2014年07月01日 (火)
こんばんは。
新潟労災病院消化器内科部長前川智先生が書かれた
「耐糖能異常に対する低炭水化物食の効果に関する後ろ向き研究」
と題した英文論文がPubMedに掲載されました。
Diabetes, Metabolic syndrome, Obesity, Target and Therapy
というニュージーランドの英文雑誌です。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4063858/ → ここで全文が閲覧可能です。
『糖質制限食が境界型糖尿病において、血糖コントロール及び2型糖尿病への進行を予防するのに有効である。』
という糖質セイゲニストにとって大変喜ばしい研究結果です。
『糖質制限症群の69.4%において、血糖値は12ヶ月で正常化し、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において2時間の血漿グルコースレベルは、33mg/dl減少した。』
糖質制限食実践により、境界型糖尿病の耐糖能が改善していて、素晴らしい成果です。
対照群(普通食)36名中、3名(8%)が正常化で、28名(78%)は不変でIGTのままで、5名(14%)が糖尿病発症です。
前川先生は、新潟労災病院において糖質制限食をダイエットなどに導入しておられ、今回の研究は、2007年4月から2012年3月までの期間で行われました。
日本の研究者による糖質制限食の英文論文が、どんどん発表されていくといいですね。
前川智先生、貴重な研究報告をありがとうございます。
江部康二
☆☆☆
Diabetes Metab Syndr Obes. 2014; 7: 195–201.
Retrospective study on the efficacy of a low-carbohydrate diet for impaired glucose tolerance
Satoshi Maekawa,1 Tetsuya Kawahara,2 Ryosuke Nomura,1 Takayuki Murase,1 Yasuyoshi Ann,1 Masayuki Oeholm,1 and Masaru Harada3
「耐糖能異常に対する低炭水化物食の効果に関する後ろ向き研究」
要約
背景
近年では、耐糖能障害(IGT)を有する人の数は世界中で着実に増加している。糖尿病の予防は、公衆衛生、医療、経済学の観点から重要であることは明らかである。近年、低炭水化物食(LCD)は、体重減少及び血糖コントロールに有用であることが報告されたが、LCDのIGTへの効果についての情報は存在しない。私たちは、IGTに対するLCDに焦点を当てた7日間の院内教育プログラムを計画した。
方法
被験者は2007年4月から2012年3月までに登録され、12カ月間追跡したIGTの72人の患者(LCD群が36、対照群が36)であった。我々は、LCD群と対照群を後ろ向き調査により比較した。
結果
LCD群の69.4%において、血糖値は12ヶ月で正常化し、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において2時間の血漿グルコースレベルは、33mg/dl減少した。また、糖尿病の発生率は、12ヶ月目に対照群よりLCD群において有意に低かった(0%対13.9%、P = 0.02)。LCD群は12ヶ月後に、HbA1c、空腹時血糖値、HOMA-R、体重、血清トリグリセリド(TG)の有意な減少を示した。一方HDLコレステロール値は有意な増加を示した。
結論
LCDは、IGTを有する患者において、血糖値を正常化し、2型糖尿病への進行を予防するのに有効である。
新潟労災病院消化器内科部長前川智先生が書かれた
「耐糖能異常に対する低炭水化物食の効果に関する後ろ向き研究」
と題した英文論文がPubMedに掲載されました。
Diabetes, Metabolic syndrome, Obesity, Target and Therapy
というニュージーランドの英文雑誌です。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4063858/ → ここで全文が閲覧可能です。
『糖質制限食が境界型糖尿病において、血糖コントロール及び2型糖尿病への進行を予防するのに有効である。』
という糖質セイゲニストにとって大変喜ばしい研究結果です。
『糖質制限症群の69.4%において、血糖値は12ヶ月で正常化し、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において2時間の血漿グルコースレベルは、33mg/dl減少した。』
糖質制限食実践により、境界型糖尿病の耐糖能が改善していて、素晴らしい成果です。
対照群(普通食)36名中、3名(8%)が正常化で、28名(78%)は不変でIGTのままで、5名(14%)が糖尿病発症です。
前川先生は、新潟労災病院において糖質制限食をダイエットなどに導入しておられ、今回の研究は、2007年4月から2012年3月までの期間で行われました。
日本の研究者による糖質制限食の英文論文が、どんどん発表されていくといいですね。
前川智先生、貴重な研究報告をありがとうございます。
江部康二
☆☆☆
Diabetes Metab Syndr Obes. 2014; 7: 195–201.
Retrospective study on the efficacy of a low-carbohydrate diet for impaired glucose tolerance
Satoshi Maekawa,1 Tetsuya Kawahara,2 Ryosuke Nomura,1 Takayuki Murase,1 Yasuyoshi Ann,1 Masayuki Oeholm,1 and Masaru Harada3
「耐糖能異常に対する低炭水化物食の効果に関する後ろ向き研究」
要約
背景
近年では、耐糖能障害(IGT)を有する人の数は世界中で着実に増加している。糖尿病の予防は、公衆衛生、医療、経済学の観点から重要であることは明らかである。近年、低炭水化物食(LCD)は、体重減少及び血糖コントロールに有用であることが報告されたが、LCDのIGTへの効果についての情報は存在しない。私たちは、IGTに対するLCDに焦点を当てた7日間の院内教育プログラムを計画した。
方法
被験者は2007年4月から2012年3月までに登録され、12カ月間追跡したIGTの72人の患者(LCD群が36、対照群が36)であった。我々は、LCD群と対照群を後ろ向き調査により比較した。
結果
LCD群の69.4%において、血糖値は12ヶ月で正常化し、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において2時間の血漿グルコースレベルは、33mg/dl減少した。また、糖尿病の発生率は、12ヶ月目に対照群よりLCD群において有意に低かった(0%対13.9%、P = 0.02)。LCD群は12ヶ月後に、HbA1c、空腹時血糖値、HOMA-R、体重、血清トリグリセリド(TG)の有意な減少を示した。一方HDLコレステロール値は有意な増加を示した。
結論
LCDは、IGTを有する患者において、血糖値を正常化し、2型糖尿病への進行を予防するのに有効である。
江部先生
いつもご指導、貴重なご意見ありがとうございます。
6月28日、食後2時間血糖を採血で計ってきました。
結果は109です。Hba1Cは5.8でまた下がっております。
また副次効果か、これまで140あった血圧が100まで下がっております。下は60です。
朝食はエリスリトールを入れたコーヒー、糖質2gの小麦ふすまのパン、普通のハム2枚です。
うれしかったことがひとつあります。
主治医の先生は糖質制限には反対しておりませんでしたが、昨年11月のHba1c14.5がここまで改善するのを見られて、他の患者さんにも薦めてみようかなとおっしゃっています。江部先生また一人理解ある先生が増えました。
残念なこともあります。
血糖値が高い時期があったためか、足に正座をしている時のような痺れがあります。
少し糖質制限を行うのが遅かったかなと後悔しております。
江部先生、一般的な見解で結構なのですが、足のしびれなど神経障害は治る事例はあるのでしょうか。
ご教授いただければ幸いです。
いつもご指導、貴重なご意見ありがとうございます。
6月28日、食後2時間血糖を採血で計ってきました。
結果は109です。Hba1Cは5.8でまた下がっております。
また副次効果か、これまで140あった血圧が100まで下がっております。下は60です。
朝食はエリスリトールを入れたコーヒー、糖質2gの小麦ふすまのパン、普通のハム2枚です。
うれしかったことがひとつあります。
主治医の先生は糖質制限には反対しておりませんでしたが、昨年11月のHba1c14.5がここまで改善するのを見られて、他の患者さんにも薦めてみようかなとおっしゃっています。江部先生また一人理解ある先生が増えました。
残念なこともあります。
血糖値が高い時期があったためか、足に正座をしている時のような痺れがあります。
少し糖質制限を行うのが遅かったかなと後悔しております。
江部先生、一般的な見解で結構なのですが、足のしびれなど神経障害は治る事例はあるのでしょうか。
ご教授いただければ幸いです。
2014/07/01(Tue) 22:21 | URL | gansa | 【編集】
はじめまして、管理栄養士をしているものです。
今いる患者さんでB型肝炎と糖尿病の診断がついています。この方に糖質制限をおすすめしてよいのか迷っています。
あと個人的に疑問に感じているのですが低血糖について質問させてください。
低血糖が起こるのは、そのほとんどが血糖降下薬が起因していると認識していますが、その諸症状は脳が血糖の不足で起こるのでしょうか?
ケトン体が十分産生できている場合で脳のエネルギー源となっている場合は、多少の低血糖が引き起こされたときには問題にはならない、または低血糖に陥ること自体がない、ということでしょうか?
いま糖質制限を自分で実施したりして勉強しています。ご教授のほどをよろしくお願いします。
今いる患者さんでB型肝炎と糖尿病の診断がついています。この方に糖質制限をおすすめしてよいのか迷っています。
あと個人的に疑問に感じているのですが低血糖について質問させてください。
低血糖が起こるのは、そのほとんどが血糖降下薬が起因していると認識していますが、その諸症状は脳が血糖の不足で起こるのでしょうか?
ケトン体が十分産生できている場合で脳のエネルギー源となっている場合は、多少の低血糖が引き起こされたときには問題にはならない、または低血糖に陥ること自体がない、ということでしょうか?
いま糖質制限を自分で実施したりして勉強しています。ご教授のほどをよろしくお願いします。
糖尿人の息子さん
B型肝炎でも肝硬変でなければ、糖質制限食OKです。
低血糖とケトン体に関しては、仰るとおりと思います。
詳しくは一度記事にします。
B型肝炎でも肝硬変でなければ、糖質制限食OKです。
低血糖とケトン体に関しては、仰るとおりと思います。
詳しくは一度記事にします。
2014/07/02(Wed) 22:44 | URL | ドクター江部 | 【編集】
早速のお返事ありがとうございました。
当病院ではカロリー制限のみなので、患者さんの疑問に対して明確な方針を打ち出すことが困難です。新米栄養士としてなかなか糖質制限を全面には出せない状況で、自分の血液検査やアドバイス、データ提示位しかできませんが、患者さんをサポートしていきたいです。
当病院ではカロリー制限のみなので、患者さんの疑問に対して明確な方針を打ち出すことが困難です。新米栄養士としてなかなか糖質制限を全面には出せない状況で、自分の血液検査やアドバイス、データ提示位しかできませんが、患者さんをサポートしていきたいです。
江部先生
ご無沙汰しています。
お示しいただいた論文まさに糖質制限食が糖尿病を予防するという質の高いエビデンスですね。
全文を読みました。
Interventions でunrestricted calorie dietと書いてありますが、7-day LCD education programでは. The target was a total intake of 1,300 kcal per day.とあります。もし1300Kcalであるなら、糖質制限食+カロリー制限食に糖尿病予防効果があるということになりませんでしょうか。
小生英語が苦手(当時2次試験で英語のない滋賀医大に入ったくらい)なので、誤訳しているのでしょうか。
江部先生か江部先生のブログを御覧の英語の得意な先生ご教授いただけませんか。
よろしくお願いします。
ご無沙汰しています。
お示しいただいた論文まさに糖質制限食が糖尿病を予防するという質の高いエビデンスですね。
全文を読みました。
Interventions でunrestricted calorie dietと書いてありますが、7-day LCD education programでは. The target was a total intake of 1,300 kcal per day.とあります。もし1300Kcalであるなら、糖質制限食+カロリー制限食に糖尿病予防効果があるということになりませんでしょうか。
小生英語が苦手(当時2次試験で英語のない滋賀医大に入ったくらい)なので、誤訳しているのでしょうか。
江部先生か江部先生のブログを御覧の英語の得意な先生ご教授いただけませんか。
よろしくお願いします。
Follow-upの箇所にこうあります。
We emphasized the total carbohydrate intake of less than 120 g per day without restricting total calories or fat.
つまり7日間の教育入院中は1300Kcalとし、退院後はカロリーや脂肪摂取は無制限としたと思われます
We emphasized the total carbohydrate intake of less than 120 g per day without restricting total calories or fat.
つまり7日間の教育入院中は1300Kcalとし、退院後はカロリーや脂肪摂取は無制限としたと思われます
2014/07/03(Thu) 21:28 | URL | 精神科医師A | 【編集】
精神科医師A さん
コメントありがとうございます。
岡田先生、
私も、精神科医師Aさんと同じ意見です。
7日間の教育入院中は1300Kcalとし、退院後はカロリーや脂肪摂取は無制限で、
糖質摂取だけは120g/日以下としたのが、
低炭水化物ダイエット群(LCD群)と考えられます。
低炭水化物食群がカロリー無制限というのは、「DIRECT」のデザインと同様ですね。
**DIRECT
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241
なお、DIRECTはDietary Intervention Randomized Controlled Trialの略です。
コメントありがとうございます。
岡田先生、
私も、精神科医師Aさんと同じ意見です。
7日間の教育入院中は1300Kcalとし、退院後はカロリーや脂肪摂取は無制限で、
糖質摂取だけは120g/日以下としたのが、
低炭水化物ダイエット群(LCD群)と考えられます。
低炭水化物食群がカロリー無制限というのは、「DIRECT」のデザインと同様ですね。
**DIRECT
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241
なお、DIRECTはDietary Intervention Randomized Controlled Trialの略です。
2014/07/03(Thu) 22:38 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ありがとうございます。
全部もっときちっと読まなければならないですね。
この添えられたグラフ、すごい説得力がありませすね。
糖質制限の話を頼まれることが多くなり、引用したいと思います。
精神科A先生ありがとうございます。
自分の英語力のなさを痛感します。
しかしすごい時代になったものですね。
私のような僻地とも言っていいところで開業している小児科医が最新の英文論文が読めるようになったのですから。
今後ともよろしくお願い致します。
しかし、なぜ教育入院のときに1300Kcalに絞ったのでしょうか。辛かったでしょう。
全部もっときちっと読まなければならないですね。
この添えられたグラフ、すごい説得力がありませすね。
糖質制限の話を頼まれることが多くなり、引用したいと思います。
精神科A先生ありがとうございます。
自分の英語力のなさを痛感します。
しかしすごい時代になったものですね。
私のような僻地とも言っていいところで開業している小児科医が最新の英文論文が読めるようになったのですから。
今後ともよろしくお願い致します。
しかし、なぜ教育入院のときに1300Kcalに絞ったのでしょうか。辛かったでしょう。
我々は糖質120g/日を定めました。カロリーにはこだわらず、入院中も本来はもっとステーキなど豊富なおかずを提供したかったのですが、入院で定められた食事の算定額の範囲内でコスト面から、1300Kcalになりました。糖尿病食を含め、入院食は元来かなりごはんが多いと思います。米がおかずに比べると安価のため、おかず中心の食事はかなりお金がかかってしまうようです。自費診療で行うなら、もっとカロリー設定を高くしたと思います。
ただこれまで入院された約300人のほとんどが、食事の全体量に関して満足していました。確かにおかず中心の食事では、見た目もボリュームがあり、私自身も食べてみましたが、満足できる量でした。
ただこれまで入院された約300人のほとんどが、食事の全体量に関して満足していました。確かにおかず中心の食事では、見た目もボリュームがあり、私自身も食べてみましたが、満足できる量でした。
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