2015年07月14日 (火)
【15/07/12 まるお
いつもブログを楽しく拝見しております。
糖質制限がアメリカのDM患者の推奨食事には入ったということを話されていますが、同じくベジタリアン食も入っているようです。
この点のお考えを是非ご教授ください。】
こんにちは。
まるおさんから、米国糖尿病学会・成人糖尿病患者の食事療法に関する声明に関して、コメント・質問をいただきました。
米国糖尿病学会が2008年以来5年ぶりに、
成人糖尿病患者の食事療法に関する声明(Position Statement on Nutrition Therapy)
を改訂したと発表しました。(Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版)。
今回の声明では、全ての糖尿病患者に適した“one-size-fits-all(唯一無二の)”食事パターンは存在しないとの見解を表明しました。
そして、患者ごとにさまざまな食事パターン〔地中海食,ベジタリアン食,糖質制限食,低脂質食,DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食〕が受容可能であるとしています。
他の4種類の食事パターンと共に、糖質制限食もちゃんと認められています。
下記で明らかなように、糖質管理食も推奨していますので、米国の成人糖尿病患者は、6種の食事パターンの中から患者さんと主治医が相談して、患者さん自身が選択できるということです。
糖尿人の江部康二は、糖質制限食を選択して、2002年から続けていて、検査データは全て正常です。
私の担当する糖尿病患者さんや生活習慣病の患者さんには、もちろん糖質制限食を推奨しますが、押しつけることはありません。
日本糖尿病学会も、そろそろ「カロリー制限食」という「唯一無二の食事パターン」を糖尿人に押しつけるのはやめにする時期がきたのではないでしょうか?
少なくとも米国のように食事療法の選択肢を増やしたうえで、患者さんに選ぶ権利をあげるのがフェアと思います。
さらに主要栄養素の最適な混合の項目で、
「全ての糖尿病患者に最適な炭水化物、蛋白質、脂質における理想的な比率を示唆するエビデンスはない。」ということを、ランク(B)としています。
注目の炭水化物の項目では、
・糖尿病患者における炭水化物の理想的な摂取量については結論が得られていないため、各患者と協議した目標を設定すべきである。(C)
・炭水化物の摂取量とインスリン使用は食後のインスリン反応に最も影響を与える可能性があるため、食事療法の計画を立てる上で考慮されるべきである。(A)
・炭水化物摂取をモニタリングを、カーボカウントで行うか、あるいは経験に基づく推測で実施するかは、依然として血糖管理の改善における重要な戦略である。(A)
・健康を考慮し、炭水化物は、特に脂肪・砂糖・ナトリウムが添加された食品からよりも、野菜、果物、全粒、豆、乳製品からより多く摂取することを勧めるべきである。(A)
蛋白質:脂質:炭水化物のPFCバランスに関しては、エビデンスなしです。
炭水化物に関して、理想的な摂取量については、結論が得られていないということです。
一方、炭水化物摂取量の考慮、炭水化物摂取モニタリングはランク(A)で推奨しており、「炭水化物だけが、血糖値に変わる」という知識が医学界に周知されていることが前提になっていると思われます。
エビデンスの格付けの定義
A:質の高いRCTに基づく明確なエビデンス
B:質の高いコホート研究に基づく補助的エビデンス
C:質の高くない研究に基づく補助的エビデンス
E:専門家のコンセンサスまたは臨床経験
米国糖尿病学会(ADA)の2013年10月の「栄養療法に関する声明」ですが、多様性と個別化を目指す中で、今まで以上に糖質制限食を受容という方向で、とても好ましいです。
江部康二
☆☆☆
以下MT Pro記事から一部抜粋
糖尿病患者の食事療法に関する声明を5年ぶりに改訂,ADA
個別化を推奨
米国糖尿病学会(ADA)はこのほど,成人糖尿病患者の食事療法に関する声明(Position Statement on Nutrition Therapy)を改訂したと発表した(Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版)。2008年に前回の改訂が行われてから5年ぶり。今回の改訂のポイントは,各患者の健康に関する目標や知識,個人的嗜好または文化的背景などに加え,食生活の変更に対する意欲や能力などに基づいて個別化されるべきとしている点だ。なお,今回の改訂は成人の1型および2型糖尿病患者に限定したレビューに基づいており,2型糖尿病の発症予防や合併症管理,妊娠糖尿病などは含まれていない。
“one-size-fits-all”の食事パターンはなし,患者の積極的な参加が不可欠
糖尿病治療において,薬物療法の前に導入が推奨されている食事療法と運動療法。声明では,糖尿病患者における食事療法の理想について,“診断直後から管理栄養士(RD)もしくは米国外であれば有資格のプロ栄養士による指導が行われれるべき”と明記している。
しかしながら現状は厳しく,“米国の糖尿病患者の約半数がなんらかの糖尿病に関する教育を受けたが,RDとの面談ができたのはより少ない”とした。ある報告では,1万8,404例の糖尿病患者のうち,最低1回以上の栄養に関する介入を受けたのは,わずか9.1%であったという。
今回の声明では,全ての糖尿病患者に適した“one-size-fits-all(唯一無二の)”食事パターンは存在しないとの見解を表明。また,各患者が積極的に自己管理や教育に関わり,食生活の見直しを含む治療プランに医療者と共同で臨むことが不可欠である点も強調した。各患者の治療目標の達成と維持に向けて,患者ごとにさまざまな食事パターン〔地中海食,ベジタリアン食,糖質制限食,低脂質食,DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食〕が受容可能であるとしている。
19項目対象に提言とエビデンスの格付けまとめる
ADAは今回の声明において,最近のデータに基づき,食事療法全体の総括から食事パターンや各種食品,アルコールやナトリウム摂取に至るまで計19項目について提言およびエビデンスの格付けを次のようにまとめた(表)。
表が上手く表示できなかったので、食事療法の提言の記載を、以下一部転載。
食事療法の提言
食事療法の効果
・全ての1型・2型糖尿病患者において、食事療法は全治療計画の中で効果的である。 (A)
略
栄養バランス
・過体重・肥満の2型糖尿病患者の場合、減量を促進するために健康的な食事パターンを維持しながら摂取エネルギー量を抑制することが推奨される。(A)
略
主要栄養素の最適な混合
・全ての糖尿病患者に最適な炭水化物、蛋白質、脂質における理想的な比率を示唆するエビデンスはない。(B)
略
食事パターン
・糖尿病の管理において、さまざまな食事パターン(種類の異なる料理や食品群)は許容される。食事パターンの推奨に際しては、各患者の嗜好(例:伝統、文化、宗教、健康上の信念、目標、経済事情)および代謝目標が考慮されるべきである。(E)
炭水化物
・糖尿病患者における炭水化物の理想的な摂取量については結論が得られていないため、各患者と協議した目標を設定すべきである。(C)
・炭水化物の摂取量とインスリン使用は食後のインスリン反応に最も影響を与える可能性があるため、食事療法の計画を立てる上で考慮されるべきである。(A)
・炭水化物摂取をモニタリングを、カーボカウントで行うか、あるいは経験に基づく推測で実施するかは、依然として血糖管理の改善における重要な戦略である。(A)
・健康を考慮し、炭水化物は、特に脂肪・砂糖・ナトリウムが添加された食品からよりも、野菜、果物、全粒、豆、乳製品からより多く摂取することを勧めるべきである。(A)
グリセミック指数(GI)および血糖負荷
・GI値の高い食品から低い食品に代替することで、多少の血糖改善効果が得られる可能性がある。(C)
食物繊維および全粒
・糖尿病患者は、少なくとも一般人口で推奨されるのと同量の食物繊維および全粒を消費すべきである。
澱粉の代替品としてのショ糖
略
果糖
略
非栄養性甘味料(NNS)・低カロリー甘味料
略
蛋白質
略
総脂肪
略
一価不飽和脂肪酸(MUFA)・多価不飽和脂肪酸(PUFA)
略
ω3系脂肪酸
略
飽和脂肪・食事性コレステロール・トランス脂肪
略
植物スタノール・ステロール
略
微量栄養素・ハーブ系サプリメント
略
アルコール
略
ナトリウム
略
有益性に対するバイアスの検証や長期的に持続可能かなど今後の課題も提示
今回の改訂は,昨年発表された系統的レビューの結果に基づいて作成されたもの(関連記事,Diabetes Care 2012; 35: 434-445)。全ての患者に当てはまる唯一無二の食事療法は存在しないと明言し,各患者の健康に関する目標や知識,個人的嗜好または文化的背景などに加え,食生活の変更に対する意欲や能力などに基づいて個別化されるべきとしている。
しかし,現段階では文献によって結果が異なる点もあることを認め,特に以下のような点については今後の研究でさらなる検証が不可欠と指摘した。
・多様な集団における食事パターンと疾患の関連
・地中海式食事パターンにおける有益性に対するバイアスと,地中海式食事パターンを多様な集団用にアレンジすること
・糖質制限食や中等度糖質食の定義の標準化および長期的持続可能性に対する決定
これらに加え,より多くの糖尿病患者が診断直後から長期的な食事療法を導入することに関する体系的なプロセスについても検討が必要とした。
(編集部)
いつもブログを楽しく拝見しております。
糖質制限がアメリカのDM患者の推奨食事には入ったということを話されていますが、同じくベジタリアン食も入っているようです。
この点のお考えを是非ご教授ください。】
こんにちは。
まるおさんから、米国糖尿病学会・成人糖尿病患者の食事療法に関する声明に関して、コメント・質問をいただきました。
米国糖尿病学会が2008年以来5年ぶりに、
成人糖尿病患者の食事療法に関する声明(Position Statement on Nutrition Therapy)
を改訂したと発表しました。(Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版)。
今回の声明では、全ての糖尿病患者に適した“one-size-fits-all(唯一無二の)”食事パターンは存在しないとの見解を表明しました。
そして、患者ごとにさまざまな食事パターン〔地中海食,ベジタリアン食,糖質制限食,低脂質食,DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食〕が受容可能であるとしています。
他の4種類の食事パターンと共に、糖質制限食もちゃんと認められています。
下記で明らかなように、糖質管理食も推奨していますので、米国の成人糖尿病患者は、6種の食事パターンの中から患者さんと主治医が相談して、患者さん自身が選択できるということです。
糖尿人の江部康二は、糖質制限食を選択して、2002年から続けていて、検査データは全て正常です。
私の担当する糖尿病患者さんや生活習慣病の患者さんには、もちろん糖質制限食を推奨しますが、押しつけることはありません。
日本糖尿病学会も、そろそろ「カロリー制限食」という「唯一無二の食事パターン」を糖尿人に押しつけるのはやめにする時期がきたのではないでしょうか?
少なくとも米国のように食事療法の選択肢を増やしたうえで、患者さんに選ぶ権利をあげるのがフェアと思います。
さらに主要栄養素の最適な混合の項目で、
「全ての糖尿病患者に最適な炭水化物、蛋白質、脂質における理想的な比率を示唆するエビデンスはない。」ということを、ランク(B)としています。
注目の炭水化物の項目では、
・糖尿病患者における炭水化物の理想的な摂取量については結論が得られていないため、各患者と協議した目標を設定すべきである。(C)
・炭水化物の摂取量とインスリン使用は食後のインスリン反応に最も影響を与える可能性があるため、食事療法の計画を立てる上で考慮されるべきである。(A)
・炭水化物摂取をモニタリングを、カーボカウントで行うか、あるいは経験に基づく推測で実施するかは、依然として血糖管理の改善における重要な戦略である。(A)
・健康を考慮し、炭水化物は、特に脂肪・砂糖・ナトリウムが添加された食品からよりも、野菜、果物、全粒、豆、乳製品からより多く摂取することを勧めるべきである。(A)
蛋白質:脂質:炭水化物のPFCバランスに関しては、エビデンスなしです。
炭水化物に関して、理想的な摂取量については、結論が得られていないということです。
一方、炭水化物摂取量の考慮、炭水化物摂取モニタリングはランク(A)で推奨しており、「炭水化物だけが、血糖値に変わる」という知識が医学界に周知されていることが前提になっていると思われます。
エビデンスの格付けの定義
A:質の高いRCTに基づく明確なエビデンス
B:質の高いコホート研究に基づく補助的エビデンス
C:質の高くない研究に基づく補助的エビデンス
E:専門家のコンセンサスまたは臨床経験
米国糖尿病学会(ADA)の2013年10月の「栄養療法に関する声明」ですが、多様性と個別化を目指す中で、今まで以上に糖質制限食を受容という方向で、とても好ましいです。
江部康二
☆☆☆
以下MT Pro記事から一部抜粋
糖尿病患者の食事療法に関する声明を5年ぶりに改訂,ADA
個別化を推奨
米国糖尿病学会(ADA)はこのほど,成人糖尿病患者の食事療法に関する声明(Position Statement on Nutrition Therapy)を改訂したと発表した(Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版)。2008年に前回の改訂が行われてから5年ぶり。今回の改訂のポイントは,各患者の健康に関する目標や知識,個人的嗜好または文化的背景などに加え,食生活の変更に対する意欲や能力などに基づいて個別化されるべきとしている点だ。なお,今回の改訂は成人の1型および2型糖尿病患者に限定したレビューに基づいており,2型糖尿病の発症予防や合併症管理,妊娠糖尿病などは含まれていない。
“one-size-fits-all”の食事パターンはなし,患者の積極的な参加が不可欠
糖尿病治療において,薬物療法の前に導入が推奨されている食事療法と運動療法。声明では,糖尿病患者における食事療法の理想について,“診断直後から管理栄養士(RD)もしくは米国外であれば有資格のプロ栄養士による指導が行われれるべき”と明記している。
しかしながら現状は厳しく,“米国の糖尿病患者の約半数がなんらかの糖尿病に関する教育を受けたが,RDとの面談ができたのはより少ない”とした。ある報告では,1万8,404例の糖尿病患者のうち,最低1回以上の栄養に関する介入を受けたのは,わずか9.1%であったという。
今回の声明では,全ての糖尿病患者に適した“one-size-fits-all(唯一無二の)”食事パターンは存在しないとの見解を表明。また,各患者が積極的に自己管理や教育に関わり,食生活の見直しを含む治療プランに医療者と共同で臨むことが不可欠である点も強調した。各患者の治療目標の達成と維持に向けて,患者ごとにさまざまな食事パターン〔地中海食,ベジタリアン食,糖質制限食,低脂質食,DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食〕が受容可能であるとしている。
19項目対象に提言とエビデンスの格付けまとめる
ADAは今回の声明において,最近のデータに基づき,食事療法全体の総括から食事パターンや各種食品,アルコールやナトリウム摂取に至るまで計19項目について提言およびエビデンスの格付けを次のようにまとめた(表)。
表が上手く表示できなかったので、食事療法の提言の記載を、以下一部転載。
食事療法の提言
食事療法の効果
・全ての1型・2型糖尿病患者において、食事療法は全治療計画の中で効果的である。 (A)
略
栄養バランス
・過体重・肥満の2型糖尿病患者の場合、減量を促進するために健康的な食事パターンを維持しながら摂取エネルギー量を抑制することが推奨される。(A)
略
主要栄養素の最適な混合
・全ての糖尿病患者に最適な炭水化物、蛋白質、脂質における理想的な比率を示唆するエビデンスはない。(B)
略
食事パターン
・糖尿病の管理において、さまざまな食事パターン(種類の異なる料理や食品群)は許容される。食事パターンの推奨に際しては、各患者の嗜好(例:伝統、文化、宗教、健康上の信念、目標、経済事情)および代謝目標が考慮されるべきである。(E)
炭水化物
・糖尿病患者における炭水化物の理想的な摂取量については結論が得られていないため、各患者と協議した目標を設定すべきである。(C)
・炭水化物の摂取量とインスリン使用は食後のインスリン反応に最も影響を与える可能性があるため、食事療法の計画を立てる上で考慮されるべきである。(A)
・炭水化物摂取をモニタリングを、カーボカウントで行うか、あるいは経験に基づく推測で実施するかは、依然として血糖管理の改善における重要な戦略である。(A)
・健康を考慮し、炭水化物は、特に脂肪・砂糖・ナトリウムが添加された食品からよりも、野菜、果物、全粒、豆、乳製品からより多く摂取することを勧めるべきである。(A)
グリセミック指数(GI)および血糖負荷
・GI値の高い食品から低い食品に代替することで、多少の血糖改善効果が得られる可能性がある。(C)
食物繊維および全粒
・糖尿病患者は、少なくとも一般人口で推奨されるのと同量の食物繊維および全粒を消費すべきである。
澱粉の代替品としてのショ糖
略
果糖
略
非栄養性甘味料(NNS)・低カロリー甘味料
略
蛋白質
略
総脂肪
略
一価不飽和脂肪酸(MUFA)・多価不飽和脂肪酸(PUFA)
略
ω3系脂肪酸
略
飽和脂肪・食事性コレステロール・トランス脂肪
略
植物スタノール・ステロール
略
微量栄養素・ハーブ系サプリメント
略
アルコール
略
ナトリウム
略
有益性に対するバイアスの検証や長期的に持続可能かなど今後の課題も提示
今回の改訂は,昨年発表された系統的レビューの結果に基づいて作成されたもの(関連記事,Diabetes Care 2012; 35: 434-445)。全ての患者に当てはまる唯一無二の食事療法は存在しないと明言し,各患者の健康に関する目標や知識,個人的嗜好または文化的背景などに加え,食生活の変更に対する意欲や能力などに基づいて個別化されるべきとしている。
しかし,現段階では文献によって結果が異なる点もあることを認め,特に以下のような点については今後の研究でさらなる検証が不可欠と指摘した。
・多様な集団における食事パターンと疾患の関連
・地中海式食事パターンにおける有益性に対するバイアスと,地中海式食事パターンを多様な集団用にアレンジすること
・糖質制限食や中等度糖質食の定義の標準化および長期的持続可能性に対する決定
これらに加え,より多くの糖尿病患者が診断直後から長期的な食事療法を導入することに関する体系的なプロセスについても検討が必要とした。
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