FC2ブログ
やせたければ脂肪をたくさんとりなさい。江部・夏井(監修)、太田(訳)
こんにちは。

やせたければ脂肪をたくさんとりなさい
ダイエットにまつわる20の落とし穴   朝日新聞出版
ジョン・ブリファ (著), 江部康二 (監修), 夏井 睦 (監修), 大田直子 (翻訳)




2014年8月7日発売開始です。

夏井睦先生と私の共同監修で、英国の本の翻訳本です。

私が、まえがきを書いて、夏井先生が、あとがき担当です。

畏友夏井睦先生のあとがき、例によって自由奔放に筆を走らせておられます。
あとがきだけでも読む価値はありますね。


江部康二



☆☆☆
以下は
『やせたければ脂肪をたくさんとりなさい』
私のまえがきです。

まえがき

 本書の著者、ジョン・ブリファ博士はユニバーシティ・カレッジ・ロンドン医学部を卒業した医師です。現在、英国における食事療法・体重管理・健康管理の第一人者であり、本書は8冊目の著書で、ダイエットの本です。

 彼自身が当初は従来の常識である「食べる量を減らして運動量を増やす」ことで減量が可能だと信じていました。しかしカロリー制限をして運動をしても、ほぼ全員が減量に失敗する現実をみて、従来の常識に疑問を持ちます。そして、この20年間に発表された科学文献をしっかり読み直すことにより、栄養に関する「社会通念」のほとんどが、間違いで危険であることを認識しました。

 例えば「カロリー神話」「脂肪悪玉説」「コレステロール神話」といった旧来の常識が、現在科学的には根底から覆っていることを本書では根拠をもとに明らかにしています。

 そこからは人類が誕生してからいちばん長く食べているものを基本にした食事を良しとするという結論に達しますので原始食にたいして肯定的です。しかし米国セレブにおいて一時流行した、酒もコーヒーもお茶も原始時代は摂ってないので禁止というパレオダイエットほど限定的ではありません。原始食の原則は踏まえたうえで応用もOKというスタンスです。そして信頼度の高い科学文献を引用して、ダイエットと健康のための食事の理論を構築し、さらに具体的な食事の実践方法を示したのが本書です。基本は糖質摂取を減らし、脂肪とたんぱく質はしっかり摂取するので、これはまさに糖質制限食の本と言えます。
 ブリファ博士のたどったプロセスは、私が高雄病院で「糖質制限食と糖尿病・肥満」に取り組んだ一連の経過と共通しており、おおいに共感を覚えます。農耕が開始される前の狩猟・採集時代の食物こそが、人類の進化のよりどころであり、人類本来の食事、人類の健康食というブリファ博士の認識も私達糖質セイゲニストと同一であり、嬉しい限りです。

本書の特徴は、何と言ってもその豊富な引用文献にあります。1章~21章で合計約280件の科学論文が引用してあり、ブリファ博士自身の考えや提案に根拠を与えています。これらの論文は、拙著やブログで私が引用しているものも多く、日本から英国にエールを送りたい気持ちです。著者も本書は「科学」の内容が多くて読者に要求される知的レベルが高いので、16章からの実用編から読み始めてもよいとしています。しかしその場合も、各章の最後の結論の要約だけはぜひ読んでポイントを理解して欲しいそうです。

 巻末の情報源という項も興味深いです。本書を書くにあたりブリファ博士が参考にした医師や科学ライターのブログが掲載されています。英語が得意な人には宝の山かもしれません。私が日本語版(2013年)の書評を書いた「ヒトはなぜ太るのか?」の著者ガリー・トーブス氏もリストに載っています。米国でもトーブス氏のように糖質制限食賛成派が積極的に情報を発信しています。

 2013年10月には、米国糖尿病学会が2008年以来5年ぶりに、成人糖尿病患者の食事療法に関する声明を改訂して発表しました。その中で全ての糖尿病患者に適した“one-size-fits-all(唯一無二の)”食事パターンは存在しないと明言し、地中海食など共に、糖質制限食も正式に受容したのは記憶に新しいところです。

 スウェーデン社会保険庁も、2005年から糖質制限食の有効性に関して調査を開始して、その結果を得て2008年1月には公的に認めました。現在スウェーデンでは、肥満・糖尿病の食事療法として、程度の差はありますが、23%の人が糖質制限食を実践しています。

英国糖尿病学会においても、2011年食事療法ガイドライン改訂にあたり糖質制限食を選択肢の一つとして認めました。
 このように、世界の動向をみると、糖質制限食を認める潮流は明らかです。日本糖尿病学会においても、やっと緩やかな糖質制限食は選択肢の一つとして認める方向に舵をとりつつある段階です。

 本書においても、従来の「低脂肪食」に対して、「低炭水化物食」が、ダイエットに関して有効であることを、科学的根拠をもとに示しています。

 摂取するエネルギーと消費するエネルギーのバランスにより、体重の増減が決まるというのが従来信じられている「カロリー神話」ですが、これは消費するエネルギーを固定的に考えていることから来る誤解です。摂取するエネルギーと消費するエネルギーは相互に依存しています。摂取カロリーを制限すると代謝が抑制され、消費エネルギーも大幅に減少します。このメカニズムにより、過去にカロリー制限食が減量に失敗し続けた理由を説明しています。つまり、カロリー制限食を続けていても体重減少は止まってしまうし、元のカロリーに戻せばすぐに体重も戻るし、代謝が抑制されたままなら元より太ることになります。

 ついで食欲の問題ですが、高タンパク・高脂肪の食事は満足感が高く空腹感の度合いが低く、自発的に食べる量が減るので、摂取カロリーも自然に減るということを論文を引用して検証しています。一方、高炭水化物食は満足度が低いので、結果として食べる量が多く摂取カロリーも多くなるのです。

 インスリンとインスリン抵抗性についてもふれています。インスリンが肥満ホルモンであることは間違いありません。そしてインスリン抵抗性が肥満の元凶であることを指摘しています。インスリンを大量に分泌させるのは炭水化物、脂質、蛋白質のうち炭水化物だけです。インスリンを大量に分泌させるような食事(高炭水化物食)がインスリン抵抗性を増大させて肥満の悪循環になるのです。

 運動に関しても、研究論文をあげて、有酸素運動が減量に有効という従来の常識を否定しています。しかし有酸素運動の健康への効果に関しては肯定しています。有酸素運動と対極にある抵抗運動(ウェイトリフチィング、腕立て伏せ、腹筋運動など)と高タンパク食をを組み合わせると筋肉量を維持して脂肪の減量ができるという研究も示されています。

 本書はダイエットの本(低炭水化物食)ですが、運動など健康によいライフスタイルへのアドバイスもあります。糖質制限食や人間栄養学や健康管理に興味がある人は一読の価値があります。そして従来の医学常識や栄養学の常識を疑い自分の頭で考えることを目指す人には格好の入門書といえます。ぜひご一読を。


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
回答ありがとうございました。私が初代糖尿人ということなので(まだ予備軍ですが…)息子の食事にも気をつけて、糖質制限を続けていきたいと思います。

やっと今日先生の新しい著書が届いたので、これからじっくり読みたいと思います。
2014/08/08(Fri) 16:52 | URL | はるはる | 【編集
脂質は何でも同じだと思ってよいでしょうか?
先生こんにちは
いつも拝見させてもらっております

今回は脂肪をとりなさいとのタイトルですが、油は種類の違いを考えて摂取したほうがよいでしょうか?
長鎖脂肪酸:牛脂・ラード/オリーブオイル/魚油
中鎖脂肪酸:最近話題のココナッツオイル
短鎖脂肪酸:バター

最近、中鎖脂肪酸のココナッツオイルは肝臓に運ばれすぐにエネルギーになるので太りにくいとのことから
脂質:ココナッツオイル60g+その他の食品33g(合計93g)
糖質:51g
タンパク質:86gで生活をしてみたのですが、胸やけが酷くて継続ができませんでした・・・
個人的にはオリーブオイルや魚が好みなのでそっちのほうが継続できると思うのですが、そっちの脂質に切り替えても減量は可能でしょうか?
それと、タンパク質もぶどう糖に変換されるとのことですから、運動をした場合目標体重の1.5倍までと言われる数値でタンパク質の摂取量も考えたほうがよいでしょうか?



2014/08/08(Fri) 17:22 | URL | 小野 | 【編集
Re: 脂質は何でも同じだと思ってよいでしょうか?
小野 さん

血糖に変わるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は変わりません。

一つの目安としては
飽和脂肪酸(S):一価不飽和脂肪酸(M):多価不飽和脂肪酸(P)          
厚生労働省は S:M:P=3:4:3 を推奨しています。

その中で、自分の嗜好にあわせて摂取すればいいと思います。

なお、動物性食品はしっかり摂取していいのですが、
魚:肉=1:1 くらいが一つの目安と思っています。
2014/08/08(Fri) 21:08 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖尿病学会誌
糖尿病学会誌7月号 に2通の編集者への手紙が掲載された。同じ時期の投稿であり何らかの指示で企画されたものと思われる。私の糖尿病妊娠学会での発表抄録を文献トップに挙げて糖質制限食の批判を披露している。ただこのレターは最初の数行でこの方の栄養学への無知が露呈する。
また、私はこの学会発表で糖質制限食でケトン体が上昇することを主に発表したのではなく、糖質制限とは無関係に妊婦、胎児、新生児が高ケトン血症であることを発見し発表したのであるが、彼らにはその点は、全く理解ができないようである。そもそも、胎児の栄養は何によっているのかという江部先生から与えられた宿題からこの研究は始まった。

そしてケトン体といえば飢餓しか思い浮かばないこの2通のレターの著者の見解とは異なり、「悪阻や飢餓で起こる高ケトン血症は脂肪、筋肉組織の動員でおこるが、糖質を制限し脂質、タンパク質を中心に摂取する場合は、体内組織は使われず、食事に起因するもの」、胎児は脂肪をエネルギー源としている可能性」を論じた。
抄録を引用するのなら、こうした中身を読んで見解を述べてもらいたいものである。
ケトン体が悪いの一点張りの20年前の文献に頼らないで、少なくともアメリカ糖尿病学会の今のレベルをふまえて、なぜ胎児がケトン体が高いのかを考えてほしいものである。

江部先生、このレターは、極端な糖質制限食を批判していますが、あまりにレベルの低い内容に驚いています。ぜひ先生の見解を聞かせてください。

編集者への手紙Letters to the Editor
糖代謝異常の妊婦における糖質制限食
金塚東1) 竹本稔2) 横手幸太郎2)
Key words:妊娠,妊娠糖尿病,食事療法
〔糖尿病57(7):527,2014〕
今回我々は,極端な糖質制限食(たんぱく質:脂質:
炭水化物=17.7:50.9:30.9,1094 kcal 日)にて治療を
受けていた妊娠糖尿病患者を経験した.本症例は当院
入院時(妊娠36 週)に倦怠感,嘔気や高ケトン血症を
呈していたが,入院後,糖質制限の解除により速やか
に症状改善し,妊娠39 週目に異常なく出産した.一方
で,第29 回日本糖尿病・妊娠学会年次学術集会におい
て,糖質制限食を実施した妊娠糖尿病ではケトン体は
上昇したが,同制限食は妊娠糖尿病管理に有効である
と報告された1).
妊娠時の糖・脂質代謝の特徴は「accelerated starvation
とfacilitated anabolism」である2).妊娠後期のβ ―
ヒドロキシ酪酸値と出生児2 歳時のIQ が逆相関する
ことが認められ,全ての妊婦においてケトアシドーシ
スとaccelerated starvation を避けるよう努力する必
要があると報告された3).さらに胎生期・新生児期の飢
餓は成人期の糖代謝異常等にも関連する4).従って,極
端な糖質制限食で治療され,高ケトン血症を呈した妊
婦より出産した児には将来障害が発症する可能性は否
定できず,長期的な予後の観察が必要である.
「日本糖尿病学会の提言」において,“炭水化物のみを
極端に制限して減量を図ることは(中略)エビデンス
が不足しており,現時点では薦められない”とされた5).
妊婦の栄養状態は出産後長期間にわたり児の発育に影
響すると指摘されている2,4).以上より糖代謝異常の妊
婦には,「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン
2013」6)に準じた治療が薦められ,現時点で極端な糖質
制限食の試みは慎むべきである.
2014/08/08(Fri) 23:05 | URL | 産婦人科医 宗田 | 【編集
糖尿病学会誌2
次いで谷川論文です。これはケトーシスととケトアシドーシスの区別もついていない。ケトン体は胎児奇形を起こすというが、悪阻の妊婦ではケトン体は3000μmol/L .にもなる。胎児も新生児もケトン体は極めて高い。それはどう説明できるというのか? 従来より糖尿病妊婦の児では精神遅滞,行動の異常が指摘されてきたというがそれこそ従来の治療法の結果であって、そこには反省も責任もないのでしょうか?

江部先生、極端な糖質制限食は、低カロリー食になり、飢餓になるのでしょうか?批判するからには、もう少し勉強してほしいですね。

編集者への手紙Letters to the Editor
妊娠糖尿病女性への糖質制限食について
谷川敬一郎
〔糖尿病57(7):528,2014〕
妊娠時の糖・脂質代謝の特徴は脂肪の分解,ケトン
体産生,血糖の低下などの状態<accelerated starvation>
とインスリン抵抗性の亢進,高インスリン血症,
高血糖など<facilitated anabolism>が共存する事で
ある1).食べることによるアナボリックな変化と,絶食
時のカタボリックな変化が最初は緩徐なサイクルで
あったのが,妊娠の進行とともに急峻なサイクルへと
形を変えてゆくことは良く知られている.最近糖尿病
の食事療法に極端な糖質制限食を導入する考えがあ
る.宗田らは妊娠糖尿病の治療に糖質制限食を導入し
ており,妊婦の血中ケトン体は5000 μ mol l 以上(正常
値の50 倍以上)になったと述べている2).妊娠時はイ
ンスリン分泌が亢進しているためにケトーシスやケト
アシドーシスにはならなかったようだが,母児にとっ
て好ましくない可能性がある治療法である.また妊娠
中の極端な糖質制限食はさらなるstarvation の促進
を生じ,妊婦のみならず当然胎児も高ケトン血症に
なっている.動物実験ではケトン体は催奇形性物質で
あることが報告されており3),高血糖と高ケトン血症の
状態では胎仔の形成異常がさらに促進される.した
がって児の器官形成期には糖質制限食を避けることが
望ましいと考えられる.
従来より糖尿病妊婦の児では精神遅滞,行動の異常
が指摘されてきた4).Rizzo らは妊娠後期にβ ―ヒドロ
キシ酪酸が高値であった母体が出産した児のIQ が低
いことを明らかにした5).ケトン体が胎児の脳の発育や
神経細胞の成熟に及ぼす影響については全く知られて
いない.今後の課題として,糖質制限食で妊娠を継続
して出産した児のフォローアップを行い,児や将来の
さらなる予後を検討することも重要であろう.また極
端な糖質制限食では低カロリー食となって,児の飢餓
がGluckman ら6)が提唱するDOHaD(Developmental
Origins of Health and Disease)をひきおこす可能性も
ある.成人になって糖尿病や冠動脈疾患を発症する危
険性がある.このような児は小児科医,内科医による
長期的な予後の観察が必要である.
2014/08/08(Fri) 23:24 | URL | 産婦人科医 宗田 | 【編集
ブドウ糖、ケトン体そして酢酸も?
江部先生
いつも楽しく拝見しています。私は糖尿ではありませんが糖質制限を昨年より実行しており、長年患っていた高血圧が嘘のように治り、代謝改善のためか体温も1度上がって36.2度、冷え性や肌の調子も大幅に改善し髪のボリュームもアップしました。47歳男性です。
脳が利用するのはブドウ糖とケトン体ということでしたが、アルコールを大量に摂取するひとは酢酸をも脳で使うようになるとの論文が出たという記事を見つけましたので、報告いたします。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3613911/
2014/08/09(Sat) 08:15 | URL | DJ HIGO | 【編集
Re: ブドウ糖、ケトン体そして酢酸も?
DJ HIGO さん

情報をありがとうございます。
2014/08/09(Sat) 17:10 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ブドウ糖、ケトン体そして酢酸も?
何度もすみません。
先ほどは酢酸の論文に直接リンクしてしまいましたが、この論文を引用している精神科の先生のサイトのアドレスを下に書いておきます。
主旨は、アルコール依存症患者に断酒させた場合になぜか脳の機能障害が改善しない場合があるということの理由として、アルコール依存患者はブドウ糖よりも酢酸を優先して脳で使うように変化しているのが理由ではないかということです。
http://blog.livedoor.jp/beziehungswahn/archives/28140763.html
2014/08/09(Sat) 21:10 | URL | DJ HIGO | 【編集
Re: Re: ブドウ糖、ケトン体そして酢酸も?
DJ HIGO さん

情報をありがとうございます。

私は毎日お酒飲んでいて、ポン酢が大好きですけれど・・・、ケトン体をしっかり脳も使っているはずなので
酢酸は使わなくてすんでいるのかな・・・と思いたいですね。
2014/08/09(Sat) 21:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可