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一旦診断された糖尿病は治るか?治らないか?
【15/02/12 バッテラ

C-ペプチドの値

江部先生
いつも有益な情報を提供していただきありがとうございます。

私もカロリー制限から糖質制限に切り替えて4か月目
Hb1Acの値が11から5.8まで改善し尿と血液の検査結果がすべて正常値となりました。
体重も120kgからもう少しで90kgを切るところまで減らすことができました。
(無論運動もしています)

先日の通院時に現時点での私のインスリン分泌能力がどのくらいなのかを調べてもらうためC-ペプチドの値も追加したのですが

もしこの値が正常値1.2-2.0ng/mlだった場合、糖尿病は治ったと言えるのでしょうか?

当然ながら値がどうであろうと糖質制限を続けていく予定ですが
ある程度は緩和できるのかなと淡い期待をしています。
(お米も芋も麺もパンもこの4か月我慢してきたのでさすがに少し辛いです)

お忙しいところ恐縮ですが、お時間あるときにでも回答いただけると幸いです。】


こんにちは。

バッテラさんから、HbA1cが11%から5.8%に改善し、すべての血液・尿検査が正常値になったというとても嬉しいコメントを頂きました。

さらに、120kgが90kgまで減量成功ですから素晴らしいですね。

さて、バッテラさんから、頂いた質問なのですが、一旦診断された糖尿病は、治るのでしょうか?治らないのでしょうか?

一般には、「一旦糖尿病になったら決して治らない。」というのが定説ですが、本当のところはどうなのでしょう。

それではまず、どのようにして糖尿病が発症するのかを考えてみます。

日本人の糖尿病発症は、食後高血糖が数年間続いているのを見逃しているうちに、遂に空腹時血糖値が上昇してきて、健康診断で発見されたというパターンが多いです。

即ち、当初は食後高血糖にならないように、糖質を摂取したあと膵臓のβ細胞がインスリン追加分泌を頑張って大量に出し続けていきます。

インスリン(肥満ホルモン)の大量分泌が一定期間続くと肥満を生じることもあります。

肥満があるとインスリン抵抗性(効きが悪くなる)が出現します。

そして長年β細胞が頑張った結果、ある日とうとう疲弊して分泌が追いつかなくなってきて、食後高血糖の段階に至ります。

この段階では、インスリン追加分泌の軽度の不足があり、食後2時間血糖値値が140~199mgの境界型レベルになりますが、まだ基礎分泌は保たれていて早朝空腹時血糖値は、110mg/dl未満で正常範囲を保つことがほとんどです。
 
食後高血糖の段階になると、高血糖そのものが膵臓のβ細胞を障害します。

食後高血糖が180mgを超えてくると、β細胞への直接のダメージでインスリン分泌不足を悪化させ、また筋肉細胞のインスリン抵抗性も増してきて、糖毒と呼ばれる悪循環を生じます。

食後高血糖が数年間続くと、膵臓はさらに疲弊していき、インスリン追加分泌の不足に加えて、インスリン基礎分泌不足となり、とうとう早朝空腹時血糖値が高値となるのです。

空腹時血糖値が126mg/dl以上
随時血糖値が200mg/dl以上

で糖尿病型と診断されます。

糖毒状態が1日の中でも長時間続くようになれば、急速に糖尿病が悪化していきます。

糖尿病は、「インスリン分泌不足」と「インスリン抵抗性」が合わさって発症しますが、日本人は、インスリン分泌不足が主で、欧米人は、インスリン抵抗性が主とされています。

インスリン分泌不足とインスリン抵抗性を合わせて、「インスリン作用不足」と言います。

A)<インスリン分泌不足が主の糖尿病>

インスリン分泌不足が主の場合、糖尿病と診断された時点で、インスリンを作っている膵臓のランゲルハンス島のβ細胞の2~3割が壊れていて、2~3割が疲弊していて、健常なのは、残りの半分くらいと考えられます。

一般に、糖尿病が治らないと言われるのは、既に壊れてしまったβ細胞は、決して元に戻らないと言う意味です。

しかし、糖質制限食を実践して、膵臓が充分休養できれば、疲弊していたβ細胞が、正常に回復することが期待できます。

実際、入院時の空腹時血糖値が200mg近かった方が、糖質制限食実践数日~10日で、110mgを切ってくることもあります。特に罹病期間が短い場合は、回復が早いです。

食後高血糖の期間・年数が長いほど、β細胞がダメージを受けている割合が徐々に増えていき、ダメージが大きい細胞は、回復しにくくなっていくということになります。

次にインスリン抵抗性が主の糖尿病を考えてみます。

B)<インスリン抵抗性が主の糖尿病>

この場合、インスリン分泌能力はあるていど保たれていることが多いのです。

日本人でもこのタイプが少し増えてきています。

例えば、高度肥満や脂肪肝がありインスリン抵抗性が高まれば、インスリンは分泌されていても、糖尿病を発症することがあります。

このとき何らかの方法で肥満や脂肪肝が改善すれば、インスリン抵抗性が減少します。

そうすると、適量のインスリンで筋肉細胞や脂肪細胞内にブドウ糖を取り込むことが可能となり、元々インスリン分泌不足は、ほとんどないので血糖値は正常化し、糖尿病が治ることになります。

治るという言い方に語弊があるなら、インスリン作用不足が改善し健常のパターンに戻るということです。

実際、そういう患者さんを数名経験しました。

例えば、「空腹時血糖値218mg/dl、HbA1c11.7%、163cm、72kg」だった女性が、内服薬なしでスーパー糖質制限食を1年続けて、60kgと肥満が解消し、HbA1cは5.5%前後で保ち、糖質を普通に摂取しても食後2時間血糖値が140mg/dl未満となりました。勿論、空腹時血糖値も正常範囲です。

血液検査のデータでは、診断基準上は正常人としかいいようがありませんので、糖尿病のレッテルも消えました。

現段階なら、この患者さんが糖尿病専門医を受診して、いろいろ血液検査をされたとしても「糖尿病ではありません。診断基準からみて正常です。」という診断となるでしょう。

バッテラさんの場合、120kgが90kgまで減量成功ですから、インスリン抵抗性がおおいに改善していると考えられます。

一番上手くいけば、B)の女性ケースと同様に、治ったように見えるまで回復している可能性もあります。

一方、β細胞があるていど壊れていれば、現在HbA1c:5.8%で、空腹時血糖値もCペプチド値も正常でも、普通に糖質を食べたら、食後血糖値は180~200mg/dlを超えてきます。


江部康二の場合は、インスリン分泌不足が主でインスリン抵抗性が従の糖尿病でして、スーパー 糖質制限食を続けているかぎりは正常人ですが、糖質を摂取すれば残念ながら食後時間血糖値は200mgを超えて、立派な糖尿病です。

β細胞が既に2~3割壊れていて、決して治らないパターンですね。(×_×)

結論です。

「インスリン抵抗性が主の糖尿病なら、抵抗性が改善すれば、糖代謝が正常人のパターンに戻る人もまれにいる。」ということですね。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖質オフ生活はやめるべき?
江部先生こんばんは

いつも拝見しています。ありがとうございます。


最近こんな記事を見つけました。管理栄養士の方のお話です。

「糖質オフを実践している人はたんぱく質を摂りすぎてしまう傾向があります。それにより腎臓に負担がかかるため、老廃物が体にたまりやすくなり、高血圧や動脈硬化、血管障害を引き起こす恐れがあります。今すぐ糖質オフ生活はやめるべきです」

http://news.nifty.com/cs/item/detail/postseven-20150209-302611/1.htm


私は反論したいのですが、なんと反論していいのか?言い方が見つかりません。江部先生のご意見を伺いたいと思い投稿させてもらいました。

よろしくお願いします。
2015/02/13(Fri) 21:25 | URL | サンボラ | 【編集
インフルエンザ
先生こんばんはm(_ _)m講演会や本を熟読させてもらい時々、質問させてもらっているオサムです!
今日は質問ではなくなんちゃって臨床試験の報告です!
私は糖尿病ではないのですが昨年の8月からスーパー糖質制限を開始し身長173㎝、体重67キロ、体脂肪率15パーセントに5ヶ月でなることが出来ました!それまでは85キロの肥満でした!スタイルが良くなって嬉しい以外での報告です!
その1高血圧が治まってきた
その2肌ツヤ良好!エゴマ油のおかげ?
その3!これがもっとも不思議なんですが…まったく風邪を引かなくなったのです!風邪とは違いますが家族がインフルエンザで全滅しても私は大丈夫でした!ノロウィルスの時も感染せず!先日、常備薬として置いている富山の薬屋がきて、まったく薬が使われてないのでびっくりしてました!ってのも毎年、私の風邪の影響で1万円は薬屋に支払ってたのが子供の絆創膏と虫刺されの塗り薬のみで商売あがったり状態でした!
これは大げさですが癌とかにもならないような気がしてきました。高血糖からインスリンってスパイク現象がどれだけ体に負担か改めて気づいたので報告させていただきました!ちなみ今年、私はインフルエンザの予防接種もしてないですが家族はみんな接種しててインフルになってましたf^_^;)
2015/02/14(Sat) 00:15 | URL | オサム | 【編集
Re: 糖質オフ生活はやめるべき?
サンボラ さん

日本腎臓病学会CKDガイド2013によれば、
eGFRが60ml以上ある場合は、タンパク質制限の必要なしです。

まして腎機能が正常な人は、タンパク制限の必要なしです。

腎機能が正常な人が、タンパク質を多く摂って腎臓に負担がかかるということには、エビデンスは全くないです。

「老廃物が体にたまりやすくなり、高血圧や動脈硬化、血管障害を引き起こす恐れがあります」
こちらも全く、無根拠です。

2015/02/14(Sat) 08:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: インフルエンザ
オサム さん

それは、とても素晴らしいですね。
糖質制限食で全身の血流・代謝がよくなります。
血糖値の変動やインスリンの過剰分泌もなくなります。

身体にはとてもいい影響がでると思います。
それでも、油断は禁物で、インフルエンザの予防には手洗いとうがいもお忘れなくです。
2015/02/14(Sat) 08:20 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖質オフ生活はやめるべき?
アイスやハムも「オフ・ゼロ」 健康志向が追い風

http://www.asahi.com/articles/ASH2B4GFDH2BPLFA008.html
2015/02/14(Sat) 11:35 | URL | 精神科医師A | 【編集
たんぱく質
こんばんは。
質問なのですが、ゆるゆるの糖質制限者で、eGFRが60ml以上ある正常人もたんぱく質を多く摂取しても問題ないのでしょうか?
2015/02/14(Sat) 18:33 | URL | さゆり | 【編集
食事摂取基準の変遷
食事摂取基準2015

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042630.pdf

P98

 健康な人でも、たんぱく質を過剰に摂取すると、1週間程度の短期では腎血行動態に変化をもたらして尿中アルブミンが増加するが 82)、中期的には腎機能へ与える影響はほとんどない 83-85)。たんぱく質が糖尿病腎症のない糖尿病において、腎症発症リスクになるとする明らかな根拠はない。
 しかし、日本人を含む調査によれば、たんぱく質の過剰摂取が糖尿病や心血管疾患の発症リスク増加につながる可能性がある 86-90)。たんぱく質エネルギー比率が20%エネルギーを超えた場合の健康障害として、糖尿病発症リスクの増加、心血管疾患の増加、がんの発症率の増加、骨量の減少、BMIの増加などが挙げられる。
 たんぱく質と糖尿病発症リスクとの関係を認めた研究 91-94)並びに、最近の系統的レビュー 94)では、これらのどの事象についても明らかな関連を結論することはできないとしながら、たんぱく質エネルギー比率が20%エネルギーを超えた場合の安全性は確認できないと述べ、注意を喚起している。




食事摂取基準2010

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4f.pdf

P69

40歳以下の健康な成人に 1.9~2.2g/kg体重/日のたんぱく質を一定期間摂取させると、インスリンの感受性低下、酸・シュウ酸塩・カルシウムの尿排泄増加、糸球体ろ過量の増加、骨吸収の増加、血漿グルタミン濃度の低下などの好ましくない代謝変化が生じることが報告されている68)。
 また、65歳以上の男性に2g/kg 体重/日以上のたんぱく質を摂取させると、血中尿素窒素が10.7mmol/L以上に上昇し、高窒素血症が発症することが報告されている69)。
 これらの報告より、成人においては年齢にかかわらず、たんぱく質摂取は 2.0g/kg体重/日未満に留めるのが適当である。


<感想>
 蛋白質の多量摂取に関しては、2015年では2010年と比べ、やや支持的になっています。
2015/02/14(Sat) 20:35 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: たんぱく質
さゆり さん

問題ないです。
2015/02/15(Sun) 08:49 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 食事摂取基準の変遷
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
97ページに以下の文言もありますね。

3─1.耐容上限量の設定
 たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなけ
ればならない。しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は
十分には見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした。


結局、現時点では、タンパク質をたくさん食べて危険という根拠もないけれど
たくさん食べても安全という根拠もないということですね。
2015/02/15(Sun) 09:28 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生ありがとうございました。
無根拠ですね。


2015/02/15(Sun) 10:03 | URL | サンボラ | 【編集
健常人のたんぱく質摂取量
何事においても肯定派と否定派に分かれているのが世の中の常なのでしょうか・・・。
その中で何を信じるかは個人の自由であり、自分の感性と運なのかも知れませんね。
私はこれまでもこれからも江部先生を信じたいと思います。
精神科医師A 様の知識の多さにも恐れ入ります。
ありがとうございました。
2015/02/15(Sun) 11:00 | URL | さゆり | 【編集
治るか治らないか
ご自身を例にあげ、誤読のおきづらいすばらしいまとめだと思いました。若輩者の内科系いしですが、糖尿患者さんに是非とも伝えてみたいです。
2015/02/24(Tue) 10:49 | URL | しましま | 【編集
33歳にして一型糖尿病に
初めまして江部先生。
私は今年の5月の会社の検診にて一型糖尿病と診断を受けました。Ha1c10.9で空腹時血糖値が256で入院を強いられました。入院中、色々調べていく中で江部先生の本に出会い、現在糖質制限をしています。現在のHa1cは5.4,インスリンは持続型と即効型を使っていますが、よく低血糖を起こします。
2016/09/07(Wed) 19:11 | URL | rainbow | 【編集
Re: 33歳にして一型糖尿病に
rainbow さん

自分自身の内因性インスリンが、分泌されている可能性があります。

その場合、糖質制限食なら、食前のインスリン注射の単位を1/3以下に減らせます。

持続型インスリンは、不変~3/4~2/3~1/2量とかに減らせることが多いです。

血清のCペプチドを測定して、自分自身の内因性インスリンの量をしっておきましょう。


2016/09/07(Wed) 23:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
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