2014年05月20日 (火)
おはようございます。
2014年5月19日(月)の MT Pro
ドクターズアイ・最新論文で考える日常臨床において
「糖尿病患者はがんになりやすいだけでなく、発がん後の死亡率も高い」
という糖尿人には見過ごせない記事が掲載されました。
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟氏が解説しておられます。
長谷川さんから記事の情報をコメントいただきました。
ありがとうございます。
糖尿病患者ががんになりやすいことに関しては、以前からエビデンスがあります。
高血糖に発がんリスクのエビデンスが以前からあるので糖尿病患者にがんが多いことは想定範囲と言えます。
今回「糖尿病患者は発がん後の死亡率も高い」ということが、信頼度の高いデンマークの研究により新たに認識されたわけです。
①非糖尿病(糖尿病ではない人)
②無投薬糖尿病(糖尿病ではあるが薬物療法を受けていない人)
③経口薬糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬を内服しているもののインスリン注射はしていない人)
④インスリン糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬の併用の有無を問わずインスリン注射をしている人
の4つのグループのわけての研究です。
大腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん、膀胱がんで、3つの糖尿病群全てでの死亡率が非糖尿病より高くなっていました。
また、インスリン糖尿病では、それらに加え直腸がん、肺がん、前立腺がんでの死亡率も高くなっていました。
70歳でがんと診断された2年の糖尿病罹病歴を持つ患者での生存率をモデル計算してみるとがん診断後2年での生存率は、
男性では
①非糖尿病70%
②非インスリン糖尿病(無投薬糖尿病,経口薬糖尿病)60%
③インスリン糖尿病20%
女性では
①非糖尿病80%
②非インスリン糖尿病70%
③インスリン糖尿病30%
発がん後の死亡率とモデル計算の生存率を検討してみると、インスリン糖尿病が突出して予後が悪いです。
高インスリン血症そのものに、発がんリスクのエビデンスがあるのですが、これほど顕著とは、インスリン恐るべしです。
近年の研究で、高インスリン血症や高血糖による酸化ストレス(生体において酸化反応が抗酸化反応を上まわっている状態)が、発がん、老化、動脈硬化、アルツハイマー病、パーキンソン病などのリスクとなるとされています。
今回のデンマークの研究で、高インスリン血症の発がんリスクが、鮮明に証明されたと言えます。
いつも言ってますように、
「インスリンは人体の生存に必要不可欠であるが、
その量は少なくて済む程、身体には優しい」
ということを強調したいと思います。
スーパー糖質制限食なら、インスリンは必要最低限で済むので、大きな利点と言えます。
スーパー糖質制限食なら、正常人においても、糖尿人においても、「高血糖」「高インスリン血症」という発がんリスクを著明に減らしますので、発がん予防できる可能性も高いのです。
インスリン注射をしている糖尿人においても、高糖質食に比べれば、スーパー糖質制限食実践で、その単位を1/3以下に減らせるので、発がんリスクや発がん後の死亡リスクも減らす可能性が高いです。
今回のデンマークの研究も、当然普通に糖質を摂取してのデータです。
日本においても従来の糖尿病食(高糖質・低脂質食)を摂取すれば、
「糖尿病患者はがんになりやすいだけでなく、発がん後の死亡率も高い」
ということになるのは想像に難くありません。
スーパー糖質制限食なら、それが防げる可能性が高いのです。
江部康二
☆☆☆
以下2014年5月19日のMT Pro 記事から一部抜粋です。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr140502.html
ドクターズアイ・最新論文で考える日常臨床
糖尿病患者はがんになりやすいだけでなく,
発がん後の死亡率も高い
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
研究の背景:関心が高まる糖尿病とがんの関係
糖尿病患者ががんを発症しやすいことは,これまでにも幾つかの研究で報告されてきた(Arch Intern Med 2006; 166: 1871-1877,Cancer Sci 2013; 104: 1499-1507)。さればこそ,日本糖尿病学会と日本癌学会の専門家による合同委員会が設立され,委員会報告でもその関連が認められたわけである(糖尿病 2013; 56: 374-390,関連記事)。
一方,がんを発症した糖尿病患者の予後が非糖尿病患者よりも悪いという報告も幾つかなされてきた(JAMA 2008; 300: 2754-2764,Diabetes Care 2012; 35: 299-304)。しかし,それらの報告では,その調査された集団が真に母集団を反映しているかどうかというサンプリングバイアスの懸念があったように思う。このたび,サンプリングバイアスがないであろうデンマークの国民全員の登録制度を用いた研究から,発がん後の生命予後が糖尿病患者において悪いことが示されたのでご紹介したい(Diabetologia 2014; 57: 927-934)。
研究のポイント1:デンマーク市民登録制度を用いた解析
デンマークにはデンマーク市民登録制度があり,1968年以降,全国民に登録番号が割り付けられ,個人の生死の状況は常にアップデートされているらしい。さらに,2006年にはデンマーク糖尿病登録制度ができ,既存の糖尿病患者登録制度が1つの登録制度にまとめられるようになった。また,デンマークがん登録制度というがん患者の登録システムも1943年にでき上がっていたという。本研究は,この3つの登録制度を用い,がんと診断された時点で糖尿病を抱えている患者と糖尿病を抱えていない患者で生命予後が異なるかどうかを検証したものである。
1995年1月1日~2009年12月31日にがんと診断された市民が登録され,2009年12月31日までの生存・死亡が確認された。その上で,がんと診断された時点での糖尿病状態により4つに分類された。すなわち,①非糖尿病(糖尿病ではない人)②無投薬糖尿病(糖尿病ではあるが薬物療法を受けていない人)③経口薬糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬を内服しているもののインスリン注射はしていない人)④インスリン糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬の併用の有無を問わずインスリン注射をしている人)―である。また,がんの種類別でも解析がなされた。
研究のポイント2:男女を問わず糖尿病患者は発がん後の生存率が低い
合計42万6,129人のがん患者が登録され,①非糖尿病38万3,924人(年齢の中央値67歳)②無投薬糖尿病1万5,453人(同73歳,糖尿病診断からがん診断までの中央値1.28年)③経口薬糖尿病1万7,708人(同73歳,1.74年)④インスリン糖尿病9,044人(同70歳, 1.65年)―であった。
2009年12月31日までのがんでの死亡者は,①非糖尿病23万536人②無投薬糖尿病1万573人③経口薬糖尿病1万2,727人④インスリン糖尿病6,656人―であり,死亡のハザード比は糖尿病患者で非糖尿病者よりも高くなっていた。がんの種類別に見ると,大腸がん,乳がん,卵巣がん,子宮頸がん,子宮体がん,膀胱がんで3つの糖尿病群全てでのハザード比が非糖尿病より高くなっていた。また,インスリン糖尿病では,それらに加え直腸がん,肺がん,前立腺がんでの死亡率も高くなっていた(図1)。
dr140502_fig1.jpg
70歳でがんと診断された2年の糖尿病罹病歴を持つ患者での生存率をモデル計算して図示すると図2のようになるという。これを見るとがん診断後2年での生存率は,男性では①非糖尿病70%②非インスリン糖尿病(無投薬糖尿病,経口薬糖尿病)60%③インスリン糖尿病20%―,女性では①非糖尿病80%②非インスリン糖尿病70%③インスリン糖尿病30%―である。
dr140502_fig2.jpg
なお,糖尿病の罹病歴は死亡率に大きな影響を持たなかったという。
私の考察:高インスリン血症や高血糖による酸化ストレスが原因か
糖尿病で発がん後の予後が悪い理由として,論文の著者らは幾つかの仮説を提示している。①高インスリン血症あるいはインスリン抵抗性ががんを増殖させる②糖尿病であることや糖尿病合併症を有していることががん治療の選択肢を消極的なものにさせている③糖尿病の合併症ががんの早期発見を邪魔している④前がん状態であること(あるいは未発見のがんを抱えていること)が血糖値を上げている―などである。一般には高インスリン血症や高血糖による酸化ストレスの関与などが原因になって糖尿病において発がんが増えていると考えられているので,それらが同じように生命予後も悪化させているのだろうと私は思う。
個人的に極めて興味深く感じたことは,一般に糖尿病患者で発症率が低いはずの前立腺がんにおいても,診断時に糖尿病があることで死亡率が高くなっていることである。高血糖が前立腺がんの発症あるいは進展に対してどのような影響を及ぼすのか,不可思議な謎である。糖尿病が真に前立腺がんの発症を抑制しているならば,発がん後も前立腺がんの進展に対して抑制的に働くはずであり,発がん後の予後を悪くしているのは糖尿病そのものではなく,糖尿病合併症に伴う全身の予備能力の低下なのかもしれない。前立腺がんの経過は一般的に他のがんに比較して長期にわたるため,そうした影響はありえよう。
逆に,本当は,糖尿病は前立腺がんの発症を抑制していないという可能性も考えられる。確かに以前のメタ解析では前立腺がんの発症は糖尿病患者で少なかった(RR 0.84,95%CI 0.76~0.93)のであるが(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2006; 15: 2056-2062),最近のわが国でのコホート研究のプール解析では有意な減少はなく(同0.96,0.64~1.43,Cancer Sci2013; 104: 1499-1507),また台湾からの報告では非糖尿病者よりも多かったという(同1.56,1.19~2.04,Metabolism 2012; 61: 242-249)。
前立腺がんに限らず,糖尿病とがんの関係にはこれからも大いに注目し,その関係性を明らかにしていくべきであろう。
2014年5月19日(月)の MT Pro
ドクターズアイ・最新論文で考える日常臨床において
「糖尿病患者はがんになりやすいだけでなく、発がん後の死亡率も高い」
という糖尿人には見過ごせない記事が掲載されました。
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟氏が解説しておられます。
長谷川さんから記事の情報をコメントいただきました。
ありがとうございます。
糖尿病患者ががんになりやすいことに関しては、以前からエビデンスがあります。
高血糖に発がんリスクのエビデンスが以前からあるので糖尿病患者にがんが多いことは想定範囲と言えます。
今回「糖尿病患者は発がん後の死亡率も高い」ということが、信頼度の高いデンマークの研究により新たに認識されたわけです。
①非糖尿病(糖尿病ではない人)
②無投薬糖尿病(糖尿病ではあるが薬物療法を受けていない人)
③経口薬糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬を内服しているもののインスリン注射はしていない人)
④インスリン糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬の併用の有無を問わずインスリン注射をしている人
の4つのグループのわけての研究です。
大腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん、膀胱がんで、3つの糖尿病群全てでの死亡率が非糖尿病より高くなっていました。
また、インスリン糖尿病では、それらに加え直腸がん、肺がん、前立腺がんでの死亡率も高くなっていました。
70歳でがんと診断された2年の糖尿病罹病歴を持つ患者での生存率をモデル計算してみるとがん診断後2年での生存率は、
男性では
①非糖尿病70%
②非インスリン糖尿病(無投薬糖尿病,経口薬糖尿病)60%
③インスリン糖尿病20%
女性では
①非糖尿病80%
②非インスリン糖尿病70%
③インスリン糖尿病30%
発がん後の死亡率とモデル計算の生存率を検討してみると、インスリン糖尿病が突出して予後が悪いです。
高インスリン血症そのものに、発がんリスクのエビデンスがあるのですが、これほど顕著とは、インスリン恐るべしです。
近年の研究で、高インスリン血症や高血糖による酸化ストレス(生体において酸化反応が抗酸化反応を上まわっている状態)が、発がん、老化、動脈硬化、アルツハイマー病、パーキンソン病などのリスクとなるとされています。
今回のデンマークの研究で、高インスリン血症の発がんリスクが、鮮明に証明されたと言えます。
いつも言ってますように、
「インスリンは人体の生存に必要不可欠であるが、
その量は少なくて済む程、身体には優しい」
ということを強調したいと思います。
スーパー糖質制限食なら、インスリンは必要最低限で済むので、大きな利点と言えます。
スーパー糖質制限食なら、正常人においても、糖尿人においても、「高血糖」「高インスリン血症」という発がんリスクを著明に減らしますので、発がん予防できる可能性も高いのです。
インスリン注射をしている糖尿人においても、高糖質食に比べれば、スーパー糖質制限食実践で、その単位を1/3以下に減らせるので、発がんリスクや発がん後の死亡リスクも減らす可能性が高いです。
今回のデンマークの研究も、当然普通に糖質を摂取してのデータです。
日本においても従来の糖尿病食(高糖質・低脂質食)を摂取すれば、
「糖尿病患者はがんになりやすいだけでなく、発がん後の死亡率も高い」
ということになるのは想像に難くありません。
スーパー糖質制限食なら、それが防げる可能性が高いのです。
江部康二
☆☆☆
以下2014年5月19日のMT Pro 記事から一部抜粋です。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr140502.html
ドクターズアイ・最新論文で考える日常臨床
糖尿病患者はがんになりやすいだけでなく,
発がん後の死亡率も高い
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
研究の背景:関心が高まる糖尿病とがんの関係
糖尿病患者ががんを発症しやすいことは,これまでにも幾つかの研究で報告されてきた(Arch Intern Med 2006; 166: 1871-1877,Cancer Sci 2013; 104: 1499-1507)。さればこそ,日本糖尿病学会と日本癌学会の専門家による合同委員会が設立され,委員会報告でもその関連が認められたわけである(糖尿病 2013; 56: 374-390,関連記事)。
一方,がんを発症した糖尿病患者の予後が非糖尿病患者よりも悪いという報告も幾つかなされてきた(JAMA 2008; 300: 2754-2764,Diabetes Care 2012; 35: 299-304)。しかし,それらの報告では,その調査された集団が真に母集団を反映しているかどうかというサンプリングバイアスの懸念があったように思う。このたび,サンプリングバイアスがないであろうデンマークの国民全員の登録制度を用いた研究から,発がん後の生命予後が糖尿病患者において悪いことが示されたのでご紹介したい(Diabetologia 2014; 57: 927-934)。
研究のポイント1:デンマーク市民登録制度を用いた解析
デンマークにはデンマーク市民登録制度があり,1968年以降,全国民に登録番号が割り付けられ,個人の生死の状況は常にアップデートされているらしい。さらに,2006年にはデンマーク糖尿病登録制度ができ,既存の糖尿病患者登録制度が1つの登録制度にまとめられるようになった。また,デンマークがん登録制度というがん患者の登録システムも1943年にでき上がっていたという。本研究は,この3つの登録制度を用い,がんと診断された時点で糖尿病を抱えている患者と糖尿病を抱えていない患者で生命予後が異なるかどうかを検証したものである。
1995年1月1日~2009年12月31日にがんと診断された市民が登録され,2009年12月31日までの生存・死亡が確認された。その上で,がんと診断された時点での糖尿病状態により4つに分類された。すなわち,①非糖尿病(糖尿病ではない人)②無投薬糖尿病(糖尿病ではあるが薬物療法を受けていない人)③経口薬糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬を内服しているもののインスリン注射はしていない人)④インスリン糖尿病(糖尿病であって経口血糖降下薬の併用の有無を問わずインスリン注射をしている人)―である。また,がんの種類別でも解析がなされた。
研究のポイント2:男女を問わず糖尿病患者は発がん後の生存率が低い
合計42万6,129人のがん患者が登録され,①非糖尿病38万3,924人(年齢の中央値67歳)②無投薬糖尿病1万5,453人(同73歳,糖尿病診断からがん診断までの中央値1.28年)③経口薬糖尿病1万7,708人(同73歳,1.74年)④インスリン糖尿病9,044人(同70歳, 1.65年)―であった。
2009年12月31日までのがんでの死亡者は,①非糖尿病23万536人②無投薬糖尿病1万573人③経口薬糖尿病1万2,727人④インスリン糖尿病6,656人―であり,死亡のハザード比は糖尿病患者で非糖尿病者よりも高くなっていた。がんの種類別に見ると,大腸がん,乳がん,卵巣がん,子宮頸がん,子宮体がん,膀胱がんで3つの糖尿病群全てでのハザード比が非糖尿病より高くなっていた。また,インスリン糖尿病では,それらに加え直腸がん,肺がん,前立腺がんでの死亡率も高くなっていた(図1)。
dr140502_fig1.jpg
70歳でがんと診断された2年の糖尿病罹病歴を持つ患者での生存率をモデル計算して図示すると図2のようになるという。これを見るとがん診断後2年での生存率は,男性では①非糖尿病70%②非インスリン糖尿病(無投薬糖尿病,経口薬糖尿病)60%③インスリン糖尿病20%―,女性では①非糖尿病80%②非インスリン糖尿病70%③インスリン糖尿病30%―である。
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なお,糖尿病の罹病歴は死亡率に大きな影響を持たなかったという。
私の考察:高インスリン血症や高血糖による酸化ストレスが原因か
糖尿病で発がん後の予後が悪い理由として,論文の著者らは幾つかの仮説を提示している。①高インスリン血症あるいはインスリン抵抗性ががんを増殖させる②糖尿病であることや糖尿病合併症を有していることががん治療の選択肢を消極的なものにさせている③糖尿病の合併症ががんの早期発見を邪魔している④前がん状態であること(あるいは未発見のがんを抱えていること)が血糖値を上げている―などである。一般には高インスリン血症や高血糖による酸化ストレスの関与などが原因になって糖尿病において発がんが増えていると考えられているので,それらが同じように生命予後も悪化させているのだろうと私は思う。
個人的に極めて興味深く感じたことは,一般に糖尿病患者で発症率が低いはずの前立腺がんにおいても,診断時に糖尿病があることで死亡率が高くなっていることである。高血糖が前立腺がんの発症あるいは進展に対してどのような影響を及ぼすのか,不可思議な謎である。糖尿病が真に前立腺がんの発症を抑制しているならば,発がん後も前立腺がんの進展に対して抑制的に働くはずであり,発がん後の予後を悪くしているのは糖尿病そのものではなく,糖尿病合併症に伴う全身の予備能力の低下なのかもしれない。前立腺がんの経過は一般的に他のがんに比較して長期にわたるため,そうした影響はありえよう。
逆に,本当は,糖尿病は前立腺がんの発症を抑制していないという可能性も考えられる。確かに以前のメタ解析では前立腺がんの発症は糖尿病患者で少なかった(RR 0.84,95%CI 0.76~0.93)のであるが(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2006; 15: 2056-2062),最近のわが国でのコホート研究のプール解析では有意な減少はなく(同0.96,0.64~1.43,Cancer Sci2013; 104: 1499-1507),また台湾からの報告では非糖尿病者よりも多かったという(同1.56,1.19~2.04,Metabolism 2012; 61: 242-249)。
前立腺がんに限らず,糖尿病とがんの関係にはこれからも大いに注目し,その関係性を明らかにしていくべきであろう。
癌家系なので、スーパー糖質制限食を生涯続けます!
2014/05/20(Tue) 16:25 | URL | らこ | 【編集】
糖質制限を始めてから半年で運動も行なっていますが、若い頃のベスト体重に戻りました。小学一年生の我が子一人分減りました(笑)。
さて、質問なのですが、普段はスーパーに近い糖質制限を行なっていますが、たまに同僚とのランチなどでご飯を一膳の少な目でも完食すると血糖値が上がったような、動悸がすることがあります。
インシュリンがその後出たのか、30分ぐらいで収まるのですが。これは糖質摂取による可能性はありますでしょうか?それとも気のでしょうか?
さて、質問なのですが、普段はスーパーに近い糖質制限を行なっていますが、たまに同僚とのランチなどでご飯を一膳の少な目でも完食すると血糖値が上がったような、動悸がすることがあります。
インシュリンがその後出たのか、30分ぐらいで収まるのですが。これは糖質摂取による可能性はありますでしょうか?それとも気のでしょうか?
2014/05/21(Wed) 08:39 | URL | 道産子28号 | 【編集】
昨夜、テレビ朝日のたけしの家庭の医学という番組で、血糖値を下げるホルモン マイオカインが筋肉から出ると取り上げられていました。
マイオカインの分泌量が少ないと血糖値が高くなりやすいとか。
タレントの高橋ジョージさんが、毎食後にスクワットとウォーキングを1週間続けた結果血糖値が下がったということでした。
しかし、マイオカインの分泌量の測定がなかったので、少しの運動でマイオカインの分泌量が増加したかわかりませんでした。
私は、筋肉量が少なかったのでなるべく運動するようにしても、そんなに筋肉量が増えなかったので最近は糖質制限食で血糖値の安定をめざしています。
やっぱり運動もした方がいいのかも?と思ったりしています。
マイオカインについて教えていただけたらと思います。
マイオカインの分泌量が少ないと血糖値が高くなりやすいとか。
タレントの高橋ジョージさんが、毎食後にスクワットとウォーキングを1週間続けた結果血糖値が下がったということでした。
しかし、マイオカインの分泌量の測定がなかったので、少しの運動でマイオカインの分泌量が増加したかわかりませんでした。
私は、筋肉量が少なかったのでなるべく運動するようにしても、そんなに筋肉量が増えなかったので最近は糖質制限食で血糖値の安定をめざしています。
やっぱり運動もした方がいいのかも?と思ったりしています。
マイオカインについて教えていただけたらと思います。
2014/05/21(Wed) 16:41 | URL | のどか | 【編集】
いつも、興味深く先生のブログ拝見しています。
糖尿病でなくても、血糖値が高いと体に悪いことはわかりましたが、実際いくつぐらいから、動脈硬化などの悪影響がでるのでしょうか?
180以下なら問題はないのでしょうか?それとも140以上にならない方が良いのでしょうか?
お忙しいところ恐縮ですが、教えてください
糖尿病でなくても、血糖値が高いと体に悪いことはわかりましたが、実際いくつぐらいから、動脈硬化などの悪影響がでるのでしょうか?
180以下なら問題はないのでしょうか?それとも140以上にならない方が良いのでしょうか?
お忙しいところ恐縮ですが、教えてください
2014/05/21(Wed) 16:49 | URL | エルザ | 【編集】
のどか さん
マイオカインのことは、浅学にして知りませんでした。
ネットで調べて信頼度の高いページを見つけました。
「骨格筋から分泌される生理活性因子群は総称してマイオカイン(myo;筋、kine作動物質)と呼ばれ、最近になって多様な報告が行われるようになった。」
http://www.comp.tmu.ac.jp/muscle/Kenkyuugaiyou-detail1.html
このページによると、まだまだ研究段階のようですね。
運動の多様な健康効果を説明するのに最近「マイオカイン仮説」が
提唱されているようです。
マイオカインのことは、浅学にして知りませんでした。
ネットで調べて信頼度の高いページを見つけました。
「骨格筋から分泌される生理活性因子群は総称してマイオカイン(myo;筋、kine作動物質)と呼ばれ、最近になって多様な報告が行われるようになった。」
http://www.comp.tmu.ac.jp/muscle/Kenkyuugaiyou-detail1.html
このページによると、まだまだ研究段階のようですね。
運動の多様な健康効果を説明するのに最近「マイオカイン仮説」が
提唱されているようです。
2014/05/22(Thu) 18:06 | URL | ドクター江部 | 【編集】
エルザ さん
空腹時血糖値110mg/dl未満、
食後1時間血糖値180mg/dl未満、
食後2時間血糖値140mg/dl未満、
が目安です。
空腹時血糖値110mg/dl未満、
食後1時間血糖値180mg/dl未満、
食後2時間血糖値140mg/dl未満、
が目安です。
2014/05/22(Thu) 18:08 | URL | ドクター江部 | 【編集】
◎ 糖尿病とがん,その危険な関係/糖尿病患者ががんで死亡する時代,専門医がなすべきことは
糖尿病とがんの間になんらかの関係があることは近年ほぼ疑いのない事実となったが,それに対してどう対応すべきかについては,まだほとんど手付かずの検討課題として残されている。第57回日本糖尿病学会学術集会(5月22~24日,会長=大阪医科大学内科学?教授・花房俊昭氏)の教育講演「糖尿病とがんの危険な関係」で,国立がん研究センター中央病院総合内科・歯科・がん救急科科長の大橋健氏が最新の知見を解説。糖尿病専門医とがん専門医が連携し,がん治療中の患者であっても糖尿病管理の質を上げていく必要性があると述べた。
● 糖尿病があるとがんに罹患しやすいのか
糖尿病医学の進歩により,糖尿病患者が心血管疾患や腎障害によって死亡する割合は年々減少している。代わって右肩上がりに増加しているのががんによる死亡だ。1990年代のわが国の糖尿病患者の死因第1位はがん(34.1%)であり,糖尿病患者にとって糖尿病がありながらがんの治療を受けることは現実の問題となってきている。
大橋氏によると,長く議論されてきた「糖尿病があるとがんに罹患しやすいのか?」というテーマには,近年ほぼ結論が出された。これを受けてわが国では2013年5月,日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で「糖尿病と癌に関する委員会報告」を公表。糖尿病患者では全がんリスクが約1.2倍,肝がんリスクが1.97倍,膵がんリスクが1.85倍,大腸がんリスクが1.40倍に有意に上昇すると結論付けている(関連記事,同報告は日本糖尿病学会公式サイトからダウンロード可)。
「喫煙が全がんを増やすリスクはおよそ1.6倍,たばこが肺がんを増やすリスクは4.5倍とされる。それに比較すれば糖尿病ががんに及ぼすリスクは大きくないが,確かに存在するとはいえるだろう」と大橋氏。
糖尿病とがんの関連について読み解く場合は,共通の危険因子(高齢,男性,肥満,不健康な食事,運動不足,喫煙,飲酒過多)に注意する必要がある。疫学研究ではこれらをできるだけ調整して検証を行うが,いずれも1人の患者に合併しやすい因子であり,明確な答えを導くのは難しい部分もある。その一例が肥満の関与だ。今年報告された研究では,肥満した糖尿病患者におけるがん死亡リスクを検討した結果,糖尿病患者のBMIとがん死亡リスクにはJカーブ現象があること,ただし喫煙歴がない患者ではJカーブではなく,BMIが高いほど死亡リスクが上昇する直線の関係が見られることが明らかにされた(関連記事,N Engl J Med 2014; 370: 233-244)。
● 糖尿病によるがんリスク上昇の機序には,インスリン抵抗性とその結果としての高インスリン血症,さらに高血糖による酸化ストレスの関与が指摘されている。インスリン抵抗性が生じると,肝臓や脂肪,筋肉といった組織ではインスリンによるシグナル伝達効率が低下するが,それ以外の細胞ではアポトーシスの低下や細胞増殖を促すシグナルが過剰に伝達される可能性がある。高インスリン血症はインスリン様成長因子(IGF)-Iの活性も亢進させ,やはり細胞増殖を進展させることになる。
高血糖については,空腹時血糖とがんリスクの関連を指摘する研究結果も出ている。空腹時血糖の上昇はわずかであっても膵がん,肝がん,および全がん罹患リスク上昇に関連する(JAMA 2005; 293: 194-202),空腹時血糖が100mg/dLを超えるとがん死亡リスクが上昇する(N Engl J Med 2011; 364: 829-41)といった結果だ。これらに加え,近年は肥満や糖尿病の基礎病態となる慢性炎症やアディポサイトカイン分泌異常の関与についても検討が進んでいる。
同氏は,糖尿病の日常臨床では患者のがんを見逃さないよう意識する必要があると指摘。「糖尿病とがんの関連はマイナス面ばかりではない。共通因子が多いということは,生活習慣の改善を通じた糖尿病予防によって,将来のがんリスクも減らしうることを意味する。糖尿病患者にはこうしたプラス面を伝えるとともに,年1回程度,眼科検診を受けるのと同様に,がん検診を受けることを勧めてほしい」と述べた。
● 特定の糖尿病治療薬とがんの関連は存在するのか
糖尿病とがんの危ない関係についてもう1つ注目されるのが,「特定の糖尿病治療薬によってがん罹患リスクは増加,あるいは減少するのか」というテーマだ。
きっかけになったのは,持効型インスリン製剤インスリングラルギンである。同薬によるがん発症リスク上昇を指摘する論文が2009年のDiabetologiaオンライン版に4報まとめて掲載された際は大きな議論になったが,その後行われた複数の試験の結果,グラルギンによるがん関連リスクの上昇は否定された。ただ,大橋氏によると,それらの試験は薬剤投与によるがん発症への影響を見るには十分な追跡期間とはいえず,今後さらなる検証が必要とされている。
ピオグリタゾンについても,服用患者で膀胱がんリスクの上昇が認められるとして,2011年以降フランスやドイツで処方停止となっている。米国のKPNC研究の中間解析でも膀胱がんリスクの上昇が認められたが,ピオグリタゾン投与による膀胱がんの絶対リスク上昇はわずかであった(非投与時の6.9/1万人・年に対し投与時8.2/1万人・年)(Diabetes Care 2011; 34: 916-922)。これらのことから米国食品医薬品局(FDA)は同薬の使用について,?現在膀胱がんに罹患している患者には使用しない?膀胱がんの既往患者には慎重投与する?膀胱がんリスクが懸念されているという情報を患者に伝える―という注意点を公表した。
近年処方が急増しているインクレチン関連薬についても,がんとの関連を懸念する報告はある。膵炎や膵がんリスクが有意に上昇したというものだが,「これらは副作用データベースを基に解析したいわゆる“禁じ手”の解析であり,額面通りに受け取るべきではない」(大橋氏)。ただし,歴史の浅い薬剤であるだけに今後も検討される必要はあるという。
今年注目のSGLT-2阻害薬の1つ,ダパグリフロジンについても,服用患者で膀胱がんや乳がんの診断件数が多いとの指摘がなされているが,「投与開始後間もなくがんと診断されている症例が少なくなく,尿検査を行うようになったことで以前からあった膀胱がんが見つかったケースが考えられている。同薬によってがんリスクが上昇するというエビデンスは現時点ではない」と同氏は解説している。
これらとは逆に,がんを抑制できる可能性が示唆されているのがメトホルミンだ。AMPキナーゼの活性化を通じた細胞増殖抑制作用がその機序とされるが,メトホルミンを服用できる患者は比較的体力があるなどといったバイアスがかかっている可能性もあるという。
同氏は「現時点では,糖尿病治療薬によるがんへのリスク,あるいはベネフィットについてエビデンスが確立されたものはない。その点を踏まえ,糖尿病治療では,良好な血糖コントロールによる便益を優先して薬剤選択を行うことが望ましい」とする合同委員会報告を強調した。
がんを併発した糖尿病患者への治療は
糖尿病とがんに関して,臨床医家が最も必要としている情報は,がんと糖尿病を併発した患者への対応だろう。
「糖尿病とがんの合併についてはガイドラインやエビデンスが不在であり,手探りで治療しているのが実態。糖尿病とがんを併発した患者はどの症例も個別性が強く,一筋縄ではいかない」と大橋氏は現状を説明する。
糖尿病患者ではがん発症後の予後が悪いことが知られる。診断が遅れがちなこと,徹底したがん治療が行われにくいこと,合併症や有害事象を発症しやすいこと,心・腎機能が低下していることなどがその要因といわれるが,糖尿病の存在ががん治療の“効き”を悪くしている,そもそも糖尿病患者にできるがんはより悪性度が高いといった論もあるほどだ。
同氏は「そうした患者に対しわれわれ糖尿病専門医ができることがあるとすれば,血糖コントロールだ」と明言する。
例えば骨髄移植を行った患者では,血糖値の上昇に伴い好中球減少性感染を起こしやすくなるが,同リスクはステロイド投与によっても著明に増加する。こうしたリスクは,専門医による血糖コントロールやステロイドの使用を考慮することで軽減することが可能だろう。
高血糖ががん治療に及ぼす影響については,高血糖下でがん細胞を培養して抗がん薬を投与すると,通常血糖下での培養に比べて抗がん薬の効果が得られにくいとする基礎実験の結果もある。同氏は「同じことがヒトでも起こるかについては今後の検討を待たなければならないが,がんの予後が悪いことに高血糖状態が関与しているとすれば,がん治療中の糖尿病患者における糖尿病管理の質を上げる必要がある」と強調。
「糖尿病の専門家とがんの専門家の連携がこれまで以上に求められている。糖尿病診療に関わる医療者は,ぜひ病院全体の糖尿病診療に目を向けてほしい」と述べた。
(医療ライター・軸丸 靖子)
【長谷川】
・メトフォルミンが、評価されていますね。
同氏は「そうした患者に対しわれわれ糖尿病専門医ができることがあるとすれば,血糖コントロールだ」と明言する。
・「糖質制限」が有効なのは、いうまでもありません。
糖尿病とがんの間になんらかの関係があることは近年ほぼ疑いのない事実となったが,それに対してどう対応すべきかについては,まだほとんど手付かずの検討課題として残されている。第57回日本糖尿病学会学術集会(5月22~24日,会長=大阪医科大学内科学?教授・花房俊昭氏)の教育講演「糖尿病とがんの危険な関係」で,国立がん研究センター中央病院総合内科・歯科・がん救急科科長の大橋健氏が最新の知見を解説。糖尿病専門医とがん専門医が連携し,がん治療中の患者であっても糖尿病管理の質を上げていく必要性があると述べた。
● 糖尿病があるとがんに罹患しやすいのか
糖尿病医学の進歩により,糖尿病患者が心血管疾患や腎障害によって死亡する割合は年々減少している。代わって右肩上がりに増加しているのががんによる死亡だ。1990年代のわが国の糖尿病患者の死因第1位はがん(34.1%)であり,糖尿病患者にとって糖尿病がありながらがんの治療を受けることは現実の問題となってきている。
大橋氏によると,長く議論されてきた「糖尿病があるとがんに罹患しやすいのか?」というテーマには,近年ほぼ結論が出された。これを受けてわが国では2013年5月,日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で「糖尿病と癌に関する委員会報告」を公表。糖尿病患者では全がんリスクが約1.2倍,肝がんリスクが1.97倍,膵がんリスクが1.85倍,大腸がんリスクが1.40倍に有意に上昇すると結論付けている(関連記事,同報告は日本糖尿病学会公式サイトからダウンロード可)。
「喫煙が全がんを増やすリスクはおよそ1.6倍,たばこが肺がんを増やすリスクは4.5倍とされる。それに比較すれば糖尿病ががんに及ぼすリスクは大きくないが,確かに存在するとはいえるだろう」と大橋氏。
糖尿病とがんの関連について読み解く場合は,共通の危険因子(高齢,男性,肥満,不健康な食事,運動不足,喫煙,飲酒過多)に注意する必要がある。疫学研究ではこれらをできるだけ調整して検証を行うが,いずれも1人の患者に合併しやすい因子であり,明確な答えを導くのは難しい部分もある。その一例が肥満の関与だ。今年報告された研究では,肥満した糖尿病患者におけるがん死亡リスクを検討した結果,糖尿病患者のBMIとがん死亡リスクにはJカーブ現象があること,ただし喫煙歴がない患者ではJカーブではなく,BMIが高いほど死亡リスクが上昇する直線の関係が見られることが明らかにされた(関連記事,N Engl J Med 2014; 370: 233-244)。
● 糖尿病によるがんリスク上昇の機序には,インスリン抵抗性とその結果としての高インスリン血症,さらに高血糖による酸化ストレスの関与が指摘されている。インスリン抵抗性が生じると,肝臓や脂肪,筋肉といった組織ではインスリンによるシグナル伝達効率が低下するが,それ以外の細胞ではアポトーシスの低下や細胞増殖を促すシグナルが過剰に伝達される可能性がある。高インスリン血症はインスリン様成長因子(IGF)-Iの活性も亢進させ,やはり細胞増殖を進展させることになる。
高血糖については,空腹時血糖とがんリスクの関連を指摘する研究結果も出ている。空腹時血糖の上昇はわずかであっても膵がん,肝がん,および全がん罹患リスク上昇に関連する(JAMA 2005; 293: 194-202),空腹時血糖が100mg/dLを超えるとがん死亡リスクが上昇する(N Engl J Med 2011; 364: 829-41)といった結果だ。これらに加え,近年は肥満や糖尿病の基礎病態となる慢性炎症やアディポサイトカイン分泌異常の関与についても検討が進んでいる。
同氏は,糖尿病の日常臨床では患者のがんを見逃さないよう意識する必要があると指摘。「糖尿病とがんの関連はマイナス面ばかりではない。共通因子が多いということは,生活習慣の改善を通じた糖尿病予防によって,将来のがんリスクも減らしうることを意味する。糖尿病患者にはこうしたプラス面を伝えるとともに,年1回程度,眼科検診を受けるのと同様に,がん検診を受けることを勧めてほしい」と述べた。
● 特定の糖尿病治療薬とがんの関連は存在するのか
糖尿病とがんの危ない関係についてもう1つ注目されるのが,「特定の糖尿病治療薬によってがん罹患リスクは増加,あるいは減少するのか」というテーマだ。
きっかけになったのは,持効型インスリン製剤インスリングラルギンである。同薬によるがん発症リスク上昇を指摘する論文が2009年のDiabetologiaオンライン版に4報まとめて掲載された際は大きな議論になったが,その後行われた複数の試験の結果,グラルギンによるがん関連リスクの上昇は否定された。ただ,大橋氏によると,それらの試験は薬剤投与によるがん発症への影響を見るには十分な追跡期間とはいえず,今後さらなる検証が必要とされている。
ピオグリタゾンについても,服用患者で膀胱がんリスクの上昇が認められるとして,2011年以降フランスやドイツで処方停止となっている。米国のKPNC研究の中間解析でも膀胱がんリスクの上昇が認められたが,ピオグリタゾン投与による膀胱がんの絶対リスク上昇はわずかであった(非投与時の6.9/1万人・年に対し投与時8.2/1万人・年)(Diabetes Care 2011; 34: 916-922)。これらのことから米国食品医薬品局(FDA)は同薬の使用について,?現在膀胱がんに罹患している患者には使用しない?膀胱がんの既往患者には慎重投与する?膀胱がんリスクが懸念されているという情報を患者に伝える―という注意点を公表した。
近年処方が急増しているインクレチン関連薬についても,がんとの関連を懸念する報告はある。膵炎や膵がんリスクが有意に上昇したというものだが,「これらは副作用データベースを基に解析したいわゆる“禁じ手”の解析であり,額面通りに受け取るべきではない」(大橋氏)。ただし,歴史の浅い薬剤であるだけに今後も検討される必要はあるという。
今年注目のSGLT-2阻害薬の1つ,ダパグリフロジンについても,服用患者で膀胱がんや乳がんの診断件数が多いとの指摘がなされているが,「投与開始後間もなくがんと診断されている症例が少なくなく,尿検査を行うようになったことで以前からあった膀胱がんが見つかったケースが考えられている。同薬によってがんリスクが上昇するというエビデンスは現時点ではない」と同氏は解説している。
これらとは逆に,がんを抑制できる可能性が示唆されているのがメトホルミンだ。AMPキナーゼの活性化を通じた細胞増殖抑制作用がその機序とされるが,メトホルミンを服用できる患者は比較的体力があるなどといったバイアスがかかっている可能性もあるという。
同氏は「現時点では,糖尿病治療薬によるがんへのリスク,あるいはベネフィットについてエビデンスが確立されたものはない。その点を踏まえ,糖尿病治療では,良好な血糖コントロールによる便益を優先して薬剤選択を行うことが望ましい」とする合同委員会報告を強調した。
がんを併発した糖尿病患者への治療は
糖尿病とがんに関して,臨床医家が最も必要としている情報は,がんと糖尿病を併発した患者への対応だろう。
「糖尿病とがんの合併についてはガイドラインやエビデンスが不在であり,手探りで治療しているのが実態。糖尿病とがんを併発した患者はどの症例も個別性が強く,一筋縄ではいかない」と大橋氏は現状を説明する。
糖尿病患者ではがん発症後の予後が悪いことが知られる。診断が遅れがちなこと,徹底したがん治療が行われにくいこと,合併症や有害事象を発症しやすいこと,心・腎機能が低下していることなどがその要因といわれるが,糖尿病の存在ががん治療の“効き”を悪くしている,そもそも糖尿病患者にできるがんはより悪性度が高いといった論もあるほどだ。
同氏は「そうした患者に対しわれわれ糖尿病専門医ができることがあるとすれば,血糖コントロールだ」と明言する。
例えば骨髄移植を行った患者では,血糖値の上昇に伴い好中球減少性感染を起こしやすくなるが,同リスクはステロイド投与によっても著明に増加する。こうしたリスクは,専門医による血糖コントロールやステロイドの使用を考慮することで軽減することが可能だろう。
高血糖ががん治療に及ぼす影響については,高血糖下でがん細胞を培養して抗がん薬を投与すると,通常血糖下での培養に比べて抗がん薬の効果が得られにくいとする基礎実験の結果もある。同氏は「同じことがヒトでも起こるかについては今後の検討を待たなければならないが,がんの予後が悪いことに高血糖状態が関与しているとすれば,がん治療中の糖尿病患者における糖尿病管理の質を上げる必要がある」と強調。
「糖尿病の専門家とがんの専門家の連携がこれまで以上に求められている。糖尿病診療に関わる医療者は,ぜひ病院全体の糖尿病診療に目を向けてほしい」と述べた。
(医療ライター・軸丸 靖子)
【長谷川】
・メトフォルミンが、評価されていますね。
同氏は「そうした患者に対しわれわれ糖尿病専門医ができることがあるとすれば,血糖コントロールだ」と明言する。
・「糖質制限」が有効なのは、いうまでもありません。
『糖尿病患者と癌』なんて最初はドキッとしましたが、よく読んでみれば『「血糖コントロールの悪い」糖尿病患者と癌』ということなのですね。
何だ、我々糖質セイゲニストには関係のない、むしろ癌のリスクは低いですよ〜、っていう内容ですね。
今、メトグルコもらっているんで安心しました。
何だ、我々糖質セイゲニストには関係のない、むしろ癌のリスクは低いですよ〜、っていう内容ですね。
今、メトグルコもらっているんで安心しました。
2014/06/02(Mon) 15:09 | URL | 出戻りセイゲニスト Hiro | 【編集】
長谷川 さん
情報をありがとうございます。
情報をありがとうございます。
2014/06/02(Mon) 18:07 | URL | ドクター江部 | 【編集】
出戻りセイゲニスト Hiro さん
その通りです。
「血糖コントロールが悪い」という前提があると
糖尿病でがんが増えるのです。
仰有るとおり
糖質制限食で血糖コントロールが良くてインスリンの分泌も必要最少量なら、
発がんリスクはとても低いのです。
その通りです。
「血糖コントロールが悪い」という前提があると
糖尿病でがんが増えるのです。
仰有るとおり
糖質制限食で血糖コントロールが良くてインスリンの分泌も必要最少量なら、
発がんリスクはとても低いのです。
2014/06/02(Mon) 18:22 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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