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心リハ患者への糖質制限食、減量・血糖改善効果あり。
おはようございます。

第20回日本心臓リハビリテーション学会学術集会のシンポジウム
「心臓リハビリテーションと栄養:適度な運動と栄養のバランスを問う」

において、

『心リハ患者への糖質制限食実践で、体力・精神指標の悪化なく減量・血糖改善効果あり』

という研究結果を、北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学教授の沖田孝一氏が報告しました。

糖質制限食において、また追い風となる素晴らしい研究報告です。

心筋梗塞、狭心症、心臓手術後などの患者さんは、心臓の働きが低下しています。

低下した体力を安全なやり方で回復させ、精神面でも自信をつける必要があります。

心臓リハビリテーションとは、食事療法、禁煙など生活指導、運動療法、カウンセリングなどを実践することにより、心臓病の患者さんが、快適で質の良い生活を取り戻すための総合プログラムです。

今回、沖田氏は、肥満や糖尿病を有する心リハ患者(12例)を糖質制限食群(6例)と総カロリー制限食群(6例)に分け、両食事療法の開始前と1カ月間継続後における各指標の変化を検討しました。

その結果、体重、BMI、ウエスト周囲長(腹囲)は糖質制限食群で有意に低下しましたが、総カロリー制限食群ではいずれも有意な変化は見られませんでした。

HbA1cは、糖質制限食群でのみ有意に低下しました。

大腿筋厚、膝伸展筋力、持久力といった筋力と体力の指標も、不安、うつ、認知機能といった精神活動の各指標も両群とも有意な変化は認められませんでした。

一部の医師が懸念するような、糖質制限食で筋力低下とか精神活動レベルが低下するといったことはなく、糖質制限食で安全に減量でき、血糖改善効果があったわけです。

総カロリー制限群では、減量も血糖も有意な改善なしなので、明らかに糖質制限食が総カロリー制限食より優位です。

血中脂質を調べたところ、中性脂肪は両群で低下、HDLコレステロールは両群ともほぼ不変でした。

しかし、総コレステロールとLDLコレステロールは、総カロリー制限食群では不変だったのに対して、糖質制限食群ではむしろ上昇傾向が認められました。

LDLコレステロールに関してですが、1ヶ月の経過ですので、糖質制限食で上昇することはあると思います。

特に、もともと菜食を中心にした食事パターンの人は、食材に含まれるコレステロールが少ないので、肝臓のコレステロール生産能力が高くなっています。

普通の食事の人で、肝臓でつくるコレステロールが7~8割で、食材からのコレステロールは2~3割です。

菜食中心の場合は、食材からのコレステロールが少ないので、肝臓で9割くらい作っている可能性があります。

このような人が、糖質制限食を実践すると「亢進した肝臓のコレステロール生産+増加した食材からのコレステロール」となるので、当分の間は、総コレステロールとLDLコレステロールが高値となります。

例えば、LDLが140mg/dlくらいだった人が、250mg~300mgくらいになることもあります。

半年、1年、2年・・・数年で、肝臓が調整して落ち着くことがほとんどです。

脂肪摂取に関して制限した逆の方向からのRCT研究論文ですが、米国医師会雑誌、2006年2月8日号に掲載された3本の論文において、

「<低脂肪+野菜豊富な食生活>は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げないし、総コレステロール値も不変であった。」

というのがあります。

結局肝臓が調整するので、脂肪制限食(コレステロール制限食)も脂肪(コレステロール)普通にありの食事も、8年間経つと血清コレステロール値には有意差なしということです。

5万人で8年間で、JAMAですので、信頼度が高い論文です。

脂肪制限群は20%です。

対照群は米国女性の普通摂取なので30数%と思います。

*Journal of American Medical Association(JAMA)誌
 2006年2月8日号の疾患ごとにまとめられた3本の論文で報告です。
*Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer?
  Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Colorectal Cancer?
  Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease?
  : The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial?
JAMA ,295(6):629-642.  643-654. 655-666.




江部康二



☆☆☆

以下、MT Pro サイトから、一部転載
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1407/1407087.html

[2014年7月31日]
心リハ患者への糖質制限食の影響は?
体力・精神指標の悪化なく減量・血糖改善効果

 肥満や糖尿病治療における低糖質食(糖質制限食)の是非が議論されている。肥満や糖尿病を有する心臓リハビリテーション(以下,心リハ)患者にはどう影響するのか-。心リハ患者に1カ月間,糖質制限食を続けてもらったところ,体重,BMIやHbA1cが有意に改善し,体力や精神面の指標には有意な変化が見られなかったという研究成果が明らかにされた。第20回日本心臓リハビリテーション学会学術集会(7月19~20日,会長=京都大学病院臨床研究総合センターEBM推進部特定教授・上嶋健治氏)のシンポジウム「心臓リハビリテーションと栄養:適度な運動と栄養のバランスを問う」で,北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学教授の沖田孝一氏が報告したもの。

糖質制限食群では体重,BMI,腹囲が有意に減少

 糖質制限食は,低脂質食よりも速やかかつ顕著な体重減少効果をもたらすことが,海外のランダム化比較試験などで報告されている。わが国では,NIPPON DATA 80において,糖質摂取量の少ない群ほど心血管死のリスクが低いことが示されている(関連記事)。

 糖尿病患者への糖質制限については,日本糖尿病学会が昨年(2013年)3月,炭水化物のみを極端に制限することはエビデンスが不足しており,現時点では勧められないとする声明を出した(関連記事)。しかし,糖質制限食の有効性を支持する声は今も少なくない。沖田氏もその1人だ。

 同氏は,糖質制限食による減量のメカニズムを次のように説明した。炭水化物などの糖質摂取量を制限すると,血糖値が上がらない。このため,インスリン分泌がほとんど起こらない。したがって,臓器や筋肉にブドウ糖が貯蔵されず,エネルギー源が枯渇する。すると,ブドウ糖の代わりに脂肪がエネルギー源として使われ,減量につながる。

 ただし,インスリンは筋力を増加させる方向に働く強力な蛋白同化ホルモンでもある。心リハ患者が低糖質食を取っていると,トレーニング効果が十分得られないのではないかとの疑問が湧く。また,ブドウ糖は脳活動のエネルギー源であるため,糖質制限食が精神活動を低下させることがないかという危惧も生じる。

 そこで同氏らは,肥満や糖尿病を有する心リハ患者(12例)を糖質制限食群(6例),総カロリー制限食群(6例)に分け,両食事療法の開始前と1カ月間継続後における各指標の変化を検討した。

 その結果,体重,BMI,ウエスト周囲長(腹囲)は糖質制限食群で有意に低下したが,総カロリー制限食群ではいずれも有意な変化は見られなかった(図1)。HbA1cは,糖質制限食群でのみ有意に低下した。ケトン体は糖質制限食群で有意に上昇した。大腿筋厚,膝伸展筋力,持久力は両群とも有意な変化が見られなかった。不安,うつ,認知機能の各指標も両群とも有意な変化は認められなかった。


症例によってはLDL-C上昇も

 一方,血中脂質の各指標を調べたところ,トリグリセライドは両群で低下,HDLコレステロールは両群ともほぼ不変だった。しかし,総コレステロール(TC),LDLコレステロール(LDL-C)は総カロリー制限食群では不変だったのに対して,糖質制限食群ではむしろ上昇傾向が認められた(図2)。
症例ごとの変化を見ると,一部の患者でTC,LDL-Cが著明に上昇していた。

 1カ月間の糖質制限食で有意な減量が得られ,体力面,精神面の指標を悪化させなかったことから,同氏は「糖質制限食は,肥満や糖尿病を伴う心リハ患者に考慮すべき食事療法の1つになる」と指摘した。ただし「患者によっては血清脂質が悪化する可能性がある」とし,その背景因子やメカニズムについて今後検討していく考えを示した。

(医学ライター・高橋 義彦)





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テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
はじめまして。
いつもブログを興味深く拝見させていただいています。

半年ほど前に糖尿病と診断されカロリー制限食を指導されましたが、
カロリー制限食を実践する前に運良く糖質制限食に出会うことができ、早々に
- 空腹時血糖値:126mg/dl → 90mg/dl
- HbA1c:8.0% → 5.8%
と改善することができました。

「炭水化物の食べすぎで早死にしてはいけません」を早速購入させていただきました。
今回は糖尿病や肥満だけでなく、その他の病気のことについても記載されていて、今後も糖質制限食を続けていくモチベーションアップになりました。

ところで、重箱の隅をつつくような指摘で恐縮ですが、
P.219の注釈に「・・・糖質を1kg摂取すると血糖値を約3上昇させる・・・」とありますが、これは誤記でしすよね?
(厳密には血糖値の方に単位が入っていないので、解釈によっては誤記とも言い切れないと思いましたが、本文中には糖質1gで血糖値3mg/dlと記載されており、わざわざ表現を変えて記載するとは思えなかったので念のため。)
2014/08/03(Sun) 20:51 | URL | 糖尿人1年生 | 【編集
Re: はじめまして。
糖尿人1年生 さん

拙著のご購入、ありがとうございます。
血糖値、HbA1cの改善、良かったですね。

P.219の注釈に「・・・糖質を1kg摂取すると血糖値を約3上昇させる・・・」

ご指摘ありがとうございます。
こんな、細かいところまで読んでチェックしていただいて、大変助かります。

勿論、ご指摘通り
「・・・糖質を1g摂取すると血糖値を約3mg上昇させる・・・」
が正しいです。
2014/08/04(Mon) 07:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
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