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『炭水化物制限の方が総カロリー制限より減量効果が大きい。○か×か?』
【14/06/23 福助

追加です

件の能登氏のネット連載記事ですが、他に、

『炭水化物制限の方が総カロリー制限より減量効果が大きい。○か×か?』

→「×」。
①2008年、イスラエルから発表された「炭水化物制限食」「脂質制限食」「地中海式食」の3群による減量効果の比較試験の結果について、
・炭水化物制限食を1年以上継続できた人が約80%しかいなかった。
・3群の中で炭水化物制限食群の総カロリーが最も低かった(論文発表後に指摘されたため別報にて開示)。※1
・その後発表された続報では、6年後には3群共ほぼベースラインの体重に戻っていた。※2

②06年に発表されたメタアナリシスでは、脂質制限食と比較して炭水化物制限食は開始後6カ月までは有意な体重減少をもたらすが、継続率は50~70%で、1年後には有意差は消失することが報告された。※3

③総カロリーは同じだが、炭水化物、蛋白質、脂質の構成比率が異なる食事による減量効果の比較試験が09年に米国から発表されたが、その結果は高炭水化物摂取群と炭水化物制限群では2年後の減量効果に有意差を認めなかった。※4

④他の研究でも、総カロリー制限の方が、炭水化物や脂質を制限するよりも減量において重要であることは示されている。※5

とのことです。

何かまた都合の良いことだけを取り上げているようなきな臭さ。。。

無理やり自ら望む結論へと導いているように感じるのは私だけでしょうか?


※1 Moller K, Krogh-Madsen R. Weight loss with a low-carbohydrate, Mediterranean, or low-fat diet. N Engl J Med. 2008;359:2170; author reply 1-2.
※2 Schwarzfuchs D, Golan R, Shai I. Four-year follow-up after two-year dietary interventions. N Engl J Med. 2012;367:1373-4.
※3 Nordmann AJ, Nordmann A, Briel M, et al. Effects of low-carbohydrate vs low-fat diets on weight loss and cardiovascular risk factors: a meta-analysis of randomized controlled trials. Arch Intern Med. 2006;166:285-93.
※4 Sacks FM, Bray GA, Carey VJ, et al. Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates. N Engl J Med. 2009;360:859-73.
※5 Foster GD, Wyatt HR, Hill JO, et al. Weight and metabolic outcomes after 2 years on a low-carbohydrate versus low-fat diet: a randomized trial. Ann Intern Med. 2010;153:147-57. 】



こんにちは。

福助さんから
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/noto/201307/531703.html
2013/7/23のm3.comの能登洋氏の記事
『炭水化物制限の方が総カロリー制限より減量効果が大きい。○か×か?』

についてコメントをいただきました。

福助さんのご指摘通り、能登先生、かなり意図的に、論文の結論をねじ曲げてます。

科学者としてフェアではないです。

①は
イスラエルのIris Shai先生の論文(ニューイングランド・ジャーナル掲載)
DIRECT(Dietary Intervention Randomized Controlled Trial)についてです。
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet.
NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241

DIRECTの結論は、

イスラエルの322人(男性86%)
(1)低脂肪食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
3群の食事法を2年間実施。
低炭水化物食が、最も体重減少し、HDL-Cも増加。
36名の糖尿病患者において低炭水化物食群だけがHbA1cが有意差をもって改善。

です。

糖質制限群は、最初の2ヶ月は20g/日に糖質を制限、その後3ヶ月目からは徐々に緩めて120g/日までOKと設定しています。

しかしながら、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後、40~41%の糖質を摂取しています。

つまり、このDIRECT論文も、糖質40%の糖質制限食群(中糖質群)と糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)を
比べた研究ということになります。

それで女性1500kcal、男性1800calのカロリー制限ありの他の2群に摂取カロリーを合わせてみると糖質制限食群でも、女性で150g/日、男性で180g/日の炭水化物を摂取していたことになります。

高雄病院のスーパー糖質制限食とは、3ヶ月以降の糖質摂取量が異なる研究です。

それでは、能登氏のいうDIRECTの問題点を検証してみます。

能登氏

『まず、炭水化物制限食を1年以上継続できた人が約80%しかいなかった点である。』


この点に関しては、以下の精神科医医師Aさんのコメント(13/07/26)があります。

「原文のFig.1をよく読んでみよう


-----低脂肪食-地中海食-低炭水化物食

開始時---104---109----109名

06か月---104---107----105

12か月---100---105----102

18か月---096---096----089

24か月---094---093----085

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0708681#t=article

ごらんのように、炭水化物制限食を1年間継続できた人が約93.5%、1年6ヶ月継続できた人が約81.7%、2年間継続できた人が約78.0%であった。

能登氏の文章表現は疑問である。」


精神科医師Aさん、ありがとうございます。

ご指摘通りと思います。

能登氏

『3食群間で総カロリーが異なっており,糖質制限食の総カロリーが最も低かったため,減量効果が糖質制限によるものなのか総カロリー制限によるものなのか結論づけることができない。』


これは、不思議です。論文をきっちり読まれたのでしょうか?

この表現は誤解としか言いようがありません。

まずベースラインの総摂取カロリーや、タンパク質・脂質・糖質摂取組成は、無作為割り付け試験ですので基本的に同一で、それが出発点です。

原著の論文には、試験開始後3群とも、出発点のベースラインからは、日々の摂取カロリーが、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後と全て、有意に減少しています。

そして、ベースラインからのカロリー減少幅に、3群で有意差はないということが明記してあります。

つまり、原著において、著者が総摂取カロリーに有意差がないと明記しているのを無視して

「3食群間で総カロリーが異なっており,糖質制限食の総カロリーが最も低かった」

と能登先生が述べておられるのは、いくら何でも著者のShai先生に失礼だと思います。

それから、低脂肪食と地中海食は女性1500kcal、男性1800kcalというカロリー制限があったのに対して、糖質制限はカロリー無制限というハンディキャップがありました。

それにも関わらず、糖質制限食群の場合も他の2群と同等の摂取カロリー減が認められたのは一見不思議です。

理由があるとすれば、満足感の高い食事であったので多くのカロリーを摂取する必然性がなかったということでしょうか。

これは、あくまでも仮説ですが、糖質制限食の一つの利点と言えるかもしれません。

高タンパク・高脂質食では、満足感が高いので、食後の空腹感が生じにくくなり、自然に摂取カロリーが減少するという研究報告もあります。



能登氏

『その後発表された報告では,6年後には3食群ともほぼベースラインの体重に戻っていた。』


これも、結論をねじ曲げた表現でフェアではありません。

「DIRECT 後の4年間のフォローアップ研究」が実施され、6年後も、体重減少の幅は小さくなりましたが、糖質制限食と地中海食では体重減少に関してまだ統計的有意差を保っていました。

統計的有意差があるのを無視して、3群とも一緒くたにするのは、能登先生、如何なものでしょう。

歪曲・虚偽表現と言われてもしかたがないと思います。

唯一脂質制限食だけが、6年後には体重減少の有意差が無くなっていました。

ただ有意差はあったのですが、一旦減った体重が一定リバウンドしたのは、スーパー糖質制限食のように、糖質12%で継続せずに、40%くらい摂取したためと思われます。

スーパー糖質制限食ならリバウンドしません。

同じ論文を読んで、能登先生がこのような歪曲した解釈を、日経メディカルに載せられたことは、極めて残念です。

次に③です。
能登氏

『総カロリーは同じだが、炭水化物、蛋白質、脂質の構成比率が異なる食事による減量効果の比較試験が09年に米国から発表された。その結果は、高炭水化物摂取群と炭水化物制限群では2年後の減量効果に有意差を認めなかったというものだった(図4)8)。』


この引用論文は、

2013年7月31日(水)の本ブログ記事
「日本医事新報、能登氏の論文で引用されている論文の検証」

で批判したものです。

この能登氏が引用したSacksらのニューイングランド・ジャーナル掲載の論文は、デザイン的に途中から破綻しており、結論はかなり無理があり、信頼度も低いものです。

詳しくは2013年7月31日(水)の本ブログ記事をご参照いただけば幸いです。

ニューイングランド・ジャーナルのような有名医学雑誌でさえも、このような「歪曲論文」が掲載されるのですから、私達読者は、「要約」だけでなく「本文」をちゃんと読んでからでないと信用できないので、注意が必要ということですね。




江部康二



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
はじめまして
はじめまして、HYSと申します。

今年の1月に75gブドウ糖負荷試験を受けた結果、空腹時血糖値126mg/dl, 2時間後血糖値206mg/dl, HbA1c 8.0で糖尿病と診断されました。
医師から指導されたのはカロリー制限食でその内容に何となく違和感を感じながらもAmazonでレシピ本を検索したところ、たまたま江部先生の「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」に出会い、購入しました。
独身の男ですが、料理をすることに抵抗はなかったため、昼食も弁当を持参しスーパー糖質制限食を開始し、4月の血液検査では空腹時血糖値88mg/dl, HbA1c 5.7に改善しました。同時期に受診した会社の健康診断でも同様の結果となり、幸か不幸か血糖値は問題なしの診断でした。
糖尿病が発症したこと自体は残念なことですが、それをきっかけに糖質制限食に出会えた事、また、自分の健康に対する意識が大きく変わったことなどから、トータルでは自分にとってはプラスになったと思っています。

以後、糖質制限食パーフェクトガイドなども購入させて頂き糖質制限食について勉強させて頂いていますが、医療とは異なる電気の世界で生きている人間なので、私自身は手放しで糖質制限を肯定するほどの根拠(知識)を持ち合わせていません。
しかしながら、
- 江部先生が批判記事に対して、エビデンスを示しながら論理的に反論していること
- その反論に対する反論がなされていないこと
- 批判記事や糖質制限を否定する著作は一度出されたきりで、継続した情報提供がなされていないこと
などから、現在は糖質制限に賛成する考えでいます。

また、糖尿病の診断と同時期に、睡眠時無呼吸症候群の診断を受け、CPAP治療も開始しました。
こちらは減量の効果が大きいと思いますが、通常の人が1年で見られる改善効果が、ここ3ヶ月で見られていると医師から言われました。
(身長166cm, 体重106kgと重度の肥満でしたが、糖質制限により現在は体重81kgになりました。現在も1月に3~4kg程度のペースで体重が減少しています。)

今までは糖質制限を肯定する書籍ばかりを読んできましたが、それではフェアでないと思い、試しに最近刊行された『世にも恐ろしい「糖質制限食ダイエット」』という本を購入しました。まだ最初の数十ページを読んだだけですが、エビデンスを示すことなく、過去の他のダイエット法がそうだったからという理由で糖質制限食ダイエットもそのうち消えると書かれていたり、「〜と思う」という表現で著者の考えだけが一方的に書かれていたり、糖質制限食実践者の死亡例を挙げながらも死因が糖質制限とはわかっていないなどと書かれていたり、非常に残念な内容です。
どうせ批判をするのなら、きちんとした根拠を示してほしいものですが、今のところこの本には説得力が全くないように感じています。

日々のブログ更新、継続した情報発信等、大変だとは存知ますが今後も継続して発信して頂ければ幸いです。

以上、長文・乱筆失礼いたしました。
2014/06/24(Tue) 22:00 | URL | HYS | 【編集
CPAP治療について
 国立病院機構福岡病院では低炭水化物食を評価しています。私の書き込みをご覧ください

http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2702.html
2014/06/25(Wed) 10:59 | URL | 精神科医師A | 【編集
糖質制限と筋肉低下について
こんにちは、1年半ほど糖質制限をして、今はNGSPで5.2-5.7で推移しています。
体重は70~73Kg(身長170)の間です。
同僚から、糖質制限では、筋肉が衰えるのではと心配されていますが、今のところそのようなことも無いのですが、糖質を筋肉から取ってくるので、筋肉が衰えるという話ですが、そのような
事があるでしょうか?おそらく出所は、ネットか
TVだろうと思います。少なくとも糖尿病で目が見えなくなったり、他のところが悪くなった人はいても、糖質制限で、体が悪くなった人は知りませんので、おそらくは、偏った情報とは思いますが、反論できないので、ご教授頂ければありがたいです。
2014/06/25(Wed) 12:46 | URL | 生川雅章 | 【編集
Re: CPAP治療について
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
2014/06/25(Wed) 13:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
能登氏の言い訳
2014/1/11 病態栄養学会(大阪)
合同パネルディスカッション1
「糖尿病の食事療法のあり方を巡って」

座長:宇都宮一典他
パネリスト:能登洋、幣憲一郎他

席上で、能登氏は、DIRECT試験について「6年後には3群共ほぼベースラインの体重に戻っていた」と説明した
質問が出た。「元論文では、地中海食群と炭水化物群では体重に有意な減少があったはず」
これに能登氏は、「Baselineの91kgより1kg程度の減少である」と返答した。
また宇都宮氏は「欧米人の肥満程度は強く、日本人にあてはめにくい」と付け加えた

 □

後で論文を読み返してみた。”1kg程度の減少”とは思えないが…


         Baseline   6年後
低脂肪群     91.3kg → 90.7kg (p<0.28)
地中海群     91.1kg → 88.0kg (p<0.001)
低炭水化物群   91.8kg → 90.1kg (p<0.02)
2014/06/25(Wed) 21:23 | URL | 精神科医師A | 【編集
ありがとうございます。
>精神科医師Aさん
ありがとうございます。
正直、医療に関してはgoogle検索ぐらいしか調べる術をしらないので、
こういった情報を頂けて大変為になります。
2014/06/25(Wed) 21:45 | URL | HYS | 【編集
ありがとうございます
江部先生、詳細に解説していただきましてありがとうございます。
やはり氏自身に都合の良い解釈のオンパレードですね。
現在も続くこの氏の連載企画ですが、どの連載も中立性が無く恣意的な解釈ばかりに思えます。

「血糖の厳格管理で死亡率は減る。○か×か?」
についても「×」とし、その理由として、
「一般に、血糖コントロールは厳格であることが望まれるが、実は厳格すぎても付加価値はあまりなく、むしろ低血糖の危険性が増加したり、死亡率が高まったりする事例もある。」
からとしています。

これについては元となるUKPDSのRCTについて、江部先生が既にブログで論ぜられているように、
10年間のフォローアップ期間後には

1)すべての糖尿病関連イベント
2)糖尿病関連死
3)全死亡
4)心筋梗塞
5)細小血管障害
※「UKPDS終了後10年間のフォローアップ」2009年03月18日 (水)
 http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-734.html

で有意な抑制効果を示しているわけで、これを無視している氏の思惑は如何に!?
このような連載をする立場にありながら、まさにアンフェアであり、非常に残念です。

(この「血糖の厳格化」についてですが、あくまで前提としては「SU剤やインスリン投与」によるものであるわけで、薬剤の副作用による影響も少なくないと思いますが。)
2014/06/26(Thu) 10:55 | URL | 福助 | 【編集
Re: 能登氏の言い訳
精神科医師A さん

貴重なライブ情報をありがとうございます。
記事にしたいと思います。
2014/06/26(Thu) 17:12 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ありがとうございます
福助 さん

例えば、ACCORD試験ですが
血糖の厳格管理群でかえって総死亡率が増加しています。

福助さんのご指摘通り、糖質を摂取しながら「SU剤やインスリン投与」により厳格管理した結果、
低血糖や平均血糖変動幅増大という副作用を招いたのが主因と考えられます。
2014/06/26(Thu) 17:52 | URL | ドクター江部 | 【編集
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