2014年12月29日 (月)
こんにちは。
忘年会、クリスマス、新年会と飲酒の機会が多くなるのが年末年始です。
今回は、糖尿人と飲酒、飲酒と肝臓・膵臓、飲酒とガンについて考えてみましょう。
アルコールそのものは、血糖値を全く上昇させませんし、体重増加作用もないので、適量の飲酒は糖尿病には影響ないと思います。
しかしWHO(世界保健機関)の2007年の報告では、飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房の癌の原因となるとされています。
そして、特に2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱くて、少量の飲酒で赤くなるタイプでは、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道癌の原因となるとしています。
日本の従来の糖尿病治療では、飲酒は原則禁止ですが、一定の条件下で許可されることもあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック・改定第5版(2012年)、93ページによれば、その条件は、以下の5項目をクリアしていることです。
1)、良好な血糖コントロールが長期にわたって得られている
2)、糖尿病の合併症がないか、あっても軽度である
3)、脂質代謝異常(特に高トリグリセリド血症)がない
4)、肝・膵疾患がない
5)、決められた上限量を守る患者である
4)の肝臓や膵臓の疾患がないことが、条件となっているのは、アルコールが、肝臓と膵臓に一定の負担をかけることが明らかだからです。
アルコール性肝障害は大変有名で、皆さんよくご存知と思います。
それから急性膵炎による入院の80%以上を、胆道疾患とアルコール多飲が占めています。
これはアルコール多飲であって、適量なら急性膵炎など起こしません。
また個人差があると思いますが、適量のアルコールなら肝障害にもなりません。
で、5)はなかなか耳が痛いですね。(=_=;)
私の場合、1)~4)は完璧にクリアなのですが、5)だけはハードルが高いです。 (*- -)(*_ _)
それでは、アルコールの適量とはどのくらいなのでしょう?
欧米では、「適量」を守れば糖尿人でも、飲酒OKとしています。
例えば、米国糖尿病学会では、アルコール24g/日を食事と共にとるていどなら適量としています。
30mlの液体のアルコールが、重さとしては24gです。
アルコール24g(30ml)というのは、
おおよそ
糖質ゼロ発泡酒350ml缶を2本
辛口ワイン150ml×2杯
ウイスキー30ml(シングル)×3杯
25%の焼酎なら、120ml
です。
アルコールそのものは、1gが約7キロカロリーの燃焼エネルギーをもっていますが、摂取時の利用効率は約70%です。
エネルギー源としては、<アルコール→糖質→脂質→タンパク質>の順で利用されます。
またアルコールは、糖質や脂質と違って摂取しても体重増加作用がありませんし、血糖値も上昇させませんし、ビタミンやミネラルにも乏しいので、empty calory と言われています。
なお、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
しかしながら、血糖値を下げる目的で、大量の飲酒をするようなことは、発がん、肝炎、膵炎のリスクとなるので、勿論NGですね。
また、空腹時に飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、充分な注意が必要です。
江部康二
忘年会、クリスマス、新年会と飲酒の機会が多くなるのが年末年始です。
今回は、糖尿人と飲酒、飲酒と肝臓・膵臓、飲酒とガンについて考えてみましょう。
アルコールそのものは、血糖値を全く上昇させませんし、体重増加作用もないので、適量の飲酒は糖尿病には影響ないと思います。
しかしWHO(世界保健機関)の2007年の報告では、飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房の癌の原因となるとされています。
そして、特に2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱くて、少量の飲酒で赤くなるタイプでは、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道癌の原因となるとしています。
日本の従来の糖尿病治療では、飲酒は原則禁止ですが、一定の条件下で許可されることもあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック・改定第5版(2012年)、93ページによれば、その条件は、以下の5項目をクリアしていることです。
1)、良好な血糖コントロールが長期にわたって得られている
2)、糖尿病の合併症がないか、あっても軽度である
3)、脂質代謝異常(特に高トリグリセリド血症)がない
4)、肝・膵疾患がない
5)、決められた上限量を守る患者である
4)の肝臓や膵臓の疾患がないことが、条件となっているのは、アルコールが、肝臓と膵臓に一定の負担をかけることが明らかだからです。
アルコール性肝障害は大変有名で、皆さんよくご存知と思います。
それから急性膵炎による入院の80%以上を、胆道疾患とアルコール多飲が占めています。
これはアルコール多飲であって、適量なら急性膵炎など起こしません。
また個人差があると思いますが、適量のアルコールなら肝障害にもなりません。
で、5)はなかなか耳が痛いですね。(=_=;)
私の場合、1)~4)は完璧にクリアなのですが、5)だけはハードルが高いです。 (*- -)(*_ _)
それでは、アルコールの適量とはどのくらいなのでしょう?
欧米では、「適量」を守れば糖尿人でも、飲酒OKとしています。
例えば、米国糖尿病学会では、アルコール24g/日を食事と共にとるていどなら適量としています。
30mlの液体のアルコールが、重さとしては24gです。
アルコール24g(30ml)というのは、
おおよそ
糖質ゼロ発泡酒350ml缶を2本
辛口ワイン150ml×2杯
ウイスキー30ml(シングル)×3杯
25%の焼酎なら、120ml
です。
アルコールそのものは、1gが約7キロカロリーの燃焼エネルギーをもっていますが、摂取時の利用効率は約70%です。
エネルギー源としては、<アルコール→糖質→脂質→タンパク質>の順で利用されます。
またアルコールは、糖質や脂質と違って摂取しても体重増加作用がありませんし、血糖値も上昇させませんし、ビタミンやミネラルにも乏しいので、empty calory と言われています。
なお、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
しかしながら、血糖値を下げる目的で、大量の飲酒をするようなことは、発がん、肝炎、膵炎のリスクとなるので、勿論NGですね。
また、空腹時に飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、充分な注意が必要です。
江部康二
江部先生
またまた、丁寧な回答をありがとうございました。
75gOGTTについて
糖質制限食をしたことで、自分の体にはどの程度変化があったのかを確認したい気持ちがあり、再検査にひっかかればむしろ「2型糖尿病」の診断をバッサリとつけてもらいたいとも思っており、個人的には挑戦?したいと思っていますが…やはり無意味なのか…もう少し先の話なので、検討したいと思います。
アルコールについて
とてもわかりやすく理解できました。
また、本日のブログでも再確認でき、ありがとうございました。
バックナンバーにすでにあることを質問し2度手間になってしまい、申し訳ありませんでした。
またまた、丁寧な回答をありがとうございました。
75gOGTTについて
糖質制限食をしたことで、自分の体にはどの程度変化があったのかを確認したい気持ちがあり、再検査にひっかかればむしろ「2型糖尿病」の診断をバッサリとつけてもらいたいとも思っており、個人的には挑戦?したいと思っていますが…やはり無意味なのか…もう少し先の話なので、検討したいと思います。
アルコールについて
とてもわかりやすく理解できました。
また、本日のブログでも再確認でき、ありがとうございました。
バックナンバーにすでにあることを質問し2度手間になってしまい、申し訳ありませんでした。
2014/12/29(Mon) 14:45 | URL | ぱぴこ | 【編集】
顔が赤くなる人は
食道癌のリスクが高いという文章に
ドキッとしました。
糖質ゼロビール350mlが1本でも
顔が赤くなる体質だからです。
でも仕事のストレスから、二日に一度は
ゼロビール1本飲んでしまいます。
もっと減らすべきでしょうかねぇ・・・。
食道癌のリスクが高いという文章に
ドキッとしました。
糖質ゼロビール350mlが1本でも
顔が赤くなる体質だからです。
でも仕事のストレスから、二日に一度は
ゼロビール1本飲んでしまいます。
もっと減らすべきでしょうかねぇ・・・。
2014/12/29(Mon) 22:53 | URL | みかん | 【編集】
江部先生、
以前は適切な説明ありがとうございました。
最近は、平均値内に収まるようになりました。
今日の説明(4)ですが、膵臓を60%摘出した私の場合、飲酒は完全に諦めなければいけないのでしょうか?
量は飲めませんが、夕食時に、ノンアルコールビール12ozと、焼酎2Tスプーンのお湯割り一杯を飲んでいます。
このひと時を楽しみにしている私にとって、飲酒を100%諦めるのは辛いことです。宜しくご指導ください。
以前は適切な説明ありがとうございました。
最近は、平均値内に収まるようになりました。
今日の説明(4)ですが、膵臓を60%摘出した私の場合、飲酒は完全に諦めなければいけないのでしょうか?
量は飲めませんが、夕食時に、ノンアルコールビール12ozと、焼酎2Tスプーンのお湯割り一杯を飲んでいます。
このひと時を楽しみにしている私にとって、飲酒を100%諦めるのは辛いことです。宜しくご指導ください。
2014/12/30(Tue) 05:35 | URL | sakura | 【編集】
みかん さん
糖質ゼロ発泡酒350mlを1本/日・・・このていどなら全く問題ないです。
以下も、ご参照いただけばよいと思います。
2010独立行政法人国立がん研究センター
がん対策情報センター
がん情報サービス
http://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause/part_distinction.html
糖質ゼロ発泡酒350mlを1本/日・・・このていどなら全く問題ないです。
以下も、ご参照いただけばよいと思います。
2010独立行政法人国立がん研究センター
がん対策情報センター
がん情報サービス
http://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause/part_distinction.html
2014/12/30(Tue) 10:09 | URL | ドクター江部 | 【編集】
sakura さん
検査データ良好、良かったでせう。
焼酎2ティースプーンのお湯割り一杯/日
焼酎10mlですね。
この程度のアルコールなら、問題ないと思います。
膵臓が全部ある人で、25%の焼酎なら、120mlが、適量です。
sakura さんは、計算上は、120mlの40%で、25%の焼酎なら48mlまで適量となるでしょうか。
なお普通のノンアルコールビール12オンス(約350ml)には、糖質が入っています。
サントリーオールフリーとかアサヒドライゼロなら、ノンアルコールで糖質もゼロですね。
検査データ良好、良かったでせう。
焼酎2ティースプーンのお湯割り一杯/日
焼酎10mlですね。
この程度のアルコールなら、問題ないと思います。
膵臓が全部ある人で、25%の焼酎なら、120mlが、適量です。
sakura さんは、計算上は、120mlの40%で、25%の焼酎なら48mlまで適量となるでしょうか。
なお普通のノンアルコールビール12オンス(約350ml)には、糖質が入っています。
サントリーオールフリーとかアサヒドライゼロなら、ノンアルコールで糖質もゼロですね。
2014/12/30(Tue) 10:31 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、
ありがとうございました。
アメリカ在住なので、日本のノン、ノンビールは手に入りませんが、バッドワイザーのセレクト55というのを飲んでいます。
カロリーが55、カーブが1.9G、アルコール2.4%(6.8G)とあります。でも、来年は日本に一時帰国しますので、先生が書いてくださったビールを楽しみにしています。
いつも、ありがとうございます。
ありがとうございました。
アメリカ在住なので、日本のノン、ノンビールは手に入りませんが、バッドワイザーのセレクト55というのを飲んでいます。
カロリーが55、カーブが1.9G、アルコール2.4%(6.8G)とあります。でも、来年は日本に一時帰国しますので、先生が書いてくださったビールを楽しみにしています。
いつも、ありがとうございます。
2014/12/31(Wed) 05:06 | URL | sakura | 【編集】
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