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インスリンの必要性と存在意義
こんにちは。

いつも本ブログで、インンスリンは必要最小限の量で生命活動が維持できるパターンが一番好ましいと言っています。

しかし、インスリンは生命維持に必要不可欠の物質であることも忘れてはなりません。

今回はインスリンの必要性と存在意義について考えてみます。

インスリンには、24時間継続して少量出続けている基礎分泌と、糖質を摂取して血糖値が上昇したときに出る追加分泌の2種類があります。

これで解るのは、食物を摂取していないときでも、人体の代謝には、少量のインスリンが必須ということですね。

このインスリンの基礎分泌がなくなったら、人体の代謝全体が崩壊していきます。

つまり、基礎分泌のインスリンなしでは、筋肉など体の主要な組織で、まともにエネルギー代謝が行えません。
(まあ、脳細胞とか赤血球とか特殊な細胞は、インスリンに非依存的にブドウ糖を利用していますが・・・)

例えば「運動をしたらインスリン非依存的に血糖値がさがる」といっても、インスリン基礎分泌が確保されているのが前提のお話です。

もし、基礎インスリンが不足している状態で運動すれば、血糖値はかえって上昇します。

また、肝臓で行っている糖新生も、基礎インスリンが分泌されていなければ制御不能となり、空腹時血糖値が300mgとか400mgとか以上にもなります。

また、糖質を食べて血糖値が上昇したとき、追加分泌のインスリンがでなければ、高血糖が持続します。

高血糖の持続は糖毒といわれ、代謝全てを乱していきます。

急激に発症するタイプの1型糖尿病であれば、短期間でインスリン分泌がゼロになるので、基礎分泌も追加分泌もなくなり血糖値が急上昇して、随時で250~500mgとか600mg/dl以上1000mgにもなります。

細胞はブドウ糖を利用できないので、脂肪の分解産物のケトン体が急上昇し、エネルギー源にしますが、酸性血症となり意識障害を生じ、放置すれば死に至ります。

インスリン作用が欠落しているときの血中ケトン体上昇は病態であり、極めて危険です。

上述のインスリン作用欠落による糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用が確保されていて糖質制限食や断食で生理的にケトン体が上昇する場合とは、まったく異なる病態です。

実際、インスリンが発見される以前の1型糖尿病は、発症後数ヶ月から2年以内に死にいたる、致命的な病だったのです。

人体にとって、いかにインスリンが必要かということがわかると思います。

それからGlut1(糖輸送体)は、インスリン非依存的で脳細胞や赤血球や網膜細胞の表面にあり、いつでも血液中からブドウ糖をとりこめます。

しかし、筋肉細胞や脂肪細胞の糖輸送体ははGlut4で、常は細胞内部に沈んでいます。

インスリン追加分泌があると、Glut4は細胞表面に移動して血液中のブドウ糖を取り込みます。

つまりGlut4はインスリン追加分泌がないと血糖を細胞内に取り込めないのです。

このようにインスリンは、人体の生存に必須のホルモンなのです。

糖質代謝の調整が主作用ですが、それ以外にも下記のごとくいろいろな働きがあります。


☆☆☆インスリンの作用

インスリンは、グリコーゲン合成・タンパク質合成・脂肪合成など、栄養素の同化を促進し、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込む。

インスリンが作用するのは、主として、筋肉(骨格筋、心筋)、脂肪組織、肝臓である。

1)糖質代謝
*ブドウ糖の筋肉細胞・脂肪細胞内への取り込みを促進させる。
*グリコーゲン合成を促進させる。
*グリコーゲン分解を抑制する。
*肝臓の糖新生を抑制し、ブドウ糖の血中放出を抑制する。

2)タンパク質代謝
*骨格筋に作用してタンパク質合成を促進させる。
*骨格筋に作用してタンパク質の異化を抑制する。

3)脂質代謝
*脂肪の合成を促進する。
*脂肪の分解を抑制する。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
Re: タイトルなし
Ami さん

そこまで厳密に考えなくていいです。
1回の食事の糖質量20g以下が目安ですので、10gのこともあれば18gのこともあるでしょう。
21gのときがあっても、それはまあ許容範囲です。

間食をして、1日合計糖質摂取量が65gの日があってもそれも、許容範囲です。
糖質制限食を長く続けることのほうがが大切なので、美味しく楽しくということなのです。
2014/02/23(Sun) 10:19 | URL | ドクター江部 | 【編集
インスリンのはたらき
安心して糖質制限が進められる根拠を、いつもわかりやすく説明して下さってありがとうございます。

前から疑問に思っていることがあるのですがよろしければ教えて下さい。

1型糖尿病を除けば、インスリンの基礎分泌があることはわかりましたが、
「インスリンの作用がある程度保たれていれば糖質制限をしてもケトン体上昇は生理的なものであり、深刻なケトアシドーシスにはならない。」という理由がよくわかりません。

これは脂肪が分解されてケトン体ができるときにインスリンによってケトン体を作りすぎない何かのメカニズムが働くのでしょうか。
2014/02/24(Mon) 10:31 | URL | SHUKAN | 【編集
糖質制限しているのに高血糖
お世話になります。58歳の男性です。身長170センチ、体重56KGです。糖尿と診断されて10年ぐらいです。宮崎市であった講習会に
参加して直接ご相談したかったのですが、所要に
つき参加できなかったことを悔やんでいます。
先生のブログに出会ってから5年近く糖質制限と食後の運動等を行い、おかげで薬なしでA1Cも悪くて6%前半を維持してきました。しかし、この1、2年近くは急に数値が悪くなっては超速効型の薬を飲んだり、節制するなどして数値を下げるの繰り返しでした。しかし、1月、2月のA1Cは9%→10.3と悪化。ついにアマリース(0.5)とインクレチン薬を
飲む破目に。この薬を飲み始めて2週間後の空腹時の血糖値は335→255(病院で検査)です。年末にフルマラソンに参加したのですが、レース前後の練習で糖質を摂取する機会が多く、高血糖になったまま、その後も激しい練習をしました。さらに、練習による体重減防止のために食事量も増えました。たぶん、基礎分泌が不足しているために逆効果になったのでしょうか?次の検診で結果が悪ければ、
主治医の紹介で専門医で基礎分泌を調べてもらうつもりですが、カロリー主義の治療にはどうも抵抗があります。
先生の著作を読み、糖質食にはかなり知識はあるつもりです。今後も投薬をしながら、糖質制限も継続したいと思います。ただし、運動はどうしたら
いいでしょうか?現在は最低でも昼食及び夕食後は30~40分のウォーキングを行っていますが、運動は当面しないほうがいいのでしょうか?また、
何かいい方法等があればご教示いただきたいと
思います。
2014/02/28(Fri) 18:36 | URL | ライオン | 【編集
Re: 糖質制限しているのに高血糖
ライオン さん

玉置 昇 先生に相談されてみては如何でしょう。

医療法人社団 昇陽会 たまきクリニック 
http://tamakiclinic.byoinnavi.jp/pc/

玉置先生ご自身は糖尿病ではありませんが、
糖質制限食実践で、体重減少・体調良好だそうです。

医療法人社団 昇陽会 たまきクリニック
〒880-1303
宮崎県東諸県郡綾町南俣657-4
TEL 0985-77-2512 FAX 0985-77-2512
玉置 昇 先生
2014/03/01(Sat) 17:40 | URL | ドクター江部 | 【編集
ご回答ありがとうございます。
一度相談してみます
2014/03/01(Sat) 20:09 | URL | ライオン | 【編集
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