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”高血糖の呪い”は解けないのか?MT Pro記事。DCCTとEDIC。
こんばんは。

『”高血糖の呪い”は解けないのか?』

という記事が、2015年2月18日の、MT Proサイトに掲載されました。

米国の1型糖尿病の研究である「DCCT(1983~93年」と「EDIC」の27年目の最新の報告がJAMA(2015; 313: 45-53)に報告されました。

その記事について、北里研究所病院糖尿病センターの山田悟氏が解説しています。

詳しくは、本ブログの最後の青字のMT Pro記事をご参照いただけば幸いです。

DCCTの2群
1)厳格管理群
  研究開始後6.5年間を厳格に管理して平均HbA1c7.0%であった群
2)従来管理群
  研究開始後6.5年間を従来血糖管理して平均HbA1c9.0%であった群

DCCTが1993年に終了した時点で、厳格管理群が、従来管理群に比べて細小血管障害を有意に抑制できることが示されました。

DCCTは1,441例の研究(厳格血糖管理群711例,従来血糖管理群730例)です。

その後、従来管理群も厳格に管理を開始して、継続的に研究を続けたのがEDICです。

今回のJAMAの報告は2012年12月31日までの平均27年のフォローアップデータです。

結論としては、当初の6.5年間の9.0%と7.0%のハンディが、27年目経過しても残存していました。

計107例が亡くなっており、うち43例が厳格血糖管理群、64例が従来血糖管理群だった患者であり、両群の死亡率には有意差がありました。

長い年月が経過しても、当初のハンディが残存していたことを山田氏は、”高血糖の呪い”と呼ぶのが妥当かもしれないとしています。

こうなると、

いかに早く糖尿病を見つけて血糖コントロール良好に持っていくか

に尽きますね。

一方、糖尿病の慢性合併症である心血管死、がん死、腎不全死については明確に厳格血糖管理群で少なかったのに対して、典型的な糖尿病の合併症とはされない低血糖死、事故死、自殺については、厳格血糖管理群の方が多かったということです。

これらを総合的に考察すると、DCCTにおいてもEDICにおいても、HbA1cが厳格に管理されたとき、いい側面があることは間違いないです。米国で1型糖尿病なので、カーボカウントはしていると思います。

しかし、糖質を普通に摂取してインスリン注射をしているわけですから、例えカーボカウントをしていても、カーボカウントしないよりは、大分ましだと思いますが「食後高血糖」や「低血糖」や「平均血糖変動幅増大」は、かなりの確率で生じています。
これらが、27年間、毎日のように起きていたわけです。

仮にスーパー糖質制限食であれば、1型であってもインスリンの量は、食前の超速効型は1/3以下に減らせるので、「食後高血糖」や「低血糖」や「平均血糖変動幅増大」は、かなり起きにくくなります。

これにより心血管死、がん死、腎不全死もかなり減らせた可能性があります。


スーパー糖質制限食で1型でも合併症なしの生き証人の一人は、バーンスタイン医師ですね。


江部康二



☆☆☆
MT Pro記事
2015年2月18日から一部転載

ドクターズアイ
“高血糖の呪い”は解けないのか?

DCCT/EDIC 27年のフォローアップ結果から
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟

研究の背景:腎障害,心血管イベントで示された “metabolic memory”,死亡でも存在?


 DCCT(Diabetes Control and Complications Trial)は,1型糖尿病患者に対する厳格血糖管理(平均6.5年の介入期間中の平均HbA1c 7.0%)が従来血糖管理(同9.0%)と比較して,細小血管障害を有意に抑制できることを示した臨床糖尿病学の金字塔ともいうべき研究である(N Engl J Med 1993; 329: 977-986)。この介入試験が1993年に終了した後,従来血糖管理群に割り付けられていた患者も厳格血糖管理を受けるよう勧められ,その後の合併症の発症状況を観察した前向き研究が継続された。これがEDIC(Epidemiology of Diabetes Control and Complications)である。

 これまでのEDICからの知見では,かつて厳格血糖管理群と従来血糖管理群に割り付けられていた人では,その後比較的速やかに血糖管理状況が同等になったにもかかわらず,その後も腎障害(N Engl J Med 2011; 365: 2366-2376)や心血管イベント(N Engl J Med 2005; 353: 2643-2653)において発症率に継続して差異が生じることが示されてきた。これらの結果は“metabolic memory”と呼ばれ,身体にはかつての高血糖の記憶が刷り込まれ,その後,血糖を厳格に管理してもなかなかその悪影響を払拭することができないのだとされてきた。

 このたび,死亡率に対するかつての血糖管理の差異の影響を見た結果がJAMA(2015; 313: 45-53)に報告されたのでご紹介したい。

研究のポイント1:かつての厳格血糖管理により10万例・年当たり132例のリスク減少

 前述のようにDCCTは臨床糖尿病学の金字塔のような研究であり,その後の観察研究であるEDICも含めて知らないという方はさほど多くはないであろう。米国およびカナダの27の専門施設で行われた介入試験(1983~93年)がDCCTであり,その後の実地医家の管理下でのフォローアップがEDICである。

 今回の報告は2012年12月31日までの平均27年のフォローアップデータである。元来のDCCTは1,441例の研究(厳格血糖管理群711例,従来血糖管理群730例)であり,2012年12月31日時点で1,429例(99.2%)の生死を確認することができた。計107例が亡くなっており,うち43例が厳格血糖管理群,64例が従来血糖管理群だった患者であり,両群の死亡率には有意差があった(ハザード比0.67,P=0.04; 図)。


 これを絶対リスク減少で示すと10万例・年当たり132例とのことであった〔治療必要人数(NNT)で見ると,758例に厳格血糖管理をして1年当たり1例の生命を救えるという計算になる〕。

研究のポイント2:死因は心血管死,がん死,急性合併症死の順

 これを死因で分類すると,心血管死(22例),がん死(21例),急性合併症死(19例)が上位3位であり,事故(11例)や自殺(7例)もある程度の数になっていた。

 ここで確認しておきたいことは,糖尿病の慢性合併症である心血管死,がん死,腎不全死(表の中ではその他に分類)については明確に厳格血糖管理群で少なかったのに対して,典型的な糖尿病の合併症とはされない低血糖死,事故死,自殺については(統計学的な解析はなされていないが)厳格血糖管理群の方が多かったということである。


私の考察:“厳格管理の負担”を患者に強いることなく“高血糖の呪い”を解く

 本研究の結果は,“早期の血糖管理が重要である”という,これまでDCCT/EDICやUKPDS(N Engl J Med 2008; 359: 1577-1589)が示してきた概念を再び示している。このmetabolic memoryあるいはlegacy effectと呼ばれる概念は,既に確立されたものである。しかし,それでも私にとって今回のデータはとても衝撃的であった。それは,初期の6.5年の治療成績の影響が,その後20年の厳格な血糖管理によっても消せなかったということである。

 従来血糖管理群は,その後の治療を放棄したわけではない。それどころか実地医家の下で厳格血糖管理を目指していたわけである。それでも,初期の6.5年の血糖管理の差異を埋めることができないとすると,初期に数年血糖管理を放棄した患者を診療する際に無力感を感じてしまう。診断後,数年間,治療を怠る患者は世の中に多数存在する。そうした患者を私たちは未来永劫救うことができないのであろうか。Metabolic memory,legacy effectは“代謝上の記憶”“遺産効果”というよりも“高血糖の呪い”と呼ぶ方が妥当なのかもしれない。

 しかも,従来管理群の患者に対してその後の20年の治療では呪いが解けなかっただけではない。厳格血糖管理群に対しても多くの負担を強いていたことが示唆される。つまり,低血糖,事故,自殺による死亡は厳格血糖管理群の方が多いということである。「“高血糖の呪い”を避けるために“厳格管理の負担”を強いる」。これがかつての(これまでの)1型糖尿病の治療だったといえるのかもしれない。

 ただ,幸いにして臨床糖尿病学はDCCTが実施された1980年代から急速に進歩を遂げている。超速攻型インスリンアナログ(リスプロ,アスパルト,グルリジン),持効型溶解インスリンアナログ(グラルギン,デテミル,デグルデク)が日常的に使用され,また,持続的インスリン皮下注入療法(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion;CSII)を実施している患者も増えつつある。きっと,今であれば高血糖の呪いはそこまで大きなものではないと信じたい。

 そして,ついにパーソナル持続的血糖モニター(CGM)機能の付いたCSII(sensor augmented insulin pump;SAP)が日本においても本稿をアップした当日(2月18日)に発売された(関連リンク)。血糖の変動速度とともに示されるreal timeの皮下間質液中のグルコース濃度は,低血糖アラームの利用とともに,1型糖尿病患者の血糖管理を大いに改善してくれると期待されるし(N Engl J Med 2010; 363: 311-320,Diabetologia 2012; 55: 3155-3162),適切に利用すれば患者の負担感・不安感も軽減される可能性がある(Diabetes Technol Ther2012; 14: 143-151,Diabet Med 2013; 30: 464-467)。SAPを治療法として導入した患者の経済的な負担額はまだ不明であり,ことによると医療機関にも経済的負担が出る可能性もあるが,ぜひ,薄利多売の精神に合致する金額が設定されるよう祈りたい。

 “厳格管理の負担”を患者に強いることなく,“高血糖の呪い”を解くべく,これからもわれわれ糖尿病医は奮闘しなくてはなるまい。


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
重い言葉ですね
『呪い』とはまさにその通りですね。
食後高血糖の可能性を勧める方々は、呪術師ということになりますね。
先生はヒーラー的な役割でしょうか。
後はみな致命的な疾患がない限り、『勇者』にならなければいけませんね。
2015/02/22(Sun) 18:34 | URL | クワトロ | 【編集
Re: 重い言葉ですね
クワトロ さん

「糖質制限食」というアイテムで、「高血糖の呪い」を打ち砕くことができますね。
2015/02/22(Sun) 19:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
私も去年一型糖尿病が判明して、その時には腎症も二期になっているのがわかって、すごくショックでした。

でも糖質制限で、インスリンの量や食後高血糖のリスクも減らすことができることを知って、血糖値をできるだけコントロールして前向きに頑張っていこうという気持ちになれました。

おかげ様で腎症も糖質制限を始めたその次の検診で一期になりました!

バーンスタイン教授を見習って私も70歳まで生きて、主人と老後を迎えたいです!

江部先生これからも頑張ってくださいね!
2015/02/22(Sun) 22:34 | URL | みよ | 【編集
Re: タイトルなし
みよ さん

1型糖尿病で、糖質制限食実践により、糖尿病腎症第2期から第1期に改善とは
素晴らしいです。

このまま美味しく楽しく末長く糖質制限食を続けられて、合併症を予防してくださいね。
2015/02/23(Mon) 18:11 | URL | ドクター江部 | 【編集
呪い…
同僚が糖尿病宣告され、まさに呪いにハマりはじめています。
主治医はカロリー制限派のようで、血糖の上下変動に振り回されている同僚が可哀想でなりません。
真面目な同僚なので主治医の言うことは絶対と、江部先生の著書も受け入れません。主治医がそんな本を読むなと言ったようです。
こういったことも過去から引き継がれてきた呪いかなぁと、読んでいて思いました。
2015/02/25(Wed) 11:26 | URL | どり | 【編集
Re: 呪い…
どり さん

問題は守旧派の医師の最新知識の不勉強に尽きると思います。
同僚はお気の毒ですが、ご自分で考えてそれを選択されたということになります。
2015/02/25(Wed) 13:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
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