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膵臓60%摘出と糖質制限食
【14/12/18 sakura

すい臓摘出

江部先生、
アメリカ在住の者(70歳)です。
最近このサイトを知り、アマゾンから先生の著書をオーダしました。

私は、12年ほど前にすい臓(60%)、脾臓100%を摘出しました。良性ということでしたが、将来的には糖尿病になると言われ、家系にも糖尿病がおおいです。10月の血液検査では、FingerGlucose=104,Normal Range=70-99とあります。 Hgb A1CIn-house only?=5.9(NR=4.2-5.6)
Lipase,Serum=21(NR0-59)
Cholesterol,Total=205 (NR=100-199) HDL=74LDL(NR>39) VLDL Cholesterol Cal=19(NR 5-40)LDL Cholesterol 112(NR0-99)
ここ数年血糖値が高くなり医者からは、薬の投与を考えてみてはと言われていますが、なるべくら薬無しで行きたいと考えています。

すい臓摘出者でも、主食抜きの生活でも大丈夫なのでしょうか?また、炭水化物が不足すると、思考力低下、体力低下とききましたが、エネルギー源は何からとるのでしょうか?

お忙しいところ申し訳ありません。よろしくお願い致します。なお、アマゾンからは、2,3日で届きます。
このサイトを知り、本当に喜んでおります。】



sakura さん
拙著のご購入、ありがとうございます。

血糖値:104mg(70-99)
HbA1c:5.9%(4.2-5.6)
リパーゼ:21(-59)
総コレステロール:205(100-199)
HDLコレステロール:74(40以上)
LDLコレステロール:112(-99)


確かに膵臓を60%摘出しておられたら、将来糖尿病になりやすいですが、糖質制限食で、内服薬なしで予防できると思います。

血糖値が104mg/dlは日本なら正常範囲のなかでやや高値となります。
早朝空腹時血糖値110mg/dl未満は日本では正常範囲内です。
HbA1c5.9%も、日本なら、基準値内で、正常です。

例えば、検査会社SRL(日本最大手)のHbA1cの基準値は4.6~6.2% (2014年)です。

日本糖尿病学会のコントロール目標(2013年6月)では、

合併症予防のためには、7.0%未満

血糖正常化を目指す際の目標は、6.0未満

です。

「すい臓摘出者でも、主食抜きの生活でも大丈夫なのでしょうか?」

40%の膵臓が残っていますので、大丈夫と思われます。


「また、炭水化物が不足すると、思考力低下、体力低下とききましたが、エネルギー源は何からとるのでしょうか?」

必須アミノ酸、必須脂肪酸はありますが、必須炭水化物はありません。

体内で必要なブドウ糖は、肝臓で糖新生してまかなうので、食物から摂取する必要はないのです。

つまり、炭水化物を摂取しなくても、低血糖になることはありませんし、エネルギー不足にもなりませんので、思考力低下、体力低下もありません。

肝臓の糖新生により、必要な血糖値は常に確保されるように人体は設計されているのです。

肝臓では、アミノ酸、乳酸、グリセロール(脂肪の分解物)などからブドウ糖を作ります。

国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では、「炭水化物(この場合は糖質とほぼ同義)の理論的な最小必要量はゼロである」(☆)と明記されています。

なお、血糖値の確保は赤血球のために絶対に必要です。

赤血球にはミトコンドリアがないので、ブドウ糖が唯一のエネルギー源なのです。

脳は他の細胞と同様にミトコンドリアを有しているので、ブドウ糖と共にケトン体という脂肪酸の分解物をいくらでもエネルギー源として利用することができます。

脳は、ケトン体だけで、ブドウ糖がなくても充分に活動できます。

このことは、GLUT1欠損症の場合を考察すれば明らかです。

GLUT1欠損症では脳はブドウ糖をほとんど利用できません。

GLUT1欠損症の唯一の治療法は、ケトン食です。

ケトン食により、脳はエネルギー源のほとんどをケトン体から確保できるので健康に生きることが可能となります。

GLUT1欠損症の場合は、ケトン食以外には有効な治療法はないので、赤ちゃんの内に発見して速やかにケトン食を開始することが極めて大切です。

ケトン食を実践しなければ、GLUT欠損症では、発育障害・発達障害・知的障害・生命の危険などが生じます。

ケトン食を実践すれば健康な生活が可能です。

(☆)
Eur J Clin Nutr. 1999 Apr;53 Suppl 1:S177-8.
Report of the IDECG Working Group on lower and upper limits of carbohydrate and fat intake. International Dietary Energy Consultative Group.
Bier DM, Brosnan JT, Flatt JP, Hanson RW, Heird W, Hellerstein MK, Jéquier E, Kalhan S, Koletzko B, Macdonald I, Owen O, Uauy R.


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖質制限に対する不安
ダイエット目的で糖質制限を始めました。糖尿病ではありません。
糖質制限をするとインスリン分泌量が減るということですが、日常的にインスリン分泌が減った膵臓の機能が低下するということはないのでしょうか?
よく、身体の使わない部分は衰えるという話を聞きます。主に筋系の話だとは思うのですが、すこし不安なので教えて頂きたいです。
例えば糖質制限を続けていて、1年振りに糖質を摂取した場合、インスリンの分泌が鈍くなっている…というようなことにはならないのでしょうか?
的外れな質問だったらごめんなさい。
2014/12/19(Fri) 01:18 | URL | yayoi | 【編集
乳幼児の糖質制限
はじめまして。
私は息子のアトピーをきっかけに家族で糖質制限をして4年になります。
4年の経験で、体調がよくなったことがたくさんありました。今は第二子に授乳中ですが、離乳食も糖質制限で進めて行きたいと考えております。
そんな時にsnsで下記のコメントをいただきました。
糖質制限の批判はよくあるものだと思うのですが、
人類史以前の食事は果実だったこと、700万年ほどでは、書き換えられないという指摘に、どうなんだろう?と疑問が湧きます。
先生はいかがお考えでしょうか?
また、乳幼児への糖質制限へのお考えもお聞かせいただけると嬉しいです。


お医者様にいただいたコメントです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
糖質制限食を小児や乳児に持ち込むことは危険です。
ケトン性低血糖は正常児でも36時間程度の絶食で起き得るとNelsonに書かれています。
何らかの酵素異常があれば12時間ぐらいで起きますが。
brain glucose uptake は新生児期は20g/day以下、5歳で 170g/dayと最大になる。
10歳で 130g/dayと低下、成人90-100g/day
(/kg当たりではありません。絶対量で成人より糖を必要としています。)
4~5歳時の基礎代謝量は800~900kcal/day(必要エネルギー摂取量は1.75倍の1400-1500kcal/day)
5歳児は安静時にエネルギーの2/3(600kcal以上)以上を脳が消費します。

新生児は脳の糖必要量も少ないので母乳で何とかなっていますが、
5歳まで直線的に糖の需要が増えて、乳児後半では足りません。
実際に私は数例の意識障害や痙攣重積を経験しています。

母乳の重量比でタンパク質は1~2%(初乳は2%近く、次第に1%程度まで下がっていく)、脂質3~4%、糖質6~7%で最も多いのは糖質です。
(スイカの半分ぐらいの糖度)
少なくともハイハイや歩行が始まるまでタンパク質はそれほど必要には思えません。乳児に最も大切な栄養は脂質と糖質です。脳は何でできていますか?
因みにお米は乾燥質量で6.8%、炊いた状態で2.5%がタンパク質です。お粥にしてちょうど母乳程度である1%のタンパク質です。

人類史の解釈も間違っています。
多く見積もっても人間が肉食を主体にしていたかも知れないのは6万年前から1万年前までです。
脳の代謝メカニズムを変えるには期間が短すぎます。
猿は果実を主食としてきたのですよ。

哺乳類ではテンジクネズミや直鼻猿亜目の霊長類がL-グロノラクトンオキシダーゼ(ビタミンC合成酵素)遺伝子の活性を失っているため、
ビタミンCを合成することができません。

イヌイットの研究から極端な肉食で退化する酵素はCPT1およびCPT2です。
日本人には確かにCPT酵素の異常を少なくともheteroで持つ人は13%程度いるので、ユーラシア大陸を渡ってくる数万年はマンモスに頼っていたのかも知れませんが、数千万年の樹上生活は果実と木の実に頼っていたのですよ。

これは酵素の退化の歴史から明らかです。
私は外来で耐糖能異常のある成人には糖質制限食をお勧めしていますが、健康成人にすら普段の食事として糖質制限食が利益をもたらすのかEBMが乏しいのに、乳幼児に糖質制限食を勧めるべきではありません。
2014/12/19(Fri) 05:20 | URL | ひな祭り | 【編集
Re:乳幼児の糖質制限
ひな祭りさん

こちらは参考になりますでしょうか?

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なぜ哺乳類の母乳には決まって6%前後の乳糖が含まれているのか
http://bbs11.aimix-z.com/mtpt.cgi?room=ppkorori&mode=view&no=415

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2014/12/19(Fri) 14:15 | URL | 福助 | 【編集
Re: Re:乳幼児の糖質制限
福助 さん

情報をありがとうございます。
2014/12/19(Fri) 17:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 乳幼児の糖質制限
ひな祭り さん

このお医者さんのコメント、突っ込みどころ満載なので
近日中に記事にします。

とりあえず、サルの主食は果実というのは、大きな誤解です。

それから、赤ちゃんの脳と、GLUT1欠損症のお話し<2014年12月18日 (木)の本ブログ記事
「膵臓60%摘出と糖質制限食」>
もご参照ください。
2014/12/19(Fri) 17:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
「膵臓60%摘出と糖質制限食」
江部先生、

お忙しいところありがとうございました。
長年気になっていたことが、明解しました。こちらにいて一番困るのは、医療関係の言葉です。これからも、こちらのブログにおじゃまして、勉強させて頂きます。本当にありがとうございました。
尚、ご著書は、日本での天候不良で、2、3日遅れる連絡がありました。
高雄病院のレシピを参考にして、頑張ります。
2014/12/21(Sun) 00:31 | URL | sakura | 【編集
膵臓全摘出について
江部先生
はじめまして。

わたしの妻が先日フォン ヒッペル リンドウ病
が原因で、膵臓全摘出手術をしまして、
現在入院中です。

そこで質問なのですが、
膵臓全摘出によって内因性のグルカゴンがない
状態でも、糖質制限食は有効なのでしょうか。
素人目にみると、低血糖のリスクが高い様に思えます。

それと、フォンヒッペルの性質上
腎臓にも腫瘍が見つかり、部分切除も行いました。
幸い、腎機能には特に問題はないとの事ですが、
この場合にも、糖質制限食は実践しても
よろしいのでしょうか。

糖質制限食を実践する際は、
高雄病院様で、
受診させて頂こうかと考えております。

よければご返答を宜しくお願い致します。
2015/02/24(Tue) 06:07 | URL | satake | 【編集
Re: 膵臓全摘出について
satake さん

膵臓を全摘ということなら、インスリンの分泌は、ゼロですので、インスリン注射をしておられると思います。
1型糖尿病に準じて対応すればいいと思います。

グルカゴンは膵臓のほかにも消化管からあるていど分泌されます。
膵外グルカゴンは腸管グルカゴンとも呼ばれ、胃底部に多く分布するそうです。

ともあれ糖質制限食を実践することで、インスリン注射の単位が減らせるのでよいと思います。
インスリン注射の単位が減らせれば、低血糖も起きにくくなります。
2015/02/24(Tue) 10:44 | URL | ドクター江部 | 【編集
迅速なご返答ありがとうございます。

では、糖質制限食を実践するのに
特に問題はないという事ですね。

まず当面は、どのような状態にも
対応出来るように、インスリン計算など
扱いに慣れてから 糖質制限食に移行
しようかと思います。

ありがとうございました。
2015/02/24(Tue) 20:11 | URL | satake | 【編集
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