カロリー制限食の落日、骨密度低下。ディアベテス・ケア論文。
こんにちは。

MT Proの2014年10月23日のドクターズアイにおいて

カロリー制限食の安全性神話に暗雲
Look AHEAD試験の骨密度に関するサブ解析から


と題して、山田悟氏の解説が掲載されました。

Look AHEAD試験は2013年に報告されたランダム化比較試験(RCT)です。
BMI 25以上の2型糖尿病患者が対象です。

1)強化介入群:カロリー制限(1,200~1,800kcal/日)と運動で7%以上の体重減量を達成・維持する群〕2,570例
2)対照群:2575例

での研究です。

2014年にLook AHEAD試験の、骨密度の変化に関するサブ解析が報告されました。
「ディアベテス・ケア(米国糖尿病学会誌)2014; 37: 2822-2829」

骨密度データのある1,309例のサブ解析です。

サブ解析の結果、男性では強化介入群では対照群に比べて、有意に全大腿骨近位部、大腿骨頸部の骨密度の低下が大きいことが判明しましたが、腰椎では差はなしでした。

全大腿骨近位部の骨密度の変化に対しては体重減少が有意に相関していました。

女性では両群ともに骨密度が低下し、どの部分についても両群に差異はありませんでした。

結局、本研究は
1,200~1,800kcalのカロリー制限食が
平均身長174.9cmの男性において
有意に骨密度を低下させることを示しています。


日本糖尿病学会編の糖尿病治療ガイド2014-2015では
男性1400~1800kcal/日 → 1400~2000kcal/日
女性1200~1600kcal/日  → 1200~1800kcal/日
を適正なエネルギー摂取量として推奨しています。
とうとう男女とも摂取エネルギーを少し増やしてますね。

しかし推奨していますが、エビデンスはないのが現状です。

<レベル1+ レベル1 レベル2 レベル3 レベル4>と5段階のエビデンスレベルが規定されているのですが、エネルギー制限食に関しては、エビデンスレベルなしの、コンセンサス(談合による合意)だけです。

日本糖尿病学会は、1969年の食品交換表第2版以降、エビデンスなしのエネルギー制限食を長年推奨してきました。

しかし今回の研究で、少なくとも男性においては、カロリー制限食による骨密度低下のリスクが示されたわけです。

カロリー制限食の安全神話に暗雲・・・カロリー制限食の落日ですね。


江部康二


以下、MT Proの2014年10月23日のドクターズアイ記事から一部抜粋

☆☆☆

ドクターズアイ・最新論文で考える日常臨床
カロリー制限食の安全性神話に暗雲

Look AHEAD試験の骨密度に関するサブ解析から
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟

研究の背景:1,200~1,800kcal/日のカロリー制限食が最善とされてきた

前回,NIPPON DATA80(Br J Nutr 2014; 112: 916-924)のご紹介をし,糖質制限食にまつわる議論は終焉を迎えたという旨の私見を述べさせていただいた(関連記事)。そして,極端な糖尿病食事療法についての議論そのものはさらに進めていくべきであると申し上げた。

しかし,それ以前に,私たちがこれまで最善だとしてきた,1,200~1,800kcal/日のカロリー制限食に問題があるかもしれないとする論文がDiabetes Care(2014; 37: 2822-2829)に発表された。オリジナルのデータがN Engl J Med(2013; 369: 145-154)に報告されたLook AHEAD試験(関連記事)のサブ解析である。

あらためて糖尿病食事療法に真摯に原点から科学的に向き合わなければならないと感じさせてくれる重要な論文だと思うので,ご紹介したい。

研究のポイント1:Look AHEAD試験参加者中,骨密度データのある1,309例のサブ解析

Look AHEAD試験は昨年に報告されたランダム化比較試験(RCT)である(N Engl J Med2013; 369: 145-154)。対象者は年齢45歳以上,BMI 25以上の2型糖尿病患者であり,①強化生活習慣介入群〔強化介入群;カロリー制限(1,200~1,800kcal/日で,脂質30%未満,蛋白質15%超,糖質50~55%のエネルギー比率)と身体活動増加により7%以上の体重減量を達成・維持する群〕2,570例と,②対照群(糖尿病教育とサポートを受ける群)2,575例-にランダムに割り付けられた。

主要評価項目は,複合心血管イベント(心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,狭心症での入院の4項目)の発症であり,中央値9.6年の観察期間中に両群に全く差異は生じていなかった。

今回の論文では,骨密度の変化を評価項目としたサブ解析の結果が報告されている。Look AHEAD試験自体は米国の16施設で実施されたが,骨密度の試験は5施設で実施された。また,骨密度は二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)により測定されたが,測定器の限界で体重300Ibs(約136kg)以上の人は測定ができないため,計1,373例がベースラインでの骨密度測定を受け,最終的に1,309例がベースラインと4年間でのフォローアップ時の骨密度データの解析対象となった(データ欠失の最大の理由は体重が300Ibs以上になったことであった)。

なお,この1,309例の体格について見ると,平均身長は男性174.9cm,女性160.3cm,平均体重はそれぞれ104.0kg,92.7kgであった。また,骨密度の測定は,全身,腰椎,全大腿骨近位部,大腿骨頸部に分けて解析された。


研究のポイント2:強化介入群の男性では有意に骨密度の低下が大きい

ベースライン時の両群の特徴を見てみると,両群ともに母集団の特徴とかけ離れたデータにはなっていなかった。また,両群で経口ステロイド薬,ビスホスホネート製剤,チアゾリジン薬の使用比率に差異はなかった。

解析の結果,男性では強化介入群では対照群に比べて,有意に全大腿骨近位部,大腿骨頸部の骨密度の低下が大きいことが判明した。一方,腰椎については差異はなかった。また,女性では両群ともに骨密度が低下し,どの部分についても両群に差異はなかった。

こうした骨密度の変化に対して,どのような要素が関係しているのかを解析したところ,アルコール摂取,喫煙状況,カルシウム摂取,運動体力は無関係であり,全大腿骨近位部の骨密度の変化に対しては体重減少が有意に相関していた(図)。このため,骨密度の変化を体重の変化量で補正してみたところ,両群の骨密度に関する差異は消失したという。


私の考察:わが国でもカロリー制限食に関する新たな議論が必要

わが国では,これまでも現在でも糖尿病治療のための食事療法としてまさに1,200~2,000kcalのカロリー制限食が指導されている〔今年出版された「糖尿病治療ガイド2014-2015」にもその旨が明記されている(39ページ)〕。しかし,このレベルのカロリー制限食の有効性や安全性についての論文は「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」に1件も引用されておらず,エビデンスレベルが示す通り,まさにこの記述はコンセンサスにすぎないことが分かる。

一方,今回ご紹介したLook AHEAD試験のサブ解析は1,200~1,800kcalのカロリー制限食が平均身長174.9cmの男性において有意に骨密度を低下させることを示している。私たちが日常診療で用いてきた(用いている)カロリー制限は,患者の骨密度を減少させてしまう可能性があることになる。

もちろん,男性でも大腿骨近位部以外では骨密度の変化は同等であった。また,女性では(平均身長160.3cmの女性に対しては),両群に骨密度の差異は(4年後の時点では)なかった。しかし,だからといってこのカロリー制限食は安全だと断じることは難しいであろう。

振り返ると,米国糖尿病学会(ADA)の最初の食事療法ガイドラインでは最重要課題としてカロリーの適正化を挙げていた(Diabetes Care 1971; 20: 633-634)。ただし,それはあくまでも体重を適正にするためのものであり,適正な体重であればカロリー制限は必要ないということであった。そして,1994年以降は,カロリー制限食は一般には長期の体重管理を維持できないとして,理想的な体重を得るためのカロリー適正化ですら課題から外している(Diabetes Care1994; 17: 519-522)。

欧州糖尿病学会(EASD)でも,以前からBMI 25未満の糖尿病患者に対してカロリー制限は不要である旨を述べている(Nutr Metab Cardiovasc Dis 2004; 14: 373-394)。

私たちは今も,肥満度にかかわらずカロリー制限食を推奨している。それは,本当に妥当なことなのであろうか。安全性は担保されているのであろうか。長期の有効性は確認できるのであろうか。欧米と同様に肥満から脱却するための一時的な食事法にとどめておいた方がよいのではないか。このLook AHEAD試験のサブ解析は,そんな疑問を痛切に感じさせる論文であった。日本糖尿病学会の食事療法に関する提言が言うように,今こそ,私たちは,真摯に糖尿病食事療法について研究を積み重ね,科学的な議論をしていかなければならない。



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
常識から考えてもカロリー1200~1800kcalで
脂質を控え肉食タンパク質控え卵を控え。。の指導では栄養失調です。必須蛋白質体重の1~1.5倍とても摂取できないカロリー制限の現状では栄養失調です。やはり!糖質制限、血糖を上げない生活でしっかりタンパク質を摂り健康な体つくりが基本です。
2014/11/18(Tue) 19:03 | URL | 富士の桜 | 【編集
お試しか
先日お試しかと言う番組で1日5合のご飯だけを一週間食べてどうなるか?というのをやってました。
白米だけはつらいのでご飯の友だけは食べていいというルールでした。

コンビ芸人がチャレンジしていたのですが、一人は68.2→67.4 もう一人は76.6→75.0と体重が下がっていました。
血糖値も測っていて、食後すぐだったとは思うのですが、89→87 99→83と下がっていました。どういう理由があるのでしょうか?
2014/11/19(Wed) 00:37 | URL | もーはち | 【編集
バカ番組を見るのは、やめましょう。まともな研究を勉強しましょう。
もーはちさん、

下記のどっちが、信頼できますか?

  (1) 芸人が出てくるようなバカ番組
  (2) 今回江部・山田両先生がご紹介くださった、正規の研究
    (N Engl J Med(2013; 369: 145-154)

常に、「優れたものと、バカなものとの落差」を注視していれば、自ずと、正しい答えが、導けます。

(1)みたいなバカ番組は、「医学的なエビデンス」としては、100点満点で、マイナス100000000点くらいですね。

今回、せっかく江部先生が(2)を紹介してくださったのに、なぜ貴方は(1)みたいなバカ番組のことを、持ち出すのでしょうか?

江部先生に申し訳ないと思わないんですか?

すぐ上の「富士の桜」さんのように、江部先生がご紹介くださった(2)を、何度も熟読し、それについてのコメントをお書きになるべきです。

繰り返します。「芸人が出てくるようなバカ番組」を見るのは、止めましょう。そんな番組は、そもそも存在すべきでは、ないのです。

おそらく農協でもスポンサーについていたんでしょう。あるいは製薬会社でしょうね。
2014/11/19(Wed) 12:20 | URL | さとし | 【編集
Re: お試しか
もーはち さん

米一合は約150gです。
1合あたり、炊いたら330gで534kcalです。
5合なら、2670kcal/日です。
本当に痩せたのなら消費エネルギーが2670kcal/日を上回っていたとうことになりますが・・・。

「血糖値も測っていて、食後すぐだったとは思うのですが、89→87 99→83と下がっていました。」


正常人でも糖質摂取後、30から60分はあるていど血糖値は上昇します。
2時間後なら食前より下がる人もいます。
食後すぐのデータなら、不思議なデータですが、
信頼度は低いと思います。
2014/11/19(Wed) 14:19 | URL | ドクター江部 | 【編集
美容やダイエットをテーマにしたテレビ番組は好視聴率が期待できるためか頻繁に放送されています。
現状、糖質に関しても医学界で様々な意見があり、結局何がカラダにイイのか、という問いに対する明確な回答は存在し得ないと思います。
私自身はその放送自体は視ていませんが、その番組の内容も飽くまでも一つの”結果”に過ぎませんし、医学的根拠を軽視して「ご飯で太らない(痩せる)=健康的」という事にはならないと思います。
2014/11/19(Wed) 19:05 | URL | KKK | 【編集
偏っているなと思う。
こんばんは。
健康番組も、作り方が巧みというか、先日の「みんなの家庭の医学」という番組では、
野菜→米飯・たんぱく質 という食べる順番にすると、ただ米飯・たんぱく質を食べるよりも食前食後の血糖値の上がり方が緩やかになるという実験をしていました。

しかし、素人目にもこれだけではだめで、
同じように、
米飯・たんぱく質→野菜
野菜→たんぱく質のみ
野菜→米飯のみ
米飯のみ
たんぱく質のみ
野菜のみ
と、このくらいのパターンで血糖値の動きを見ないことには、何もわからないのにと思いました。
偏っているなと思いました。
2014/11/19(Wed) 19:13 | URL | 戸田 | 【編集
ダイエットのために糖質制限を始めて1年が経ちました(50代、女性です)。
先日、健康診断があり、骨密度も調べました。
結果は文句なしの健康体、骨密度は同年代の平均はもちろん、20代の平均も上回っていました!

糖質を減らし、タンパク質と脂質をしっかり摂ったことが、この結果につながったのだと思っています。
2014/11/19(Wed) 21:07 | URL | キジ白猫 | 【編集
Re: タイトルなし
キジ白猫 さん

50代なのに、骨密度が20代の平均も上まわるとはすごいですね。

骨密度は以前の結果と比べて如何でしたか?

また運動はされたのでしょうか?

2014/11/20(Thu) 07:53 | URL | ドクター江部 | 【編集
骨密度
データを紛失してしまって、正確なところは分からないのですが、前回は3~4年前に測定しました。
当時はまだ40代で、やはり同年代の平均は上回っていましたが、20代に勝るような結果ではなかったです。

運動は、週に2回ヨガを、2回ダンスをしています。
時間は一時間ぐらいですが、先生のお手本を見ていたり、説明を聞いたりする時間もあるので、ずっと動いているわけではありません。
どちらも趣味レベルなので、それほど運動強度は強くないと思います。
2014/11/20(Thu) 22:40 | URL | キジ白猫 | 【編集
Re: 骨密度
キジ白猫 さん

早速のご回答、ありがとうございます。
そうすると、単純に糖質制限食1年間で、骨密度が20代の平均を上まわった可能性が高いのですね。
それは素晴らしいです。
2014/11/21(Fri) 08:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
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