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「アクトスに膀胱がんリスク認められず」という研究報告発表。
こんばんは。

武田薬品のピオグリタゾン(アクトス)に関して、男性に膀胱がんリスクがあるということで、フランスとドイツでは2011年以降、同薬の処方を中止しています。

FDA(米食品医薬品局)は2010年に膀胱がん患者に対しては投与すべきでないとし、膀胱がん既往者に対しては慎重投与とする勧告を出しました。

欧州医薬品庁(EMA)は、さらに厳しい対応を示し、原因が未特定の顕微鏡的血尿を呈する患者でも同薬の使用を制限しました。

これらを考慮して、私も、男性には投与しないようにしてきました。

肥満や浮腫の副作用もあるので、太った糖尿人には処方しにくい薬です。

結局、私の場合は、やせ型の女性の2型糖尿病患者さんに限定してまれに使用してきました。

今回、100万例以上の大規模コホート研究で、ピオグリタゾン(アクトス)と膀胱がんに関連は認められなかったとDiabetologia(2014年12月3日オンライン版)で報告されました。

さらなる研究が必要であることは言うまでもないのですが、肥満のない糖尿病患者には、アクトスは、今までより使いやすくなったと言えます。



江部康二


☆☆☆

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1412/1412013.html
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ピオグリタゾンによる膀胱がんリスク認められず

統合してバイアスを最小化した国際データ100万例以上を解析

糖尿病治療薬ピオグリタゾンは膀胱がんとの関連が指摘されているが,観察研究における知見は一貫していない。英・University of DundeeのHelen Colhoun氏らは,欧州と北米の6コホート100万例以上のデータを収集し,施設間で解析方法を統一するとともに割り付けバイアス(allocation bias)を最小化したモデルを用いて検討した結果,両者の関連は認められなかったことをDiabetologia(2014年12月3日オンライン版)で報告した。

規制当局の投与制限後に発表された知見は一貫せず

膀胱がんは世界で9番目に多いがんで,2012年には43万人が新規に診断されている。発症率は欧州と北米で最も高く,糖尿病患者ではさらに上昇する。膀胱腫瘍では,脂肪細胞の分化を調節する核内転写因子PPARγが正常な尿路上皮と比べ過剰発現していることが知られている。

ピオグリタゾンなどのチアゾリジン系薬は,PPARγアゴニストであり,PPARγの活性化が主作用である。前臨床試験においてピオグリタゾンを投与したラットで膀胱がんリスクが上昇したことから,安全性が懸念されていた。また欧州におけるピオグリタゾンの大規模臨床試験ProActiveでも,有意ではないものの膀胱がん発症率が上昇した。

これらの知見を受け,米食品医薬品局(FDA)は,製薬会社に対し10年間の長期観察研究の実施を指示し,中間解析結果では2年以上のピオグリタゾン使用で膀胱がんリスク上昇が確認された。同時期のフランスにおける研究でもリスク上昇が認められ,フランスとドイツでは2011年以降,同薬の処方を中止している。

一方,FDAは2010年に膀胱がん患者に対しては投与すべきでないとし,膀胱がん既往者に対しては慎重投与とする勧告を出した。欧州医薬品庁(EMA)はさらに厳しい対応を示し,原因が未特定の顕微鏡的血尿を呈する患者でも同薬の使用を制限した。しかし,こうした対応の後に発表された複数の研究やメタ解析における知見は一貫していない。

複数地域のデータを統一した方法で解析

Colhoun氏らは,これまでの研究について「そのほとんどは小規模な観察研究で,さまざまな交絡因子を調整しても割り付けバイアス(ピオグリタゾン群で膀胱がんの背景リスクが高かった可能性)を完全に排除することはできない」と指摘している。また,ピオグリタゾン群で治療開始後に尿検査の頻度が増え,膀胱がん検出率が高まった可能性もある(検出バイアス)。

今回の研究では,こうした従来研究の限界を克服するために,複数施設のデータをプールして統一した方法で解析し,標本サイズを大きくした。カナダ・ブリティッシュコロンビア州,フィンランド,英・マンチェスター,オランダ・ロッテルダム,スコットランド,英・臨床診療研究データリンク(CPRD:英国の一般医566施設を網羅するデータベース)の6つの大規模コホートから薬剤処方とがん・死亡率に関するデータを収集し,Poisson回帰を用いた離散時間モデルを個別に適用し,ピオグリタゾンの累積使用が膀胱がん発症に与える影響のモデルを構築し,ピオグリタゾン使用に関する時間依存変数を調整した。

全センターで計101万例,590万人・年のデータを収集し,3,248件の膀胱がん発症を特定したが,ピオグリタゾン使用歴のあった患者における膀胱がん発症は117件のみであった。追跡期間は中央値で4.0~7.4年であった。

長期使用者でも関連性は認められず

全体的に,男女のいずれでもピオグリタゾンの累積使用と膀胱がんとの関連は認められなかった。年齢,暦年,糖尿病罹患期間,喫煙,ピオグリタゾン使用歴で調整後の100日間の累積使用当たりの発症率比(RR)は,男性が1.01(95%CI 0.97~1.06)で,女性が1.04(同0.97~1.11)であった。また,ピオグリタゾンと膀胱がんリスクとの関連に用量依存的な関係が見られるか否かも検討されたが,ピオグリタゾンの長期使用者で膀胱がんリスクは上昇しななかった。

今回の研究では,別のチアゾリジン系薬であるrosiglitazoneについても検討されたが,膀胱がんリスクとの関連は認められず,RRは男性が1.01(95%CI 0.98~1.03),女性が1.00(同0.94~1.07)であった。

Colhoun氏らは「今回の解析は,われわれの知る限り,糖尿病患者の大規模国際コホートに対して同一の解析方法を適用し,ピオグリタゾンと膀胱がんリスクとの関連を検討した唯一の研究である」と指摘。得られた知見を基に「今回の大規模国際解析の結果はピオグリタゾンと膀胱がんの間の因果関係を支持するものではなく,両者の関連を示したこれまでの研究とは相容れない」と結論付けている。さらに「この問題を完全に解決するためには,割り付けバイアスを最小化する方法を用いて,さらに長期間のピオグリタゾン投与に関する解析を行う必要がある」と付け加えている。

(小路 浩史)
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
江部先生、こんばんは。

またまたボディビル関連の話題なのですが、YouTubeで面白い動画を見つけたのでお知らせ致します。

ボディビルダーの方が、「ボディビルの世界では昔から数多くの選手が実践して、体験的に有効性や安全性が確認されていた糖質制限ダイエット」のことや「糖質の害」などについて語っています。

糖質制限をしても大丈夫なのか?低炭水化物ダイエットについて
【科学的に筋トレを解説する動画シリーズ】
全米でナンバーワンになったボディビルダー北島達也
https://www.youtube.com/watch?v=XhscNmtCI68&feature=em-subs_digest
2014/12/06(Sat) 00:11 | URL | 豆蔵 | 【編集
糖質制限を始めてから蕁麻疹ができました。このまま糖質制限を続けても大丈夫でしょうか?
はじめまして。
東京に住む柏木と申します。

私は江部先生が執筆した本に感銘を受け、
先月から糖質制限ダイエットを始めました。

しかし糖質制限開始から1か月で身体中に蕁麻疹ができ、
今かなり酷い状況です。
痒くて仕方ありません。

いろいろネットで調べたら、
『色素性痒疹』という皮膚病に症状がそっくりでした。
蕁麻疹のブツブツの形もそっくりでしたし、
蕁麻疹ができる場所も『色素性痒疹』と同じでした。
さらに『色素性痒疹』は、今若い女性に多い皮膚病で、
無理なダイエットが原因と考えらているだけに、
まさに私の症状はこれではないかと考えています。
しかも、ネット上で『色素性痒疹』になった女性の体験談を
見てると、糖質制限でなった人もいたので、
私の蕁麻疹は『色素性痒疹』ではないかと確信しています。

先生の病院は京都なので、
さすがに京都まで診察には行くのが難しいのですが、
このまま糖質制限を続けても大丈夫でしょうか?

出来れば、このまま糖質制限を続けたいです。
今も蕁麻疹がすごいですが糖質制限は続けてます。
なぜなら、日に日に少しづつ健康的に痩せてくのが実感でき効果抜群ですし、
江部先生の本を読む限りでは
糖尿病予防や様々な健康につながると信じてます。
それに自分では超健康的な食事をしてるつもりなので、
これで健康に悪いとは思えないからです。

食べないものは、ご飯、パン、麺類、甘い食べ物飲み物だけです。

朝は自炊。昼は弁当持参。
超健康的な食事を心掛けてます。
朝も昼も、肉を必ずとり(たんぱく質)、
いろんな野菜でビタミンやミネラルもとっています。
あと、油も認知症になりやすいサラダ油はつかわず、
オリーブオイルで炒めて脂質もとろうと心掛けてます。

さらに全く糖質を断絶するのは極端だと思い、
カボチャやニンジンなどは糖質が多くても、
栄養をとるため食べてます。

さらに1日の摂取カロリーも
基礎代謝以上のカロリーはとってるつもりですし、
無理なダイエットはしてないつもりです。

ただし1日2食で、夜だけ食べません。
夜食べると太りやすいので。

それと間食も一切しません。
お菓子やデザートは一切食べませんし、
甘い清涼飲料水も一切クチにしません。
自動販売機かコンビニで飲み物を買う時は、
ミネラルウォーターか緑茶と決めてます。

あと、お酒も一切飲みません。
タバコも吸いません。

現在私は30歳で男性です。
生活も不規則とかではないです。
運動は通勤時に20分歩く程度しかできてませんが、
睡眠は人並みにとっています。

そんな感じです。

何がいけないんでしょうか。
アドバイスいただけたら、ものすごく助かります。
何卒、宜しくお願いいたします。
2014/12/06(Sat) 07:09 | URL | 柏木 | 【編集
Re: タイトルなし
豆蔵 さん

ありがとうございます。
ボディビルダーの方々、経験的に糖質制限食で
「筋肉増強+体脂肪減少」を達成しておられて、
そこに最近は「糖質制限食理論」もついてきているという状況ですね。
2014/12/06(Sat) 15:57 | URL | ドクター江部 | 【編集
アクトスについて
 浜六郎氏は糖尿病の治療に使えるのはヒトインスリンだけで、他はだめだと言いきっています。アクトスは発癌性があるからだめだと断定しています

 私は精神病患者の糖尿病合併例には、インスリンは使わず、アクトスを使っています。なぜなら、インスリンは大量注射して自殺できますが、アクトスは大量服薬しても死ねません

 精神科領域にとっては、将来の発癌性より、現在の希死念慮の方が問題です。浜六郎氏は精神疾患患者をまともにみていません。
2014/12/06(Sat) 22:11 | URL | 精神科医師A | 【編集
ボディビルダーと糖質制限
ビルダーの糖質制限ですが、個人によって違いがありますが、からだを大きくする時期はある程度は糖質を摂取しています。減量期間は徐々に減らします。しかし、糖質を全く摂取しない選手は私の知る限り居ません。
2014/12/07(Sun) 10:30 | URL | ゆきだるま | 【編集
Re: アクトスについて
精神科医師A さん

浜六郎医師は、よいこともいっぱい発言しておられて、賛成できることも多いのですが、
偏りもあると思います。

私は臨床家として、アトピー性皮膚炎の治療において、患者さんの「生活の質」を保つには
ステロイド外用剤とプロトピック軟膏は、必要と考えています。
しかし浜六郎医師は、ステロイドやプロトピックの副作用を強調しておられ、アトピー性皮膚炎の治療に
使用しない方がいいという立場です。
この点で私と浜医師は相容れません。

糖尿病治療にインスリンだけで他はだめというのも、現実の臨床現場では到底無理で、治療が成り立ちません。
2014/12/07(Sun) 17:49 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ボディビルダーと糖質制限
ゆきだるま さん

情報をありがとうございます。
2014/12/07(Sun) 19:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
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