2008年02月13日 (水)
おはようございます。
朝起きたら道も屋根も車も一面白銀の世界でした。しかも深々とさらに降り積もっています。
京都が雪国のようです。今冬一番の雪となるでしょう。
さて、長時間の運動に関してmyさんから質問をいただきました。
『運動時のインスリン
こんにちは、先生。
長時間の運動のエネルギー源として、利用される順番を、
①筋の中のグリコーゲン
②血液中のグルコースと遊離脂肪酸
③肝から放出されるグルコース
と、理解していますが、正しいでしょうか?
また、これらを利用する際、インスリンがないとケトン体の生合成が増大する、正しいでしょうか?
そのインスリン量は、運動量に比例するのでしょうか?
以前、基礎インスリンだけで運動して、BGが上昇したり、低血糖になったりと一定しなかったので疑問に思っています。
運動後に③の失われた肝への補充のために、長時間後にも低血糖の可能性があるのだと考えていますが、間違っておりますか?
判りやすく、ご教示いただけたら嬉しいです。
2008/02/10(日) 17:19:03 | URL | my』
myさん、コメント・質問ありがとうございます。
長時間の運動とエネルギー源、なかなか難しいテーマですので、いろいろ混乱があるようです。まずは整理整頓してみましょう。
長時間の運動のごく初期の1.2分は、嫌気的代謝も利用されます。即ち、高強度の運動時と同様、筋肉細胞はまず自前で貯蔵していたATPを使います。直後にクレアチンリン酸を利用してADPからATPを再合成します。
その後、グリコーゲン分解と解糖からのATP供給が始まり、20秒くらい持続します。これらは全て嫌気的エネルギーで、供給速度が速いです。
この間徐々に脂肪と糖質の酸化的リン酸化による好気的エネルギー供給に代わります。
1.2分を過ぎてくると大部分が好気的代謝になっていきます。
嫌気的代謝と好気的代謝のどちらが主となるかは運動強度で違い、下記の如くです。
<運動強度と嫌気的代謝・好気的代謝>
100m競争だと、嫌気的代謝が90%で好気的代謝が10%
400m競争だと、嫌気的代謝が70%で好気的代謝が30%、
800m競争だと、嫌気的代謝が40%で好気的代謝が60%、
1500mは、それぞれ20%と80%
10000mは、それぞれ3%と97%
42.195km(マラソン)は、それぞれ1%と99%
好気的代謝には「脂肪酸-ケトン体システム」と「グリコーゲン-ブドウ糖システム」があります。
そして、長時間の運動(30~180分間は維持できる運動強度)であれば、筋肉は脂肪酸-ケトン体のシステムを中心に利用します。一流スポーツアスリートは、筋肉細胞中の脂肪滴は多く、また血液中の脂肪酸の利用能力も高まっています。
勿論、筋肉中のグリコーゲン-ブドウ糖のシステムを全く利用しないということではありませんし、血液中のブドウ糖も利用します。
あくまでも脂肪とブドウ糖のどちらが主エネルギー源か比率の問題です。
一般には強度の高い運動ほど、エネルギー供給速度の速いグリコーゲン-ブドウ糖システムの利用比率が増します。
この時、鍛えられたアスリートほど、ある程度の強度の運動でも、脂肪酸-ケトン体システムを上手に使いこなしますので、筋肉中のグリコーゲンを最後まで節約できます。
そして、ラストスパートで高強度の運動の時に、一気にグリコーゲン-ブドウ糖システムを全開していきます。
ここからは、ご質問に関してお答えします。
まずインスリンですが、基礎分泌は24時間常に少量でています。一方追加分泌のインスリンは、食事(主として糖質)で血糖値が上昇した時に分泌され、それにより筋肉細胞や脂肪細胞にブドウ糖が取り込まれます。追加分泌のインスリンがなければ筋肉細胞は血液中のブドウ糖をほとんど取り込めません。
一方、運動で筋肉が収縮すると、インスリンの追加分泌がなくても、筋肉細胞は血液中のブドウ糖を取り込めます。
このように、運動によるブドウ糖取り込み促進は、インスリンとは無関係であるのが特徴です。
それから、脂肪酸-ケトン体システムが活性化しているときは、当然血液中のケトン体濃度は上昇しますが、これはインスリン基礎分泌が確保されていて生理的なのものなので、何の心配もいりません。(カテゴリーのケトン体の項をご参照くださいね)
また運動に関しては、2007.6.24、6.26のブログも参照していただけば幸いです。
なお、空腹時には、筋肉などほとんどの組織は、エネルギー源として脂肪酸-ケトン体システムを主として利用します。空腹時の血中へのブドウ糖供給源は、肝臓でのグリコーゲン分解から糖新生が中心となり、脳.赤血球などで利用します。
運動を長時間していての低血糖は、肝臓の糖新生が間に合わないときに発生すると考えられます。
江部康二
朝起きたら道も屋根も車も一面白銀の世界でした。しかも深々とさらに降り積もっています。
京都が雪国のようです。今冬一番の雪となるでしょう。
さて、長時間の運動に関してmyさんから質問をいただきました。
『運動時のインスリン
こんにちは、先生。
長時間の運動のエネルギー源として、利用される順番を、
①筋の中のグリコーゲン
②血液中のグルコースと遊離脂肪酸
③肝から放出されるグルコース
と、理解していますが、正しいでしょうか?
また、これらを利用する際、インスリンがないとケトン体の生合成が増大する、正しいでしょうか?
そのインスリン量は、運動量に比例するのでしょうか?
以前、基礎インスリンだけで運動して、BGが上昇したり、低血糖になったりと一定しなかったので疑問に思っています。
運動後に③の失われた肝への補充のために、長時間後にも低血糖の可能性があるのだと考えていますが、間違っておりますか?
判りやすく、ご教示いただけたら嬉しいです。
2008/02/10(日) 17:19:03 | URL | my』
myさん、コメント・質問ありがとうございます。
長時間の運動とエネルギー源、なかなか難しいテーマですので、いろいろ混乱があるようです。まずは整理整頓してみましょう。
長時間の運動のごく初期の1.2分は、嫌気的代謝も利用されます。即ち、高強度の運動時と同様、筋肉細胞はまず自前で貯蔵していたATPを使います。直後にクレアチンリン酸を利用してADPからATPを再合成します。
その後、グリコーゲン分解と解糖からのATP供給が始まり、20秒くらい持続します。これらは全て嫌気的エネルギーで、供給速度が速いです。
この間徐々に脂肪と糖質の酸化的リン酸化による好気的エネルギー供給に代わります。
1.2分を過ぎてくると大部分が好気的代謝になっていきます。
嫌気的代謝と好気的代謝のどちらが主となるかは運動強度で違い、下記の如くです。
<運動強度と嫌気的代謝・好気的代謝>
100m競争だと、嫌気的代謝が90%で好気的代謝が10%
400m競争だと、嫌気的代謝が70%で好気的代謝が30%、
800m競争だと、嫌気的代謝が40%で好気的代謝が60%、
1500mは、それぞれ20%と80%
10000mは、それぞれ3%と97%
42.195km(マラソン)は、それぞれ1%と99%
好気的代謝には「脂肪酸-ケトン体システム」と「グリコーゲン-ブドウ糖システム」があります。
そして、長時間の運動(30~180分間は維持できる運動強度)であれば、筋肉は脂肪酸-ケトン体のシステムを中心に利用します。一流スポーツアスリートは、筋肉細胞中の脂肪滴は多く、また血液中の脂肪酸の利用能力も高まっています。
勿論、筋肉中のグリコーゲン-ブドウ糖のシステムを全く利用しないということではありませんし、血液中のブドウ糖も利用します。
あくまでも脂肪とブドウ糖のどちらが主エネルギー源か比率の問題です。
一般には強度の高い運動ほど、エネルギー供給速度の速いグリコーゲン-ブドウ糖システムの利用比率が増します。
この時、鍛えられたアスリートほど、ある程度の強度の運動でも、脂肪酸-ケトン体システムを上手に使いこなしますので、筋肉中のグリコーゲンを最後まで節約できます。
そして、ラストスパートで高強度の運動の時に、一気にグリコーゲン-ブドウ糖システムを全開していきます。
ここからは、ご質問に関してお答えします。
まずインスリンですが、基礎分泌は24時間常に少量でています。一方追加分泌のインスリンは、食事(主として糖質)で血糖値が上昇した時に分泌され、それにより筋肉細胞や脂肪細胞にブドウ糖が取り込まれます。追加分泌のインスリンがなければ筋肉細胞は血液中のブドウ糖をほとんど取り込めません。
一方、運動で筋肉が収縮すると、インスリンの追加分泌がなくても、筋肉細胞は血液中のブドウ糖を取り込めます。
このように、運動によるブドウ糖取り込み促進は、インスリンとは無関係であるのが特徴です。
それから、脂肪酸-ケトン体システムが活性化しているときは、当然血液中のケトン体濃度は上昇しますが、これはインスリン基礎分泌が確保されていて生理的なのものなので、何の心配もいりません。(カテゴリーのケトン体の項をご参照くださいね)
また運動に関しては、2007.6.24、6.26のブログも参照していただけば幸いです。
なお、空腹時には、筋肉などほとんどの組織は、エネルギー源として脂肪酸-ケトン体システムを主として利用します。空腹時の血中へのブドウ糖供給源は、肝臓でのグリコーゲン分解から糖新生が中心となり、脳.赤血球などで利用します。
運動を長時間していての低血糖は、肝臓の糖新生が間に合わないときに発生すると考えられます。
江部康二
またまた、興味深いシリーズです。
1月のハーフマラソンで面白い試みをしました。
朝食を摂らずにハーフマラソンを完走できるか?です。
>そして、長時間の運動(30~180分間は維持できる運動強度)であれば、
>筋肉は脂肪酸-ケトン体のシステムを中心に利用します。
~中略~
>そして、ラストスパートで高強度の運動の時に、一気にグリコーゲン-ブドウ糖
>システムを全開していきます。
この引用部分の内容を薄々、感じてましたので、完走できる確信がありました。
結果、予想通り、ハンガーノックにもならず、ラスト3kmからのスパートも
ばっちりでした。
1月のハーフマラソンで面白い試みをしました。
朝食を摂らずにハーフマラソンを完走できるか?です。
>そして、長時間の運動(30~180分間は維持できる運動強度)であれば、
>筋肉は脂肪酸-ケトン体のシステムを中心に利用します。
~中略~
>そして、ラストスパートで高強度の運動の時に、一気にグリコーゲン-ブドウ糖
>システムを全開していきます。
この引用部分の内容を薄々、感じてましたので、完走できる確信がありました。
結果、予想通り、ハンガーノックにもならず、ラスト3kmからのスパートも
ばっちりでした。
明けましておめでとう、ございます!先生ますますご活躍ですね!なんと私も血糖測定器買いました!早朝空腹時は85~105の間!お昼の炭水化物少量摂取50分後は150~170!夜は糖質オフ豪華おつまみアンド赤ワイングラス4杯後一時間~2時間は100行くかいかないか多いときで120です!そして成人病検診がありましてAl1cは5.1、その日の空腹時は93でした!総」コレステロールは230で高め中性脂肪は146、HDLコレステは73でこれもちょっと高めです!血糖以外ではγGTP26散々呑んでる割にはとっても低くうれしいです!
抗がん剤前は90位ありました。私のまわりでまずどこも悪くない姉が体重4キロ減!会社の同僚も糖質を気にしだしました!ガンからとりあえず生還して堺型とも先生のおかげで楽しく生活してるので、皆関心あるようです!糖質オフして楽しく美味しく、病気の再発のもなくこれでいいのかしらん
ってちょっと不安なくらいです!
ワインとチーズ最高ですね!外呑みでは樽生があるお店ではビール呑んでますウフフフッフ
先生ごめんなさい!





2008/02/13(Wed) 21:35 | URL | みどり | 【編集】
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