2014年02月05日 (水)
こんにちは。
インスリン作用が確保されているときのケトン体高値(現行の基準値より高値)は、生理的で安全なものであることを、2月4日のブログ記事で述べました。
今日は、インスリン作用が欠落している時の病理的ケトアシドーシス(糖尿病ケトアシドーシス)のお話しです。
<糖尿病ケトアシドーシス>
糖尿病はインスリンの作用不足があり、細胞内にうまくブドウ糖が取り込めなくなる病気で、そのため慢性の高血糖状態が生じます。
高血糖にもいろんなレベルがありますが、非常に重症の糖尿病を考えてみましょう。
血糖値が300~500mg/dl以上もあり、口渇・多飲・多尿・腹痛・悪心・嘔吐・脱水・意識レベル低下、尿中ケトン体が強陽性などの症状・所見があれば、糖尿病性ケトアシドーシスと診断できます。
もちろん血中ケトン体も高値であり、生理的食塩水の点滴・速効型インスリンの静注など緊急的治療が必要となります。
糖尿病ケトアシドーシスの時の総ケトン体値は、3000μM/dl以上(26~122が基準値)となります。
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝失調状態です。
強調しますが、前提にインスリン作用の欠乏があり、それが全ての出発点です。
つまり、インスリン作用の欠乏がなければ、糖尿病ケトアシドーシスは絶対に起こらないのです。
『インスリン作用の極度の低下、インスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンの過剰』
などにより、全身の高度の代謝失調、糖利用の低下・脂肪分解の亢進がおこり、高血糖と高遊離脂肪酸血症を生じます。
遊離脂肪酸は、インスリン欠乏下の肝では、急速な酸化をうけケトン体に分解されます。
インスリン作用欠乏から始まる流れ、
「インスリン作用の欠乏→拮抗ホルモンの過剰→全身の代謝障害→糖利用低下・脂肪分解亢進→高血糖・高遊離脂肪酸→ケトン体産生亢進→糖尿病ケトアシドーシス」
があり、結果としてケトン体が産生されて高値となるわけです。
ケトン体高値は、始まりではなくて、あくまでも結果なのです。
このように糖尿病ケトアシドーシスの本質は、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝障害です。
その結果として血中ケトン体が高値となり、全身の高度の代謝障害のため緩衝作用がうまく働かなければ、アシドーシスや脱水となり、重症では昏睡にいたります。
結果としてのケトン体高値が、まるで、始まりであり原因であるかのように本末転倒して受けとめられ、「ケトン体はこわい」という誤解が生じたものと考えられます。
インスリン作用が確保されていて、緩衝作用も働いている限りは、ケトン体は極めて安全な物質です。
しかし、インスリン作用が欠落していて、緩衝作用もうまく働かない病態においては、ケトン体そのものに毒性はなくても、酸性の物質なので結果としてアシドーシスになるということです。
即ち現実には「糖尿病ケトアシドーシス時のケトン体産生の亢進」は、インスリン作用の欠乏が前提にある病態であり、1型糖尿病患者さんのシックデイやインスリン注射を中断したときに起こることがほとんどです。
2型糖尿病では、清涼飲料水多飲による、所謂「ペットボトル症候群」でケトアシドーシスを生じることがあります。
断食や 糖質制限食実践に伴う「生理的ケトン体産生の亢進」の場合は、インスリン作用の欠乏はありませんし、血液の緩衝作用も有効に作用していますので何の問題もありません。
例えば断食の初期は一過性にアシドーシスになりますが、緩衝作用で徐々に補正されていきます。
また、健常人が激しい運動をした場合にも、一過性に血中ケトン体は増加しますが、勿論、生理的現象です。
結論です。
インスリン作用が欠乏していて高血糖を伴う高度の代謝障害は、それ自体その時点で重症です。
この時結果として血中ケトン体が上昇してくれば、アシドーシスも合併して、「糖尿病ケトアシドーシス」となり、さらに危険な病態となります。
一方、インスリン作用が確保されていて高血糖を伴わない血中・尿中ケトン体の上昇は、生理的範囲内の現象であり、人類700万年の歴史のなかで日常的に経験されてきたことなので安全です。
江部康二
インスリン作用が確保されているときのケトン体高値(現行の基準値より高値)は、生理的で安全なものであることを、2月4日のブログ記事で述べました。
今日は、インスリン作用が欠落している時の病理的ケトアシドーシス(糖尿病ケトアシドーシス)のお話しです。
<糖尿病ケトアシドーシス>
糖尿病はインスリンの作用不足があり、細胞内にうまくブドウ糖が取り込めなくなる病気で、そのため慢性の高血糖状態が生じます。
高血糖にもいろんなレベルがありますが、非常に重症の糖尿病を考えてみましょう。
血糖値が300~500mg/dl以上もあり、口渇・多飲・多尿・腹痛・悪心・嘔吐・脱水・意識レベル低下、尿中ケトン体が強陽性などの症状・所見があれば、糖尿病性ケトアシドーシスと診断できます。
もちろん血中ケトン体も高値であり、生理的食塩水の点滴・速効型インスリンの静注など緊急的治療が必要となります。
糖尿病ケトアシドーシスの時の総ケトン体値は、3000μM/dl以上(26~122が基準値)となります。
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝失調状態です。
強調しますが、前提にインスリン作用の欠乏があり、それが全ての出発点です。
つまり、インスリン作用の欠乏がなければ、糖尿病ケトアシドーシスは絶対に起こらないのです。
『インスリン作用の極度の低下、インスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンの過剰』
などにより、全身の高度の代謝失調、糖利用の低下・脂肪分解の亢進がおこり、高血糖と高遊離脂肪酸血症を生じます。
遊離脂肪酸は、インスリン欠乏下の肝では、急速な酸化をうけケトン体に分解されます。
インスリン作用欠乏から始まる流れ、
「インスリン作用の欠乏→拮抗ホルモンの過剰→全身の代謝障害→糖利用低下・脂肪分解亢進→高血糖・高遊離脂肪酸→ケトン体産生亢進→糖尿病ケトアシドーシス」
があり、結果としてケトン体が産生されて高値となるわけです。
ケトン体高値は、始まりではなくて、あくまでも結果なのです。
このように糖尿病ケトアシドーシスの本質は、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝障害です。
その結果として血中ケトン体が高値となり、全身の高度の代謝障害のため緩衝作用がうまく働かなければ、アシドーシスや脱水となり、重症では昏睡にいたります。
結果としてのケトン体高値が、まるで、始まりであり原因であるかのように本末転倒して受けとめられ、「ケトン体はこわい」という誤解が生じたものと考えられます。
インスリン作用が確保されていて、緩衝作用も働いている限りは、ケトン体は極めて安全な物質です。
しかし、インスリン作用が欠落していて、緩衝作用もうまく働かない病態においては、ケトン体そのものに毒性はなくても、酸性の物質なので結果としてアシドーシスになるということです。
即ち現実には「糖尿病ケトアシドーシス時のケトン体産生の亢進」は、インスリン作用の欠乏が前提にある病態であり、1型糖尿病患者さんのシックデイやインスリン注射を中断したときに起こることがほとんどです。
2型糖尿病では、清涼飲料水多飲による、所謂「ペットボトル症候群」でケトアシドーシスを生じることがあります。
断食や 糖質制限食実践に伴う「生理的ケトン体産生の亢進」の場合は、インスリン作用の欠乏はありませんし、血液の緩衝作用も有効に作用していますので何の問題もありません。
例えば断食の初期は一過性にアシドーシスになりますが、緩衝作用で徐々に補正されていきます。
また、健常人が激しい運動をした場合にも、一過性に血中ケトン体は増加しますが、勿論、生理的現象です。
結論です。
インスリン作用が欠乏していて高血糖を伴う高度の代謝障害は、それ自体その時点で重症です。
この時結果として血中ケトン体が上昇してくれば、アシドーシスも合併して、「糖尿病ケトアシドーシス」となり、さらに危険な病態となります。
一方、インスリン作用が確保されていて高血糖を伴わない血中・尿中ケトン体の上昇は、生理的範囲内の現象であり、人類700万年の歴史のなかで日常的に経験されてきたことなので安全です。
江部康二
毎日糖質制限を続けています。
今日、食前の血糖値が85でした。
私は海外に住んでいるのですが、カーボの量が約25gその内Suger6gと表示されているの冷凍食品をお昼に食べました。
私は体重が65kgなので、血糖値は上がっても150~160だなと思って食べたところ、食後1時間の血糖値が230を越えました。
これはどういう事なのでしょうか。
その冷凍食品は魚にソースをかけた物、マッシュポテト、いんげん、にんじんの付け合わせです。
普段はできるだけ糖質は15g以内に収めて作っています。
その時はいつも大体自分の想像通りの血糖値の上昇で収まっています。
普段糖質の摂取量が少ないと、たくさん摂取したときに上昇しやすいとかそういうことはあるのですか。
先生のお考えをお伺いできれば幸いです。
今日、食前の血糖値が85でした。
私は海外に住んでいるのですが、カーボの量が約25gその内Suger6gと表示されているの冷凍食品をお昼に食べました。
私は体重が65kgなので、血糖値は上がっても150~160だなと思って食べたところ、食後1時間の血糖値が230を越えました。
これはどういう事なのでしょうか。
その冷凍食品は魚にソースをかけた物、マッシュポテト、いんげん、にんじんの付け合わせです。
普段はできるだけ糖質は15g以内に収めて作っています。
その時はいつも大体自分の想像通りの血糖値の上昇で収まっています。
普段糖質の摂取量が少ないと、たくさん摂取したときに上昇しやすいとかそういうことはあるのですか。
先生のお考えをお伺いできれば幸いです。
むくちゃい さん
血糖自己測定器の誤差は、±20%あります。
100mgとか150mgとかまでは、比較的誤差が少ないのですが、
150~160を超えると、誤差がマックス生じやすいようです。
あとは、その食品のカーボの表示が正確でなかった可能性もあります。
15gと25gですので、これに関してはそれほど大きな差ではないと思います。
通常の主食一人前なら、カーボが、50~60g以上ありますので。
血糖自己測定器の誤差は、±20%あります。
100mgとか150mgとかまでは、比較的誤差が少ないのですが、
150~160を超えると、誤差がマックス生じやすいようです。
あとは、その食品のカーボの表示が正確でなかった可能性もあります。
15gと25gですので、これに関してはそれほど大きな差ではないと思います。
通常の主食一人前なら、カーボが、50~60g以上ありますので。
2014/02/05(Wed) 21:04 | URL | ドクター江部 | 【編集】
週間現代の記事を今日読みました。
なるほど・・・さすが文筆家が書いてるだけありますね。
読者に恐怖を与える内容となっております。
糖質制限を続けてる人でさえ、疑問を抱きたくなる内容となっています。
骨粗しょう症が起きたのは糖質制限なのでは?とか・・
強く断定はしてませんが、そう思わせる雰囲気を上手に書いてます。
筋肉量が低下して、歩くのが困難になったというものもありました。
なるほど・・・さすが文筆家が書いてるだけありますね。
読者に恐怖を与える内容となっております。
糖質制限を続けてる人でさえ、疑問を抱きたくなる内容となっています。
骨粗しょう症が起きたのは糖質制限なのでは?とか・・
強く断定はしてませんが、そう思わせる雰囲気を上手に書いてます。
筋肉量が低下して、歩くのが困難になったというものもありました。
2014/02/05(Wed) 22:44 | URL | クワトロ | 【編集】
>2型糖尿病では、清涼飲料水多飲による、所謂「ペットボトル症候群」でケトアシドーシスを生じることがあります。
このメカニズムがよく理解できません。
1型糖尿病患者はインスリンが分泌されずGULT4が作用しないので細胞が飢餓状態になり生存のため止むを得ずケトン体を生成すると理解しています。
2型糖尿病患者は、糖質を獲ると高血糖による合併症になるので止むを得ず糖質制限してケトン体を利用していると理解しています。
それでは、2型糖尿病患者は、多量の糖質を獲ると高ケトン体を生成するということになってしまいます。糖質を多く獲っても少なく獲ってもケトン体を生成するというのは文字通り矛盾だと思いますがいかがでしょうか?
サルにでもわかるように教えて頂けましたら幸いです。
このメカニズムがよく理解できません。
1型糖尿病患者はインスリンが分泌されずGULT4が作用しないので細胞が飢餓状態になり生存のため止むを得ずケトン体を生成すると理解しています。
2型糖尿病患者は、糖質を獲ると高血糖による合併症になるので止むを得ず糖質制限してケトン体を利用していると理解しています。
それでは、2型糖尿病患者は、多量の糖質を獲ると高ケトン体を生成するということになってしまいます。糖質を多く獲っても少なく獲ってもケトン体を生成するというのは文字通り矛盾だと思いますがいかがでしょうか?
サルにでもわかるように教えて頂けましたら幸いです。
2014/02/06(Thu) 00:12 | URL | なんでだろう? | 【編集】
ども!!
昨日、テレビで 小麦粉アレルギーの子供の治療?
うどんを少しづつ、食べさせて、どのくらいでどんな
症状がでるのか、みたいな、実験もどきな、ことをやって、炭水化物みんなと、同じように食べられるようにと、がんばってる子供の姿が、映し出されてました。。。
アレルギー。。。糖質。。。。
最後の場面は、家族でうどんをおいしそうに食べてる。。。。
これって。。。いいのか?悪いのか?
昨日、テレビで 小麦粉アレルギーの子供の治療?
うどんを少しづつ、食べさせて、どのくらいでどんな
症状がでるのか、みたいな、実験もどきな、ことをやって、炭水化物みんなと、同じように食べられるようにと、がんばってる子供の姿が、映し出されてました。。。
アレルギー。。。糖質。。。。
最後の場面は、家族でうどんをおいしそうに食べてる。。。。
これって。。。いいのか?悪いのか?
なんでだろう? さん
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠落が前提にあります。
2型糖尿病におけるペットボトル症候群の場合も、インスリン作用の欠落が前提にあります。
2型糖尿病でも、悪条件が揃えばインスリン作用が欠落することがあるのです。
2012年05月08日 (火)の本ブログ記事
「4、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)」
をご参照ください。
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠落が前提にあります。
2型糖尿病におけるペットボトル症候群の場合も、インスリン作用の欠落が前提にあります。
2型糖尿病でも、悪条件が揃えばインスリン作用が欠落することがあるのです。
2012年05月08日 (火)の本ブログ記事
「4、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)」
をご参照ください。
2014/02/06(Thu) 16:43 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、大変よくわかりました。
どうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
2014/02/06(Thu) 22:56 | URL | なんでだろう? | 【編集】
糖尿人ではありませんが、江部先生の本数冊と夏目先生の本を読み、糖質制限しているものです。以前は、スタンダードだったのですが、夏目先生の本に糖質制限でマラソンの記録が向上したとの記述があったので、正月の餅一個を最後に、主食を一切取らずに、2月9日のマラソンに参加しました。正月明けにソフトテニスの試合、講習会と続き、腰に不安があったため、控えめなペースでレースに臨んだのですが、終わってみれば、途中も一切糖質の補充無しで、自己ベストが出ていました。途中でエネルギー切れになったらどうしようかとの不安を持ちながらのスタートでしたが、その心配は不要でした。糖質なしてのマラソン、自信が持てました。報告まで・・・
2014/02/10(Mon) 15:43 | URL | ソフトテニスマン | 【編集】
ソフトテニスマン さん
貴重な体験報告、ありがとうございます。
夏井先生のサイトでもマラソンの記録更新のコメントがありますね。
本ブログでも、トレイルランナーの方やマラソンの方で
糖質制限食で記録更新のコメントを頂いたことがあります。
貴重な体験報告、ありがとうございます。
夏井先生のサイトでもマラソンの記録更新のコメントがありますね。
本ブログでも、トレイルランナーの方やマラソンの方で
糖質制限食で記録更新のコメントを頂いたことがあります。
2014/02/10(Mon) 19:45 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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