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インスリン作用がある時の血中ケトン体とない時の血中ケトン体
【14/02/24 SHUKAN

インスリンのはたらき

安心して糖質制限が進められる根拠を、いつもわかりやすく説明して下さってありがとうございます。

前から疑問に思っていることがあるのですがよろしければ教えて下さい。

1型糖尿病を除けば、インスリンの基礎分泌があることはわかりましたが、

「インスリンの作用がある程度保たれていれば糖質制限をしてもケトン体上昇は生理的なものであり、深刻なケトアシドーシスにはならない。」

という理由がよくわかりません。

これは脂肪が分解されてケトン体ができるときにインスリンによってケトン体を作りすぎない何かのメカニズムが働くのでしょうか。】



こんばんは

SHUKAN さんから、「インスリン作用がある時の血中ケトン体」と「インスリン作用がない時の血中ケトン体」について、コメント・質問をいただきました。

例えば、ケトン食実践中の小児では、基礎分泌のインスリンは勿論出ていますし、必要最小限の追加分泌インスリンも出ていますが、血中ケトン体は3000~5000μM/Lくらいで基準値「26~122」の30倍、40倍の値となります。

仮にインスリンが大量に分泌されれば、脂肪分解抑制作用があるので、ケトン体産生も抑制されると思います。

しかし、基礎分泌と最小限の追加分泌ていどのインスリン量であれば、上述のように血中ケトン体は、3000~5000μM/Lまで生理的に上昇します。

このように、ケトン食や断食実践中などには、血中ケトン体値は現行の基準値よりはるかに高値となりますが、この場合はインスリン作用は確保されていますので、生理的なものであり問題ないのです。

そしてケトン体が現行の基準値より高値でも、インスリン作用が確保されている限り、血液や肺や腎臓の「緩衝作用」(*)「酸塩基平衡」(**)により、アシドーシスにはなりません。

さてケトン体そのものに毒性はないのですが酸性の物質です。生体内では、代謝に伴ないケトン体以外にも酸が産生されますが、「緩衝作用」「酸塩基平衡」により体内や血液のpHは一定に保たれているのです。
 
しかし、インスリン作用が欠落している場合はそうはいきません。

インスリン作用が欠乏すると体内では急性代謝失調を生じます。

すなわち

「インスリン作用の欠乏→拮抗ホルモンの過剰→全身の代謝障害→糖利用低下・脂肪分解亢進→高血糖・高遊離脂肪酸→ケトン体産生亢進」

という重篤な病態を生じます。

この時点で、既に重症であり代謝は破綻しており、ホメオスターシスも崩壊していて「緩衝作用」「酸塩基平衡」は上手く機能しなくなっています。

上記の一連の流れの結果として生じたケトン体は毒性はないけれど酸性なので、「緩衝作用」「酸塩基平衡」が上手く機能しない状態だと、血液のpHを一定に保つことができないので、酸性血症となるのです。

「インスリン作用の欠乏→拮抗ホルモンの過剰→全身の代謝障害→糖利用低下・脂肪分解亢進→高血糖・高遊離脂肪酸→ケトン体産生亢進」

→「緩衝作用」「酸塩基平衡」が上手く働かずに→糖尿病ケトアシドーシス

という最終的な流れとなります。

つまり、糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリン作用が欠落しての急性代謝失調がない限り、絶対に生じない病態なのです。

逆にいえば、いくら血中ケトン体値が高値でも、基礎分泌インスリンや最低限の追加分泌インスリンが確保されている限りは、「緩衝作用」「酸塩基平衡」が上手く機能しているので「糖尿病ケトアシドーシス」は絶対に発症しないのです。


(*)緩衝作用
血液の緩衝機構として、重炭酸緩衝系、ヘモグロビン系、血漿蛋白系、リン酸系がある。
そのうち約65%を重炭酸緩衝系が、約30%をヘモグロビン系が担っている。
重炭酸緩衝系は、炭酸(H2CO3)と、重炭酸(HCO3-)との混合系である。

(**)酸塩基平衡
生体内では、代謝に伴ない酸が産生されるが、細胞の活動が正常に営まれるには酸塩基平衡を維持する必要がある。
体内のpHを一定に保つため、血液や体液の緩衝作用(緩衝機構)、呼吸による調節作用、腎臓による調節機構がある。
腎臓が主な産生部位であるHCO3-濃度と呼吸機能で調節されCO2の分圧によってpHは調整される。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
日本疫学会2014
http://www.epi-c.jp/entry/e800_0_jea2014.html#3rd

[久山町研究]

 蛋白質の摂取量が多いほど、脳卒中および脳出血の発症リスクが低下
2014/02/24(Mon) 20:59 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 日本疫学会2014
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
2014/02/24(Mon) 23:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
SGLT2阻害薬の安全性をどう考えますか?て
以前江部先生葉、SGLT2阻害薬の処方をすべて中止したようですが現在はどうしてますか?
2015/09/06(Sun) 08:32 | URL | 川田敏夫 | 【編集
Re: SGLT2阻害薬の安全性をどう考えますか?て
川田敏夫 さん

糖毒解除を目的に、短期間(3ヶ月~6ヶ月)SGLT2阻害薬を使用することはあります。
あとは旅行中とかもありと思います。

SGLT2阻害薬を発売しているメーカーのMRさんによると
最近は糖尿病専門医の講演会でも、短期間の使用にとどめるのが好ましいという見解が増えているそうです。
2015/09/06(Sun) 17:50 | URL | ドクター江部 | 【編集
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