2014年02月26日 (水)
こんばんは。
昨日に続いて、第24回日本疫学会学術総会での報告です。
「糖質制限食の安全性にエビデンス」
というタイトルで、ウェブ版のメディカル・トリビューンに掲載されました。
NIPPON DATA 80の29年間の追跡結果データを検討したもので、発表者の中村保幸先生は、私の京大医学部の同級生です。
9200人を29年間追跡して、
第1分位:糖質を一番摂取している群:糖質摂取比率は総摂取エネルギーの72.7%
第2分位~第9分位
第10分位:糖質制限を一番している群:糖質摂取比率は総摂取エネルギーの51.5%
糖質を一番摂取している群から順番に一番摂取してない群まで10群に分けて検討です。
その結果、
第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて女性においては心血管死のリスクが、59%しかないという素晴らしい結論で、糖質制限食の圧勝です。
なんと緩やかな糖質制限食でも、糖質たっぷり食に比べたら4割以上、心血管死が減るということですね。
糖質制限食にとって、画期的な信頼度の高いエビデンスが登場したと言えます。
あくまでも私の個人的な意見ですが、緩やかな糖質制限食でこれだけの有意差が出たのなら、スーパー糖質制限食ならもっともっとすごい差がでるでしょうね。
一方、中村保幸先生のご指摘通り、私が実践している糖質摂取比率12%のスーパー糖質制限食に関しては、この報告にはデータがありません。
従って、この報告がそのままスーパー糖質制限食の安全性を担保するエビデンスにはなりません。
しかし、「平均血糖変動幅増大と食後高血糖」という最大の酸化ストレスリスクを生じない唯一の食事療法がスーパー糖質制限食ですから、長期的安全性も悪かろうはずがないですね。
中村保幸先生、貴重な信頼度の高いデータ報告をありがとうございました。
なお2013年10月16日 (水)の本ブログ記事
MTpro、「糖質摂取の多い集団で心血管疾患発症リスクが高い」
もご参照いただけば幸いです。
上海前向きコホート研究においても、NIPPON DATA 80と同様の結論なのは心強いです。
江部康二
以下メディカル・トリビューン記事より一部転載
メディカル・トリビューン
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2014/M47070011/
NIPPON DATA 80
糖質制限食の安全性にエビデンス
糖質制限食(低炭水化物食)の安全性をめぐり,活発な議論が展開される中,日本を代表する疫学データベースから,比較的軽度の糖質制限食に関するエビデンスが示された。京都女子大学教授の中村保幸氏らがNIPPON DATA 80の29年間の追跡結果を分析し,糖質摂取率と心血管死,総死亡との関連について検討したもので,第24回日本疫学会学術総会(1月23〜25日,会長=東北大学大学院公衆衛生学・辻一郎氏)で発表した。
9,200人を29年追跡
わが国では糖質摂取率が欧米に比べて高く,極端な糖質制限は普及していない。そこで,中村氏らは比較的軽度の糖質制限食が心血管死,総死亡に及ぼす影響をNIPPON DATA 80のデータベースを用いて検討した。
1980年にランダム抽出した全国300カ所の30歳以上の男女を対象として,秤量記録法による3日間の栄養調査と生活習慣調査,血液生化学検査を行った。追跡開始時の脳梗塞,心筋梗塞既往例を除外した9,200人(平均年齢51歳,女性56%)を29年にわたり追跡した。
食事摂取の評価は,Haltonらの方法に準じて男女別に糖質摂取量を高値から低値へ11分位に,蛋白質と脂肪の摂取量を低値から高値に11分位に分類。それぞれ0〜10の点数を付け,それらを合計して低糖質食スコア(0〜30点)を作成(同スコアが高いほど糖質摂取率が低い)。さらに,同スコアを10分位に分け,糖質制限食が心血管死,総死亡に及ぼす影響について社会経済因子を含めた交絡因子で調整し,Cox法を用いて解析した。
女性では死亡リスク低下
29年の追跡期間中,1,171人の心血管死(女性52%)と3,443人(同48%)の総死亡があった。平均糖質摂取率は総熱量の約60%で,10点を付けた11分位の最低糖質摂取群でも女性で17.3〜53.5%,男性で18.8〜51.6%の範囲であった。
女性では,低糖質食スコア最低10分位に比べて最高10分位では心血管死のハザード比(HR)が0.59(95%CI 0.38〜0.92,傾向のP=0.019),総死亡のHRが0.73(同0.57〜0.93,傾向のP=0.020)と有意にリスクが低下(図)。男女合わせた解析でも心血管死のHRが0.74(同0.55〜0.99,傾向のP=0.033),総死亡のHRが0.84(同0.72〜0.99,傾向のP=0.030)とリスクは低下した。
図表
しかし,男性では有意な関連はなかった。中村氏は「男性は外食が多いこと,喫煙など他の危険因子の頻度が高いことによる効果の希釈が原因として想定される」と述べた。
さらに高度の糖質制限食の安全性については不明だという。
昨日に続いて、第24回日本疫学会学術総会での報告です。
「糖質制限食の安全性にエビデンス」
というタイトルで、ウェブ版のメディカル・トリビューンに掲載されました。
NIPPON DATA 80の29年間の追跡結果データを検討したもので、発表者の中村保幸先生は、私の京大医学部の同級生です。
9200人を29年間追跡して、
第1分位:糖質を一番摂取している群:糖質摂取比率は総摂取エネルギーの72.7%
第2分位~第9分位
第10分位:糖質制限を一番している群:糖質摂取比率は総摂取エネルギーの51.5%
糖質を一番摂取している群から順番に一番摂取してない群まで10群に分けて検討です。
その結果、
第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて女性においては心血管死のリスクが、59%しかないという素晴らしい結論で、糖質制限食の圧勝です。
なんと緩やかな糖質制限食でも、糖質たっぷり食に比べたら4割以上、心血管死が減るということですね。
糖質制限食にとって、画期的な信頼度の高いエビデンスが登場したと言えます。
あくまでも私の個人的な意見ですが、緩やかな糖質制限食でこれだけの有意差が出たのなら、スーパー糖質制限食ならもっともっとすごい差がでるでしょうね。
一方、中村保幸先生のご指摘通り、私が実践している糖質摂取比率12%のスーパー糖質制限食に関しては、この報告にはデータがありません。
従って、この報告がそのままスーパー糖質制限食の安全性を担保するエビデンスにはなりません。
しかし、「平均血糖変動幅増大と食後高血糖」という最大の酸化ストレスリスクを生じない唯一の食事療法がスーパー糖質制限食ですから、長期的安全性も悪かろうはずがないですね。
中村保幸先生、貴重な信頼度の高いデータ報告をありがとうございました。
なお2013年10月16日 (水)の本ブログ記事
MTpro、「糖質摂取の多い集団で心血管疾患発症リスクが高い」
もご参照いただけば幸いです。
上海前向きコホート研究においても、NIPPON DATA 80と同様の結論なのは心強いです。
江部康二
以下メディカル・トリビューン記事より一部転載
メディカル・トリビューン
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2014/M47070011/
NIPPON DATA 80
糖質制限食の安全性にエビデンス
糖質制限食(低炭水化物食)の安全性をめぐり,活発な議論が展開される中,日本を代表する疫学データベースから,比較的軽度の糖質制限食に関するエビデンスが示された。京都女子大学教授の中村保幸氏らがNIPPON DATA 80の29年間の追跡結果を分析し,糖質摂取率と心血管死,総死亡との関連について検討したもので,第24回日本疫学会学術総会(1月23〜25日,会長=東北大学大学院公衆衛生学・辻一郎氏)で発表した。
9,200人を29年追跡
わが国では糖質摂取率が欧米に比べて高く,極端な糖質制限は普及していない。そこで,中村氏らは比較的軽度の糖質制限食が心血管死,総死亡に及ぼす影響をNIPPON DATA 80のデータベースを用いて検討した。
1980年にランダム抽出した全国300カ所の30歳以上の男女を対象として,秤量記録法による3日間の栄養調査と生活習慣調査,血液生化学検査を行った。追跡開始時の脳梗塞,心筋梗塞既往例を除外した9,200人(平均年齢51歳,女性56%)を29年にわたり追跡した。
食事摂取の評価は,Haltonらの方法に準じて男女別に糖質摂取量を高値から低値へ11分位に,蛋白質と脂肪の摂取量を低値から高値に11分位に分類。それぞれ0〜10の点数を付け,それらを合計して低糖質食スコア(0〜30点)を作成(同スコアが高いほど糖質摂取率が低い)。さらに,同スコアを10分位に分け,糖質制限食が心血管死,総死亡に及ぼす影響について社会経済因子を含めた交絡因子で調整し,Cox法を用いて解析した。
女性では死亡リスク低下
29年の追跡期間中,1,171人の心血管死(女性52%)と3,443人(同48%)の総死亡があった。平均糖質摂取率は総熱量の約60%で,10点を付けた11分位の最低糖質摂取群でも女性で17.3〜53.5%,男性で18.8〜51.6%の範囲であった。
女性では,低糖質食スコア最低10分位に比べて最高10分位では心血管死のハザード比(HR)が0.59(95%CI 0.38〜0.92,傾向のP=0.019),総死亡のHRが0.73(同0.57〜0.93,傾向のP=0.020)と有意にリスクが低下(図)。男女合わせた解析でも心血管死のHRが0.74(同0.55〜0.99,傾向のP=0.033),総死亡のHRが0.84(同0.72〜0.99,傾向のP=0.030)とリスクは低下した。
図表
しかし,男性では有意な関連はなかった。中村氏は「男性は外食が多いこと,喫煙など他の危険因子の頻度が高いことによる効果の希釈が原因として想定される」と述べた。
さらに高度の糖質制限食の安全性については不明だという。
Ami さん
糖質制限食OKと思います。
中性脂肪は糖質制限食で速やかに正常化します。
HDL-コレステロールは増加します。
LDL-コレステロールは、不変・増加・低下の3パターンありますが、
1~2年糖質制限食を続けると基準値内になることがほとんどです。
扉ページのカテゴリーのコレステロールの項をご参照ください。
糖質制限食OKと思います。
中性脂肪は糖質制限食で速やかに正常化します。
HDL-コレステロールは増加します。
LDL-コレステロールは、不変・増加・低下の3パターンありますが、
1~2年糖質制限食を続けると基準値内になることがほとんどです。
扉ページのカテゴリーのコレステロールの項をご参照ください。
2014/02/27(Thu) 07:39 | URL | ドクター江部 | 【編集】
昨日、フェイスブックのお友達(ドクター)からメッセージがあり、
「娘が糖質制限容認派の立場でダイエットに関する討論をするので、資料がほしい」
という。
ヒャッホー!私は燃えてます。負けさすわけにはいかない。
筋トレは成長期には不向き。
ポテチ・どんぶり飯もヤバイ。
人体組成、タンパク質20%、脂質15%、水60%糖質・ビタミン・ミネラル5%の人類本来の食生活に帰れ、
…お米は日本の伝統食?たった2000年、いや、戦後。
健康寿命を生きるためには糖質制限のラインで行きます。
さあ、資料を作ろう。(笑)
「娘が糖質制限容認派の立場でダイエットに関する討論をするので、資料がほしい」
という。
ヒャッホー!私は燃えてます。負けさすわけにはいかない。
筋トレは成長期には不向き。
ポテチ・どんぶり飯もヤバイ。
人体組成、タンパク質20%、脂質15%、水60%糖質・ビタミン・ミネラル5%の人類本来の食生活に帰れ、
…お米は日本の伝統食?たった2000年、いや、戦後。
健康寿命を生きるためには糖質制限のラインで行きます。
さあ、資料を作ろう。(笑)
2014/02/27(Thu) 08:40 | URL | 北九州 三島 | 【編集】
北九州 三島 さん
それは興味深いお話しです。
高校か大学で、ディベートでもあるのでしょうか?
私の資料も適宜使って頂いてよろしいですので。
それは興味深いお話しです。
高校か大学で、ディベートでもあるのでしょうか?
私の資料も適宜使って頂いてよろしいですので。
2014/02/27(Thu) 16:42 | URL | ドクター江部 | 【編集】
さけっこ さん
菜食中心で、食材からのコレステロールが少量であった人は、
肝臓で作るコレステロールの比率が多くなります。
その人が、糖質制限食に切り替えたら、一時的に
「亢進した肝臓のコレステロール産生+食材のコレステロール増加」ということで
LDL-コレステロル値が高値となります。
1~2年で基準値となりますが、気になれば、
食材からのコレステロール吸収を抑制するゼチーアが比較的安全で有効な薬です。
詳しくは、扉ページのコレステロールの項をご参照ください。
菜食中心で、食材からのコレステロールが少量であった人は、
肝臓で作るコレステロールの比率が多くなります。
その人が、糖質制限食に切り替えたら、一時的に
「亢進した肝臓のコレステロール産生+食材のコレステロール増加」ということで
LDL-コレステロル値が高値となります。
1~2年で基準値となりますが、気になれば、
食材からのコレステロール吸収を抑制するゼチーアが比較的安全で有効な薬です。
詳しくは、扉ページのコレステロールの項をご参照ください。
2014/02/27(Thu) 16:53 | URL | ドクター江部 | 【編集】
女子中学生のダイエット
糖質制限
VS
インナーマッスル(有酸素運動)
で~す。
糖質制限
VS
インナーマッスル(有酸素運動)
で~す。
2014/02/27(Thu) 21:04 | URL | 北九州 三島 | 【編集】
こんにちは。きのう週刊現代の記事を貼ったのですが、すでにブログを書かれていたようですね。失礼しました。勉強になりました。
ところで、私はゆるく糖質制限を継続してるんですが、その場合でも体はケトン体を利用するんでしょうか?朝はヨーグルトくらいで糖質はほぼなし、昼は卵・魚や海苔、葉野菜なんですが、デザートと3時のおやつは食べます(大福とか糖質の多いものは避けてますが、普通にチョコとか食べます)。夜は主食半分くらいできちんと食べますし、麺類が好きなので日によってはパスタやラーメンも食べます。(予備軍かどうかは分かりませんが、糖尿病は患っておりません)
ケトン体は、ブドウ糖が脳に来ない習慣がある程度続いてからじゃないと発動しないんでしたでしょうか?もしそうなら、私のような中途半端なやり方は、単に脳に栄養を送らない危険なやり方ということになりますので気になります。ご教示いただけますと幸いです。
ところで、私はゆるく糖質制限を継続してるんですが、その場合でも体はケトン体を利用するんでしょうか?朝はヨーグルトくらいで糖質はほぼなし、昼は卵・魚や海苔、葉野菜なんですが、デザートと3時のおやつは食べます(大福とか糖質の多いものは避けてますが、普通にチョコとか食べます)。夜は主食半分くらいできちんと食べますし、麺類が好きなので日によってはパスタやラーメンも食べます。(予備軍かどうかは分かりませんが、糖尿病は患っておりません)
ケトン体は、ブドウ糖が脳に来ない習慣がある程度続いてからじゃないと発動しないんでしたでしょうか?もしそうなら、私のような中途半端なやり方は、単に脳に栄養を送らない危険なやり方ということになりますので気になります。ご教示いただけますと幸いです。
2014/02/28(Fri) 11:23 | URL | Fuu | 【編集】
Fuu さん
糖質を普通に食べている人のケトン体の基準値が「26~122μM」くらいです。
つまりケトン体は誰でも日常的に使用しているエネルギー源です。
特に、空腹時には、心筋・骨格筋・体細胞などの主たるエネルギー源はケトン体と脂肪酸であり
ブドウ糖はほとんど使いません。
2014年02月04日 (火)の本ブログ記事
[インスリン作用が働いている時の生理的ケトン体上昇は安全]
などをご参照ください。
糖質を普通に食べている人のケトン体の基準値が「26~122μM」くらいです。
つまりケトン体は誰でも日常的に使用しているエネルギー源です。
特に、空腹時には、心筋・骨格筋・体細胞などの主たるエネルギー源はケトン体と脂肪酸であり
ブドウ糖はほとんど使いません。
2014年02月04日 (火)の本ブログ記事
[インスリン作用が働いている時の生理的ケトン体上昇は安全]
などをご参照ください。
2014/02/28(Fri) 13:20 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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