2014年04月15日 (火)
こんにちは。
2014年4月14日(月)「糖質制限食による体重減少効果」
という記事を書きました。
その記事で『インスリンは肥満ホルモン』とシンプルに記載しましたが、今日の記事はその理由を復習を兼ねて説明します。
<生理学あるいは生化学的考察>
まずは、生理学あるいは生化学的に詳細に考察してみます。
脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPL(リポタンパクリパーゼ)が活発になると、血中の中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解して、遊離脂肪酸を脂肪細胞内に取り込み中性脂肪に合成して蓄え太っていきます。
これに対してHSL(ホルモン感受性リパーゼ)は脂肪細胞内にあって、中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解して血中に放出させる作用があります。
まとめると、脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPLは内部に中性脂肪を蓄えて太らせる働きがあり、脂肪細胞内のHSLは逆に内部の中性脂肪を分解して血中に放出させ、やせさせる働きがあります。
インスリンは脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPLを活性化させるので、脂肪細胞内に中性脂肪を蓄える方向に働きます。
そしてインスリンは、脂肪細胞内のHSLを抑制するので中性脂肪が分解されなくなります。
従って、インスリンが分泌されると、中性脂肪分解が抑制されて中性脂肪合成が促進されるので、二重に太りやすいのです。
さらにインスリンは、GLUT4を介して血糖を筋肉細胞内に取り込み、エネルギーゲン源として利用したあとグリコーゲンとして蓄えますが、余剰の血糖を脂肪細胞内に取り込み、中性脂肪に合成して蓄えます。
このように三重の肥満ホルモンがインスリンなのです。
<ジョスリン糖尿病学とケーヒルの名言>
インスリン療法をしている糖尿病患者はしばしば太ります。
『ジョスリン糖尿病学』には
「食物摂取とは無関係の、インスリンの脂肪組織への直接的な脂肪生成効果」
と説明されています。
ハーバード大学医学部元教授、ジョージ・ケーヒルは
「脂肪を操るインスリンを、炭水化物(糖質)が操る」
と述べています。
肥満のメカニズムは、インスリンによる脂肪蓄積であり、その血中濃度と総量が関係します。
そしてインスリンを大量に分泌させるのは糖質のみです。
結局、糖質の頻回・過剰摂取とそれによるインスリンの頻回・過剰分泌が肥満の元凶なのです。
<狩猟・採集時代のインスリンの役割>
最後にインスリンの名誉のために一言。
人類の歴史において、農耕開始前の700万年間、インスリンの卓越した中性脂肪合成能力は、飢餓に対する唯一のセーフティーネットである体脂肪蓄積に関して、極めて大きな役割を果たしていたことを忘れてはなりません。
インスリンがせっせと中性脂肪を蓄えてくれたからこそ、人類のご先祖は生き延びてきたのです。
その卓越した中性脂肪合成能力が、現代は結果としてあだとなってしまったのですね。
<結論>
インスリンは三重の肥満ホルモンです。
スーパー糖質制限食なら、インンスリンの分泌は最少量で済みますので、抜群の体重減少効果が期待できるのです。
なおスーパー糖質制限食でも、基礎分泌インスリンは普通にでていますし、
追加分泌インスリンも2~3倍くらいは野菜分の糖質などに対して出ています。
一方、普通の糖質ありの食事なら、追加分泌インスリンは基礎分泌の10~30倍でます。
江部康二
2014年4月14日(月)「糖質制限食による体重減少効果」
という記事を書きました。
その記事で『インスリンは肥満ホルモン』とシンプルに記載しましたが、今日の記事はその理由を復習を兼ねて説明します。
<生理学あるいは生化学的考察>
まずは、生理学あるいは生化学的に詳細に考察してみます。
脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPL(リポタンパクリパーゼ)が活発になると、血中の中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解して、遊離脂肪酸を脂肪細胞内に取り込み中性脂肪に合成して蓄え太っていきます。
これに対してHSL(ホルモン感受性リパーゼ)は脂肪細胞内にあって、中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解して血中に放出させる作用があります。
まとめると、脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPLは内部に中性脂肪を蓄えて太らせる働きがあり、脂肪細胞内のHSLは逆に内部の中性脂肪を分解して血中に放出させ、やせさせる働きがあります。
インスリンは脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPLを活性化させるので、脂肪細胞内に中性脂肪を蓄える方向に働きます。
そしてインスリンは、脂肪細胞内のHSLを抑制するので中性脂肪が分解されなくなります。
従って、インスリンが分泌されると、中性脂肪分解が抑制されて中性脂肪合成が促進されるので、二重に太りやすいのです。
さらにインスリンは、GLUT4を介して血糖を筋肉細胞内に取り込み、エネルギーゲン源として利用したあとグリコーゲンとして蓄えますが、余剰の血糖を脂肪細胞内に取り込み、中性脂肪に合成して蓄えます。
このように三重の肥満ホルモンがインスリンなのです。
<ジョスリン糖尿病学とケーヒルの名言>
インスリン療法をしている糖尿病患者はしばしば太ります。
『ジョスリン糖尿病学』には
「食物摂取とは無関係の、インスリンの脂肪組織への直接的な脂肪生成効果」
と説明されています。
ハーバード大学医学部元教授、ジョージ・ケーヒルは
「脂肪を操るインスリンを、炭水化物(糖質)が操る」
と述べています。
肥満のメカニズムは、インスリンによる脂肪蓄積であり、その血中濃度と総量が関係します。
そしてインスリンを大量に分泌させるのは糖質のみです。
結局、糖質の頻回・過剰摂取とそれによるインスリンの頻回・過剰分泌が肥満の元凶なのです。
<狩猟・採集時代のインスリンの役割>
最後にインスリンの名誉のために一言。
人類の歴史において、農耕開始前の700万年間、インスリンの卓越した中性脂肪合成能力は、飢餓に対する唯一のセーフティーネットである体脂肪蓄積に関して、極めて大きな役割を果たしていたことを忘れてはなりません。
インスリンがせっせと中性脂肪を蓄えてくれたからこそ、人類のご先祖は生き延びてきたのです。
その卓越した中性脂肪合成能力が、現代は結果としてあだとなってしまったのですね。
<結論>
インスリンは三重の肥満ホルモンです。
スーパー糖質制限食なら、インンスリンの分泌は最少量で済みますので、抜群の体重減少効果が期待できるのです。
なおスーパー糖質制限食でも、基礎分泌インスリンは普通にでていますし、
追加分泌インスリンも2~3倍くらいは野菜分の糖質などに対して出ています。
一方、普通の糖質ありの食事なら、追加分泌インスリンは基礎分泌の10~30倍でます。
江部康二
いつも楽しみに、ブログを拝見しています。42歳主婦です。今年1月からスーパー糖質制限と渡辺先生のMECを取り入れています。基本的に健康で去年の健康診断の数値は先生にオール五と言われていました。ただ今年先日の健康診断でLDLコレステロールが390と出てしまいました。(昨年は104でした。)中性脂肪は63、HDLは118。
肝機能は問題ありませんでした。BMI17なので痩せています。
先生はあまりの数値に「検査ミス」とおっしゃって再度足を運ぶのですが、糖質制限をしているので、もしかしたら間違ってはいない数値なのか・・・とも思っています。
こういう事はございますか?不安で思わずメールさせて頂いています。
肝機能は問題ありませんでした。BMI17なので痩せています。
先生はあまりの数値に「検査ミス」とおっしゃって再度足を運ぶのですが、糖質制限をしているので、もしかしたら間違ってはいない数値なのか・・・とも思っています。
こういう事はございますか?不安で思わずメールさせて頂いています。
2014/04/16(Wed) 03:41 | URL | 匿名希望 | 【編集】
江部先生、初めまして。 この2日の先生のまとめはとても分かりやすく、今後糖質制限を人に説明するときも、ここを見てと言えば済むので(?!)とてもありがたいです。
私はこのサイトのおかげで摂食障害から抜け出すことができました。 本当にありがとうございます。 (生来痩せ型で、耐糖能異常もありません)
ただ過食をしていた頃の名残といいますか、単に大食いなのか、2週間に一回くらいはどうしても無性に大食いをしてしまいます。 昔と違って、葉物野菜以外の糖質は一切摂らないので、量も多くは食べられないし、食べた後は長く満腹感が続くので、次の食事が食べられないこともあるくらいで、体重の増加はありません。
そこで一つ質問をさせていただきたいのですが、インスリンの追加分泌がほとんどないような状態で、摂取カロリーが消費カロリーを超えて体重の増加が見られる場合、どのようなメカニズムで太るのでしょうか? 私の場合は、脂物が好きではないので、たんぱく質の摂取が主です。 運動も毎日しているので、筋肉そのものも肥大しているようにも思いますが、運動をしない人の場合はどうなのでしょうか?
私はこのサイトのおかげで摂食障害から抜け出すことができました。 本当にありがとうございます。 (生来痩せ型で、耐糖能異常もありません)
ただ過食をしていた頃の名残といいますか、単に大食いなのか、2週間に一回くらいはどうしても無性に大食いをしてしまいます。 昔と違って、葉物野菜以外の糖質は一切摂らないので、量も多くは食べられないし、食べた後は長く満腹感が続くので、次の食事が食べられないこともあるくらいで、体重の増加はありません。
そこで一つ質問をさせていただきたいのですが、インスリンの追加分泌がほとんどないような状態で、摂取カロリーが消費カロリーを超えて体重の増加が見られる場合、どのようなメカニズムで太るのでしょうか? 私の場合は、脂物が好きではないので、たんぱく質の摂取が主です。 運動も毎日しているので、筋肉そのものも肥大しているようにも思いますが、運動をしない人の場合はどうなのでしょうか?
2014/04/16(Wed) 08:49 | URL | 桜 | 【編集】
いつも楽しみに拝見しております。
糖質制限を私と母は3月からスタート、
父は4月からスタートしています。
1、糖質依存から抜け出す=食べたいと思わない
ということなのでしょうか?
私はまったく食べたいと思わなくなりましたが
両親が甘いものや炭水化物を食べたい!!
という思いがまだまだ消えないそうです。
(でも、我慢しています)
2、体温について
私は少し上がりました。(36.5→36.7℃)
しかし、両親がいつもの平熱よりも低くなっています。
母の平熱がもともと低い方だったのですが更に下がり
35℃以下になったりしています。
低体温は免疫力が低下するといわれてますが
その辺はいかがでしょうか?
糖質制限をして低体温が改善した方もいらっしゃるそうですよね。
期待していたのですが、さらに低体温になっていてショック
だったようです。これはどんなことが考えられますか??
お忙しいところ恐れ入りますが
宜しくお願い致します。
糖質制限を私と母は3月からスタート、
父は4月からスタートしています。
1、糖質依存から抜け出す=食べたいと思わない
ということなのでしょうか?
私はまったく食べたいと思わなくなりましたが
両親が甘いものや炭水化物を食べたい!!
という思いがまだまだ消えないそうです。
(でも、我慢しています)
2、体温について
私は少し上がりました。(36.5→36.7℃)
しかし、両親がいつもの平熱よりも低くなっています。
母の平熱がもともと低い方だったのですが更に下がり
35℃以下になったりしています。
低体温は免疫力が低下するといわれてますが
その辺はいかがでしょうか?
糖質制限をして低体温が改善した方もいらっしゃるそうですよね。
期待していたのですが、さらに低体温になっていてショック
だったようです。これはどんなことが考えられますか??
お忙しいところ恐れ入りますが
宜しくお願い致します。
2014/04/16(Wed) 09:45 | URL | 美月 | 【編集】
匿名希望 さん
「今年先日の健康診断でLDLコレステロールが390と出てしまいました。
(昨年は104でした。)中性脂肪は63、HDLは118。
肝機能は問題ありませんでした。」
元々、菜食主義的な食生活で、食材からのコレステロール摂取が少ない場合、
肝臓のコレステロール産生機能が高まります。
普通食の人で、肝臓産生のコレステロールが約80%、食事由来のコレステロルが約20%です。
菜食の人では、
例えば肝臓産生のコレステロールが約90%以上、食事由来のコレステロルが約10%以下とかです。
つまり、菜食的な人が、スーパー糖質制限食に切り替えると、
「亢進した肝臓のコレステロール産生+増加した食事からのコレステロール」により
かなりの高値となります。
1年~2年で元に戻りますが、高値過ぎて不安であれば、「ゼチーア」という薬が
食事からのコレステロール吸収を抑制するので、大変よく効きます。
扉ページの「コレステロール」の項もご参照いただけば、幸いです。
「今年先日の健康診断でLDLコレステロールが390と出てしまいました。
(昨年は104でした。)中性脂肪は63、HDLは118。
肝機能は問題ありませんでした。」
元々、菜食主義的な食生活で、食材からのコレステロール摂取が少ない場合、
肝臓のコレステロール産生機能が高まります。
普通食の人で、肝臓産生のコレステロールが約80%、食事由来のコレステロルが約20%です。
菜食の人では、
例えば肝臓産生のコレステロールが約90%以上、食事由来のコレステロルが約10%以下とかです。
つまり、菜食的な人が、スーパー糖質制限食に切り替えると、
「亢進した肝臓のコレステロール産生+増加した食事からのコレステロール」により
かなりの高値となります。
1年~2年で元に戻りますが、高値過ぎて不安であれば、「ゼチーア」という薬が
食事からのコレステロール吸収を抑制するので、大変よく効きます。
扉ページの「コレステロール」の項もご参照いただけば、幸いです。
2014/04/16(Wed) 13:57 | URL | ドクター江部 | 【編集】
桜 さん
スーパー糖質制限食でも、基礎分泌インスリンは普通にでていますし、
追加分泌インスリンも2~3倍くらいは野菜分の糖質などに対して出ています。
普通の糖質ありの食事なら、追加分泌インスリンは10~30倍でます。
あとは、
<摂取エネルギー>消費エネルギー>
なら、脂質、蛋白質、糖質を問わず、体重は増えます。
糖質だけでなく、脂質や蛋白質も余剰分は中性脂肪(体脂肪)として蓄えられます。
ただ同一摂取エネルギーならば、糖質が一番太りやすいということです。
スーパー糖質制限食でも、基礎分泌インスリンは普通にでていますし、
追加分泌インスリンも2~3倍くらいは野菜分の糖質などに対して出ています。
普通の糖質ありの食事なら、追加分泌インスリンは10~30倍でます。
あとは、
<摂取エネルギー>消費エネルギー>
なら、脂質、蛋白質、糖質を問わず、体重は増えます。
糖質だけでなく、脂質や蛋白質も余剰分は中性脂肪(体脂肪)として蓄えられます。
ただ同一摂取エネルギーならば、糖質が一番太りやすいということです。
2014/04/16(Wed) 14:05 | URL | ドクター江部 | 【編集】
美月 さん
1、糖質依存から抜け出す
個人差がありますが、基本は徐々に慣れてもらうということです。
700万年間の狩猟・採集時代は、人類皆糖質制限食ですので、DNA的には必ず慣れるはずなのですが・・・。
2、体温について
こちらも個人差がありますので短期間のことで、一喜一憂しなくてもいいと思います。
体温上昇されるかたがほとんどですが、たまに体温が下がる人もおられます。
この場合、摂取エネルギー不足にはご注意ください。
摂取エネルギー不足がなければ、その内体温も適正になると思います。
1、糖質依存から抜け出す
個人差がありますが、基本は徐々に慣れてもらうということです。
700万年間の狩猟・採集時代は、人類皆糖質制限食ですので、DNA的には必ず慣れるはずなのですが・・・。
2、体温について
こちらも個人差がありますので短期間のことで、一喜一憂しなくてもいいと思います。
体温上昇されるかたがほとんどですが、たまに体温が下がる人もおられます。
この場合、摂取エネルギー不足にはご注意ください。
摂取エネルギー不足がなければ、その内体温も適正になると思います。
2014/04/16(Wed) 14:10 | URL | ドクター江部 | 【編集】
お忙しいところありがとうございました!
2014/04/17(Thu) 15:45 | URL | 美月 | 【編集】
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