2015年01月11日 (日)
【15/01/10 しらねのぞるば
Re: 病態栄養学会迫る!
日本病態栄養学会の1日目AM参加感想です.
1日目午前は会長講演・基調講演などでした.
和食が世界遺産に登録されたのに便乗して,今回の病態栄養学会では,「和食文化」をテーマにとりあげました.総会では「京都和食宣言2015」を決議するという悪乗りぶりです. つまり,「和食は日本の伝統文化であり,日本人の健康食である」→「したがって,和食をベースにした食品交換表は,健康人・病人の理想食」と,こういう流れにしたいのでしょうか.
ところが,基調講演では,栄養学の立場ではない先生方から,歴史・文化の観点も含めた講演が行われ,その内容を聴講すると,必ずしも学会の意図通りにはならなかったようです.
静岡文化芸術大 熊倉学長や料亭菊之井 村田主人の講演は,「和食は,単にその構成成分だけで論議されるべきものではなく,盛り付け・食べ方まで含めた文化そのものなのだ」などと,たしかに日本伝統食の歴史的深みを感じさせる内容でした.
特に熊倉先生は,ご飯の椀を常に片手に持ち,各種の菜とご飯を同時に食べて『口中調理』する食べ方まで含めて和食なのだと強調されていましたが,これは完全に「食べ順療法」とは正反対ですね.学会が和食を推奨するのなら,ここはどうするのでしょう.
なお「日本でのみ作られ,食べられている食事が和食である」と定義してしまうと,たこ焼きやお好み焼き,果てはカツカレー・オムライスまで和食になる,には笑いましたが,.
基調講演3番目では,実際に高級懐石 京料理1食分をまるまる分析した実例が報告されました(京大農 伏木先生).
その結果は,全83品目・850Kcalと,(ファミレスのハンバーグがそれだけで600kcalあることを思えば)たしかにヘルシーではありますが,そのカロリー比を見ると,脂質28%,蛋白質42%,炭水化物30%であったそうです.
これほど食品交換表とかけ離れた京料理を「和食」の名の元にひっくるめようとするのは,あまりにも無理があると感じました.
また,炭水化物カロリー比30%って,糖尿病学会の言う,「やってはならない糖質制限食」に該当してしまうのではないですか?
さらに糖尿病学会は,「昔の日本人は脂質の摂取カロリー比率が10%以下だったが,現在では食の欧米化で25%を越えている.これが糖尿病・肥満の原因だ」と何度も繰り返していますが,京料理は例外なのでしょうか? 】
こんにちは。
しらねのぞるばさんから、第18回日本病態栄養学会年次学術集会、1日目午前中の感想をコメントいだきました。
ありがとうございます。
「熊倉先生は,ご飯の椀を常に片手に持ち,各種の菜とご飯を同時に食べて『口中調理』する食べ方まで含めて和食なのだと強調されていましたが,これは完全に「食べ順療法」とは正反対ですね」
熊倉先生、なかなか鋭いご指摘です。
そうなると、「食べる順番療法」は、和食破壊に等しいルール違反となりますね。
「高級懐石 京料理1食分をまるまる分析した実例が報告されました(京大農 伏木先生).・・・そのカロリー比を見ると,脂質28%,蛋白質42%,炭水化物30% 」
これは、私もびっくりですが、痛快ですね。
そう言われてみれば、
一般的な懐石料理のメニュー
先付(さきづけ) ・・・ 前菜
椀物(わんもの) ・・・ 吸い物
向付(むこうづけ) ・・・ 刺身
鉢肴(はちざかな) ・・・ 焼き物
強肴(しいざかな) ・・・ 煮物
止め肴 ・・・ 原則として酢肴(酢の物)、または和え物
食事 ・・・ ご飯・止め椀(味噌汁)・香の物(漬物)
水菓子 ・・・果物
刺身、焼き物、煮物・・・確かにタンパク質が多いですよね。
日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド2014-2015によれば、三大栄養素の推奨構成バランスは
「脂質25%以下、タンパク質15~25%、糖質50~60%」
ですから、「高級懐石 京料理」似ても似つかぬ比率どころか、どうみても「糖質制限食」ではないですか。ヾ(゜▽゜)
いやはや糖尿病学会さんには、痛烈な皮肉となりましたね。
江部康二
Re: 病態栄養学会迫る!
日本病態栄養学会の1日目AM参加感想です.
1日目午前は会長講演・基調講演などでした.
和食が世界遺産に登録されたのに便乗して,今回の病態栄養学会では,「和食文化」をテーマにとりあげました.総会では「京都和食宣言2015」を決議するという悪乗りぶりです. つまり,「和食は日本の伝統文化であり,日本人の健康食である」→「したがって,和食をベースにした食品交換表は,健康人・病人の理想食」と,こういう流れにしたいのでしょうか.
ところが,基調講演では,栄養学の立場ではない先生方から,歴史・文化の観点も含めた講演が行われ,その内容を聴講すると,必ずしも学会の意図通りにはならなかったようです.
静岡文化芸術大 熊倉学長や料亭菊之井 村田主人の講演は,「和食は,単にその構成成分だけで論議されるべきものではなく,盛り付け・食べ方まで含めた文化そのものなのだ」などと,たしかに日本伝統食の歴史的深みを感じさせる内容でした.
特に熊倉先生は,ご飯の椀を常に片手に持ち,各種の菜とご飯を同時に食べて『口中調理』する食べ方まで含めて和食なのだと強調されていましたが,これは完全に「食べ順療法」とは正反対ですね.学会が和食を推奨するのなら,ここはどうするのでしょう.
なお「日本でのみ作られ,食べられている食事が和食である」と定義してしまうと,たこ焼きやお好み焼き,果てはカツカレー・オムライスまで和食になる,には笑いましたが,.
基調講演3番目では,実際に高級懐石 京料理1食分をまるまる分析した実例が報告されました(京大農 伏木先生).
その結果は,全83品目・850Kcalと,(ファミレスのハンバーグがそれだけで600kcalあることを思えば)たしかにヘルシーではありますが,そのカロリー比を見ると,脂質28%,蛋白質42%,炭水化物30%であったそうです.
これほど食品交換表とかけ離れた京料理を「和食」の名の元にひっくるめようとするのは,あまりにも無理があると感じました.
また,炭水化物カロリー比30%って,糖尿病学会の言う,「やってはならない糖質制限食」に該当してしまうのではないですか?
さらに糖尿病学会は,「昔の日本人は脂質の摂取カロリー比率が10%以下だったが,現在では食の欧米化で25%を越えている.これが糖尿病・肥満の原因だ」と何度も繰り返していますが,京料理は例外なのでしょうか? 】
こんにちは。
しらねのぞるばさんから、第18回日本病態栄養学会年次学術集会、1日目午前中の感想をコメントいだきました。
ありがとうございます。
「熊倉先生は,ご飯の椀を常に片手に持ち,各種の菜とご飯を同時に食べて『口中調理』する食べ方まで含めて和食なのだと強調されていましたが,これは完全に「食べ順療法」とは正反対ですね」
熊倉先生、なかなか鋭いご指摘です。
そうなると、「食べる順番療法」は、和食破壊に等しいルール違反となりますね。
「高級懐石 京料理1食分をまるまる分析した実例が報告されました(京大農 伏木先生).・・・そのカロリー比を見ると,脂質28%,蛋白質42%,炭水化物30% 」
これは、私もびっくりですが、痛快ですね。
そう言われてみれば、
一般的な懐石料理のメニュー
先付(さきづけ) ・・・ 前菜
椀物(わんもの) ・・・ 吸い物
向付(むこうづけ) ・・・ 刺身
鉢肴(はちざかな) ・・・ 焼き物
強肴(しいざかな) ・・・ 煮物
止め肴 ・・・ 原則として酢肴(酢の物)、または和え物
食事 ・・・ ご飯・止め椀(味噌汁)・香の物(漬物)
水菓子 ・・・果物
刺身、焼き物、煮物・・・確かにタンパク質が多いですよね。
日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド2014-2015によれば、三大栄養素の推奨構成バランスは
「脂質25%以下、タンパク質15~25%、糖質50~60%」
ですから、「高級懐石 京料理」似ても似つかぬ比率どころか、どうみても「糖質制限食」ではないですか。ヾ(゜▽゜)
いやはや糖尿病学会さんには、痛烈な皮肉となりましたね。
江部康二
糖質制限とは関係がありませんが、患者にとっては関心事なので。
注目のコントラバーシー2【妊娠中の糖質制限は適切か?】では,相変わらず福井先生は,糖質制限に対して,『懸念』を沢山並べ立てるという戦術で,もはや立ち位置があやふやになってきた印象です. それにしても,さほど強力でもない「エビデンス」をあんなに多数出して大幅に時間オーバーしたのは,時間切れに持ち込んでDiscussion時間をなくしてしまえ,という作戦だったのでしょうか? だったら福井先生,大成功です. いよいよ本格的議論か,というところで終了時間になりましたからね.
対して山田先生は,ケトン体に対して従来からはかなり踏み込んで,『有害なものではない』から『神経細胞発達には不可欠のものである可能性』にまで言及されました.これは宗田先生の『胎児は,ケトン体で成長しているからこそ高濃度なのだ』という主張とも合致しています.ただ,その一方で,ケトアシドーシスが起こる濃度にはできるだけ近づきたくないというスタンスから,安全なケトン体濃度は,エビデンス蓄積されるまでは言明できないという慎重な立場でしたね.
しかし,ついこの間までは,「ケトン体濃度=0が正常」と思っている方がほとんどだったのに,今やれっきとした学会会場で,血中ケトン体濃度はどこまでが安全か,しかもそれをμmol/lではなく, mmol/l単位で議論されるようになったのですね. やっとここまで来たかと時代の進展を感じると同時に,江部先生のこれまでのご努力に頭が下がります.
なおMain Hallで,ここまで進んだ議論が行われた一方で,逆の意味でまだまだすごい先生がおられるのですね.隣のB-1 Roomで行われた一般口演に,妊娠ラットにカゼイン50%もの餌を摂らせて,生まれてきた仔ラットはすべて異常だったという,ひどい発表がありましたが,江部先生含め,発表後の質問3件すべてが,『実験設定がおかしいのではないか.これでいったい何が言えるのか』だったのは当然でしたね. この実験,予め導くべき結論を決めておいて,そうなるように実験条件を設定したとしか思えません.科学者にはあるまじき態度で,STAP細胞と同列だと思います.この結論を支持する方が会場にいなかったのがせめてもの救いですが.
対して山田先生は,ケトン体に対して従来からはかなり踏み込んで,『有害なものではない』から『神経細胞発達には不可欠のものである可能性』にまで言及されました.これは宗田先生の『胎児は,ケトン体で成長しているからこそ高濃度なのだ』という主張とも合致しています.ただ,その一方で,ケトアシドーシスが起こる濃度にはできるだけ近づきたくないというスタンスから,安全なケトン体濃度は,エビデンス蓄積されるまでは言明できないという慎重な立場でしたね.
しかし,ついこの間までは,「ケトン体濃度=0が正常」と思っている方がほとんどだったのに,今やれっきとした学会会場で,血中ケトン体濃度はどこまでが安全か,しかもそれをμmol/lではなく, mmol/l単位で議論されるようになったのですね. やっとここまで来たかと時代の進展を感じると同時に,江部先生のこれまでのご努力に頭が下がります.
なおMain Hallで,ここまで進んだ議論が行われた一方で,逆の意味でまだまだすごい先生がおられるのですね.隣のB-1 Roomで行われた一般口演に,妊娠ラットにカゼイン50%もの餌を摂らせて,生まれてきた仔ラットはすべて異常だったという,ひどい発表がありましたが,江部先生含め,発表後の質問3件すべてが,『実験設定がおかしいのではないか.これでいったい何が言えるのか』だったのは当然でしたね. この実験,予め導くべき結論を決めておいて,そうなるように実験条件を設定したとしか思えません.科学者にはあるまじき態度で,STAP細胞と同列だと思います.この結論を支持する方が会場にいなかったのがせめてもの救いですが.
2015/01/11(Sun) 17:58 | URL | しらねのぞるば | 【編集】
はじめてまして
『満腹ダイエット』と『食品別糖質量HB』を頼りに
糖質制限生活エンジョイしています。
H24年の健康診断でHA1C 7.5(NGSP)と判明し先生のブログを参考に糖質制限をはじめ1カ月後に病院へ行きました。
結果、《HA1C 6.3》 3か月後にか《5.3》になり現在も《5.1~5.3》辺りで推移しています。
病院の先生はすぐに下がったので境界型で耐糖検査は必要ないとの事で現在3年目に至ります。
先生のおかげで子供の頃から運動部でしたが体重が増えつずけ90キロ台まであった体重が1年で64キロになり衣類の総入れ替えと嬉しい悲鳴を上げています。
このまま糖質制限生活続けていこうと思うのですが耐糖検査は一度もしたことがありません
再度病院の方へ検査について確認した方がよろしいのでしょうか?
稚拙な質問で申し訳ありませんが
よろしくお願いいたします。
『満腹ダイエット』と『食品別糖質量HB』を頼りに
糖質制限生活エンジョイしています。
H24年の健康診断でHA1C 7.5(NGSP)と判明し先生のブログを参考に糖質制限をはじめ1カ月後に病院へ行きました。
結果、《HA1C 6.3》 3か月後にか《5.3》になり現在も《5.1~5.3》辺りで推移しています。
病院の先生はすぐに下がったので境界型で耐糖検査は必要ないとの事で現在3年目に至ります。
先生のおかげで子供の頃から運動部でしたが体重が増えつずけ90キロ台まであった体重が1年で64キロになり衣類の総入れ替えと嬉しい悲鳴を上げています。
このまま糖質制限生活続けていこうと思うのですが耐糖検査は一度もしたことがありません
再度病院の方へ検査について確認した方がよろしいのでしょうか?
稚拙な質問で申し訳ありませんが
よろしくお願いいたします。
2015/01/11(Sun) 18:53 | URL | ゆきぽん | 【編集】
mmx さん
新薬「SGLT2阻害薬」で、10人の死亡例がありました。
5人死亡例の時点で、記事にしましたが、もう一回記事にします。
新薬「SGLT2阻害薬」で、10人の死亡例がありました。
5人死亡例の時点で、記事にしましたが、もう一回記事にします。
2015/01/11(Sun) 18:57 | URL | ドクター江部 | 【編集】
しらねのぞるば さん
日本病態栄養学会2日目の感想コメント、ありがとうございます。
私も会場にいましたよ。
2013年、2014年に比し、明らかにいい感じですね。
ケトンの夜明けが始まりつつあるかな?
日本病態栄養学会2日目の感想コメント、ありがとうございます。
私も会場にいましたよ。
2013年、2014年に比し、明らかにいい感じですね。
ケトンの夜明けが始まりつつあるかな?
2015/01/11(Sun) 19:00 | URL | ドクター江部 | 【編集】
はじめまして。江部先生のファン、開業医の糖質セイゲニストです。
「今日の治療指針2015年」 糖尿病の食事療法に、糖質制限食が記載されていました!江部先生のご指摘されているように、アメリカ糖尿病学会の内容どおりでした。唯一無二の食事療法は存在しない、カロリー制限食、糖質制限食、地中海式ダイエットなど受容可能・・そのまんまでした。アメリカ様の外圧には弱いですね。
SGLT2阻害剤でお亡くなりになった方が10人になりました、黙祷。糖質制限食で糖尿病が治療されていくことを夢見ております。
「今日の治療指針2015年」 糖尿病の食事療法に、糖質制限食が記載されていました!江部先生のご指摘されているように、アメリカ糖尿病学会の内容どおりでした。唯一無二の食事療法は存在しない、カロリー制限食、糖質制限食、地中海式ダイエットなど受容可能・・そのまんまでした。アメリカ様の外圧には弱いですね。
SGLT2阻害剤でお亡くなりになった方が10人になりました、黙祷。糖質制限食で糖尿病が治療されていくことを夢見ております。
シングル さん
貴重な情報をありがとうございます。
素晴らしい出来事です。
単純に嬉しいですね。
貴重な情報をありがとうございます。
素晴らしい出来事です。
単純に嬉しいですね。
2015/01/11(Sun) 22:24 | URL | ドクター江部 | 【編集】
京懐石、これでご飯と煮物の幾つかを食べなかったら本当に糖質制限食ですね!非常に興味深い報告をありがとうございました。
ところで、難消化性澱粉を含むお米というのが売りだされているのですが、100グラム中の糖質はどれほどだと考えたらいいのでしょうか。本物のご飯はもう4年も口にしていません。食べられるお米が開発されたとしたら、これはすごいことだと思うのですが。
ところで、難消化性澱粉を含むお米というのが売りだされているのですが、100グラム中の糖質はどれほどだと考えたらいいのでしょうか。本物のご飯はもう4年も口にしていません。食べられるお米が開発されたとしたら、これはすごいことだと思うのですが。
小野さん
「難消化性澱粉を含むお米」ですが
含まれている糖質量は、普通のお米と同様です。
GIが少し低いと思います。
糖尿人が摂取した場合
サラヤの製品(難消化性澱粉を含むお米)の場合は一人前でピーク220mg/dlていど、
普通の白米だと一人前で240~260mg/dlていどの差があります。
糖尿人の場合は、180mg/dlを超えるとよろしくないので、今一歩ですね。
「難消化性澱粉を含むお米」ですが
含まれている糖質量は、普通のお米と同様です。
GIが少し低いと思います。
糖尿人が摂取した場合
サラヤの製品(難消化性澱粉を含むお米)の場合は一人前でピーク220mg/dlていど、
普通の白米だと一人前で240~260mg/dlていどの差があります。
糖尿人の場合は、180mg/dlを超えるとよろしくないので、今一歩ですね。
2015/01/12(Mon) 17:22 | URL | ドクター江部 | 【編集】
この流れで、食品交換表の数字も京懐石の三大栄養素の比率にかえてしまえば、本当に和食は健康食に近づくし、そうすると、日本国民&世界中の人々が健康にちかづきますね。そうなることを願います。
2015/01/13(Tue) 22:18 | URL | るう | 【編集】
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