糖質制限食の安全性にエビデンス。能登論文に反論。
こんにちは。

第24回日本疫学会学術総会(2014年1月23日~25日、仙台)で報告されたNIPPON DATA 80の研究成果が論文として、英文雑誌に掲載されました。(☆)

NIPPON DATA 80の29年間の追跡結果データを検討したもので、論文の筆者の中村保幸先生は、私の京大医学部の同級生です。

NIPPON DATA(National Integrated Project for Prospective Observation of Non-communicable Disease And its Trends in the Aged)は、日本の前向きコホート試験です。

日本全国から選ばれた13771人の30歳以上の住民が対象で、登録に同意した10546人をその後、経過観察しました。

1980年に基礎調査が行われたコホートがNIPPON DATA80です。

今回の研究報告は、2009年の時点での死亡データを解析したものです。

登録時のデータがない者、登録時点で心血管イベントの既往のあった者、経過観察ができなかった者を除いて、9200人(女性5160人、男性4040人)での解析が行われました。

9200人を29年間追跡して、

第1分位:糖質を一番摂取している群:糖質摂取比率は総摂取エネルギーの72.7%
第2分位~第9分位
第10分位:糖質制限を一番している群:糖質摂取比率は総摂取エネルギーの51.5%

糖質を一番摂取している群から順番に一番摂取してない群まで10群に分けて検討です。

その結果、

第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、
第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて、

女性においては心血管死のリスクが59%、総死亡のリスクが79%しかないという素晴らしい結論

で、糖質制限食の圧勝です。

なんと緩やかな糖質制限食でも、女性では、糖質たっぷり食に比べたら4割以上、心血管死が減るということですね。

男女合わせた解析でも心血管死リスクが74%、総死亡リスクが84%と低下しました。
男性単独では、有意差がでませんでした。

ともあれ、糖質制限食にとって、画期的な信頼度の高いエビデンスが登場したと言えます。

あくまでも私の個人的な意見ですが、緩やかな糖質制限食でこれだけの有意差が出たのなら、スーパー糖質制限食ならもっともっとすごい差がでるでしょうね。

一方、中村保幸先生のご指摘通り、私が実践している糖質摂取比率12%のスーパー糖質制限食に関しては、この報告にはデータがありません。

従って、この報告がそのままスーパー糖質制限食の安全性を担保するエビデンスにはなりません。

しかし、「平均血糖変動幅増大と食後高血糖」という最大の酸化ストレスリスクを生じない唯一の食事療法がスーパー糖質制限食ですから、長期的安全性も悪かろうはずがないですね。

中村保幸先生、貴重な信頼度の高いデータ報告をありがとうございました。


なお2013年10月16日 (水)の本ブログ記事
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2709.html
MTpro、「糖質摂取の多い集団で心血管疾患発症リスクが高い」

もご参照いただけば幸いです。

「糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」というのが
上記の上海前向きコホート研究(☆☆)の結論です。
NIPPON DATA 80と同様の結論なのは心強いです。

信頼度の低い能登論文の結論は

「総摂取エネルギー比率、糖質が30~40%のグループ(=中糖質群)は、60~70%のそれ(=高糖質群)と比べて、
死亡率が1.31倍だった。」

「糖質制限ダイエットを5年以上続けると死亡率が高まる可能性がある」

です。

これに対して、信頼度の高いNIPPON DATA 80の研究報告では、糖質制限食群のほうが、心血管死、総死亡ともに少ないという結論です。

そしてやはり信頼度の高い上海前向きコホート研究では、糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高いという結論です。


江部康二



(☆)
Br J Nutr. 2014 Sep 28;112(6):916-24. doi: 10.1017/S0007114514001627.
Low-carbohydrate diets and cardiovascular and total mortality in Japanese: a 29-year follow-up of NIPPON DATA80.
Nakamura Y1, Okuda N2, Okamura T3, Kadota A4, Miyagawa N4, Hayakawa T5, Kita Y6, Fujiyoshi A4, Nagai M4, Takashima N4, Ohkubo T7, Miura K4, Okayama A8, Ueshima H4; NIPPON DATA Research Group.


(☆☆)
Am J Epidemiol. 2013 Nov 15; 178(10): 1542–1549.
Published online 2013 Sep 5. doi: 10.1093/aje/kwt178
Dietary Carbohydrates, Refined Grains, Glycemic Load, and Risk of Coronary
Heart Disease in Chinese Adults
Danxia Yu, Xiao-Ou Shu, Honglan Li, Yong-Bing Xiang, Gong Yang, Yu-Tang Gao, Wei Zheng, and Xianglan Zhang
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ココナッツオイルとケトン体の関係
こんにちは
「糖質ドットコム」ではいつもお世話になっております。
 最近メディアで、ココナッツオイルを摂取することで、血液中のケトン体濃度が上昇すると話題になっているのですが、本当でしょうか?
先生のご意見をお聞かせ頂けたらと思います。

 
2015/02/04(Wed) 16:45 | URL | アンヘル | 【編集
ゆるい糖質制限をしています。
授乳中で、最近、子供の飲む量が多くなってきたのか、お腹が減り、困っています。
おおばこをつかって、低糖質のわらび餅や、おからで蒸しパンを作ったりなど工夫をして、おやつに食べているのですが、やはりお腹がすき、ちょこちょこつまんだりしてしまいます(>_<)
低糖質でも、ちょこちょこつまむのはよくないですよね?
あと、料理をしてる時に、味見をするのですが、その味見も血糖値上昇しますよね?
心配だけど、でも、味見しないと料理出来ないしで、毎回不安になります。心配性で、本格的な糖尿病には移行してほしくないので、不安な毎日です。
よろしくお願いします。
2015/02/04(Wed) 17:17 | URL | のろのろ | 【編集
Re: ココナッツオイルとケトン体の関係
アンヘル さん

ココナッツオイルは、中鎖脂肪酸が多く含まれているので
血中ケトン体が上昇しやすいです。
糖質制限食的にも、よい食材です。
2015/02/04(Wed) 20:05 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
のろのろ さん

魚や肉や卵などは満腹するまで食べてOKです。
小腹が空いたときの間食には、ナッツ類やチーズやするめなどがよいと思います。

低糖質のパンなどの味見もOKですよ。
2015/02/04(Wed) 20:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
こんにちは
江部先生初めまして。最近血糖値が気になってきた30過ぎの主婦です。

今度負荷試験を受けてみることにしました。気になることがあるのですが、
どこかで正常な人なら何を食べようが血糖値が140を超えることはないと見たのですが、それは本当でしょうか?
それならば負荷試験でも本当に正常なら一瞬でも140は超えないのでしょうか?

元来心配性で、7月に偶然測ったHbA1cが5.4で、二年前より高くなっていたので不安になり間食を控えめにするなどし、最近の値は5.0(簡易測定器)でした。空腹時は85~89くらいです。
ご飯130gと牛乳を食べた約一時間後は血糖値129でした。
心配しすぎでしょうか。
支離滅裂になってしまい申し訳ありません。
2015/02/04(Wed) 20:44 | URL | みやむー | 【編集
お忙しい中、お返事ありがとうございます。
では、間食にキシリトールガム2粒程度はどうなのでしょうか?
チーズは2つ3つ食べても問題ないですか?
2015/02/04(Wed) 21:10 | URL | のろのろ | 【編集
Re: こんにちは
みやむー さん

判定基準は以下です。

<空腹時血糖値>
1)110mg/dl未満:正常型
2)110~125mg/dl:境界型
3)126mg/dl以上:糖尿病型

<75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値>
1)140mg/dl未満:正常型
2)140~199mg/dl:境界型
3)200mg/dl以上:糖尿病型

正常型であっても、1時間後血糖値が180mg/dl以上の場合は将来糖尿病になりやすいです。

ともあれ、境界型であっても、多くの場合、緩やかな糖質制限食でも糖尿病発症予防が可能です、
2015/02/05(Thu) 07:44 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
のろのろ さん

1回の間食の糖質量は5g以下とするのが、糖質制限食の目安です。

キシリトールガム2粒程度、チーズは2つ3つは問題ないです。

各食品の糖質量を把握して、自己管理できるようにしましょう。

1回の食事の糖質量が、10~20g以下がスーパー糖質制限食の目安です。
2015/02/05(Thu) 07:48 | URL | ドクター江部 | 【編集
第5回 月例会の告知のお願い
塾生、保護者ともども糖質制限で、体はもちろん、脳にも効果がてきめんです。いま、受験シーズン真っ只中ですが、3月半ばにはよい知らせをお届けできると思います。
さて、糖質制限の勉強会、あと2名くらいなら、なんとかなりそうなので、お知らせします。大分の井上、山口の花岡医師の参加もいただく予定です。


糖質セイゲニスト 各位
糖質セイゲニストin北九州
世話人 三島 学

第35回 月例会 の お知らせ

日 時:2015.2.8(日) 12~16時(ころ)
場 所:三島塾 804-0082 北九州市戸畑区新池1-4-5 2~4F
参加費:1,000円
ランチ:オイチク、タノチク、ジビエを食らう、エゾ鹿3種
(タタキ+わさびで、燻製+ビーツインクランベリーソースで、ワイン煮)
おやつ:ブログでおなじみ、IDDMランナー・木村清夫妻のデザート
テーマ:巷でブームのココナッツ油使用20ヶ月目の再確認
読書:「食べ物のことは体に聞け」岩田健太郎
トピックス:最近のTV番組より。その他、もろもろ。
*有機農業の祭典1in大分「子供の食を考える」参加のご報告
*糖質セイゲニストin大分、江部康二先生講演会打ち合わせの報告
*共同購入、エキストラバージン・ココナッツ油1500円、ココア1200円、希望者は、ご連絡ください。
*ランチの準備の都合があります。
1月3日までにお申し込みをお願いします。 misimyk@yahoo.co.jp
2015/02/05(Thu) 08:07 | URL | 北九州 三島 | 【編集
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