2015年08月02日 (日)
こんにちは。
三大栄養素と血糖値について、相変わらず質問がありますので再考察してみます。
手元に、以下の米国糖尿病学会の本(英文の原書)があります。
糖尿病患者さん教育用のテキストブックです。
American Diabetes Association
Life With Diabetes:A Siries of Teaching Outlines
by the Michigan Diabetes Research and Training Center ,
-4th Edition-,2009
57ページに
「Carbohydrate,protein,and fat contain calories.
Only Carbohydrates directly affect blood glucose levels. 」
という文章が記載してあります。
-3th Edition-2004年版から、継続してこの記載があります。
直訳すると
「炭水化物・タンパク質・脂肪はカロリーを含有して
いる。
炭水化物のみが、血糖値に直接影響を及ぼす。」
つまりADAによれば、タンパク質と脂肪は血糖値に直接影響を及ぼすことはないのです。
直接という言葉が意味深で、下記2)のようなケースがあっても矛盾しない表現にしたのでしょうね。
ADA(米国糖尿病学会)、流石です。
<三大栄養素と血糖値上昇に関する考察>
さて「血糖に直接影響を与えるのは糖質のみ。」
というADA(米国糖尿病学会)の記載に関連する事柄を、1)~8)まで整理してまとめてみました。
1)「血糖値に直接影響を与えるのは糖質のみである」
2)「1型糖尿病で内因性インスリンが枯渇している場合や2型糖尿病でも内因性インスリンが枯渇に近いときは、グルカゴン分泌を介してタンパク質が間接的に血糖値を上昇させる」「タンパク質に含まれるアミノ酸がグルカゴンを分泌させるが、インスリンは分泌できない病態だからである」
3)「上記の2)を除く大多数の内因性インスリンが残っている糖尿病患者においては、摂取後血糖値を上昇させるのは糖質のみである。」「摂取したタンパク質によりグルカゴンが分泌されるが、同時にインスリンも分泌され効果が相殺されるからである」
4)「1)2)3)より、大多数の内因性インスリンが残っている糖尿病患者においては、糖質制限食が極めて有効である」
5)「脂質は直接的にも間接的にも血糖値を上昇させない」
「脂質はインスリンもグルカゴンも分泌させない。」
6)「タンパク質はインスリンとグルカゴンを両方分泌させるので2)のケースを除いては効果は相殺されて、血糖値にほとんど影響を与えない。」
7)「2)のようなケースでも、糖質制限食を導入することで、インスリンの量を大幅に減らすことができる。」
8)「2)のようなケースでは糖質制限に加えてタンパク質のカウントもするとコントロールはさらに良くなる。」
<タンパク質と血糖値上昇に関する考察>
①健常人では、タンパク質摂取で臨床上意味のある血糖値上昇はない。
②ほとんどの2型糖尿人においても、タンパク質摂取で臨床上意味のある血糖値上昇はない。
③1型糖尿人で、内因性インスリンがゼロレベルの場合、臨床上意味のある血糖値上昇がみられる。個人差が大きく、1gのタンパク質がグルカゴンを介して間接的に1~4mg/dlくらい血糖値を上昇させる。
④2型糖尿人でも、罹病期間が長くて、一定レベル以上β細胞が傷害されて、インスリン分泌能力が低下していれば、臨床上意味のある血糖値上昇が見られる。勿論こちらもグルカゴンを介しての間接的な血糖値上昇である。個人差があるので、血糖自己測定器で確かめるのがよい。
*③④の場合の血糖上昇は、インスリン分泌能力が非常に低下しているので、グルカゴンの糖新生による間接的血糖値上昇を、内因性インスリンで相殺できないからである。
*タンパク質と血糖値に関して実験する場合は鳥のササミだけを摂取して、含有タンパク量を計算して、
食前血糖値、30分後血糖値、1時間後血糖値、2時間後血糖値、3時間後血糖値・・・
と測定すれば、それぞれの個人のデータがわかる。
<余談>
2013/3/9日のNHKEテレ、名医にQ、糖尿病②(2012/12/8の再放送)での順天堂大学大学院教授河盛隆造氏の
「ステーキを食べても血糖値が上昇する。」
という発言は、聞いた人が、
「健常人や2型糖尿人がステーキを食べても血糖値が上昇する」
というふうに誤解する可能性が高いので、好ましくありません。
『内因性インスリンゼロレベルの1型糖尿病』や
『内因性インスリンゼロレベルの2型糖尿病』という
少数例における所見を一般化して表現するのは、フェアではありません。
「ステーキを食べても血糖値が上昇しない人がほとんどであり、上昇する人はごく少数例である。」というのが、正確な情報です。
江部康二
三大栄養素と血糖値について、相変わらず質問がありますので再考察してみます。
手元に、以下の米国糖尿病学会の本(英文の原書)があります。
糖尿病患者さん教育用のテキストブックです。
American Diabetes Association
Life With Diabetes:A Siries of Teaching Outlines
by the Michigan Diabetes Research and Training Center ,
-4th Edition-,2009
57ページに
「Carbohydrate,protein,and fat contain calories.
Only Carbohydrates directly affect blood glucose levels. 」
という文章が記載してあります。
-3th Edition-2004年版から、継続してこの記載があります。
直訳すると
「炭水化物・タンパク質・脂肪はカロリーを含有して
いる。
炭水化物のみが、血糖値に直接影響を及ぼす。」
つまりADAによれば、タンパク質と脂肪は血糖値に直接影響を及ぼすことはないのです。
直接という言葉が意味深で、下記2)のようなケースがあっても矛盾しない表現にしたのでしょうね。
ADA(米国糖尿病学会)、流石です。
<三大栄養素と血糖値上昇に関する考察>
さて「血糖に直接影響を与えるのは糖質のみ。」
というADA(米国糖尿病学会)の記載に関連する事柄を、1)~8)まで整理してまとめてみました。
1)「血糖値に直接影響を与えるのは糖質のみである」
2)「1型糖尿病で内因性インスリンが枯渇している場合や2型糖尿病でも内因性インスリンが枯渇に近いときは、グルカゴン分泌を介してタンパク質が間接的に血糖値を上昇させる」「タンパク質に含まれるアミノ酸がグルカゴンを分泌させるが、インスリンは分泌できない病態だからである」
3)「上記の2)を除く大多数の内因性インスリンが残っている糖尿病患者においては、摂取後血糖値を上昇させるのは糖質のみである。」「摂取したタンパク質によりグルカゴンが分泌されるが、同時にインスリンも分泌され効果が相殺されるからである」
4)「1)2)3)より、大多数の内因性インスリンが残っている糖尿病患者においては、糖質制限食が極めて有効である」
5)「脂質は直接的にも間接的にも血糖値を上昇させない」
「脂質はインスリンもグルカゴンも分泌させない。」
6)「タンパク質はインスリンとグルカゴンを両方分泌させるので2)のケースを除いては効果は相殺されて、血糖値にほとんど影響を与えない。」
7)「2)のようなケースでも、糖質制限食を導入することで、インスリンの量を大幅に減らすことができる。」
8)「2)のようなケースでは糖質制限に加えてタンパク質のカウントもするとコントロールはさらに良くなる。」
<タンパク質と血糖値上昇に関する考察>
①健常人では、タンパク質摂取で臨床上意味のある血糖値上昇はない。
②ほとんどの2型糖尿人においても、タンパク質摂取で臨床上意味のある血糖値上昇はない。
③1型糖尿人で、内因性インスリンがゼロレベルの場合、臨床上意味のある血糖値上昇がみられる。個人差が大きく、1gのタンパク質がグルカゴンを介して間接的に1~4mg/dlくらい血糖値を上昇させる。
④2型糖尿人でも、罹病期間が長くて、一定レベル以上β細胞が傷害されて、インスリン分泌能力が低下していれば、臨床上意味のある血糖値上昇が見られる。勿論こちらもグルカゴンを介しての間接的な血糖値上昇である。個人差があるので、血糖自己測定器で確かめるのがよい。
*③④の場合の血糖上昇は、インスリン分泌能力が非常に低下しているので、グルカゴンの糖新生による間接的血糖値上昇を、内因性インスリンで相殺できないからである。
*タンパク質と血糖値に関して実験する場合は鳥のササミだけを摂取して、含有タンパク量を計算して、
食前血糖値、30分後血糖値、1時間後血糖値、2時間後血糖値、3時間後血糖値・・・
と測定すれば、それぞれの個人のデータがわかる。
<余談>
2013/3/9日のNHKEテレ、名医にQ、糖尿病②(2012/12/8の再放送)での順天堂大学大学院教授河盛隆造氏の
「ステーキを食べても血糖値が上昇する。」
という発言は、聞いた人が、
「健常人や2型糖尿人がステーキを食べても血糖値が上昇する」
というふうに誤解する可能性が高いので、好ましくありません。
『内因性インスリンゼロレベルの1型糖尿病』や
『内因性インスリンゼロレベルの2型糖尿病』という
少数例における所見を一般化して表現するのは、フェアではありません。
「ステーキを食べても血糖値が上昇しない人がほとんどであり、上昇する人はごく少数例である。」というのが、正確な情報です。
江部康二
私が糖尿病性ケトアシドーシスで入院して退院したばかりのころ、夕食のたんぱく質で翌朝の血糖値が多少高くなることが何度かあったような気がします。特にチーズを多く食べたときなど・・・といっても、その上がり方は1型の方ほどは大きなものでは無かったです。
退院直前に受けたグルカゴン負荷試験の結果はかなりひどいもの(負荷前0.5→負荷後1.0)でしたから、2型でも自己分泌はかなり減っていたのかもしれません。
最近はどんなにステーキを食べても血糖値が上がることはありません。
退院直前に受けたグルカゴン負荷試験の結果はかなりひどいもの(負荷前0.5→負荷後1.0)でしたから、2型でも自己分泌はかなり減っていたのかもしれません。
最近はどんなにステーキを食べても血糖値が上がることはありません。
江部先生、いつもブログを拝見し、みなさんのコメントや質問を励みに、糖質制限を続けています。
幼い頃からのアトピーも今は症状が治まり、リンデロンやプロトピック軟膏も卒業することができました。しかし今の季節、発汗によるコリン性蕁麻疹や、あと温度差による寒冷蕁麻疹、温熱蕁麻疹は今もあります。糖質制限を続けていたら蕁麻疹の症状も良くなるのでしょうか?
あと、もうひとつお聞きしたいのですが、2型糖尿病もあり外食時はベイスンを服用しています。そこで質問なのですが、ベイスンはαグルコシターゼ阻害剤、グルコバイはαグルコシターゼ阻害に加えαアミラーゼ阻害もあると先生のブログにありますが、αアミラーゼとはでんぷんの事でしょうか?
片栗粉やコーンスターチ、じゃがいもやとうもろこし等に含まれるでんぷんは、ベイスンを服用していてもそのまま血糖値に影響されてしまうのであれば、グルコバイに変更してもらおうかと思っています。
先生、質問ばかりで申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
幼い頃からのアトピーも今は症状が治まり、リンデロンやプロトピック軟膏も卒業することができました。しかし今の季節、発汗によるコリン性蕁麻疹や、あと温度差による寒冷蕁麻疹、温熱蕁麻疹は今もあります。糖質制限を続けていたら蕁麻疹の症状も良くなるのでしょうか?
あと、もうひとつお聞きしたいのですが、2型糖尿病もあり外食時はベイスンを服用しています。そこで質問なのですが、ベイスンはαグルコシターゼ阻害剤、グルコバイはαグルコシターゼ阻害に加えαアミラーゼ阻害もあると先生のブログにありますが、αアミラーゼとはでんぷんの事でしょうか?
片栗粉やコーンスターチ、じゃがいもやとうもろこし等に含まれるでんぷんは、ベイスンを服用していてもそのまま血糖値に影響されてしまうのであれば、グルコバイに変更してもらおうかと思っています。
先生、質問ばかりで申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
2015/08/03(Mon) 15:37 | URL | ゆき | 【編集】
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