fc2ブログ
痩せすぎの人と糖質制限食。LDL-コレステロール高値は?
【14/05/22 ふつうの医師

いつも江部先生のブログを興味深く読ませていただいております。今回先生のコメントに危険を感じたため一介の医師として申し上げさせていただきます。

HbA1c5.5%、痩せ型、LDL-C値正常の方の食生活変更した症例に対してのアドバイスと拝見しました。血糖コントロール困難症例でもないのに、頭がすっきりするといった理由で、体重減少が予想される炭水化物制限を継続をすすめるのは危険と考えます。BMI16.2→15.4は人体にとって危険な領域に入っている可能性があります。

釈迦に説法かもしれませんが、そもそも炭水化物制限を行うと頑張って食べても太りにくい傾向にあります。人はタンパク質、脂肪ばかり摂取することが難しいため、炭水化物を抜くとどうしても痩せてしまいがちです。

またLDL-Cの上昇も2-3年すれば落ち着くとのことですが、その間のリスク上昇が懸念されます。ゼチーアを進められておりますが、ゼチーアはLDL-Cは心血管イベントの発症予防が証明されていない不確かな薬剤で、米国ではガイドライン掲載すらない薬剤です。日本の学会では新薬がお好きですが・・・

通常若い女性の冠動脈疾患リスクは低いですが、月経に異常があれば少し話がかわります。BMI15-16程度では月経に影響は出ていませんか?月経に異常があれば動脈硬化リスクが上昇します。また神経性食思不振症が隠れている可能性も否定できません?

まとめますと炭水化物制限によってLDLコレステロール値の上昇と体重減少が引き起こされている可能性が否定できないならば、中止をお勧めすることが医師としての務めかと考えます。

以下は蛇足とは思いますが、血糖値、インスリンは人間のパラメーターの一つにしかすぎません。健康に生きるためには多くの考察が必要になります。炭水化物制限が合う人もいれば、合わない人もいると思います。今回の症例などは炭水化物制限を行う必然性はなく、むしろ危険な可能性があります。公開されていない多くの情報を踏まえ、私が指摘したことなどは当然熟慮された上でのアドバイスかもしれませんが、HPを見た不特定多数の人に誤解を与える可能性があります。

以上、こんごの先生の持論のますますの進化を祈っております。】



こんばんは。

ふつうの医師さんから

「痩せすぎの人に糖質制限食は危険ではないか。」

というコメントを頂きました。

仰有る通り、ごく普通のお医者さんのニュートラルな立場からのアドバイスと思います。
ありがとうございます。

2014年5月21日の本ブログ記事の例は、151cm、37kgがベースラインで、BMIが16.2ですので、ご指摘通り痩せすぎです。

私も記事の中で、しっかりエネルギー摂取して体重を増やすようにアドバイスしています。

私も痩せ過ぎは良くないと思います。

BMIでは日本人は、適正体重はBMI20以上~25未満で、その個人の一番体調の良い体重が目標です。(☆)

以前記事にしたことがありますが、スーパー糖質制限食で、肥満の人は体重が減少し、痩せ方の人は体重が増加して、上記適正体重に入ることが多いです。

そして、現在既に適正体重の場合、スーパー糖質制限食でもそれ以上痩せることはありません。

すでにBMIが20とか22とかの女性で、

「スーパー糖質制限食をきっちり実践しているのに痩せない。」

という苦情がよく、本ブログにコメントされます。

それで、上記「適正体重」の話は、繰り返しブログ記事にしています。

そして痩せ過ぎに関しても、ふつうの医師さんのご指摘通り、総死亡率などが増えますので

「痩せすぎの人がスーパー糖質制限食で適正体重になるためのノウハウ」

も繰り返しブログ記事にしています。

スーパー糖質制限食は、人類700万年間の進化の歴史において本来の食事であり、人類の健康食ですので小児から成人までOKで、特殊例(肝硬変、長鎖脂肪酸代謝異常症、急性膵炎活動期・・・など)を除いて危険性はないと考えています。

イヌイット族、マサイ族、モンゴル遊牧民も、数千年の歴史における伝統的食生活の頃は「スーパー糖質制限食」です。

LDL-コレステロール高値に関してですが、「日本動脈硬化学会」と「日本脂質栄養学会」のバトルは記憶に新しいところです。
私自身は、日本脂質栄養学会のいう「コレステロール値が高いほど長生き」という立場の方が説得力があると思います。

欧米では「利益相反」や「製薬企業によるエビデンスの不正」が問題となって、2004年以降、治験や医学論文に対して科学的厳密さが、より強く要求されるようになりました。

その結果、2006年以降に発表されたコレステロール低下薬に関する無作為化対照試験(RCT)である、ASPEN(16)、ENHANCE(17)、SEAS(18)、GISS-HF(19)、 CORONA(20)、AURORA(21)などでは、スタチンによりLDL-Cは下がりましたが、心血管系イベントや総死亡には効果が無いと報告されるようになりました。

日本動脈硬化学会の「コレステロールは低ければ低いほど良い」という立場が、大きく揺らいでいるのが欧米の現状です。(☆☆)

従いまして、2004年以前の欧米のRCT研究論文やガイドラインで、「スタチンによるLDL-コレステロール低下により心血管イベントが減少して総死亡率が下がる」というエビデンスは、利益相反バリバリであり、信用できません。

このように、ガイドラインやエビデンスとされるものも、自分の頭で考えて判断しないとそれこそ危険です。

次にスタチンに関してですが、副作用の多い薬であり、家族性高コレステロール血症の一部には適応となる可能性がありますが、それ以外は、必要ない薬かもしれません。

スーパー糖質制限食でLDL-コレステロールが高値となった場合、患者さん本人は兎も角として、家族・親戚や、友人の医師・看護師などが心配して「LDL-コレステロールを下げろ」の大合唱となることなることが良くあります。

こんな時ゼチーアは、スタチンに比べれば副作用の少ない薬であり、喧嘩せずに折り合いをつけるには使い勝手がいい薬なのです。

そして、スーパー糖質制限食実践によりLDL-コレステロールが高値となったケースには、劇的な効果がある薬なのです。


(☆)
2014年05月07日 (水)の本ブログ記事
「糖質制限食による体重減少と適正体重」
をご参照ください。

(☆☆)
2014年03月04日 (火)の本ブログ記事
「コレステロールについての考察。2014年3月。」
をご参照ください。


江部康二





テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ダイエット飲料に気をつけろ
日刊ゲンダイ5月22日号、糖尿病になってたまるか!によると、「・・・。砂糖の代わりに人工甘味料を使い、低カロリーということで、糖尿病に問題なさそうに思えるが、欧米の研究では糖尿病リスクを高めると報告されているからだ。例えば、超肥満の人を人工甘味料を飲んだ群と飲まない群に分け、後にブドウ糖を取ってもらい血糖値を調べたところ、前者は数値が上がり、インスリンの分泌量も増えた。別の研究で、中年女性に砂糖入りの炭酸飲料と人工甘味料入りのそれを飲ませたところ、後者の方が明らかに糖尿病の発症リスクが上がったと報告された。人工甘味料はそのまま排出されるので血糖値に影響しないなんて話もあったが、どうやら間違いらしい。むしろ、インスリンの過剰分泌を起こして、血糖を下げる働きが弱くなるようだ。・・・」とありました。
2014/05/22(Thu) 21:31 | URL | デュピュイ取る | 【編集
先日はありがとうございました
江部先生

先日は、炭水化物依存症と低血糖の質問にお答え頂きありがとうございました。
お陰様で今週はかなり調子が良いです。

ところで、私の夫はブリティッシュなのですが、夫に説明出来るよう、英語で糖質制限について詳しく書かれているものをご存知でしたら教えて頂きたいと思いコメントを書かせて頂きました。
私の体調不良、肌荒れが改善したにしろ、長期で炭水化物を取らないことに心から賛成してもらえていないようなのです。
もしご存知でしたら教えていただけると助かります。
よろしくお願い致します。
2014/05/23(Fri) 01:04 | URL | España | 【編集
高脂血症の治療を受けている患者ですが、スタチンもゼチアも動脈硬化が阻止できる薬なのかよくわかりません。LDLがかなり下がっても首のエコーの成績は良くありませんから。専門の医師によるとゼチアの効果については、現在学会で二派に分かれているとのこと。
2014/05/23(Fri) 05:45 | URL | 匿名 | 【編集
Españaさんへおせっかいですが
 下記のローカーブの大御所 Dr.Volekへのインタビュー記事はとてもよくわかりやすくまとめられていて素晴らしいです。記事の中で著書も2冊紹介されていますが、一般の人ではこの記事だけで十分なほどです。
 またYtubeで検索すればDr.Volekの講演も簡単に観れます。


http://www.truehealthunlimited.com/blog/q-a-with-jeff-volek-phd-rd-the-nations-leading-low-carb-expert-scientific-researcher
2014/05/23(Fri) 08:00 | URL | まぬーか | 【編集
痩せすぎとは?
江部先生
昨日から失礼しております。
自分もスーパー糖質制限を実践させていただいており大変感謝しております。
しかしこの「痩せすぎ」という問題については些か疑問があります。
BMIだけをもってその判断を下すというのは如何なものでしょうか?
BMIもカロリーと同様の側面を持っていはしませんでしょうか?
BMIは体重の二乗で割ったらちょうど管理しやすい値となった、目安にするには都合がよい程度のものと思っています。
だからこそ今回のような場合ほど、体脂肪量や筋肉量、骨量などを勘案しなければならないのではないでしょうか?
私の母は70歳を過ぎましたが、要介護状態で施設のお世話になっております。
数年前に脳梗塞になったこともあり、食事(カロリー)制限され、150cmで39㎏となり、
その後今度は痩せすぎと判断され、食事量を増やされて42㎏となりました。
その間も介護度は増すばかりで、要は増加した3㎏の体重はすべて体脂肪だったということです。
39㎏の時点でも、お腹には体脂肪がたっぷりありましたし、明らかに筋肉量が足りていない痩せ状態でした。
現在の普通の医療では、こんな状態ですらOKなんです。BMIさえ範囲内なら。。。

2014/05/23(Fri) 12:11 | URL | 一読者 | 【編集
まぬーかさん
貴重な情報をありがとうございます。
とても助かります。
2014/05/23(Fri) 15:45 | URL | España | 【編集
質問させてください。

私は1-5agが基準より低値だったため、ブドウ糖負荷検査をしましたが、その結果は異常なしとのことでした。
先生は合点がいかないと言い経過観察となりましたが、何か考えられらる病気があるのでしょうか。

30代後半、女性で、やせ形です。

先日、腹部エコーの結果説明のときに
脂肪肝らありました。特に気をつけなさい等の指導はありませんでした。
ご教授お願いします。
2014/05/23(Fri) 18:04 | URL | ゆず | 【編集
Re: 先日はありがとうございました
España さん

「The Food Revolution - AHS 2011」
http://youtu.be/FSeSTq-N4U4
の動画がわかりやすいです。

上記動画のエンフェルト医師は、Diet Doctor.com という英語のタイトルで、
ホームページを作成してLCHF(Low Carb High Fat:糖質制限・高脂肪)について
様々な情報提供、研究者や医師や科学ジャーナリストへのインタビューを掲載しています。
http://www.dietdoctor.com/about
2014/05/23(Fri) 18:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 痩せすぎとは?
一読者 さん。

仰有る通りと思います。
BMIは目安の一つに過ぎません。

大きな研究などで、アジア人ならBMI:23~27
が一番、総死亡率が低いというのはあくまでも確率の問題です。

私も個人的な最適の体重は、体脂肪量や筋肉量、骨量などを勘案するのがいいと思います。
そしてBMI17でも、健康な人はありえると思いますが、確率的にはそれは少数派となります。

健康のためには、とくに若い女性では、体脂肪も大切で、ある程度必要です。
体脂肪が減りすぎると生理が止まることがあります。
例えば若い女性で、運動能力はしっかりあっても、体脂肪が少なくて生理が止まるレベルは、
やはり健康とは言いにくいです。
2014/05/23(Fri) 19:04 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
ゆず さん

もし糖質制限食を実践しておられるなら、1.5AGは低値となりますが、
まったく問題はありません。
普通に糖質を摂取している人が、1.5AGが低値なら糖尿病と診断されます。

1.5AGに関しては2008年04月14日のブログをご参照ください。
2014/05/23(Fri) 19:10 | URL | ドクター江部 | 【編集
匿名氏へ
>LDLがかなり下がっても首のエコーの成績は良くありません

頸動脈プーク改善には、コウノメソッドではプロルベインが推奨されています

http://dr-kono.blogzine.jp/ninchi/2012/05/201251_b5d6.html
2014/05/23(Fri) 22:05 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 匿名氏へ
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
プロルベインは乾燥ミミズ製品ですね。
漢方では、ミミズは地龍と呼ばれ、瘀血改善や熱冷ましなどに使用されます。

コウノメソッドの河野先生のブログで、私のことを取り上げて貰っています。
中日新聞の写真入り記事の解説です。
http://dr-kono.blogzine.jp/ninchi/2014/05/2014519_69c1.html
2014/05/24(Sat) 08:40 | URL | ドクター江部 | 【編集
精神科医A様、江部様 
そのお薬をまた参考にさせて頂きたいと思います。
江部先生、先月高雄病院でAICをはかって頂いた時は、5.5でした。こんな低いのは初めてでした。空腹時は正常なⅡ型です。今月高脂血症の治療を受けている病院ではかると5.9でした。スタチンの影響で節制しても高いのかもしれません。いつもは6を少し超えています。5.9は血糖値が
200までの値ということでしょうか。また糖尿病の方は
首のエコーで動脈硬化が進んですることが普通でしょうか。ご教示下さい。
2014/05/25(Sun) 08:03 | URL | 匿名 | 【編集
首のエコーで動脈硬化が進んでする→首のエコーを見ると硬化が進んでいる、の間違いでした。
2014/05/25(Sun) 09:49 | URL | 匿名 | 【編集
Re: タイトルなし
匿名 さん

頸動脈エコーで、プラークやIMT肥厚がないか、1回/年くらいチェックがいいですね。
血糖コントロール良好なら、大丈夫と思います。

平均血糖値(mg/dl)は、
<28.7 × HbA1c(NGSP) - 46.7>
で計算します。

HbA1c5.9%なら、平均血糖値は、122.63mg/dl ですね。
2014/05/25(Sun) 20:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます
貴重な情報をありがとうございます。
早速拝見させて頂きます。
2014/05/26(Mon) 04:19 | URL | España | 【編集
体重のけん
初めてメールをします。境界型で2月から糖質制限を始めて、体重が7キロ減りました。
150センチ39キロです。今現在です。
2ヶ月前から生理もとまってしまいました。
10月の検診で
GPT53.GOT25.γ-GTP38
HDL117・LDL111
HbA1c5.5
血糖値93
で血液検査の再検査になりました。

主治医の先生は、食べ過ぎで数値が上がって暫く小食にすれば数値が下がるから心配ないよ。と言われました。

炭水化物以外のものをいっぱい食べているのに痩せる事がありますか?確かに夕飯を食べすぎてしまったり、朝もすごく食べます。炭水化物以外のものですが。
完全に糖尿病が発症してしまったのでしょか?
主治医の先生は、問題ないからね。。言ってくれますが、体重が減って心配で。肝脂肪を減らし、血糖値をあげなくて体重を増やす方法を教えて頂けたらと思い、メールしました。宜しくお願い致します。
2015/11/08(Sun) 16:03 | URL | マロン | 【編集
Re: 体重のけん
マロン さん

痩せすぎです。
150cm。39kg。・・・BMI:17.3

摂取エネルギー不足により、体重が減少し過ぎて生理が止まったと考えられます。

GPT53も摂取エネルギー不足のためです。

糖質制限食は、カロリー制限食ではありません。

「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
推定エネルギー必要量

生理のある女性なら、1650~1750kcal/日が推定エネルギー必要量です。

2015/11/08(Sun) 18:06 | URL | ドクター江部 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可