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各糖質制限食のスタンス
こんにちは。

日本で実践されている糖質制限食には

A)高雄病院のスーパー糖質制限食(1回の食事の糖質量20g以下)
B)山田悟先生の緩い糖質制限食(1回の食事の糖質量30~40g)
C)釜池豊秋先生の糖質ゼロ食(1日1食で、夕食、糖質は5g以下)

α)荒木裕先生の断糖食
β)渡辺信幸先生のMEC食

などがあり、1回の糖質摂取量設定に違いがあります。

それでは、各糖質制限食のスタンスはどう違うのでしょうか?

まず、A)B)C)について検討してみます。


1)継続し易さと普及に関する配慮

継続し易さ、普及という面からは、普通に考えてB)が一番楽です。

A)はそれに、次いで楽ですし、当初から「スーパー」「スタンダード」「プチ」といったラインナップが設定されていて、最近は「緩やかな」という選択肢もあるので、継続し易さと普及ということを重視しているわけです。

C)は、ベストと思う食事療法をストイックに実践するという求道者のスタンスであり、継続し易さや普及ということは、優先順位としては全く考慮されていません。

つまりC)はやりたい人やれる人が実践すればよいのであって、やりやすくするというスタンスは皆無です。

従って、A)B)の立場の糖質セイゲニストとC)の立場の求道者とは、いくら話し合っても折り合いがつくことは不可能ですので、私も無駄な努力をするつもりはありません。

2)食後高血糖改善効果

食後高血糖改善効果はC)が一番高いです。

A)がその次でB)はかなり劣ります。

C)なら、食後高血糖はほとんどありません。

A)は、臨床的に合併症予防ができるレベル、食後1時間血糖値180mg/dl未満、食後2時間血糖値140mg/dl未満達成を目指していて、ほとんどの場合それが可能です。

B)は食後1時間血糖値180mg/dl未満、食後2時間血糖値140mg/dl未満を達成することは、困難な糖尿人が多いと思いますが、従来の糖尿病食(高糖質食)よりはましです。

3)追加分泌インスリン

C)は耐糖能正常型の人でも、インスリン追加分泌はごくごく少量です。
A)は耐糖能正常型の人の場合でもインスリン追加分泌は2~3倍レベルですみます。
B)は耐糖能正常型なら、追加分泌インスリンは10倍~20倍レベルでます。

インスリンは人体に絶対必要であり、基礎分泌インスリンがなければヒトは死にます。

しかし、インスリンには発ガンリスクやアルツハイマー病のリスクがあるので、少量ですむにこしたことはないのです。

従って、B)の場合は、野放しの高糖質食に比べればましですが、インスリン過剰のリスクがあるていどあることになります。

A)の場合は、人類700万年間の狩猟・採集時代に、野生の果物、ナッツ類、根茎類を食べたレベルと同程度の追加分泌インスリンなので許容範囲と思います。

4)問題点

B)は、インスリン分泌が多いこと以外にも、食後高血糖と平均血糖変動幅増大という酸化ストレスリスクに関しては、効果が弱いので問題と言えます。

C)は、始めにくいこと、継続しにくいこと、普及しにくいことが問題点です。

5)考察

A)の場合、C)よりは治療効果は若干劣りますが、殆どの糖尿人において、合併症予防という観点からは、問題ないと思われます。

体重減少効果も同様であり、「継続し易さ」「普及」「治療効果」においてバランスのとれた食事療法と言えます。

B)は、「継続し易さ」「普及」は優れていますが、肝腎の治療効果が劣ることと、食後高血糖と平均血糖変動幅増大という問題点を抱えています。

C)は、始めにくいこと・継続しにくいこと・普及しにくいことという弱点がありますが、治療効果は抜群ですので、ビタミンCの摂取に留意して、個人的にやれる人はやればいいと思います。

結論として、自画自賛になりますが、高雄病院のスーパー糖質制限食が一番バランスがいいのかなと思います。(^^) 

一方、山田悟先生の緩い糖質制限食や釜池豊秋先生の糖質ゼロ食も役割分担という視点にたてば対立するというよりも、一人一人の嗜好やニーズに応じて、相補的なものと思います。

A)B)C)の3者ともに、日本糖尿病学会推奨の従来の糖尿病食(高糖質食)に比べれば治療効果ははるかに高いのですから。

6) α)とβ)について
α)の荒木式は、ほぼスーパー糖質制限食に近いと思います。

ただ、ビールに関して、麦芽とホップだけの本物のビールは呑んでもよいとされていますが、糖質含有量は、米・コーン・スターチが含まれている普通のビールと同じだけあるので、勿論NG食品です。

β)のMEC食も、基本的にはスーパー糖質制限食に近いと思います。

一日に摂るべき食品はM(お肉)・E(卵)・C(チーズ)の三点で、これらをしっかり食べて、その上でさらに食べたいと思ったら他の食品(糖質を含む)も適度にOKということです。

あとは、一口、30回は噛んで食べようということです。

ビタミンCと食物繊維の摂取に注意すれば、MEC食もOKと思います。

ただ糖質を多く摂取すれば当然食後高血糖となるので、注意が必要です。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
アップ記事と異なるのですが、一歳5カ月の娘の血糖値を測定した所、血糖値170でした。
夕食を摂った後の事で、急にぐったりしたので心配になり測定してみたのです。
私自身が一型糖尿病で、遺伝が常に心配なのです。
やはり抗体検査をした方が良いのでしょうか。
突然のご相談申し訳ありません。
2014/08/29(Fri) 16:24 | URL | サザエ | 【編集
Re: タイトルなし
サザエ さん

1型糖尿病は遺伝的要素は、2型に比べれば少ないです。

2009年12月02日 (水)の本ブログ記事
「1型糖尿病と2型糖尿病」
をご参照ください。

しかし、一歳5カ月で食後血糖値が170mgdlというのは、高いと思います。
小児科で、ご相談いただけば幸いです。
2014/08/29(Fri) 19:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
いつも先生のブログを食い入るように見ています。貴重な情報ありがとうございます。

今年3月にA1cで7.8を出しまして、運動と食事療法で目下スーパー糖質制限を続けています。
4月のグリコアルプミンが13で、今月は12.4でした。ちょっと貧血気味ですね。

本日書かれている(c)の糖質ゼロ食ですが、どうしても以下の2点で問題が起きてしまいます。
1つは、体重が激減してしまうこと。もうひとつは運動と合わせると血糖値がやたらと下がってしまうことです。
エアロバイクがいいと聞いたので、夕食後は30分漕いでいます。(心拍数120~140)
直後に血糖値をはかると70代後半が出ることが多く、貧血の症状が出ることもあります。
どうしても糖質ゼロ食の場合、永続的なダイエットをしている感じになりますので、上記2点が結構心配です。

ちなみに求道者ではありませんが、もう米食やパンは食べなくてもまったく平気です。慣れとは恐ろしいものだなと感じています。
2014/08/29(Fri) 20:47 | URL | かしや | 【編集
江部先生こんにちは。いつもお忙しい中回答ありがとうございます。

私は、多嚢胞性卵巣症候群と言われ糖質制限をしていたのですがなかなかHba1cが下がらず(昨年は空腹時血糖95 Hba1c5.7 今年は空腹時血糖90 Hba1c5.5でした。)スーパー糖質制限に1ヶ月ほど前から移行しました。

最近、こちらのブログでも紹介されていた血糖測定器を購入して計りました。結果は…

空腹時血糖  81
食後30分   71
 一時間   83
一時間半   79
二時間    80

…という結果でした。低すぎる気がするのですが、このままスーパー糖質制限をしていても大丈夫でしょうか?スタンダードに戻した方が良いのでしょうか?教えてください。 
2014/08/29(Fri) 21:03 | URL | はるはる | 【編集
Re: タイトルなし
かしや さん

4月のグリコアルプミンが13で、今月は12.4・・・15.6%未満:正常ですので血糖コントロールは優秀です。

私は一日2食です。
かしやさんも、一日2食で、いいと思いますよ。
2014/08/30(Sat) 08:16 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
はるはる さん

「昨年は空腹時血糖95 Hba1c5.7 今年は空腹時血糖90 Hba1c5.5」

このデータなら、全くの正常です。
正常ですので、これ以上HbA1cが下がることもないと思います。

空腹時血糖  81
食後30分   71
 一時間   83
一時間半   79
二時間    80


スーパー糖質制限食で、食後血糖値の上昇がないに等しいですね。
血糖変動幅がほとんどなくて、とても良いデータです。
変動幅が少ないので、低血糖の恐れもありません。

このデータならインスリン分泌も最少量で済みますので、
多膿疱性卵巣症候群も改善の方向に向かうと思います。
スーパー糖質制限食を続けられてよいと思います。
2014/08/30(Sat) 08:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
先生、ありがとうございます。
運動と遅れてでて来ているインスリンの影響で血糖値が下がっているのだなと思います。
これを期に、夜タンパク質多めにして2食をやってみようかと思います。
数ヶ月後に結果がでるかなと思いますので、自分に合ったライフスタイルができたらまたご報告したいと思います。
2014/08/30(Sat) 09:49 | URL | かしや | 【編集
糖質制限って凄いなと感じます
江部先生初めまして。
先日、コンビニで【糖質制限完全レシピ】を購入してから数日ではありますが実践している者です。
新たに【炭水化物の食べ過ぎで早死にしてはいけません】なども購入し、勉強させていただいてます。

まだ始めて数日なので、体重の変化などはわからないのですが、顔にできていた吹き出物がすべて枯れて治りました。
それと、イライラしなくなってきたような気がします。
本にあったように、糖質過多の人の精神の不安定ってあるなと思います。

これからも糖質制限を続けて健康になりたいなと思う次第です。
江部先生、ありがとうございます。
2014/08/30(Sat) 11:52 | URL | キノコ | 【編集
1度の食事で・・
スーパー糖質制限では20g以下/毎食、という内容でしたが、30gも摂取するとNGなのですね。
少なければ少ないほど良いのでしょうが、普通に摂取していれば、25gくらいになったりしますが、努力します。
2014/08/30(Sat) 12:17 | URL | クワトロ | 【編集
こちらの「スタンス」の記事にコメントしたつもりが、
27日の方に送信されてしまったようです。
重ね重ね失礼いたしました、、、、。
2014/08/30(Sat) 14:01 | URL | .あぷりこっとん | 【編集
SGLT2阻害薬の適正使用で再度の注意喚起
SGLT2阻害薬については2か月ほど前にも日本糖尿病学会の関連委員会から注意喚起がなされましたが、再度の注意喚起が出たようです。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201408/538098.html?myselectweb=20140830

SGLT2阻害薬の副作用の多さ、華々しさには恐怖を感じざるを得ません。

糖質制限は自分の頭で考えることが大事ですが、この状況は他剤投与の慣行から来ているのでしょうか。
うつ病などで問題となった薬漬け医療が糖尿病にまで及んで来たかの印象です。
2014/08/30(Sat) 14:02 | URL | SHUKAN | 【編集
Re: 糖質制限って凄いなと感じます
キノコ さん

拙著のご購入、ありがとうございます。

「吹き出物が枯れて治って、イライラが減った」
良かったですね。

これからも、美味しく楽しく糖質制限食をお続けください。
2014/08/30(Sat) 15:46 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 1度の食事で・・
クワトロ さん

1)一つの目安は、糖尿人なら合併症予防には
食後1時間値が180mg/dl未満、
食後2時間値が140mg/dl未満、
を達成できる「糖質量」となります。
ほとんどの場合は、10~20g以下の糖質量で達成できます。

2)もう一つの目安は、正常人においても
追加分泌インスリンの量は少なければ少ないほど身体には優しいということです。
2014/08/30(Sat) 15:51 | URL | ドクター江部 | 【編集
ご回答ありがとうございました
1度の量を減らし、血管への負担を軽減します。
2014/08/30(Sat) 15:59 | URL | クワトロ | 【編集
Re: SGLT2阻害薬の適正使用で再度の注意喚起
SHUKAN さん

私の場合、患者さんの希望があった時だけ、
脱水注意、尿路感染注意で処方しています。

脱水注意なので、高齢の糖尿人には処方しません。
副作用報告の重篤例のほとんどが、ベースに脱水があったと思われます。
2014/08/30(Sat) 16:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生 回答ありがとうございました。

正常値ということで安心しました。

これからも多嚢胞性卵巣を改善するために頑張っていきます。
2014/08/30(Sat) 17:06 | URL | はるはる | 【編集
有益な情報
◇日本糖尿病学会:SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会
http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=48

◇トリグリセライド測定標準化の現状とその疫学的な意義
http://www.epi-c.jp/entry/lecture_003.html

◇糖尿病合併CKD患者への食事指導
http://www.jmedj.co.jp/weekly/jmedsearch_detail.php?genre=3¤t=1
2014/08/30(Sat) 21:09 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 有益な情報
精神科医師A さん

有益な情報をありがとうございます。
2014/08/31(Sun) 11:57 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖質制限と耐糖能低下について
なにげに受けたブドウ糖負荷試験で食前が92、食後一時間後が203、食後2時間後は134で、医師は、様子をみましょう、と言われたのですが、翌日からスーパー糖質制限食を始め半年が過ぎました。たまに糖質を摂取すると、一気に食後血糖値が三時間以上200を超えてしまうのですが、耐糖能低下と言われました。このまま糖質制限食を続けた方がいいのか、それとも耐糖能低下は、元の状態には戻らないのか、心配で投稿しました。こんな経験をしている人が結構いるみたいですが、膵臓が本当に休んでいるだけなのか、それともインスリンの分泌が低下してしまってもう元には戻らないのか、メカニズムが知りたいので投稿しました。よろしくお願い致します。
2014/09/24(Wed) 21:07 | URL | キヨ | 【編集
Re: 糖質制限と耐糖能低下について
キヨ さん

糖質制限食を実践していて、急に糖質を摂ったときの反応は
個人差があるようです。

2011年12月15日 (木)の本ブログ記事
「75g経口ブドウ糖負荷試験実施前の糖質摂取は?」

2011年02月09日 (水)の本ブログ記事
「糖質制限食で耐糖能低下?」

をご参照いただけば幸いです。

ともあれ、糖質制限食を続ける限りは、食後高血糖はありませんので、
糖質制限食で、血糖コントロールが良好となり、糖尿病が改善することは間違いありません。

私自身は、2002年に糖尿病の診断基準を満たしました。
その後2014年現在まで、スーパー糖質制限食を続けて、全ての検査データが正常です。

しかし今でも糖質を一人前摂取すれば、血糖は軽く200mg/dlを超えます。
そしてそれが糖尿病という病気の実体です。

私は、スーパー糖質制限食を実践するかぎりは正常人であり
糖質を普通に摂取すれば、糖尿人です。
2014/09/25(Thu) 19:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
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