2015年08月18日 (火)
【15/08/17 平山貴久
ご質問宜しいでしょうか?
いつも御著書やブログで勉強させて頂いております。ありがとうございます。
ふと思ったのですが、GLUT1が欠損した場合、ミトコンドリアを持たない赤血球は何をエネルギー源とするのでしょうか?赤血球にはGLUT1のみではなく、GLUT4も存在するのであれば腑に落ちるのですが。
ご教示頂けましたら幸甚です。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。】
こんにちは。
平山貴久さんから、GLUT-1欠損症で、赤血球のエネルギー源は何かというコメント・質問をいただきました。
まず、結論ですが、赤血球はブドウ糖しかエネルギー源にできません。
GLUT-1欠損症でも、赤血球のエネルギー源はブドウ糖だけです。
さて、血液脳関門にあるGLUT-1が正常に機能すれば、脳脊髄液中のブドウ糖は、血液中のブドウ糖濃度の60%くらいです。
髄液糖/血糖比、正常は0.6-0.7です。
髄液(脳脊髄液)とは、脳室系とクモ膜下腔を満たす、リンパ液のように無色透明な液体です。
GLUT-1欠損症の場合は、血液中の血糖値が正常値でも髄液検査では、髄液糖は 40 mg/dL 以下です。
髄液糖/血糖比は 0.45 以下(平均 0.35)です。
ということは、平均正常の半分くらいは、ブドウ糖を取り込めていることとなります。
つまりGLUT-1欠損症という診断名がついていても、ブドウ糖取り込み能力がかなり低下しているけれど、ゼロではないということです。
GLUT-1欠損症の赤血球も、脳の血液脳関門と同様にブドウ糖取り込み能力が低下していますが、平均、正常の半分程度は取り込めます。
血糖値が100mgとすれば、赤血球内に35mgとか45mgとかは取り込めます。
私が本断食をしたとき、血糖35mg/dlでしたが、脳はケトン体(断食中で高値)をエネルギー源として意識を保ち、赤血球は血糖35mg/dlでも事足りていたのだと思います。
即ち脳は血糖値35mg/dlでは、ケトン体がなければ意識不明ですが、赤血球は、血糖35mg/dlくらいあれば生きていけるのだと思います。
<追加>
血液脳関門にあるGLUT-1が正常に機能すれば、脳脊髄液中のブドウ糖は、血液中のブドウ糖濃度の60%くらいです。
糖尿病専門医研修ガイドブック(改訂第4版、2009年)293ページには、低血糖症の定義として、
「低血糖症状があり血糖値60mg/dl以下」
と記載されています。
血糖値が60mg/dlなら、脳脊髄液のブドウ糖濃度は36mg/dlです。
そうすると、赤血球も脳細胞も、それぞれブドウ糖濃度が35~36~37mg/dlくらいで、エネルギー源としては何とか足りているということのようです。
血糖値35mg/dlなら、脳脊髄液のブドウ糖濃度は21mg/dlですので、ケトン体髙値がなければ、意識不明ですね。
江部康二
ご質問宜しいでしょうか?
いつも御著書やブログで勉強させて頂いております。ありがとうございます。
ふと思ったのですが、GLUT1が欠損した場合、ミトコンドリアを持たない赤血球は何をエネルギー源とするのでしょうか?赤血球にはGLUT1のみではなく、GLUT4も存在するのであれば腑に落ちるのですが。
ご教示頂けましたら幸甚です。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。】
こんにちは。
平山貴久さんから、GLUT-1欠損症で、赤血球のエネルギー源は何かというコメント・質問をいただきました。
まず、結論ですが、赤血球はブドウ糖しかエネルギー源にできません。
GLUT-1欠損症でも、赤血球のエネルギー源はブドウ糖だけです。
さて、血液脳関門にあるGLUT-1が正常に機能すれば、脳脊髄液中のブドウ糖は、血液中のブドウ糖濃度の60%くらいです。
髄液糖/血糖比、正常は0.6-0.7です。
髄液(脳脊髄液)とは、脳室系とクモ膜下腔を満たす、リンパ液のように無色透明な液体です。
GLUT-1欠損症の場合は、血液中の血糖値が正常値でも髄液検査では、髄液糖は 40 mg/dL 以下です。
髄液糖/血糖比は 0.45 以下(平均 0.35)です。
ということは、平均正常の半分くらいは、ブドウ糖を取り込めていることとなります。
つまりGLUT-1欠損症という診断名がついていても、ブドウ糖取り込み能力がかなり低下しているけれど、ゼロではないということです。
GLUT-1欠損症の赤血球も、脳の血液脳関門と同様にブドウ糖取り込み能力が低下していますが、平均、正常の半分程度は取り込めます。
血糖値が100mgとすれば、赤血球内に35mgとか45mgとかは取り込めます。
私が本断食をしたとき、血糖35mg/dlでしたが、脳はケトン体(断食中で高値)をエネルギー源として意識を保ち、赤血球は血糖35mg/dlでも事足りていたのだと思います。
即ち脳は血糖値35mg/dlでは、ケトン体がなければ意識不明ですが、赤血球は、血糖35mg/dlくらいあれば生きていけるのだと思います。
<追加>
血液脳関門にあるGLUT-1が正常に機能すれば、脳脊髄液中のブドウ糖は、血液中のブドウ糖濃度の60%くらいです。
糖尿病専門医研修ガイドブック(改訂第4版、2009年)293ページには、低血糖症の定義として、
「低血糖症状があり血糖値60mg/dl以下」
と記載されています。
血糖値が60mg/dlなら、脳脊髄液のブドウ糖濃度は36mg/dlです。
そうすると、赤血球も脳細胞も、それぞれブドウ糖濃度が35~36~37mg/dlくらいで、エネルギー源としては何とか足りているということのようです。
血糖値35mg/dlなら、脳脊髄液のブドウ糖濃度は21mg/dlですので、ケトン体髙値がなければ、意識不明ですね。
江部康二
江部先生
いつもブログや本などで勉強させて頂いております。
昨年の10月に顔面麻痺になり、その時の検査
で糖尿が見つかりました。
2014/10/9
血糖値 226
HbA1c 10.4
幸運なことに 江部先生の御著書やブログなどに出会えた事で
2015/3/31
血糖値 85
HbA1c 6.1
2015/6/30
血糖値 102
HbA1c 6.0
と改善に向かうことが出来ています。
糖尿が改善されたせいか、顔面麻痺の方も
完治いたしました。
これもひとえに、江部先生のご指導のおかげです。心より感謝申し上げます。
この度、この報告と、お礼を申し上げたかったのと
どうしても先生にご相談したいことがありメールさせて頂きました。
実は、私と四半世紀以上を共にして参りました親友がいるのですが、
(46歳 女性です。私もです。)今年の3月に 子宮頸がんと診断され、先日病院にもうあなたに効く抗がん剤はありません。もう長くないといわれたというのです。
私は先生の御著書 「炭水化物の食べすぎで早死にしてはいけません」
の中にがん細胞はブドウ糖しかエネルギーとして使えない という言葉があったのを
思い出して、ケトン食を彼女にすすめたいと思ったのですが、
子宮頸がんが 肺や肝臓に転移しているということです。(肝臓のがんがどれぐらいのものなのか
聞けていないのですが)
糖質制限は肝硬変の人は適応外ということですが 彼女も適応外になってしまいますか。
もしそうなら、なにか手立てはないものでしょうか。
小学5年生の女の子の母でもあり、何とか食事で良くなってほしいです。
大逆転で改善することを願うばかりです。
今の彼女にベストな食事をしてもらいたいのですが、何をどのように食べれば良いのか、どうしたら良いでしょうか。一人で考えてもらちが明かず、先生にアドバイス頂けると幸いです。お忙しい所長々と申し訳ありません。何卒よろしくお願いいたします。
いつもブログや本などで勉強させて頂いております。
昨年の10月に顔面麻痺になり、その時の検査
で糖尿が見つかりました。
2014/10/9
血糖値 226
HbA1c 10.4
幸運なことに 江部先生の御著書やブログなどに出会えた事で
2015/3/31
血糖値 85
HbA1c 6.1
2015/6/30
血糖値 102
HbA1c 6.0
と改善に向かうことが出来ています。
糖尿が改善されたせいか、顔面麻痺の方も
完治いたしました。
これもひとえに、江部先生のご指導のおかげです。心より感謝申し上げます。
この度、この報告と、お礼を申し上げたかったのと
どうしても先生にご相談したいことがありメールさせて頂きました。
実は、私と四半世紀以上を共にして参りました親友がいるのですが、
(46歳 女性です。私もです。)今年の3月に 子宮頸がんと診断され、先日病院にもうあなたに効く抗がん剤はありません。もう長くないといわれたというのです。
私は先生の御著書 「炭水化物の食べすぎで早死にしてはいけません」
の中にがん細胞はブドウ糖しかエネルギーとして使えない という言葉があったのを
思い出して、ケトン食を彼女にすすめたいと思ったのですが、
子宮頸がんが 肺や肝臓に転移しているということです。(肝臓のがんがどれぐらいのものなのか
聞けていないのですが)
糖質制限は肝硬変の人は適応外ということですが 彼女も適応外になってしまいますか。
もしそうなら、なにか手立てはないものでしょうか。
小学5年生の女の子の母でもあり、何とか食事で良くなってほしいです。
大逆転で改善することを願うばかりです。
今の彼女にベストな食事をしてもらいたいのですが、何をどのように食べれば良いのか、どうしたら良いでしょうか。一人で考えてもらちが明かず、先生にアドバイス頂けると幸いです。お忙しい所長々と申し訳ありません。何卒よろしくお願いいたします。
山本麻美子さん
私なら、糖質制限の最強版ともいえる「中鎖脂肪酸ケトン食療法」と「高濃度VC療法」とを併用してみると思います。
関西では「粉ミルク健康法」もありますよ。
私なら、糖質制限の最強版ともいえる「中鎖脂肪酸ケトン食療法」と「高濃度VC療法」とを併用してみると思います。
関西では「粉ミルク健康法」もありますよ。
2015/08/19(Wed) 11:27 | URL | 福助 | 【編集】
山本麻美子 さん
拙著の御購入、ありがとうございます。
また血糖値、HbA1cの改善、良かったですね。
ご友人ですが、「子宮頸がんが 肺や肝臓に転移」
であれば、肝硬変ではないので、ケトン食は大丈夫です。
可能性を求めて、ケトン食を試みる価値はあると思います。
拙著の御購入、ありがとうございます。
また血糖値、HbA1cの改善、良かったですね。
ご友人ですが、「子宮頸がんが 肺や肝臓に転移」
であれば、肝硬変ではないので、ケトン食は大丈夫です。
可能性を求めて、ケトン食を試みる価値はあると思います。
2015/08/19(Wed) 11:52 | URL | ドクター江部 | 【編集】
皆様のご質問、先生のご回答で勉強させていただいています。糖尿病予備軍とのことで、糖質制限食で救われ4年になります。何度かご教示いただいております。ありがとうございます。
きょうは、Hba1cの、検査機関による誤差についてお尋ねいたしたく存じます。
市立病院で糖質制限には懐疑的だが、そこは自己責任でということで、他にも脂質異常や高尿酸血症等で1ヵ月に1度採血していただいています。そのa1c値が今年からじりじり上がり出し、昨年までは5.4~5.6ぐらいだった値が今年から5.7~5.9になり下がらなくなりました。5.9といえば平均血糖値が122.63ということになります。自己測定器で測りますと、食後のピークで120前後、空腹時は89~100未満です。暁現象とやらかと明け方測りましても110未満です。今年から始めたもので思い当たるもの、ココナッツオイルやコーヒーも止めてみましたがa1c値は5.9でした。毎食8~10gの糖質摂取で5.9とはいつ高くなっているのだろうと恐ろしくなって、5.9と出た同じ日に別の医療機関で自費でHba1cとグリコアルブミンの検査していただきました。すると5.3でした(グリコアルブミンは14.4)。もちろんNGSPです。自己測定器から見ましても5.3の平均105.41の方が近いと思います。ここまでの誤差が市立病院であり得るのでしょうか。検査方法の違いでこのようなことが発生するのでしょうか。
何卒、ご教示くださいますれば幸いです。
きょうは、Hba1cの、検査機関による誤差についてお尋ねいたしたく存じます。
市立病院で糖質制限には懐疑的だが、そこは自己責任でということで、他にも脂質異常や高尿酸血症等で1ヵ月に1度採血していただいています。そのa1c値が今年からじりじり上がり出し、昨年までは5.4~5.6ぐらいだった値が今年から5.7~5.9になり下がらなくなりました。5.9といえば平均血糖値が122.63ということになります。自己測定器で測りますと、食後のピークで120前後、空腹時は89~100未満です。暁現象とやらかと明け方測りましても110未満です。今年から始めたもので思い当たるもの、ココナッツオイルやコーヒーも止めてみましたがa1c値は5.9でした。毎食8~10gの糖質摂取で5.9とはいつ高くなっているのだろうと恐ろしくなって、5.9と出た同じ日に別の医療機関で自費でHba1cとグリコアルブミンの検査していただきました。すると5.3でした(グリコアルブミンは14.4)。もちろんNGSPです。自己測定器から見ましても5.3の平均105.41の方が近いと思います。ここまでの誤差が市立病院であり得るのでしょうか。検査方法の違いでこのようなことが発生するのでしょうか。
何卒、ご教示くださいますれば幸いです。
2015/08/19(Wed) 18:44 | URL | a.m | 【編集】
江部先生
お忙しい中、お答えを頂き本当にありがとうございます。
ありがたい気持ちで一杯です。
心より感謝申し上げます。
大どんでん返しを信じ
ケトン食で挑みます!
福助様も参考になるコメントを頂けましたことに
感謝申し上げます。ありがとうございました!
お忙しい中、お答えを頂き本当にありがとうございます。
ありがたい気持ちで一杯です。
心より感謝申し上げます。
大どんでん返しを信じ
ケトン食で挑みます!
福助様も参考になるコメントを頂けましたことに
感謝申し上げます。ありがとうございました!
a.m さん
検査機関による誤差は、あります。
HbA1cで0.2とか0.3%くらいは、日常的にあります。
0.6%もの違いは、さすがに珍しいですが、
血糖自己測定器の血糖値データと一致するほうのHbA1cのほうが信用できると思います。
従って、a.m さんのHbA1cは、5.3%とみなして良いと思います。
検査機関による誤差は、あります。
HbA1cで0.2とか0.3%くらいは、日常的にあります。
0.6%もの違いは、さすがに珍しいですが、
血糖自己測定器の血糖値データと一致するほうのHbA1cのほうが信用できると思います。
従って、a.m さんのHbA1cは、5.3%とみなして良いと思います。
2015/08/20(Thu) 17:37 | URL | ドクター江部 | 【編集】
早々のご回答をありがとうございます。
Hba1cの誤差は0.2~0.3もあって不思議はないのですか!一喜一憂ですね。この度は、江部先生から私のHba1cは5.3と見なしてよいとのお墨付きを戴きましたので安心し、今後も自己測定器と照らし合わせて判断し、現状の食事を続けます。
Hba1cの誤差は0.2~0.3もあって不思議はないのですか!一喜一憂ですね。この度は、江部先生から私のHba1cは5.3と見なしてよいとのお墨付きを戴きましたので安心し、今後も自己測定器と照らし合わせて判断し、現状の食事を続けます。
2015/08/20(Thu) 22:13 | URL | a.m | 【編集】
お忙しい中ご回答頂きありがとうございました。
GLUT1欠損症は完全欠損ではなく、部分欠損?という風に理解しました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
GLUT1欠損症は完全欠損ではなく、部分欠損?という風に理解しました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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