2015年06月08日 (月)
【15/06/07 糖質制限推進Dr@北九州
大腸ガンと動物性脂肪
江部先生 こんばんは
いつもお世話になっております。
先生のブログ、いつも楽しみに読ませていただいております。
さて、先月、俳優の今井雅之さんが大腸ガンで急逝されましたが、大変ショッキングなニュースであり、テレビでも消化器専門医が出てきて、近年のわが国における大腸ガン増加の要因について解説されていて、食事の欧米化にともなう動物性脂肪の摂取の増加が大きな要因である、みたいなコメントをされていました。
糖質制限は必然的に動物性脂肪を増やすことになり、糖質セイゲニストの方の中には、不安に思われている方もおられると推察致します。
おそらくバイアスのかかった疫学的な調査データからの推測であり、有意なエビデンスはないのではないかと思われますが、先生のご意見をお聞かせいただけましたら幸いです。】
糖質制限推進Dr@北九州 さん
コメントありがとうございます。
世界ガン研究基金2011年の報告
結腸・直腸ガンと食べ物のリスク
確定リスク
赤肉
加工肉
酒(男性)
おそらくリスク
酒(女性)
世界ガン研究基金によれば、結腸・直腸ガンの確定リスクは、赤肉・加工肉・酒です。
女性では、お酒はおそらくリスクです。
赤肉ですから、動物タンパクが主成分ですが脂肪もあります。
100g中
和牛赤身ヒレで、
15.0の脂質、19.1gのタンパク質、
サーロインで、
23.7の脂質、17.4gのタンパク質です。
しかしながら、確定リスクの『赤身肉・加工肉・酒 』にしても、糖質を普通に、40~60%食べている集団においてということです。
従って、糖質摂取比率12%くらいの「スーパー糖質セイゲニスト」には、そもそも無関係のお話しです。
正確にはスーパー糖質セイゲニストにおいては『赤身肉・加工肉・酒 』が結腸・直腸ガンのリスクになるかどうか、エビデンスはないということです。
一方、理論的には、発ガンの明白なリスクである「高血糖」と「高インスリン血症」が、一日を通してスーパー糖質セイゲニストではみられないので、発ガン予防の観点からは、大きなアドバンテージと言えます。
さらに、米国医師会雑誌、2006年2月8日号に掲載された3本の論文において
「<低脂肪+野菜豊富な食生活>は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げないし、総コレステロール値も不変であった。」
という報告がなされました。
米国医師会雑誌は、インパクトファクターが高く、ニューイングランドジャーナルに次ぐ権威有る医学雑誌です。
RCT研究論文ですので、エビデンスレベルも信頼度が高いです。
5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した結果です。
高額の費用をつぎ込んだ大規模臨床試験で、二度とできない高いレベルの研究です。
2万5千人ずつにグループ分けをして、一方は、脂肪熱量比率20%で強力に低脂肪食を指導しました。
残るグループは脂肪制限なしなので、米国女性平均なら30数%の脂肪摂取比率です。
平均的米国女性に対して、約半分近くまで脂肪摂取比率を厳格に減らして臨床試験を実施したわけです。
研究をデザインした医師は、
「高脂肪食が大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクを増大させる=脂肪悪玉説」
という従来の定説を掲げて、それを証明するためにこのRCTを実施したと思います。
すなわち、
「低脂肪食実践により、大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクが減少する」
と信じてこのRCTを開始したと考えられます。
ところが、豈図らんや、低脂肪食は、乳ガン、大腸ガン、心血管疾患リスクを全く下げなかったのです。
これは、即ち、脂肪悪玉説が根底から否定されたということです。
結論です。
『5万人を8年間追跡したJAMA掲載のRCT研究論文で、
少なくとも乳ガン・大腸ガン・心血管疾患に関しては、脂肪悪玉説は否定された。』
ということになります。
脂肪悪玉説を根底から覆す良質の信頼度の高いエビデンスですね。
*Journal of American Medical Association(JAMA)誌
2006年2月8日号の疾患ごとにまとめられた3本の論文で報告。
*Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Colorectal Cancer
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease
: The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial
JAMA ,295(6):629-642. 643-654. 655-666.
大腸ガンと動物性脂肪
江部先生 こんばんは
いつもお世話になっております。
先生のブログ、いつも楽しみに読ませていただいております。
さて、先月、俳優の今井雅之さんが大腸ガンで急逝されましたが、大変ショッキングなニュースであり、テレビでも消化器専門医が出てきて、近年のわが国における大腸ガン増加の要因について解説されていて、食事の欧米化にともなう動物性脂肪の摂取の増加が大きな要因である、みたいなコメントをされていました。
糖質制限は必然的に動物性脂肪を増やすことになり、糖質セイゲニストの方の中には、不安に思われている方もおられると推察致します。
おそらくバイアスのかかった疫学的な調査データからの推測であり、有意なエビデンスはないのではないかと思われますが、先生のご意見をお聞かせいただけましたら幸いです。】
糖質制限推進Dr@北九州 さん
コメントありがとうございます。
世界ガン研究基金2011年の報告
結腸・直腸ガンと食べ物のリスク
確定リスク
赤肉
加工肉
酒(男性)
おそらくリスク
酒(女性)
世界ガン研究基金によれば、結腸・直腸ガンの確定リスクは、赤肉・加工肉・酒です。
女性では、お酒はおそらくリスクです。
赤肉ですから、動物タンパクが主成分ですが脂肪もあります。
100g中
和牛赤身ヒレで、
15.0の脂質、19.1gのタンパク質、
サーロインで、
23.7の脂質、17.4gのタンパク質です。
しかしながら、確定リスクの『赤身肉・加工肉・酒 』にしても、糖質を普通に、40~60%食べている集団においてということです。
従って、糖質摂取比率12%くらいの「スーパー糖質セイゲニスト」には、そもそも無関係のお話しです。
正確にはスーパー糖質セイゲニストにおいては『赤身肉・加工肉・酒 』が結腸・直腸ガンのリスクになるかどうか、エビデンスはないということです。
一方、理論的には、発ガンの明白なリスクである「高血糖」と「高インスリン血症」が、一日を通してスーパー糖質セイゲニストではみられないので、発ガン予防の観点からは、大きなアドバンテージと言えます。
さらに、米国医師会雑誌、2006年2月8日号に掲載された3本の論文において
「<低脂肪+野菜豊富な食生活>は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げないし、総コレステロール値も不変であった。」
という報告がなされました。
米国医師会雑誌は、インパクトファクターが高く、ニューイングランドジャーナルに次ぐ権威有る医学雑誌です。
RCT研究論文ですので、エビデンスレベルも信頼度が高いです。
5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した結果です。
高額の費用をつぎ込んだ大規模臨床試験で、二度とできない高いレベルの研究です。
2万5千人ずつにグループ分けをして、一方は、脂肪熱量比率20%で強力に低脂肪食を指導しました。
残るグループは脂肪制限なしなので、米国女性平均なら30数%の脂肪摂取比率です。
平均的米国女性に対して、約半分近くまで脂肪摂取比率を厳格に減らして臨床試験を実施したわけです。
研究をデザインした医師は、
「高脂肪食が大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクを増大させる=脂肪悪玉説」
という従来の定説を掲げて、それを証明するためにこのRCTを実施したと思います。
すなわち、
「低脂肪食実践により、大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクが減少する」
と信じてこのRCTを開始したと考えられます。
ところが、豈図らんや、低脂肪食は、乳ガン、大腸ガン、心血管疾患リスクを全く下げなかったのです。
これは、即ち、脂肪悪玉説が根底から否定されたということです。
結論です。
『5万人を8年間追跡したJAMA掲載のRCT研究論文で、
少なくとも乳ガン・大腸ガン・心血管疾患に関しては、脂肪悪玉説は否定された。』
ということになります。
脂肪悪玉説を根底から覆す良質の信頼度の高いエビデンスですね。
*Journal of American Medical Association(JAMA)誌
2006年2月8日号の疾患ごとにまとめられた3本の論文で報告。
*Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Colorectal Cancer
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease
: The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial
JAMA ,295(6):629-642. 643-654. 655-666.
こんにちは。
いつも、ブログを更新
してくださって、ありがとうございます。
糖質制限を始めて4か月たちました。食後血糖値は
100を超えることはなくなりました。
以前、江部先生のブログに薬も飲まず、インスリンも打っていないのに、
運動をした後の血糖値が
30mgや40mgの低い値になるとコメントしました。
(安静時も夕食前は40mgになることがあります。)
その後、担当のお医者さんに相談しましたが、自己血糖測定機の数値が怪しい、あまり神経質にならない
ようにとのことでした。
確かに、私の持っている
血糖測定機は脱水状態だと低い数値をしめす可能性があると説明書に書いていました。最近はどんなに低血糖になっても40mgは下回らないことにも気付きました。ふっと、私は人より遅れてインスリンが出ているのでは?と感じることもあります。
一般に低血糖の状態も
単純性網膜症に良くないと言われていますが、
食後血糖値の上がり幅が
30mgや40mgと少ない上がり幅でも網膜症には良くないのでしょうか?
少し、心配です。
また、なぜ、低血糖も
網膜症には良くないと言われているのでしょうか?
ご迷惑をおかけしますが、知恵を貸して頂けると
助かります。
よろしくお願い致します。ちなみに低血糖の症状は
皆無です。
いつも、ブログを更新
してくださって、ありがとうございます。
糖質制限を始めて4か月たちました。食後血糖値は
100を超えることはなくなりました。
以前、江部先生のブログに薬も飲まず、インスリンも打っていないのに、
運動をした後の血糖値が
30mgや40mgの低い値になるとコメントしました。
(安静時も夕食前は40mgになることがあります。)
その後、担当のお医者さんに相談しましたが、自己血糖測定機の数値が怪しい、あまり神経質にならない
ようにとのことでした。
確かに、私の持っている
血糖測定機は脱水状態だと低い数値をしめす可能性があると説明書に書いていました。最近はどんなに低血糖になっても40mgは下回らないことにも気付きました。ふっと、私は人より遅れてインスリンが出ているのでは?と感じることもあります。
一般に低血糖の状態も
単純性網膜症に良くないと言われていますが、
食後血糖値の上がり幅が
30mgや40mgと少ない上がり幅でも網膜症には良くないのでしょうか?
少し、心配です。
また、なぜ、低血糖も
網膜症には良くないと言われているのでしょうか?
ご迷惑をおかけしますが、知恵を貸して頂けると
助かります。
よろしくお願い致します。ちなみに低血糖の症状は
皆無です。
2015/06/08(Mon) 22:10 | URL | momo | 【編集】
momo さん
食後の血糖上昇が30mgや40mgと少ないのはとても良いことです。
低血糖があると、拮抗ホルモンが分泌されて、反動で高血糖になることがあります。
低血糖があることによって、不整脈、狭心症、心筋梗塞などの病気が誘発される、あるいは悪化することが報告されています。
また、
脳・赤血球と共に、網膜の糖輸送体は、GLUT1ですので、空腹時でもブドウ糖をエネルギー源としていると思います。
筋肉などは、空腹時には脂肪酸-ケトン体エネルギーシステムを使っています。
従って、網膜は筋肉などより、低血糖に弱くて、エネルギー不足になりやすいと思います。
食後の血糖上昇が30mgや40mgと少ないのはとても良いことです。
低血糖があると、拮抗ホルモンが分泌されて、反動で高血糖になることがあります。
低血糖があることによって、不整脈、狭心症、心筋梗塞などの病気が誘発される、あるいは悪化することが報告されています。
また、
脳・赤血球と共に、網膜の糖輸送体は、GLUT1ですので、空腹時でもブドウ糖をエネルギー源としていると思います。
筋肉などは、空腹時には脂肪酸-ケトン体エネルギーシステムを使っています。
従って、網膜は筋肉などより、低血糖に弱くて、エネルギー不足になりやすいと思います。
2015/06/09(Tue) 12:26 | URL | ドクター江部 | 【編集】
| ホーム |