☆)<論文総説内容>
1. ノンカロリー清涼飲料水=ASB(artificially sweetened beverage)と
従来の砂糖による清涼飲料水=SSB(sugar-sweetened beverage)
2. ノンカロリー人工甘味料を用いた清涼飲料水(ASB)による悪影響
(1) ASBの飲用についての観察研究
(2) ASBの効果を見る介入研究
(3) ASB飲用と肥満についての因果関係は正しいのか?
3. ASB飲用に対する生理的反応
(1) 人工甘味料摂取は、ショ糖摂取とは異なる脳の反応を引き起こす
(2) 人工甘味料のみではインスリンやインクレチン分泌が促進されることはない
(3) ノンカロリー人工甘味料を摂取すると、摂食後のインスリンやインクレチンの放出が増強されなくなる
4. ASB飲用による生理的反応の障害: ASBは学習によって獲得した反応(learned responses)を減弱させる
結語
① ヒトやマウス・ラットモデルにおいて、ASBが体重減少に役立ったり、2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベ強調文ントを防止したりするといった証拠はほとんど得られていない。一方、ASBを定期的に摂取しているヒトでは、そうでないヒトよりそれらのリスクが増加すること(しかもそのリスク増加は、SSB摂取の場合と同程度)が示唆されている。
② このような、今までの常識に反する結果は、ASBが「SSBの摂取後に引き起こされるべき、学習によって獲得された反応を減弱させる」という効果(ASB摂取ではSSB摂取の際に得られるはずのエネルギーが得られないので、それを代償するために起こると考えられる)を持つことによる考えられている。
③ノンカロリー人工甘味料は多くの食物にも含まれるようになってきた。そのような食物がASBのように体重や代謝に対して悪影響を与えるのか どうかは、まだはっきりしていない。しかし、食物の甘味は、ノンカロリーかどうかによらず摂取に注意が必要であることは間違いなさそうである。】
(☆)
Artificial sweeteners produce the counterintuitive effect of inducing metabolic derangements.
Susan E. Swithers
Trends in Endocrinology & Metabolism, Volume 24, Issue 9, 431-441, 11 July 2013
この英文論文を、「一人抄読会」というブログで、
糖尿病・代謝内分泌科のドクターが要約と解説をしておられます。
詳しい内容は、
一人抄読会
http://syodokukai.exblog.jp/19325507
を見て頂けば幸いです。
今回は、もう一回復習を兼ねて、人工甘味料と血糖値、インスリンの正確な情報のお話です。
根拠となる論文も示しますが、個人的見解が少し変わりました。
まず変わらない結論ですが、
人工甘味料は血糖値を上昇させることはありません。
人工甘味料はインスリンを分泌させることもありません。
ネットでは、相変わらず、
「人工甘味料が血糖を上昇させる」
「人工甘味料がインスリンを分泌させる」
といった、間違った情報が日常的に発信されていますので、私も繰り返し正確な情報を発信する必要があるようです。
2013年8月29日の本ブログ記事で
『人工甘味料が直接、人の膵臓のβ細胞に作用して、大量のインスリン追加分泌を出させる』
というのは、全く事実無根の誤解ということを述べました。
すなわち、人工甘味料が直接、インスリンを分泌させるということはありません。
次いで人工甘味料の定期的摂取に関してです。
2015年7月22日のブログ記事では
『人工甘味料飲料を定期的に摂取すると、砂糖摂取と同程度に肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントリスクを高める恐れがあるので、やめた方がいいようです。』
と、そのときの私の見解を述べました。
しかし、その根拠となる Trends in Endocrinology & Metabolism(TEM)に掲載された論文(☆)は、
糖質を普通に摂取している集団において、
A)人工甘味料飲料水定期摂取グループ
B)砂糖飲料水定期摂取グループ
C)甘味飲料を定期摂取していないグループ
A)B)C)の3グループを比較研究したものです。
私自身、サントリーオールフリー350ml缶(アセスルファムKを含有)を、夏は毎日のように定期摂取していますが、スーパー糖質制限食実践中なので、肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドロームなどのリスクは全くないと思います。
あくまでも私見ですが、糖質セイゲニストにおいては、人工甘味料飲料水を定期的に、通常量(350ml×1~3回/日)とか摂取しても肥満しないし、2型糖尿病にもならないし、メタボにも心筋梗塞にもならないと思います。
このように、人工甘味料飲料を定期的に摂取して、肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントリスクを高める恐れがあるのは普通に糖質を摂取している人における話と思います。
さて上述の
「ノンカロリー人工甘味料は、予想に反して代謝を障害し疾患リスクを増加させる」
という人工甘味料に関する総説論文に関して検討してみましょう。
Trends in Endocrinology & Metabolism(TEM)に掲載された論文(☆)です。
TEMの2012年のインパクトファクターは8.901ですのでなかなかの医学雑誌です。
まず、人工甘味料のみでは、インスリンやインクレチン分泌が促進されることはないことが記載されています。
人工甘味料を直接胃や腸に注入しても、通常の食後に起こるホルモン(インスリンやGLP-1のようなインクレチン)分泌の急性変化は起きないことが知られているとのことです。
しかし、人工甘味料飲料が、体重減少に役立ったり、2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントを防止したりするといった証拠はほとんど得られていないし、人工甘味料飲料を定期的に摂取している人は、そうでない人よりそれらの疾患のリスクが上昇するとのことです。
そのリスクの増加は、従来の砂糖による飲料と同程度だそうです。
TEM掲載論文(☆掲)の結論です。
1)人工甘味料は、インスリンを追加分泌させない。
2)しかし、人工甘味料飲料を定期的に摂取すると、肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントリスクを
高める恐れがある。
3)飲料以外に含まれる人工甘味料が、どのような影響を及ぼすかは、はっきりしていない。
少なくとも、糖質を普通に食べている人においては、人工甘味料清涼飲料水を毎日飲んだりするのは、辞めた方がいいようですね。
一方、あくまでも私見ですが
糖質セイゲニストに関しては、人工甘味料飲料を定期的に常用量を摂取しいても肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベントリスクを高める恐れはないと思います。
スーパー糖質制限食そのものが、「肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベント」のリスクを大幅に減らしています。
あとは、読者の皆さん、人工甘味料や人工甘味料飲料に関しては、自分で考えて、自己責任でお願いします。 m(_ _)m
江部康二
【(☆)<論文総説内容>
1. ノンカロリー清涼飲料水=ASB(artificially sweetened beverage)と
従来の砂糖による清涼飲料水=SSB(sugar-sweetened beverage)
2. ノンカロリー人工甘味料を用いた清涼飲料水(ASB)による悪影響
(1) ASBの飲用についての観察研究
(2) ASBの効果を見る介入研究
(3) ASB飲用と肥満についての因果関係は正しいのか?
3. ASB飲用に対する生理的反応
(1) 人工甘味料摂取は、ショ糖摂取とは異なる脳の反応を引き起こす
(2) 人工甘味料のみではインスリンやインクレチン分泌が促進されることはない
(3) ノンカロリー人工甘味料を摂取すると、摂食後のインスリンやインクレチンの放出が増強されなくなる
4. ASB飲用による生理的反応の障害: ASBは学習によって獲得した反応(learned responses)を減弱させる
結語
① ヒトやマウス・ラットモデルにおいて、ASBが体重減少に役立ったり、2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管イベ強調文ントを防止したりするといった証拠はほとんど得られていない。一方、ASBを定期的に摂取しているヒトでは、そうでないヒトよりそれらのリスクが増加すること(しかもそのリスク増加は、SSB摂取の場合と同程度)が示唆されている。
② このような、今までの常識に反する結果は、ASBが「SSBの摂取後に引き起こされるべき、学習によって獲得された反応を減弱させる」という効果(ASB摂取ではSSB摂取の際に得られるはずのエネルギーが得られないので、それを代償するために起こると考えられる)を持つことによる考えられている。
③ノンカロリー人工甘味料は多くの食物にも含まれるようになってきた。そのような食物がASBのように体重や代謝に対して悪影響を与えるのか どうかは、まだはっきりしていない。しかし、食物の甘味は、ノンカロリーかどうかによらず摂取に注意が必要であることは間違いなさそうである。】
(☆)
Artificial sweeteners produce the counterintuitive effect of inducing metabolic derangements.
Susan E. Swithers
Trends in Endocrinology & Metabolism, Volume 24, Issue 9, 431-441, 11 July 2013
この英文論文を、「一人抄読会」というブログで、
糖尿病・代謝内分泌科のドクターが要約と解説をしておられます。
詳しい内容は、
一人抄読会
http://syodokukai.exblog.jp/19325507
を見て頂けば幸いです。
はじめまして。
いつも楽しみに拝見しています。
私も糖質制限ダイエットをはじめて、結果をだしています。
そこで、質問なのですが、私は一年以上も前から更年期障害の治療としてホルモン投与をしてもらってます。
しかし、この1ヶ月ほどホルモン投与をうけていません。以前のようなホットフラッシュや汗、動悸や不眠がおさまっています。
体重が減って、前着ていた洋服がきられるようになったり、肌がきれいなったり、痩せてから楽しいことが沢山(^^)v
そのような精神的なことによって緩和されたのか??
または糖質制限と関係あるのか???
医学的に関係しているのでしょうか。
教えていただけると嬉しいです。
先生の本やブログ大変参考になります。
糖質制限を習慣にできるようにしたいと思っています。
もしかすると、この質問は以前あった内容かも知れませんがよろしくお願いします。
勉強不足ですみません。
いつも楽しみに拝見しています。
私も糖質制限ダイエットをはじめて、結果をだしています。
そこで、質問なのですが、私は一年以上も前から更年期障害の治療としてホルモン投与をしてもらってます。
しかし、この1ヶ月ほどホルモン投与をうけていません。以前のようなホットフラッシュや汗、動悸や不眠がおさまっています。
体重が減って、前着ていた洋服がきられるようになったり、肌がきれいなったり、痩せてから楽しいことが沢山(^^)v
そのような精神的なことによって緩和されたのか??
または糖質制限と関係あるのか???
医学的に関係しているのでしょうか。
教えていただけると嬉しいです。
先生の本やブログ大変参考になります。
糖質制限を習慣にできるようにしたいと思っています。
もしかすると、この質問は以前あった内容かも知れませんがよろしくお願いします。
勉強不足ですみません。
2015/08/27(Thu) 13:14 | URL | のん | 【編集】
お医者さんの名前まで出てきて、心配になりました。先生の根拠なしは力強い後押しです。
コメント欄にはコカ・コーラの方が安心で、ゼロを飲んだ方が血糖値が上がるとまでありました。
間違った情報を拡散させて、病気を悪化させることのないように願いたいです。
コメント欄にはコカ・コーラの方が安心で、ゼロを飲んだ方が血糖値が上がるとまでありました。
間違った情報を拡散させて、病気を悪化させることのないように願いたいです。
のん さん
体調良好、良かったですね。
更年期障害の改善ですが、自然経過の可能性もありますし、
糖質制限食の効果の可能性もあります。
「更年期障害と糖質制限食」に関する研究発表は、まだないと思います。
ともあれ、糖質制限食は、人類700万年間の進化過程における、人類本来の食事で、人類の健康食であり、
全身の血流と代謝が改善するので、ほとんどの病気や症状に対して良い方に向かうと思われます。
体調良好、良かったですね。
更年期障害の改善ですが、自然経過の可能性もありますし、
糖質制限食の効果の可能性もあります。
「更年期障害と糖質制限食」に関する研究発表は、まだないと思います。
ともあれ、糖質制限食は、人類700万年間の進化過程における、人類本来の食事で、人類の健康食であり、
全身の血流と代謝が改善するので、ほとんどの病気や症状に対して良い方に向かうと思われます。
2015/08/27(Thu) 18:56 | URL | ドクター江部 | 【編集】
はじめまして
突然ですが 糖質制限は 白斑に効果はありますか?
白斑と診断されてからまだ一年未満です。
教えたいただければ 嬉しいです。よろしくお願いいたします
突然ですが 糖質制限は 白斑に効果はありますか?
白斑と診断されてからまだ一年未満です。
教えたいただければ 嬉しいです。よろしくお願いいたします
カノン さん
白斑に対する経験がありませんので、よくわかりません。
糖質制限食は、人類本来の食事であり、人類の健康食です。
実践により全身の血流・代謝がよくなり自然治癒力が高まります。
健康度も増進ですので、やってみる価値はあると思います。
白斑に対する経験がありませんので、よくわかりません。
糖質制限食は、人類本来の食事であり、人類の健康食です。
実践により全身の血流・代謝がよくなり自然治癒力が高まります。
健康度も増進ですので、やってみる価値はあると思います。
2015/08/28(Fri) 08:10 | URL | ドクター江部 | 【編集】
お返事頂いて とても嬉しいです!
お忙しいのに ありがとうございました‼︎
挑戦してみようと思います。
お忙しいのに ありがとうございました‼︎
挑戦してみようと思います。
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