メディカル朝日9月号、最新の糖尿病食事療法、感想。
【14/09/07 しらねのぞるば

メディカル朝日 2014年9月号

メディカル朝日の今月号では,先月号の『前篇』に続いて『糖尿病治療 up to date(後編)』として,『最新の糖尿病食事療法』を特集しています.

特集各記事は以下の通りです(番号は私がつけたものです).

(巻頭言) 糖尿病の食事療法の現状と課題
[1] 糖尿病における食事療法の在り方-炭水化物栄養の考え方
[2] 食事療法における脂質摂取の在り方-日本人の食事摂取基準(2015年版)に向けて
[3] 糖尿病腎症の病期分類改訂と食事指導の在り方
[4] 医師が把握すべき食品交換表第7版への改訂ポイント

これらの各記事全文を,特に【最新の】糖尿病食事療法 と銘打った以上は,どこまで最新のエビデンスを引用しているか,という観点から読んでみました.

論外だったのは[4] (著者は,やっぱりねの杏林大学:石田先生)で,『最新の』どころか,引用文献は食品交換表第7版以外,一切ありませんでした.

また,[3]も引用文献 9報中,2012年のものが1件のみで,とても最新の進歩を解説したとは思えません.

これらに対して,[2]は引用12報中,2010年以降の論文が7報と,特集の趣旨にかなった最新の情報を提供しています. しかも内容をみても,『難しいコレステロール摂取基準の設定』,『n-3PUFA」(=不飽和脂肪酸)摂取効果の現状』などでは,一方的に「コレステロール=悪」,「不飽和脂肪酸=善」などと決めつけるのではなく,最新の医学情報を根拠にして,冷静にこれらのメリット/デメリットを評価しています.

最後に,タイトルを見てもっとも期待した[1]ですが,この記事も[4]と同様に,文献は一切引用していません.しかし,米国糖尿病学会(ADA)が昨年発表した「成人糖尿病患者の食事療法に関する声明(Position Statement on Nutrition Therapy)」(Diabetes Care Vol.36,3821-3842)には言及しています.これは,おそらく日本糖尿病学会の幹部としては初めてではないでしょうか. ただし,その引用の仕方は下記の通りです.


" 一方,近年では米国糖尿病学会(ADA)のように,糖尿病の状態によっては必要な栄養素には違いがあり,特定の比率を決めることはできないとして,数値を示さないガイドラインも見られる"(p.17)

" 米国糖尿病学会は,2013年10月,食事療法に関する新たなstatementを発表した. 従来の「低脂質,地中海食とともに低炭水化物食は体重減少に短期的には有効」との記述は廃し[※],個々人の食パターンは維持しながら,総エネルギー摂取量の適正化を優先するとしている"(p.18)

私だけかもしれませんが,後者の文章のこの表現では,ADAの原文を読まずに,これだけを読んだ人は,『なんだ,やはり米国でも日本糖尿病学会の言う通り,カロリー制限食を推奨したのだな』と思ってしまうのではないでしょうか? しかもこの記事の最後は,下記で締めくくられています.

"生活習慣病の食事療法を論ずるに際して,よって立つべき視点は,日本人がこれまで培ってきた伝統的な食文化である"(p.18)

いよいよ高糖質・カロリー制限食が形勢不利になってきたので,最後は『食文化の違いはどうにもならないのだ』と,論点をすり替える伏線を張り始めたかな?と思いました.


[※] したがって,今月号の『月刊糖尿病』で,『低炭水化物食は2年までという制限がある』とした記事は間違いであることは,ここでも示されています.】



こんばんは。

しらねのぞるばさんから
メディカル朝日 2014年9月号
『糖尿病治療 up to date(後編)』
『最新の糖尿病食事療法』特集
について、コメント・感想をいただきました。

しらねのぞるばさん、ありがとうございます。

私もメディカル朝日 2014年9月号を読んでみました。


[巻頭言] 糖尿病の食事療法の現状と課題 (P14-15)
[1] 糖尿病における食事療法の在り方-炭水化物栄養の考え方 (P16-18)
[2] 食事療法における脂質摂取の在り方-日本人の食事摂取基準(2015年版)に向けて
  (P19-21)
[3] 糖尿病腎症の病期分類改訂と食事指導の在り方 (P20-25)
[4] 医師が把握すべき食品交換表第7版への改訂ポイント(P26-28)



[4] の著者は杏林大学、石田均先生で、しらねのぞるばさんがご指摘のように根拠となる論文も何もあげずに、自分の仮説を展開しておられるだけですね。


[1] の著者は、東京慈恵医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科教授の宇都宮一典先生です。

確かに、日本糖尿病学会の幹部として、初めて米国糖尿病学会(ADA)が、2013年10月に発表した「成人糖尿病患者の食事療法に関する声明(Position Statement on Nutrition Therapy)」(Diabetes Care Vol.36,3821-3842)に言及しておられます。

" 一方,近年では米国糖尿病学会(ADA)のように,糖尿病の状態によっては必要な栄養素には違いがあり,特定の比率を決めることはできないとして,数値を示さないガイドラインも見られる"(p.17)

" 米国糖尿病学会は,2013年10月,食事療法に関する新たなstatementを発表した. 従来の「低脂質,地中海食とともに低炭水化物食は体重減少に短期的には有効」との記述は廃し[※],個々人の食パターンは維持しながら,総エネルギー摂取量の適正化を優先するとしている"(p.18)


しかし、この引用の仕方は、いかにもアンフェアですね。

米国糖尿病学会(ADA)の声明の一番肝腎な

A)「全ての糖尿病患者に適した“唯一無二の”食事パターンは存在しない」
B)「患者ごとに個別に様々な食事パターン〔地中海食,ベジタリアン食,糖質制限食,低脂質食,カーボカウント・・・など〕が受容可能。」


という記載を、故意に無視しておられます。

A)は、唯一無二の食事パターン<カロリー制限・高糖質食>を相変わらず推奨し続けている日本糖尿病学会に対して、痛烈な批判となっています。

B)は、糖質制限食を米国糖尿病学会が公的に受容したということです。

このように重要な、A)B)という記載をを故意に無視されるとは、科学的態度とは到底言えず、極めて残念です。

"生活習慣病の食事療法を論ずるに際して,よって立つべき視点は,
日本人がこれまで培ってきた伝統的な食文化である"(p.18)


この記述もご指摘どおり、もろのすり替えですね。

食文化云々という前に、

「血糖を上げるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上げない」

という生理学的事実を、日本国民や一般の医師に公表する義務が日本糖尿病学会にはあると思います。

[※] したがって,9月号の『月刊糖尿病』で,『低炭水化物食は2年までという制限がある』とした記事は間違いであることは,ここでも示されています.

これに関しては、宇都宮先生も、認められたということですね。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖質制限中に糖質を取ることについて
以前糖質制限を始めて冷えが酷いとご相談させていただいたまおです。

その後糖質制限をストイックにやりすぎてストレスとなってしまい現在1食30グラムを目安にして、たまに糖質開放日を作りつつ緩く続けています。体調も問題なくおいしく楽しくの状態です。(でした。)

ところが先日フレンチのコースをいただいた際(この日は糖質開放日なのでパンもデザートもいただきまして)、食事が終わった頃から急に発汗とふらつきが・・・。
よくわからないまま帰宅し小一時間ほど横になったらすっかり回復。
始めはお酒が回ってしまったのかと思ったのですが、この回復の仕方はお酒じゃないよね、と連れと疑問だけが残りました。

でも、そういえばその少し前にも同じ状況があったことを思い出し(発汗→休憩→回復)そのときも謎だねーなんて話ていたのですが、その日お寿司を食べていたのです。

ということで糖質が原因かもと思いこちらのブログを探してみると食後低血糖なのかと。
こんな症状になったことは今までなかったので思いつきもしませんでした。

糖質制限中の人がたまに糖質を取ると、頭痛や動悸を感じる方がいるというのは拝見しましたが、糖質制限中でもたまにフレンチも食べればお寿司をいただくこともあり問題を感じたことはなかったのです。

糖質がだめだとわかったならやめればいいということなのでしょうが、この体質の変化は普通のことなのでしょうか。

たまにはご褒美に糖質を取りつつ、緩い糖質制限を続けていたいと考えている私としてはこの変化がどういうことなのか気になってしまいます。

何か私の体質に変化が起きつつあるということなのでしょうか。

もし参考になるようなケースがあればお教えいただければ幸いです。
2014/09/08(Mon) 20:19 | URL | まお | 【編集
今日、先生のご本を購入しました!
前に持っていたのはやせる食べ方でしたので
今度は糖尿病がどんどんよくなる糖質制限という本にしました。
しかし、明日その本は糖尿病を患った家の家族の兄弟の家に旅立ちます。(笑)(この人は現在糖尿病ではないのですが白内障)
兄弟が心配になった家の家族が本を見せてあげたいそうです。
親と他の兄弟を二人糖尿病で亡くし、もう一人は強い合併症があるので心配は無理もないです。(自分もとうとうなってしまったのですが)

本人は先生にこの間コメントで教えていただいた目標数値を目指して楽しみながら頑張っています。
(ブログでアドバイスいただいたことを話したらとても喜んでおりました。ありがとうございます。)

2014/09/08(Mon) 23:37 | URL | タブー改め みるみる | 【編集
不妊治療後の内服続行について
先生おはようございます。
いつもブログを拝見させていただいております。
私は不妊治療中ですが、卵子の質向上の目的でジャヌビアを内服しております。
昨年、食後高血糖と診断されました。
父がⅡ型糖尿病です。

私の75gGTTのデータですが
2013.1(内服前:体重56キロ)身長159センチ
血糖:空腹時75 30分154 60分207 120分203
インスリン: 3.1  19.1   25.2   30.7
A1C(JDS)4.9

2014.3(内服1年経過後:体重52キロ)
血糖:空腹時88 30分154 60分185 120分146
インスリン2.8    3.1   36.9   51.6
A1C4.8
1.5アンヒドロDグルシートル10.7

食事は1日1回玄米を食べていますし、間食もしますが、1日の糖質量130gを目標にしています。
糖質制限はゆるいです。
ご質問なのですが
①ジャヌビアは治療が終われば処方はされませんが、このまま飲み続けたほうが私の場合、糖尿病を発症せずいけるのでしょうか。

②または、このゆるいなりにも食事制限のみで内服は必要ないでしょうか。

③または、グルコバイを炭水化物を摂るときだけ飲み、ジャヌビアは継続で構わないでしょうか。

もう一点、このゆるい糖質制限でも1.5アンヒドロDグルシトールは低値を示すものでしょうか。

糖尿専門の有名な地元愛知の先生に受診したところ、糖質制限を否定され、ジャヌビアの服用により卵子の質が向上するという話にも首をかしげてみえました。
(実際かなり受精卵の質はよくなりました。)

最近抗糖化が不妊の領域でも取り上げられ、糖質制限も勧める病院もあります。
是非ご教示頂けましたら幸いです。
2014/09/09(Tue) 10:08 | URL | 涼子 | 【編集
Re: 糖質制限中に糖質を取ることについて
まお さん

本ブログのカテゴリー、「機能性低血糖」の項をご参照ください。

機能性低血糖症は、糖質制限食に関係なく、普通に糖質を食べている人の病気です。

ただ、糖質制限食を実践していて、たまに糖質を摂って低血糖症になるのは、
身体が『摂取してよい糖質の限界量』を教えてくれているという気もしますね。

偏頭痛然り、逆流性食道炎然りです。
2014/09/09(Tue) 13:05 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 本
タブー改め みるみる さん

拙著のご購入、ありがとうございます。
糖質制限の輪を広げて、糖尿病合併症を予防してくださいね。
2014/09/10(Wed) 07:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 不妊治療後の内服続行について
涼子 さん

糖質制限食をあるていどきっちり実践すれば、内服薬は必要ないと思います。
炭水化物を摂取するときだけ、グルコバイでいいと思います。

スーパー糖質制限食は、農耕前の人類700万年間の食事、すなわち人類本来の食事、人類の健康食ですので
不妊治療にもよい影響があると思います。

スーパー糖質制限食実践中の私も1.5AG:5.8μg/ml(12~43)と低値です。
HbA1cと血糖値がコントロール良好なら、1.5AGが低値でも問題ないです。

2008年04月14日 (月)の本ブログ記事
「糖質制限食と1.5AG」もご参照ください。
2014/09/10(Wed) 07:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生

早速ありがとうございます。

機能性低血糖の記事は読んでいたのですが、理解不十分だったようです。

糖質制限を始める前に機能性低血糖になったことはなかったので、糖質制限しているのに機能性低糖質症のような症状が現れたことで、糖質制限しているのに機能性低血糖症発症?糖尿病発症?とちょっと冷静を失っていました。

そもそも近親者に糖尿病の者がいるので、過去人間ドックでひっかかったことはないのですが、今から予防しようと始めた糖質制限だったので・・・。

確かに今回食べたフレンチはお料理自体に糖質多いなと思いながら食べていたので糖質取りすぎのサインだったのかもしれません。

これからも開放日の取りすぎに気をつけて続けていきます。
お忙しい中、返信ありがとうございました。



2014/09/10(Wed) 21:37 | URL | まお | 【編集
妊娠中の血糖値
江部先生、いつもブログと本を拝見させていただいています。以前、不妊治療中の内服についてご相談させていただいたものです。
私の通院している病院は、積極的に血糖測定やブドウ糖負荷試験を行い、抗酸化・抗糖化が卵子によくないと食事指導もしてくれました。
1日糖質130gというゆるい糖質制限とい感じでしたが。
お陰でトップクォリティーの受精卵が育ち、妊娠いたしました。
江部先生の本を真面目に読んで取り入れたお陰です。先生有難うございます。

今は、糖質制限は続行し、病院で卵子の質向上のため処方されていたジャヌビアは中止しています。
今朝血糖を自己測定致しましたら
早朝空腹時:100 食前:88 30分:146 1H:124 2H:106でした。
糖質は玄米1膳とヨーグルト(炭水化物15g)を摂り、あとはサラダ、納豆、めかぶ、ハム、卵焼きです。

妊娠すると胎盤から糖の代謝が悪くなるホルモンが出て、血糖値が上がりやすくなると、以前のブログで拝見いたしましたが、私の場合1日1食玄米のゆるい糖質制限で妊娠性糖尿病を防ぐことは可能でしょうか。また、妊娠によりどの程度血糖上昇が考えられるでしょうか。

江部先生宜しくご教示くださいませ。
2014/11/30(Sun) 17:33 | URL | 涼子 | 【編集
Re: 妊娠中の血糖値
涼子 さん

妊娠糖尿病の診断基準は
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断です。
・空腹時血糖値 ≧92mg/dL(5.1mmol/L)
・1時間値 ≧180mg/dL (10.0mmol/L)
・2時間値 ≧153mg/dL (8.5mmol/L)


妊娠中の血糖コントロール目標は以下です。
●血糖値
朝食前血糖値:70~100mg/dL
食後2時間血糖値:120mg/dL未満
●HbA1c(NGSP):5.8%未満

スーパー糖質制限食なら、いずれも目標達成は容易と思います。
1日1食玄米のゆるい糖質制限で妊娠糖尿病を防ぐことは可能か否かは
個人差があるので
やってみないとわかりません。
2014/12/01(Mon) 17:44 | URL | ドクター江部 | 【編集
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