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妊娠糖尿病に対する誤解と糖質制限食、胎児のケトン体は高値が基準値
こんにちは。

朝日新聞の医療サイト apital
http://apital.asahi.com/article/story/2013122200003.html

に、

妊娠糖尿病に対する誤解と食事療法

と題して、宋美玄 (ソン・ミヒョン)医師が、投稿されて糖質制限食の批判もしておられます。

精神科医師Aさんから情報をいただきました。
ありがとうございます。

「妊娠糖尿病と糖質制限食」とても大切なテーマなので、
宋美玄 (ソン・ミヒョン)医師の誤解を解いておきます。

宋先生、本ブログをもし見ていただいて、ケトン体に対する誤解が解けましたら是非正しい情報を、発信していただけば幸いです。

宋先生は気鋭の産婦人科医であり、ベストセラー『女医が教える本当に気持ちいいセックス』の著者でもあり、影響力は大きいと思いますので、是非よろしくお願い申しあげます。

胎児胎盤の絨毛間液の、βヒドロキシ酪酸(*)濃度は、平均1730μM/Lです。

全て普通の食生活をしていた妊婦の中絶胎児58検体の平均データです。

成人の基準値76μM/L以下の20~30倍です。

2014年1月12日(日)第17回日本病態栄養学会年次学術集会(大阪国際会議場)で、宗田マタニティクリニックの宗田哲男先生が発表された、世界初の画期的研究データです。

今まで、胎児のケトン体を測定した研究・論文は世界中に皆無です。

すなわち誰も胎児のケトン体の基準値を知らないままに、母体の血中ケトン体の高値が胎児に問題とされた経緯があります。

これはどう考えても変です。

宗田先生のご研究で明らかになったことは、胎児のケトン体値は、現行の基準値よりはるかに高値ということです。

危険でもなんでもなく、成人の基準値の20~30倍が、胎児のケトン体の正常値なのです。

つまり胎児のケトン体値が成人の基準値の20~30倍あっても100%安全ということです。

妊娠糖尿病に糖質制限食を導入することで、血糖と体重管理が容易となり、分娩も安産となります。

脂質とタンパク質はしっかり摂取するので、カロリー不足にはなりません。

肥満のある妊婦は難産になりやすいですが、糖質制限食なら簡単に体重コントロールができます。

そして血糖コントロールもインスリンに頼ることなく可能となります。

このとき母体の血中ケトン体が高値でも、胎児にはなんの問題もないことは、上記データより明らかですね。

勿論母体においてもケトン体は重要なエネルギー源であり、インスリン作用が保たれている限りは、極めて安全なものです。

宗田マタニティクリニックでは、糖質制限食を妊婦に導入して以後は、帝王切開率が1/2~1/3以下に激減して、妊婦も医師もとても楽な妊娠・分娩となっているそうですよ。

宗田マタニティクリニックの年間分娩数は約700です。

なお生後4日目の新生児312名において、一般食、糖質制限食、母乳、人工ミルクにかかわらず、βヒドロキシ酪酸値の平均値は240.4μmol/L、同様に生後1ヶ月の新生児40名において、βヒドロキシ酪酸値の平均値は400μmol/Lと一般的な基準値よりはるかに高値であることが報告されました。

このように、胎児においても新生児においても、ケトン体が成人の基準値より高値なのは異常ではなく、正常で基準値であることが明らかとなったわけですね。

(*)
βヒドロキシ酪酸はケトン基がないので正確にはケトン体ではないのですが、慣例上ケトン体に分類されています。
βヒドロキシ酪酸は脳細胞や体細胞のエネルギー源になることは、生理学的に明らかです。


江部康二


☆☆☆以下
朝日新聞の医療サイト apital より一部転載
http://apital.asahi.com/article/story/2013122200003.html

妊娠糖尿病に対する誤解と食事療法
〈投稿〉
宋美玄 (ソン・ミヒョン)
2013年12月25日

妊娠糖尿病は8人に1人の妊婦さんがかかる、とっても頻度の高い病気です。妊娠中は胎盤から糖の代謝が悪くなるホルモンが出て、血糖値が上がりやすくなるのです。これは、生物の歴史は飢餓の歴史で、子宮の中にいる胎児にちゃんと栄養が行くように作られたシステムなのです。それが飽食の時代と高齢出産の割合の増加によって、妊娠にとって有害な域まで血糖が上がってしまうこともしばしば起こるようになったんです。

糖尿病というと、太っていて食べ過ぎの人がなるイメージがあると思うのですが、そんなことはありません。特に日本人はやせ型の糖尿病も多いのが特徴です。そして、妊娠してから発症する妊娠糖尿病は糖尿病とは違うもので、診断基準も治療の目的も管理方法も全然違います。この辺、分かっていない医師もいて、妊娠糖尿病の患者さんを内科に紹介すると、糖尿病の患者さんと同じカロリーや同じ目標血糖値に設定されていたりすることもあるんですよ。(私は阪大病院で糖尿病内科の黒田暁生先生に診てもらっていたのでバッチリでした!)

かくいう私は糖尿病の家系で、大学生の頃から75gOGTTで60分値が非常に高かったりしたので、自分が妊娠糖尿病になるだろうことは予想していましたが、案の定妊娠糖尿病になりました。

なってびっくりしたのは、産婦人科医と助産師たちの無理解です。「食べ過ぎ」「贅沢病」といじめられ、ご飯を食べていると「食べちゃだめ!」と言われました。本気なら勉強不足すぎるし、冗談なら面白くなさ過ぎる。私はもともとBMIから言うと痩せ型で、妊娠中は食欲が全然湧かず、体重の増えが非常に悪かったのに、同業者たちから受けたのは、非常に不適切な分析とアドバイスでした。

愚痴はこれくらいにして妊娠糖尿病の治療目的と管理についてお話します。
糖は胎盤を通って赤ちゃんに行くので、赤ちゃんが太りすぎて難産の原因になったり、羊水(赤ちゃんのおしっこ)が増えすぎて羊水過多になって切迫早産になったり、産まれてから呼吸しにくくなったり、お腹の中で具合が悪くなって最悪の場合死に至るので(ギャグじゃありません)、血糖値のベースが上がらないように、そして食後の血糖値がジェットコースターみたいに急上昇して急降下しないようにコントロールします。食前血糖が100、食後2時間が120というのが目標ですが、これは妊婦じゃない糖尿病に比べるとかなり厳しい目標です。でも、ここ大事です。

そして、血糖は高いと言っても、必要なカロリーと必要な糖質(ごはん、パン、パスタ、うどん・・)は摂取しないといけません。お腹の赤ちゃんが飢餓状態になっては困ります。母体が飢餓状態になってケトン体という物質が出ると、赤ちゃんのIQが少し下がるというデータまであり、必要なカロリーを摂取するのが大切ということがお分かりいただけると思います。必要なカロリー料は妊娠週数と標準体重によって異なりますが、一日2000キロカロリーに近いくらいです。ね、結構食べないといけないでしょ。

世間では「糖質制限ダイエット」が流行ってるみたいですが、妊娠中にダイエットは禁物です。(ケトンも出るし)朝昼晩に分けて必要な糖質を摂取すると血糖が上がりすぎる場合は、糖質だけ半分取っといて、2時間後に残りを食べるという6分割食もコントロールに有効です。それで無理な場合はインスリンの投与になります。インスリンを使うのがめんどくさくて(自己注射とか低血糖に注意したりとかいろいろと)、食事療法で粘りたがる妊婦や医師もいますが、無理なもんは無理だし、必要カロリーを取らない方がまずいので、粘らないでください。

インスリンを使った場合、カーボカウント法といって、食べる炭水化物量に合わせてインスリン量を自分で調整する方法も使えます。これだとそんなに厳密に食事の量を調節しなくても、食事に合わせてインスリンを打てば良いので、我慢や気遣いが減り、だいぶストレスが少なくなります。

手前味噌になりますが妊娠糖尿病とその妊娠生活については拙著「産科女医が35歳で出産してみた(ブックマン社)」に詳しいので、問題に直面している方は読んでみてください。

最後に、産院によってはスクリーニング検査に消極的で、見逃されている妊婦さんも多いのが現状です。これを読まれている妊婦さんはかかりつけの産院に「ちゃんと妊娠糖尿病を検査してくれてますか?」って聞いてみてください。「尿に糖が出てないから大丈夫」「ヘモグロビンA1cが高くないから大丈夫」なんていう答えだったら、「妊娠糖尿病の管理はめんどくさいからあんまり発見したくない」ってことかも知れません。赤ちゃんとママの健康のために、ちゃんと診断、管理してもらってくださいね。


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
妊娠糖尿病に対する誤解と食事療法
宋美玄 (ソン・ミヒョン)ドクターは
宗田先生の発表を御存じないのですね
こわいことです
テレビもこういう情報を流してほしいです
ラサール石井もいいのですがおどけたりせずに
きちんと伝えて欲しいものです
なにせ大切な子どものことですから
2014/04/08(Tue) 15:45 | URL |  | 【編集
痩せたいです。
先生こんばんは。いつもブログを拝見しお勉強させて頂いております。
私はモデルをやっている21歳です。

ダイエットについて質問させて下さい。
157cm37kg体脂肪14.6%です。
低糖質(穀物•根菜•芋類•大豆以外の豆類•菓子抜き)、低脂質(卵の黄身は控える•肉は胸皮なしササミ砂肝•たまにアボカドやオリーブ油、ナッツ、青魚から摂取)の食事を続けてきました。
しかし、クリスマス頃からお菓子やパンなどのどか食いをするようになり3ヶ月で7kg太ってしまいました。ダイエット中は30-31kg体脂肪8%。
それ以前は34kg体脂肪13%でした。
くびれがなくなり、脚もむちむちに…どうにか3kg体脂肪を落としたいです。
糖質制限(脂質やカロリーの制限はやめます)で痩せる見込みはありますでしょうか。
2014/04/08(Tue) 22:41 | URL | 万年ダイエッター | 【編集
万年ダイエッターさん

糖質制限食の本来の目的は「健康」です。

現時点でBMIが17以下で、極端な痩せ過ぎに入ります。

ご家族など貴方の近くにおられる信頼できる人に、
現状をご相談されることを切に願います。
2014/04/09(Wed) 09:38 | URL | 玉露 | 【編集
アンチの動機は「目立つこと・儲けること」にあり
江部先生の本はもとより、夏井先生の『炭水化物が人類を滅ぼす 』が「20万部」も売れる時代です。

またアマゾンの糖尿病分野でも、上位は糖質制限の本が、ほぼ独占状態になりました。
http://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/books/2133632051/

ですので今のマスコミでは、糖質制限に賛成するより、反対する方が、「目立つ」のです。

そして「目立つ」ことに成功すれば、知名度も上がり、集客にもつながる。

だからマスコミで糖質制限の悪口を言ってる三流医師の動機は「真理を伝えること」ではなく「目立つこと・儲けること」にあり。

論より証拠、今回の三流医師も自分で次のように自白しています。

> 手前味噌になりますが妊娠糖尿病とその妊娠生活については
> 拙著「産科女医が35歳で出産してみた(ブックマン社)」
> に詳しいので、問題に直面している方は読んでみてください。

こういう「三流医師による売り込み」を患者は大いに警戒し、強く排撃し、ひいては根絶すべきです。

そういう三流医師は、今回の宗田先生のご発表を、勉強すらしてません。真理を伝える必要がないので、真理を学ぶ必要も、彼らには、ないのです。

もし勉強していたら、次のようには言えなかったはずです。

> 世間では「糖質制限ダイエット」が流行ってるみたいですが、
> 妊娠中にダイエットは禁物です。
> (ケトンも出るし)
  ~~~~~~~

2014/04/09(Wed) 09:52 | URL | はなもと | 【編集
玉露さん

お気遣いありがとうございます。
けれど私は体質的に昔からとても痩せ型で、今の状態では身体が重くて不自由なのです。
私は中2の初潮から19歳までずっと32-4kgでした。(ダイエットはしていません)
母も161cm39kgです。彼女はおにぎり大好きの大喰らいです。
2014/04/09(Wed) 11:09 | URL | 万年ダイエッター | 【編集
Re: タイトルなし
ぱんだ さん。

糖尿病の血糖コントロールの指標としてのGAは

優     良       不可     不可      不可

GA (%) 17.0未満 17.0~20.0未満 20.0~21.0未満 21.0~24.0未満 24.0以上

なので血糖コントロール的には全くOKです。
献血時のGAが、16.3~16.9くらいですので、正常高値~境界型です。
確かにHbA1cの値とやや乖離してますので、不思議ですね。
伊藤先生と相談されては如何でしょう?

きよすクリニック院長
伊藤喜亮(いとうよしあき)先生
TEL: 052-409-8585
愛知県清須市東外町49-1
2014/04/09(Wed) 14:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 痩せたいです。
万年ダイエッター さん

157cm37kgですと、BMI:15.0 です。
現在、明らかに痩せすぎなので、糖質制限食を実践してもこれ以上痩せないと思います。
2014/04/09(Wed) 14:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: アンチの動機は「目立つこと・儲けること」にあり
はなもと さん

宗田先生のご発表は、まだマスコミが取り上げておらず、
産婦人科の雑誌にも掲載されてないので、
宋先生だけでなく
多くの婦人科医師は、まだ知る機会がなかったと思います。

私たちもマスコミにも働きかけていますが、そう簡単には記事にしてくれません。
本ブログなどでインターネット的に口コミで、
この世界で初の画期的データ(胎児のケトン体値は本来高値であること)
広まっていき、周知されていけば、
産婦人科医師も、この事実を知る機会が増えると願っています。

2014/04/09(Wed) 14:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
尿中ケトン体について
初めまして。Ⅱ型糖尿人です。1週間前に検査にて空腹時血糖400でHbA1c14.2、尿中ケトン体が陽性という結果でした。1日5単位のインシュリンを打っております。内服薬はありません。糖質制限食を始めて5日になります。その結果か空腹時血糖が100前後になりつつありますが、本日尿検査した結果尿中ケトン体が陽性でした。糖質制限続けてもよろしいでしょうか?以前より少し食べる量は減ったような気がしますが・・血糖が下がってきたので内心喜んでいたのですが、ご指導の程よろしくお願いいたします。
2014/04/10(Thu) 16:42 | URL | くろ | 【編集
Re: 尿中ケトン体について
くろ さん

糖質制限食で、血糖値が改善して、空腹時が100mg前後なら
コントロール良好でインスリン作用もしっかり確保されています。
インスリン作用が確保されていれば尿中ケトン体が陽性でも何の問題もありません。

血糖コントロール良好なので、スーパー糖質制限食ならインスリンの減量・離脱も可能と思います。
血糖自己測定器で血糖を測定して低血糖に注意が必要です。
主治医とよく相談されて、インスリンを減らしていきましょう。
2014/04/11(Fri) 20:11 | URL | ドクター江部 | 【編集
妊娠と糖尿病
1991年のNEJM論文、Citing Articles をclickすると、この論文を引用している最近の文献を知ることができます。2013年だけでも11か所の文献に引用されており、名論文とあらためて驚かされます。

妊娠糖尿病に関する2014年の最新のreviewです
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11892-014-0489-x

上記に記載の、比較的新しい文献から私が読んだのを紹介します

  ◇

Diabetes Care. 2007 Nov;30(11):2827-31. Epub 2007 Aug 13.
Cognitive function and army rejection rate in young adult male offspring of women with diabetes: a Danish population-based cohort study.
by Nielsen

http://care.diabetesjournals.org/content/30/11/2827.full#F2

In men with maternal A1C <7%, cognitive scores were identical to those in control subjects

母体のHbA1c<7%なら、徴兵検査で男子の認知scoreはcontrolと同等

  ◇

Maternal blood glucose in diabetic pregnancies and cognitive performance in offspring in young adulthood: a Danish cohort study
Diabetic Medicine 27(7) 786-790, 2010 July
Nielsen et al.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1464-5491.2010.03024.x/abstract

In pregnancies with fasting blood glucose levels below 10 mmol/l, the association is weak and considered to be without clinical relevance
母体の空腹時血糖が180mg/dL以下なら関係は微弱で、臨床的意義は無い
2014/04/13(Sun) 21:24 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 妊娠と糖尿病
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
2014/04/14(Mon) 17:37 | URL | ドクター江部 | 【編集
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