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インスリンの必要性と弊害。2015年5月。
こんばんは。

今回はインスリンに関して、少し整理整頓してみましょう。

インスリンって、人体でどのような役割を果たしているのでしょう?

そしてインスリンは人体に絶対に必要なホルモンなのでしょうか?

インスリンには、24時間継続して少量出続けている基礎分泌と、糖質を摂取して血糖値が上昇したときに出る追加分泌の2種類があります。

これでまず解るのは、食物を摂取していないときでも、人体の代謝には、少量のインスリンが必須ということですね。

このインスリンの基礎分泌がなくなったら、人体の代謝全体が崩壊していきます。

つまり、基礎分泌のインスリンがないと、全身の高度な代謝失調が生じ、生命の危険があります。

例えば「運動をしたらインスリン非依存的に血糖値がさがる」といっても、インスリン基礎分泌が確保されているのが前提のお話です。

もし、基礎インスリンが不足している状態で運動すれば、運動で血糖値はかえって上昇します。

また、肝臓で行っている糖新生も、基礎インスリンが分泌されていなければ制御不能となり、空腹時血糖値が300mg/dl~400mg/dl、或いはこれ以上にもなります。

また、糖質を食べて血糖値が上昇したとき、追加分泌のインスリンがでなければ、高血糖が持続します。

高血糖の持続は糖毒といわれ、膵臓のβ細胞を傷害し、インスリン抵抗性を悪化させます。

急激に発症するタイプの1型糖尿病であれば、短期間でインスリン分泌が枯渇しますので、基礎分泌も追加分泌もなくなり血糖値が急上昇して、随時で250~500mg/dl、時には600mg/dl~1000mg/dlにもなります。

インスリンがないと筋肉細胞や脂肪細胞はブドウ糖を利用できないので高血糖が持続します。

そしてブドウ糖が利用できないので、脂肪酸や脂肪酸の分解産物のケトン体をエネルギー源にします。

糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度な代謝失調です。

強調しますが、インスリン作用の欠乏がすべての出発点ですから、それがなければ絶対に起こらない病態です。

つまり、インスリン作用の欠乏から始まる一連の流れ、

「インスリン作用の欠乏→拮抗ホルモンの過剰→全身の代謝障害→糖利用の低下・脂肪分解の亢進→高血糖・高遊離脂肪酸血症→ケトン体の産生亢進」

があり、結果としてケトン体が高くなるわけです。

ケトン体が高値となったとき、高度の代謝失調のため、緩衝作用もうまく働かず、酸性血症となり意識障害を生じ、放置すれば死にいたります。

このように、インスリン作用が欠落しているときの血中ケトン体上昇は病的であり、極めて危険です。

インスリンが発見される以前の1型糖尿病は、発症後、平均半年で死にいたる、致命的な病だったのです。

一方、糖質制限食やケトン食や断食でも、血中ケトン体が上昇しますが、これはインスリン作用が確保されている「生理的ケトン体上昇」なので、全く危険はありません。

例えば、胎盤のケトン体値は、成人の基準値の20~30倍あり、新生児は4~5倍ですが、それが普通であり、勿論全く安全ですね。

さてブドウ糖が、細胞膜を通過するためには、特別な膜輸送タンパク質が必要です。

それが糖輸送体(GLUT)であり、現在GLUT1~GLUT14まで確認されています。

GLUT1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で常に細胞の表面にあり、血流さえあれば即血糖を取り込めます。

これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特異的なのがGLUT4で、基礎分泌のインスリンレベルだと、通常は細胞内部に沈んでいます。

GLUT1~GLUT14の中で、インスリンに依存しているのはGLUT4だけで特殊です。

筋肉細胞と脂肪細胞にあるGLUT-4は、インスリン追加分泌がないと細胞内に沈んでいるのでブドウ糖を取り込めません。

インスリンが追加分泌されるとGLUT-4は細胞表面に移動して血糖を取り込むのです。

上述のようにインスリンは、人体の生存に必須のホルモンであることが確認できました。

なお、必須ホルモンですが、血糖コントロールの折り合いが付く限り、少なければ少ないほど、身体には優しいのです。

過剰のインスリンは、発がん、肥満、アルツハイマ-病などのリスクになります。

インスリンは糖質代謝の調整が主作用ですが、それ以外にも下記のごとくいろいろな働きがあります。


☆☆☆インスリンの作用

インスリンは、グリコーゲン合成・タンパク質合成・脂肪合成など、栄養素の同化を促進し、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込む。

インスリンが作用するのは、主として、筋肉(骨格筋、心筋)、脂肪組織、肝臓である。

1)糖質代謝
*ブドウ糖の筋肉細胞・脂肪細胞内への取り込みを促進させる。
*グリコーゲン合成を促進させる。
*グリコーゲン分解を抑制する。
*肝臓の糖新生を抑制し、ブドウ糖の血中放出を抑制する。

2)タンパク質代謝
*骨格筋に作用してタンパク質合成を促進させる。
*骨格筋に作用してタンパク質の異化を抑制する。

3)脂質代謝
*脂肪の合成を促進する。
*脂肪の分解を抑制する。


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
お尋ねしたいことがあります
先日血液検査でHbA1cが8.7、血糖値が224と結果が出ました。バセドウ病を患っているのですが高雄病院への入院は可能ですか?このような状態でも投薬や食事療法で改善できるのでしょうか。インスリンの注射に抵抗があり不安でたまりません。
記事内容と関係の無い質問でもうしわけありません
2015/05/19(Tue) 22:42 | URL | 九州 | 【編集
インスリン体験報告です
 江部先生、毎日のブログ更新、ありがとうございます。
 ナツメ社の新刊、Amazonで購入しました。在庫切れになっていましたから、好調に売れているようですね。
 また、それだけニーズがあると思います。旧版には、たいへんお世話になりました。
 半年前に劇症1型糖尿病を発症して以来、江部先生の本でたくさんのことを学び、糖質制限を実践してきました。
 そして、この重篤な病気からたくさんのことを学びました。江部先生という存在を知ったことや、1型糖尿人で80歳を超えてお元気なバーンスタイン先生の「糖尿病の解決」と出会ったことです。
 私の敬愛する塩谷信男医学博士(100歳まで現役で活躍されました)がモットーとされた「人生に無駄はない」を体験している最中です。
 「糖尿病の解決」は絶版かと思っていましたら、Jeidoさんという方から、「版元の金芳堂のHP http://www.kinpodo-pub.co.jp/shosai/e0404-1399-5.html から普通に購入できますよ。送料500円かかりますが」と、ご親切な連絡がありました。
 インスリンが生命維持に不可欠な1型糖尿人は絶対に読むべき本です。英語の原書もたいへんわかりやすいですから、海外の方はこちらをどうぞ。
 今日、先生や1型糖尿人の方、21万人の方々に聞いていただきたいのは、インスリンポンプのことです。
 入院中、インスリン注射の仕方を教わり、「インスリンポンプはどうですか? あなたでしたら使えると思います」と主治医にすすめられました(電子機器であり、表示はすべて英語なので、ハードルが高いわけです)。
 インスリンポンプは24時間、体に装着し、ベーサル=基礎インスリンを毎時、0.1単位から設定でき、朝昼晩と注入できるスグレモノです。朝から昼が0.3単位、夜間が0.35単位とか設定できます。
 そしてボーラスは食事前の血糖値を測り、いただく糖質に合わせてリスプロ(ヒューマログ)を注入します。ベーサルもボーラスもリスプロというのは、ひとつ問題で、バーンスタイン先生も指摘されていますが、インスリンポンプ人の大規模な人体実験でどうなるか、今後、わかってくるものと思われます。
 ちなみに、バーンスタイン先生は、ポンプのトラブルを指摘されて、注射を推奨されています。
 トラブルの最大のものは、インスリンポンプ人となって半年間の私の血糖値記録を見ましても、きちんとインスリンが注入できず、高血糖状態が続くトラブルが5、6回あったことです。
 先週、天皇皇后両陛下がゆかれた金沢市を旅行しました。1型のインスリンポンプ人ですから、旅行には緊急時の注射器も持参します。
 糖質制限食が、外食でしたからむずかしくて、血糖値が300mg/dl超えを記録し、2日間、200mg/dl超えでした。後で判明したのはポンプのトラブルでした!
 (ところで、インスリンポンプは2日目、あるいは3日目にリザーバーの消耗品を交換する必要があります。これが結構面倒です。体に装着するのもコツがあるようですし、部位を上手に選定しなければなりません)
 残念なことに、インスリンポンプのトラブルは、主治医もそれほど知識はなく、メーカーもトラブルの24時間相談で対応してはいますが、トラブル情報を積極的に開示していません。
 ですから、1型糖尿人のインスリンポンプは、かなりリスクがあると思います。それでも、私は1年間、この人体実験を続けて、ヘモグロビンA1c5.0=平均血糖値100mg/dlが実現できるかどうか、挑戦してみようと思っています。
 バーンスタイン先生は正常人の85mg/dlを長年、スーバー糖質制限食とインスリン注射で実践されてきましたから、それよりゆるめの100mg/dlを目指しています。
 しかし、インスリンポンプにはリスクがあります。私が体験したトラブルです。
 過去の経験から、旅行から帰って「これはおかしい」と思って、消耗品を交換しました。
 そしてリスプロ3単位を注入しましたら、200超えから180台、そして120台へと順調に落ち着いてゆきました。
 2日間、200超えでしたが、からだに支障、違和感はまったく出ませんでした。これが糖尿病の怖いところですね。

 私が得た教訓としては、
1)インスリンポンプ人はこまめに血糖値を測定すること(いつ何時、ポンプが不調となり、血糖値が下がらない事態が起きるかわからないからです)。
2)半日くらい、インスリンを注入しても血糖値が下がらないなら、消耗品を取り替えてしまう。そして注入し、効果の出ている1時間後の血糖値を測定すること。
3)インスリンポンプ人には糖質制限が絶対に必要。それに1型人も、2型人でインスリンを注射している人も絶対に必要です。なぜなら、「糖尿病の解決」にあるように、インスリンの効果の誤差が大学の研究で明らかになっているからです。
 注射ですら29%もの誤差があります。インスリンポンプはもっと大きいでしょう。
 もしも、糖質制限人には絶対NG(ノー・グッド)のカレーをいただくために、7単位のリスプロを打つとすれば、誤差は2単位もあります。
 2単位の誤差は、80mg/dlにもなりますから、とんでもない高血糖、あるいは低血糖になりかねません。
 クルマ社会のアメリカでは、糖尿人が低血糖で起こした事故が多発していると、バーンスタイン先生は述べています。そしてスーパー糖質制限を実践する前に、ご自分が交通事故で死ななかったのは幸運な偶然の結果だと明かされています。

 最後に、2型糖尿人も、毎日2、3回は血糖値を測っていただきたいですね。
 そのためには、センサーと針のセットで200回分が10980円(1回50円程度)のこちらを利用しましょう。並行輸入品です。

http://www.kettochi.biz/

 冒頭に以下の説明があり、信頼できます。ただし、「昆布」を推奨するなど、小さなミスはあるようですが。

<最新のⅡ型糖尿病治療
最新のⅡ型糖尿病治療として注目されているのが「糖質制限食」です。正しい順序で炭水化物を最後に食べる方法は理に適っていますが、炭水化物でも糖質の含有量は様々です。それらを知っておく事で、糖質の少ないものを選ぶ事もでき、食事療法の効果を高めますので、ここでは最新のⅡ型糖尿病治療も参考に紹介しておきます。しかし「こうしなければいけない、これは絶対ダメ」という自分を追い詰めてしまう気持ちが一番継続の妨げになってしまうので、正しい知識を身につけた上、自分に合った方法で継続していきましょう。
 (以下略)>

2015/05/20(Wed) 05:56 | URL | ちくてつです | 【編集
Re: お尋ねしたいことがあります
九州 さん

バセドウ病の治療はしておられるのでしょうか?
バセドウ病がコントロールできているなら、入院は可能です。
2015/05/20(Wed) 13:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: インスリン体験報告です
ちくてつ さん

拙著のご購入、ありがとうございます。

インスリンポンプの詳しい情報もありがとうございます。
とても参考になります。
2015/05/20(Wed) 14:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生こんにちは。
以前、コメントさせていただきました、
糖質制限を継続してます。

質問がありまして、書かせていただきます。

私は10年程前からバセドウ病です。
今年の初め、
HbA1c9.1
空腹時230
となりました。
糖質制限のおかげで、
HbA1c6.5
空腹時80台になりました。

年末くらいから、落ち着いていたはずの
バセドウ病の数値が
悪くなりました。

血糖値が高くなったのも、その頃からなのです。
糖尿病とバセドウ病は関係ありますか?
バセドウ病のせいで高血糖になる事は
ありますか?
2015/05/22(Fri) 12:40 | URL | みいこ | 【編集
Re: タイトルなし
みいこ さん

バセドウ病のせいで高血糖になる事は
あります。

甲状腺機能亢進症が糖代謝異常をきたす機序としては,

1)甲状腺ホルモンによる胃蠕動(いぜんどう)亢進および小腸からのブドウ糖吸収促進 
2)インスリン分泌の感受性亢進 
3)肝臓や筋肉,脂肪細胞におけるインスリン感受性の低下 
4)肝臓や筋肉,脂肪細胞における糖輸送担体の発現増加 
5)脂質代謝の変化による糖代謝の悪化

などが言われています。
バセドウ氏病では甲状腺ホルモンの上昇により肝臓における糖新生が亢進するため血糖値は
増加するとされています。
2015/05/22(Fri) 18:32 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生

詳しく説明して頂いて、
ありがとうございます。
バセドウがまた落ち着くと、
糖尿病も良くなるかもしれません。

パニック障害もあり、投薬中です。糖質制限で良くなってる気がします。

お忙しい中、ありがとうございました。

2015/05/22(Fri) 19:06 | URL | みいこ | 【編集
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