宗田哲男先生のご報告。長崎での糖尿病妊娠学会。
【14/12/04 宗田 哲男

学会発表報告

11月27日 長崎での糖尿病妊娠学会発表が終わりました。

私たちは永井クリニックと共同研究で、4演題を発表しました!

30年目という歴史的節目の「糖尿病妊娠学会」で総括的な講演が多かったのですが、総括の共通点教訓は、「血糖値を上下させない管理が大切だ」ということでした。

でも今のやり方は、ネズミ(血糖値)の動き回るのがいけないと言いながら、ネズミにエサ(糖質)を与えてさんざん動き回らせて、医者はいかに槍や銃(インスリンほか薬剤)で押さえようかとしているのです。なかなか、ネズミはすばしっこいのでつかまりません。エサをやめたらすぐにおとなしくなるのですが。

私たちの演題は以下です。今年は昨年のような、学会会長が襲撃するといようなにぎやかさはなく、粛々と発表ができました。昨年は、「糖質制限したらケトン体が出て、知能指数が下がって馬鹿になる。」とか「こんなことしたら、許せん、倫理委員会にかけろ」などと学会幹部が怒鳴り込んできたのでした。

この4演題はその幹部たちへの回答です。1-3は永井クリニック、4は宗田マタニティクリニックです。

1)妊娠末期における母体の血中β-ヒドロキシ酪酸濃度の測定
2)臍帯動脈血中のケトン体測定による胎児・新生児の熱源の検討-第2報
3)2型糖尿病合併妊娠の低糖質食事療法による管理の1例
4)インスリンを使わないで分娩に至った1型糖尿病合併妊娠管理の1例

1)は妊娠後期に、普通妊婦と妊娠糖尿病妊婦 各1人を普通食と従来の糖尿病食と低糖質食を同じ方に2日間づつ食べてもらい毎食前のケトン体をはかったものです。

これでどの食事でも食前にはケトン体が上昇していて日常的にβーヒドロキシ酪酸が産生されていることがわかりました。この値は「ケトン体で知能が下がる」と言ったRizzo論文(1991)よりも半分以上は、高値でした。

また前の食事との間隔が空くほど、ケトン体が産生され200-400μmol/lにもなることがわかりました。

ケトン体は、つわりでも3000μmol/lにもなりますし、知能指数が下がるという論文が180μmol/l程度での話ですから、論外だと思います。

2)は、468人の正常経過の妊婦の臍帯血を調べてみると、ヒドロキシ酪酸は 中央値400μmol/l 血糖値は75mg/mlであった。ヒドロキシ酪酸の正常値は80μmol/l前後であり、これが胎児・新生児の熱源となると発表した。

永井クリニックでも、こういうデーターが出ていることは、私のクリニックとともに胎児、新生児のケトン体高値の環境が明らかになり、安全性も証明されました。

3)は80キロのⅡ型糖尿病合併妊婦が、体重は81キロで分娩した例で、低糖質で管理し、妊娠中に1キロ増でも2595gの子を分娩しています。

昨年、ある大学病院から、同様なケースで1600キロカロリーとインスリンを、135単位使っても高血糖と低血糖を繰り返して、難渋した例が報告されて いましたが、インスリンを使わないで、カロリーはそれほど制限しないでも、体重は管理できて、肥満型糖尿病には特に、糖質制限が有効であることを示しました。 

4)は、インスリンを使わないで、管理した1型糖尿病です。驚くことに、妊娠中にも分娩後も、さらにインスリン分泌が増加し、膵臓機能が回復している例です。

私の1つ前の演題は同じく急性発症型1型糖尿病で、妊娠初期にわかった方ですが、妊娠11週で、妊娠中絶していましたし、2つ前の発表は1型糖尿病にて、持続皮下インスリン注入法をしていて、後期に入院中に、刺入針の不具合で高血糖となりケトアシドーシスを起こして、結局、帝王切開した例でした。

1型糖尿病で、HbA1cが11.5で妊娠がわかり、インスリンをまったく使わないで、まったく入院しないで普通にお産した方なんて、まるでありえない別世界のケースでしようから、私の発表は、理解不能の人が多かったのかもしれません。好意的な質問もありまして、昨年とは大きく雰囲気が変わった発表でした。

この症例につきましては、また報告させていただきます。

この4演題を合わせますと、ケトン体の妊婦、胎児、新生児の環境での安全性と2型糖尿病、あるいは1型糖尿病にも糖質制限が有効、有利であることが示せたかと思います。

いろいろご指導いただきありがとうございました。】



こんばんは。

宗田マタニティクリニックの宗田 哲男先生から、長崎での糖尿病妊娠学会のご報告をいただきました。

宗田先生。
またまた、画期的なご発表、ありがとうございます。m(_ _)mV

1)
妊娠後期には、普通の妊婦でも妊娠糖尿病妊婦でも日常的にβ-ヒドロキシ酪酸が高値であることが示されたのは、
画期的なことです。

普通食と従来の糖尿病食と低糖質食で検討して、どの食事でも食前には日常的にβーヒドロキシ酪酸が上昇していることが示唆されました。

つまり、少なくとも妊娠後期においては、全ての妊婦で日常的にβ-ヒドロキシ酪酸が高値ということであり、危険でもなんでもないということです。

2)
468人の正常経過の妊婦の臍帯血において、βーヒドロキシ酪酸の中央値は、400μmol/lと成人の基準値(80μmol/l)よりはるかに高値であることが示されました。

本研究でも、胎児・新生児において、βーヒドロキシ酪酸が主たるエネルギー源である可能性が示唆されました。

3)
肥満のある2型糖尿病妊娠において、糖質制限食が画期的な成果をあげた症例です。

肥満がある糖尿病にインスリンを打つとますます肥満しやすくなり、体重コントロールに苦慮するのは、臨床でよく経験します。

ましてそれが妊婦であれば、体重・血糖コントロールに難渋するのは、当然と言えます。

糖尿病妊娠において、インスリンなしの糖質制限食による血糖・体重コントロールが、如何に優れた治療法であるかがわかります。

4)
1型糖尿病で妊娠時にHbA1cが11.5%ということが判明。

大学病院の糖尿病専門医に、中絶を薦められたけれど、一念発起して自力でスーパー糖質制限食を開始されて、血糖コントロール良好を確保して宗田先生に受信。

実は私のブログ経由で、宗田マタニティ-クリニックに受診された方です。

宗田先生はいつでもインスリン治療に切り替えるバックアップ体制は整えておられましたが、結局、インスリンなしで満期安産達成。

私としても、驚愕の一症例であり、ヾ(゜▽゜)

この1型の妊婦さんとそれを支えられた宗田先生に、脱帽です。ヾ(^▽^)



江部康二


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
日本の糖尿病関連学会はガラパゴス。
江部先生、ご紹介ありがとうございます。
また宗田先生、画期的なご発表、誠におめでとうございました。

> 今年は昨年のような、学会会長が襲撃するといような
> にぎやかさはなく、粛々と発表ができました。昨年は、
> 「糖質制限したらケトン体が出て、知能指数が下がって
>  馬鹿になる。」とか「こんなことしたら、許せん、
> 倫理委員会にかけろ」などと学会幹部が怒鳴り込んできたのでした。

これはヒドイ! 日本の糖尿病学会の幹部連中は、欧米ならば全員「落第」ですね。

なぜなら、皆さんご存知の通り、脳は、糖質も使えますが、ケトン体も使えます。これは海外の【医大生】向けの生化学の教科書に、一件の例外もなく、書いてあるからです。

  「脳細胞は、ブドウ糖だけでなく、ケトン体も使える。それも大量に」
   http://d.hatena.ne.jp/kuiiji_harris/20120116/1326717679
    ・リッピンコット生化学 原書4版(お勧め!)
    ・ホートン生化学 第4版
    ・レーニンジャー新生化学(下)第5版
    ・ストライヤー生化学 第5版
    ・カラー 生化学
    ・ヴォート生化学 第2版

だから今どき「脳細胞は、ブドウ糖しか使えない」なんて医者がいたら、
それは間違いなく「裏口組」ですので、直ちに「医者替え」が必要です。

こと妊娠糖尿病ともなれば「胎児の命」「母体の命」が、かかってますので、絶対に、妥協すべきではない。

落第レベルの医者は、直ちに、切り捨てるべきです。
2014/12/05(Fri) 12:30 | URL | さとし | 【編集
Re: 日本の糖尿病関連学会はガラパゴス。
さとし さん

情報をありがとうございます。

海外の生化学の教科書では、脳がケトン体をエネルギー源として利用するのは
当然のことなのですね。

日本だけが、ガラパゴスですか。


2014/12/05(Fri) 17:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
ケトン体は人体に必須の生化学役割を担っている.
そういえば,Diabetes Research and Clinical Practiceの
最新号にもこんな論文が発表されていましたね.

Diabetes Research and Clinical Practice
Volume 106, Issue 2, Pages 173–181, November 2014

The ketone body β-hydroxybutyrate (βOHB) is a
convenient carrier of energy from adipocytes
to peripheral tissues during fasting or exercise.

However, βOHB is more than just a metabolite,
having important cellular signaling roles as well.
βOHB is an endogenous inhibitor of
histone deacetylases (HDACs) and a ligand
for at least two cell surface receptors.

In addition, the downstream products of
βOHB metabolism including acetyl-CoA,
succinyl-CoA, and NAD+ (nicotinamide
adenine dinucleotide) themselves have signaling activities.

These regulatory functions of βOHB serve
to link the outside environment to cellular function
and gene expression, and have important implications
for the pathogenesis and treatment of metabolic
diseases including type 2 diabetes.

ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸)は,
単にエネルギー運搬物質として有用なだけでなく,
細胞間信号伝達にも重要な役割を果たしている,
という報告です.

心筋などのエネルギー源であるケトン体は,
更に重要な生化学的役割も果たしているというわけです.

ケトン体を「毒物」と信じてやまない,
学会の多くの先生には,
胸に手をあてて(心臓の鼓動を感じつつ),
この論文をよく読んでもらいたいものですね.
2014/12/06(Sat) 12:10 | URL | しらねのぞるば | 【編集
Re: ケトン体は人体に必須の生化学役割を担っている.
しらねのぞるば さん

ケトン体の論文情報、ありがとうございます。

ケトン体って、とってもいい奴なのに、
いわれのない悪評を立てられて、可哀想です。

何とか真実を広く知らしめて、ケトン体の名誉回復を目指したいですね。
2014/12/06(Sat) 16:37 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re.日本の糖尿病関連学会はガラパゴス。
さとしさん、素敵なコメントありがとうございます。ケトン体におびえて、糖質を食べることを要求する勉強しない学会幹部たちが、本当に馬鹿でしかも犯罪的だと思います。
 卵は、糖質がないのにヒナになります。このエネルギーはケトン体です、胎児新生児にはブドウ糖は不要です。それを無理に食べさせるから、妊娠糖尿病になります。いつになったら、気が付くのでしょうか?
シェアさせてください。
2014/12/07(Sun) 01:55 | URL | 宗田 哲男 | 【編集
Re: Re.日本の糖尿病関連学会はガラパゴス。
宗田 哲男 先生

同感です。

母体の高血糖が、先天奇形、巨大児などのリスクとなることは明らかで、エビデンスがあります。
そして、従来の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)では、母体の食後高血糖を防ぐことは
理論的に不可能なのです。

このように危険な食事を「糖尿病妊娠」「妊娠糖尿病」の妊婦に推奨して、押しつけているのは
糖尿病学会、まさにご指摘取り、犯罪的です。

ケトン体は、ヒトにおいても、胎児・新生児の重要なエネルギー源であり、
危険でも何でもありません。

「糖尿病妊娠」「妊娠糖尿病」において、糖質制限食以外の食事療法は
全て先天奇形、巨大児などのリスクとなります。
2014/12/07(Sun) 19:29 | URL | ドクター江部 | 【編集
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