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人類に必須糖質は存在しない。では炭水化物(糖質)の存在意義は何?
こんばんは。

「炭水化物(糖質)の存在意義および価値は?
ひらたく言うと、糖質は何のためにあるのでしょうか?」

こんな質問を、ある新聞記者さんからいただきましたので考えてみました。

必須アミノ酸、必須脂肪酸は、厳然と存在します。

人体で生産することができないアミノ酸と脂肪酸は、必ず食物から摂取する必要があります。

また、ビタミンも体内で合成できないものがほとんどで、食物から摂取する必要がありますし、ミネラルや微量元素も同様に必須です。

これに対して、必須糖質は存在しません。

体内で必要なブドウ糖は、肝臓で糖新生してまかなうので、食物から摂取する必要はないのです。

国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では、

「炭水化物(この場合は糖質とほぼ同義)の理論的な最小必要量はゼロである」(☆)

と明記されています。

人体内で唯一絶対にブドウ糖を必要とするのは、赤血球です。

赤血球は、人体の細胞で唯一、ミトコンドリアというエネルギー生産装置を持っていないので、ブドウ糖しか利用できません。

空腹時や睡眠時などを含めると赤血球へのブドウ糖供給は、ほとんどが肝臓の糖新生によって、まかなわれており、食材からは少量です。

脳はミトコンドリアを持っているので、脂肪酸の分解物のケトン体をいくらでもエネルギー源としますし、ブドウ糖も利用します。

他の心筋、骨格筋、体細胞は日常的には脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源として、時々ブドウ糖も利用します。


<炭水化物(糖質)の役割>

人類の進化の歴史において、農耕が始まる前の狩猟・採集時代700万年間においては、食材としての糖質の役割は、中性脂肪蓄積が第一義であったと考えられます。

初期の人類において、中性脂肪を体脂肪として蓄えておくことは、日常的に襲ってくる飢餓への、唯一のセーフティーネットであったと考えられます。

狩猟・採集時代に時々手に入った糖質は、野生の果物類、ナッツ類、そして山芋・百合根など根茎類です。

運良くこれらを得たとき、少量のインスリンが追加分泌されて、脂肪細胞のGLUT4が細胞表面に上がり、血糖を取り込んで中性脂肪に変えていたのです。

インスリンが追加分泌されれば、筋肉細胞も血糖を取り込み血糖値を下げます。

しかし余った血糖は全てインスリンが脂肪細胞に取り込ませて、中性脂肪に変えて蓄えていたのです。

狩猟・採集時代においては、「インスリンと糖質」のコンビは、もっぱら、脂肪蓄積装置として、稼働していたと考えられます。

また果物の果糖は、ブドウ糖にはほとんど変わりませんが吸収されて肝臓に至り、ブドウ糖より速やかに中性脂肪になり蓄積されます。果物の糖質には、ブドウ糖、ショ糖、果糖などがあります。

このように、人類の進化の過程では、糖質は時々しか手に入らないラッキー食材であり、貴重な中性脂肪蓄積のもとだったと考えられます。


本来、中性脂肪蓄積が第一義であった糖質を、農耕が定着して以降は、日常的に摂取するようになりました。

さらにこの200年は、精製炭水化物を常食するようになったので、大量の追加分泌インスリンがでて、大変中性脂肪が蓄積されやすい状況となり、肥満が発症しやすくなったのです。

大量のインスリンを分泌し続けて、膵臓のβ細胞が疲弊すれば、糖尿病を発症します。

700万年間の狩猟・採集時代は、β細胞はほとんど働く必要もなくのんびり過ごしていたと考えられます。

精製炭水化物登場以降の現代は、β細胞にとって朝から晩まで過剰に働き続けざるを得ない受難の時代と言えるでしょう。
β細胞が過労死になってもおかしくないのが、現代の糖質過剰時代なのです。

(☆)
Eur J Clin Nutr. 1999 Apr;53 Suppl 1:S177-8.
Report of the IDECG Working Group on lower and upper limits of carbohydrate and fat intake. International Dietary Energy Consultative Group.
Bier DM, Brosnan JT, Flatt JP, Hanson RW, Heird W, Hellerstein MK, Jéquier E, Kalhan S, Koletzko B, Macdonald I, Owen O, Uauy R.


江部康二


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
有害な情報
『栄養と料理』2014年1月号
<最先端を行く『栄養学レビュー』> (部分抜粋)
女子栄養大学副学長 香川靖雄
http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/BOOK/Reviews/NR栄養学レビュー22-1.php

P124
◇有害情報の防波堤
健康ブームといわれる昨今、多くの健康食品や健康法が唱えられています。短期間で減量したり血糖値を下げる方法などがその例ですが、急激な体重減少や血糖低下は、筋肉や骨のたんぱく質の分解を招き、体に害を与えます
(中略)
そこで国民を有害な“健康情報”から守る防波堤が必要です。『栄養学レビュー』は、その役割を担うと私は考えています。

P125
日本で氾濫する“健康情報”は、特定の健康法に関する1つの論文だけを誇大に報道しますが、同誌の論文は、直接人体に試みた研究を、有害や無効とする論文も含めてすべて表や図に公平にまとめ、比較 分析したものです、このような系統的評価をメタアナリシスと呼びます。厳密には無作為化比較対照餞験でそれぞれの健康への効果を被験者数や効果の程度に応じて重みをつけ、続計学的な分析がなされます。そしてその結論の科学的根拠を探ります。



*第20回女子栄養大学栄養科学研究所講演会
2010年11月6日 香川靖雄

講演録が2011年の栄養科学研究所年報に掲載されました。

P26
 それでは、朝食を欠食するとどうして脳の働きが悪くなるのでしょうか。それは、血糖が下がるからです。肝臓に蓄えられている糖は、朝になったらほとんど使い切ってしまいます。朝ご飯を食べなかったら体の中にあるブドウ糖は脳に集まって代謝されます。間違ったことを言う人がいて、どんな根拠があるかわかりませんが、「脳はブドウ糖の他の栄養素も分解できる」とインターネットで堂々と言っています。それは間違いです、脳はブドウ糖しか利用できないのです。


    □        □

…有害な情報は結局どっちかね?
2014/02/02(Sun) 21:34 | URL | 精神科医師A | 【編集
糖質を必要とする病もあります
いつも楽しみに読ませていただいています。
私自身は糖質制限を続けて1年、いたって健康ですが、愛犬が腸リンパ管拡張症という病(人間にもあります)になり、現在超低脂肪食(高蛋白・高炭水化物食)で管理中です。
脂質を増やすとリンパ管が破綻し、死に至ることもある病気です。
必用な栄養を取るためには相当な量の炭水化物摂取が必要で、糖質制限食の私には抵抗感がありますが、今の治療法ではこの方法が最善だと判断し続けています。
脂質を増やし栄養のバランスを取るのであれば、ステロイドなどの免疫抑制剤を投薬し続けることになると思います。
超低脂肪食を続けるのか、投薬を続けるのか迷った末、超低脂肪(高蛋白・高炭水化物)食で管理することに決め、現在良好に維持できていますが、愛犬はまだ5歳ですので、今後この食事方法を続けて何らかの病気に発展しないか心配でなりません。

しかし、このように糖質を必要とする病気もあります。
この場合、どう対処するするのか、
今後の管理に明確な方向性が持てないでおります。
愛犬のことで恐縮ですが、何か新しい治療法や情報があればと投稿させていただきました。
2014/02/03(Mon) 12:57 | URL | RM | 【編集
はじめまして。昨年8月に糖尿病と診断され、病院で勧められた食事法(カロリー制限)の後、先生の著書に出会い、糖質制限に切り替えた結果1月には 空腹時血糖値 250 →120前後
10%→6.7%と改善し、それだけでなくそれまでどうしても下がらなかった肝臓の数値や中性脂肪も大幅に改善しました。
心配なのはLDL HDLともにあまり変化がみられないことです。長い目でみれば、だんだん改善されてくるのでしょうか?他の数値が劇的に改善したので、こちらはどうなのかとちょっと心配になりました。
さらに本日週刊現代に糖質制限でたんぱく質が消費されすぎて筋力の低下や骨粗しょう症の危険があるとの記事が載りました。
ブログにて先生のお考えをお聞かせいただけるとうれしいです。
2014/02/03(Mon) 16:28 | URL | peco | 【編集
告知のお願い、で~す。
                 2014.2.3(月)
糖質セイゲニスト 各位
            糖質セイゲニストin北九州 世話人 三島学

       第22回 月例会のお知らせ

2014.2.9(日)12~16:00
「三 島 塾」2F 090-2391-4923 misimyk@yahoo.co.jp
参加費 1,000円
ランチ「吉川メソッド・カレー」(キク芋入り)

[トピックス]
・2・15「週刊現代」トンデモ記事
・「TVタックル」の感想集
・もろもろ
[講演会の報告]三島
・1月19日 ウェル戸畑「有機野菜」(吉富信長氏)
・1月29日 福岡アクロス「冬の腸活」(田中宏明医師)
・2月2日 大阪ドーン会館「糖尿病と果物」(田中敬一、中野瑞樹氏)
[今月の読書]岡部正医師
・50歳からの体が老化しない生活習慣 
・アディポネクチン長寿法
・脂肪体重を減らせば病気にならない
[研究・体験発表]
・ラードで辱創が治った
・光野政義
・大戸昌之
[募  集]
江部先生のブログでおなじみ、「精神科医A」氏が学会出張で来福されます。
お時間を頂戴して、お話を伺えることになりました。
ふるってご参加ください。
2月14日(金)19:00~21:00/小倉・ニュータガワ「ボナペティ」
2014/02/03(Mon) 17:14 | URL | 北九州 三島 | 【編集
Re: 糖質を必要とする病もあります
RM さん

糖質制限食が、適応とならない疾患の一つに
「長鎖脂肪酸代謝異常症」があります。

この疾患は、普通の肉や魚の脂が利用できないので、糖質が必要と思います。
2014/02/03(Mon) 17:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
peco さん

コレステロールに関しては、
扉ページの、コレステロールの項をご参照ください。

週刊現代、根拠なしの暴論です。
私はすでに、2002年以来、12年間スーパー糖質制限食ですが、元気ですよ。

糖質制限食で、筋力低下や骨粗鬆症を生じるというエビデンスは存在しません。

米国糖尿病学会は、2013年10月の栄養療法に関するコメントで、正式に「糖質制限食」を受容しています。
スウェーデン社会保険庁も、「糖質制限食」を公的に認めています。
英国糖尿病学会も「糖質制限食」を選択肢の一つとして認めています。

糖質制限食に関して、世界の趨勢に、出遅れて、ガラパゴスなのが、日本糖尿病学会です。
2014/02/03(Mon) 17:48 | URL | ドクター江部 | 【編集
狭心症を患っている者です
私は、狭心症で冠動脈にステントを入れています。先生の考えに納得して、先日から糖質制限を始めました。血管は糖が問題で、コレステロールや中性脂肪は問題ではないという先生の考えは納得でき、糖質を控えるような食事にしました。その場合、塩分についてはどうなのでしょうか。今までは、塩分の高い食物をとると高血圧になり、動脈硬化が進むといわれてきました。糖分以外は何を食べても良いということで、高い塩分のものをとっても良いのでしょうか。教えてください。
2014/02/03(Mon) 19:13 | URL | ひろ | 【編集
ボディビルダーと低糖質食
いつも楽しく読ませていただいております。
昨年の6月に医師から糖尿病だと宣告され、以来、低糖質食を実践し、現在では、130キロあった体重が95キロに、血糖値も最大300あったものが、90前後で安定しています。
さて、運動するために、近所のジムに通っています。ここは一般の人というより、ボディビルダーの方がかようジムなのですが、よくよく観察していると、ボディビルダーの方は、普段から低糖質、高タンパクな食事を実践しているように見受けられます。先生はいかがお考えでしょうか?
2014/02/04(Tue) 08:57 | URL | 森林男 | 【編集
Re: 狭心症を患っている者です
ひろ さん

塩分は、控えた方がいいと思います。

自分で料理する人は、砂糖など使わないので、糖質制限食の場合自然に塩分控えめになるようです。
2014/02/04(Tue) 09:25 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ボディビルダーと低糖質食
森林男 さん

データ改善、素晴らしいですね。
良かったです。

ボディビルには詳しくないのですが、私も同様に思います。
2014/02/04(Tue) 17:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
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