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SU剤は使用制限あるいは禁止の方向を、日本糖尿病学会は勧告すべき。
こんばんは。

今回は、長年第一選択剤として使われてきたSU剤についての考察です。

私の場合、スーパー糖質制限食が上手く実践できないために、コントロールがいまいちの糖尿人に、やむを得ずSU剤(アマリール:第3世代)を投与するときも、原則として、0.5mgの錠剤を1錠/日、若しくは 0.5mgの錠剤×2/日などの少量にしていました。

SU剤は、疲れたβ細胞を鞭打つ側面がありますから、少量に越したことはないのです。

そしてもし、グリペンクラミド(オイグルコン、ダオニール:第2世代SU剤)や第一世代のSU剤(ジメリンなど)を服用しておられる方がいたら、心筋障害のリスクがあるので即刻中止した方が無難です。

しかしながら、アマリールやグリミクロン(第3世代)も、HbA1cの改善効果はあるけれど、食後高血糖をマッチング良く防ぐことができないことと、空腹時には低血糖を招きやすい欠点が、CGM(☆)により明らかとなってきました。

つまり、SU剤は「平均血糖変動幅増大」「食後高血糖」という最大の酸化ストレスリスクを予防できていないどころか、悪化させている可能性が極めて高いのです。一見改善したように見えても、実は質の悪いHbA1cなのです。

CGMにより検査してみると、SU剤を内服して食事しても、食後高血糖はほとんど防げていなくて、空腹時の低血糖を生じていることが多かったのです。

例えば、夕食前にSU剤を内服して、従来の糖尿病食(高糖質食)を摂取すると、食後1時間とか2時間の血糖値は軽く200mg/dlを超えてきます。

なおかつ、夜中の午前3時頃には、50~60mg/dlなどの低血糖を高率に生じていたのです。

平均血糖値(HbA1c)は、一見6.5%とか良好でも、SU剤を内服していた場合は、「食後250mg/dlと空腹時50mg/dl」の
平均値をみているだけで、極めて質の悪いHbA1cなのです。

これでは、わざわざ平均血糖変動幅を増大させて食後高血糖は防げず、空腹時低血糖を頻回に起こすという百害あって一利なしの薬物ということになります。

酸化ストレスリスクをもっとも生じやすい薬物がSU剤といえます。

このため私自身は、現在SU剤をすべて中止して、グリニド系薬剤(速効型インスリン分泌促進剤、グルファストやスターシスなど)やαグルコシダーゼ阻害剤(グルコバイ、ベイスン、セイブルなど)に変更しました。

日本糖尿病学会は、これらのCGMデータによる生理学的事実を、広く一般医師に公表し説明する義務があると思います。

しっかり説明して、SU剤の使用制限或いは中止を早急に勧告すべきです。

これは、日本糖尿病学会の喫緊の義務と思いますが、日本糖尿病学会さん、如何でしょう。


江部康二



(☆)CGM
CGM(Continuous Glucose Monitoring:持続ブドウ糖測定)システム

ブドウ糖値を数日間連続的に測定できる持続ブドウ糖測定装置(CGMS)が、2012年4月から日本でも保険適応となり、日常臨床で使用できるようになりました。

ブドウ糖値の日内変動を24時間通して把握できるので、SMBG(血糖自己測定器)やHbA1cによるデータとは異なる情報を得ることができます。

5分ごとに測定して、24時間で288回のブドウ糖測定が可能です。

血糖ではなく皮下間質液中のブドウ糖値を連続測定するのですが、血糖値と同様とみなしてよいと思われます。

2000年頃、欧米で開発され使用されるようになりました。


江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
胃切除後の高血糖
初めまして。友人(75歳女性)についてご相談です。48歳で胃を3分の1切除し、元気に過ごしていたところ2年前の健診で糖尿病と診断されました。HbA1c8.0でメトグルコ250mg3錠/日、ネシーナ25mg1錠/日、グリミクロンHA20mg1錠/日を服用、現在はHbA1c6〜7、食事は糖質はやや控え目にしているとのことです。友人のように胃を切除している人は、血糖値が上がりやすいようですが、普通の糖尿人と同じように糖質制限食で薬不要になるまで正常化できるのでしょうか。主治医からは特に指導もないそうなので江部先生にお伺いする次第です。
2014/01/28(Tue) 22:08 | URL | かれん | 【編集
ありがとうございました
早速、両親ともに効果てきめんで、母親の血糖値は平常値に。父親も体重減少し始めているようです。二月末に二人に会うので、その時が楽しみです。

私も二ヶ月で10キロの減量に成功、春のマラソンに向けてトレーニングしているところです^o^
2014/01/29(Wed) 11:02 | URL | 道産子21号 | 【編集
闘いたい
江部先生、こんにちは。
コメント書かせていただくのは久し振りです。51歳女、合併症(目・腎臓・神経 いずれも初期)持ちです。

糖質制限食によって、ヘモ値12.6が2か月で6.0になった旨ご報告したところ、江部先生から「ギネス級」とのお言葉いただきました(笑)

その後、3年間当たり前に続けて、合併症進行もなく、むしろ足の痛みが良くなり、好調キープ。
読者の皆様のグループ活動も活発化して、私も参加したかったのですが、いろいろありまして機会を逃しております。

昨年の春から夏にかけて、一度糖質を取り過ぎたのをきっかけに、糖質地獄になり、体重が7キロ増え、数値も悪化(ヘモ値9.2!)、肝機能の数値も初めて悪くなりやショックでした。自分が悪いのですが、もう戻るわけがない、と思っていた「糖質中毒」が現れた、と怖くなったのです。今回は戻すのに3か月半かかりました(体重は5キロ減で、まだまだですが)肝機能の数値は1か月で戻りました。


江部先生ご出演の番組、先日の夏井先生ご出演のタックル、拝見させていただきました。おふたりとも素敵でした。
見ていらした皆様がたくさんご意見書かれたと思いますので、私は控えさせていただきます(笑)
が、テレビ番組というものは、7割はスポンサーの意向で、あとはスタッフや局の思惑がありますので、出演者の方々には期待出来ません。
それでも丁寧に明るく説明される江部先生、慣れない場でも怯むことなく言い切られた夏井先生の男っぷりに惚れ惚れしました。

時間ができましたら、何かアクションを起こしたい、と思っています。
署名や要望書を提出したり、街宣とか、日本糖尿病学会のビルの前で(病院だったら別の場所で)。

最近、「宇宙の“ブラックホール”は存在しない」と発表されたそうですね。
必ず常識は変わります。
糖尿病だけじゃなく、認知症やうつの少ない社会の為にしたいし、私は“待つ”じゃなく、“闘いたい”です。


P.S. 既出かもしれませんが、アマゾンで見た本で【正しく知る糖質制限食“科学でひも解くゆるやかな糖質制限”】(NPO法人日本ローカーボ食研究会)、レビューともに「やったな」でした。
監修は多分日本糖尿病学会の幹部。NPO法人という日本人が「何となく信用できる」団体を作り、レビューを書かせる…お疲れ様です(笑)

長文失礼いたしました。
江部先生、読者の皆様、寒暖差がありますので、ご自愛ください。
2014/01/29(Wed) 15:57 | URL | MON | 【編集
Re: 胃切除後の高血糖
かれん さん

糖質制限食OKです。
まずは、グリミクロンは中止するほうが、低血糖の恐れがありません。
2014/01/29(Wed) 20:53 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 闘いたい
MON さん

ありがとうございます。
再び、コントロール良好となって良かったですね。

「政治においては服従と支持は同じもの」
と、かの「ハンナ・アーレント女史」は述べています。

糖尿病学会に対しても、何も発信しないのは、支持と同じになってしまうので、
存分に闘いましょう。




2014/01/29(Wed) 22:32 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました
迅速なお返事ありがとうございました。早速友人に伝えたいと思います。ただ、目下の主治医の薬を勝手に中止するのは難しいので、糖質制限治療をされている先生にかわることも勧めてみようと思っております。千葉市在住ですが、千葉または都内でお薦めの医療施設などあればご教示いただければと思います。たびたび申し分けございません。
2014/01/29(Wed) 23:46 | URL | かれん | 【編集
提携医療機関
かれんさんへ

リンクにある日本糖質制限医療推進協会のホームページに
提携医療機関の全国一覧があります。千葉県なら、

【宗田マタニティクリニック】

所在地:千葉県市原市根田320-7

TEL: 0436-24-4103

URL: http://www.muneta.org/ 宗田マタニティクリニック

産婦人科ですが、男性の糖尿病の方も診察しています。
妊婦さんも糖質制限で良好な経過でお産しています。
不妊治療、ダイエットなどにも応用しています。
2014/01/30(Thu) 10:00 | URL | 玉露 | 【編集
利益相反
江部先生、返信誠にありがとうございます。
これからも「美味しく楽しく糖質制限」を世の中に広げてくださいますよう、お願い申し上げます。


「患者よ、がんと闘うな」の著者近藤誠医師の発言より

―僕は、ある時点で学会を相手にものを言っても何も変わらないと悟りました。
医者たちが自分のやっていることに固執している以上、なかなか変わらないでしょう。

だけど、もう一方で患者たちが現状をおかしいと思っていて、自分の治療では違うものを受けたいと思っている人がいる。その人たちに対して情報を発信してやらなければならないという思いがあって、それで本を書くことにしたのです。
―かところが新薬の開発に製薬会社が血道を上げるようになって、製薬主導型がほとんどという時代になって何が起きたかというと、出てくる論文の生存曲線の形が奇妙なものばかりになった。人為的な操作が加わっているということを意味しています。
(引用ココまで)

糖質制限から、たくさんの良いこと(効果)がこれからも発見されますように。

2014/01/30(Thu) 15:18 | URL | MON | 【編集
Re: 提携医療機関
玉露 さん

ありがとうございます。
2014/01/30(Thu) 18:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました
玉露さん、情報ありがとうございました。

リストを拝見するとまだまだ糖質制限治療を行っている医療機関は少ないのですね。

今日のニュースで若い女性研究者の快挙におおいに勇気づけられました。化学系の出身で、生物学の先入観にとらわれなかったのが幸いしたようです。専門家と呼ばれる人達はおうおうにして、先入観の虜となり、新しい発想を思いつくことも、受け入れることも出来なくなるのですね。彼女の最初の論文をけんもほろろに突きかえしたnatureのレフェリーは今頃恥じ入っていることでしょう。日本糖尿病学会の会員医師達が、村社会に閉じこもることなく、自分の頭で考え、しっかりその社会的責任を果たされることを願っています。
2014/01/30(Thu) 22:34 | URL | かれん | 【編集
膵癌切除後の血糖値管理
江部先生、こんにちは。膵臓がん患者の血糖値管理についてお尋ねいたします。

膵臓がんで膵体部・膵尾部を切除した61歳のがん患者です。術後でも血糖値は正常であり、入院中はインスリンも数日投与しただけでその後は止めました。特に食事制限や指導もなく、普通の食事(糖質が結構多い)を続けて、アマリール1.0mgを朝夕の2回服用してきました。
しかし、数年後にはHbA1cが9.1%まで上昇したところで江部先生の著作に出会い、プチ糖質制限食を開始しました。外食や出張の折にはどうしても糖質の多い食事を摂ることが多くなります。ですから、プチ糖質制限食です。しかし、おかげでHbA1cも徐々に下がり、最近では6.0%まで落ち着いています。アマリールは0.5mgを1回に減量して服用してきました。空腹時血糖値は100~140mg/dLの間で安定しています。

しかし、たまに低血糖になるし、糖質の多い食事後は300mg/dLを越えることもあります。先生の言われる「質の悪いHbA1c」の状態ですね。そこで、ここの記事で言われているように、百害あって一利なしのSU剤アマリールからグルファストに変更し、糖質食を摂る直前に10mgを服用しています。そうするとだいたい220~240mg/dL程度ですが、ご飯の量が多い場合には300mg/dLを越えることがあります。糖質を摂らないときの食後血糖値は140mg/dL前後ですから、悪くはないと思います。

質問したい点は、
① 膵臓切除後、今は少量でもインスリンが生産されているようですが、これにむち打つ形でアマリール、グルファストを服用することに不安があります。αグルコシダーゼ阻害剤の方が良いのでしょうか? あるいはDPP-4阻害薬が適しているのでしょうか? 主治医の先生に訊いても「膵癌患者でのエビデンスはない」と言われるだけでした。

② 「質の悪いHbA1c」が続くと、膵がんの再発リスクも高くなるのではないかと考えられるので、①の対応を取ってもコントロールができなければ、スーパー糖質制限食にせざるを得ないと思います。その場合、膵頭部しかないがん患者の気をつけるべき点などはあるでしょうか?

先生のブログを拝見しても、血糖値やインスリンと発がんリスクの話題はありますが、すでに膵癌になってしまった患者としての対応方法に触れられた記事がなく、お尋ねする次第です。
2014/02/23(Sun) 11:50 | URL | pancan | 【編集
Re: 膵癌切除後の血糖値管理
pancan さん

「① 膵臓切除後、今は少量でもインスリンが生産されているようですが、これにむち打つ形でアマリール、グルファストを服用することに不安があります。αグルコシダーゼ阻害剤の方が良いのでしょうか? あるいはDPP-4阻害薬が適しているのでしょうか? 主治医の先生に訊いても「膵癌患者でのエビデンスはない」と言われるだけでした。」

アマリールは12時間、β細胞を刺激しますが、グルファストは2時間なので害はかなり少ないです。
αグルコシダーゼ阻害剤が有効ならそれが一番いいです。
「グルファスト+αグルコシダーゼ阻害剤」として、食後血糖値が180mgを超えないならそれがいいです。


「② 「質の悪いHbA1c」が続くと、膵がんの再発リスクも高くなるのではないかと考えられるので、①の対応を取ってもコントロールができなければ、スーパー糖質制限食にせざるを得ないと思います。その場合、膵頭部しかないがん患者の気をつけるべき点などはあるでしょうか? 」


スーパー糖質制限食が一番膵臓に優しいと思います。
米アイオワ大学とNIHが共同で、2011年8月から膵臓癌第4期の患者さんに、「ケトン食」を食べて貰う研究が始まっています。

2013年12月26日 (木)の本ブログ記事
「アイオワ大学+NIH」共同研究、ケトン食、肺ガン、膵臓ガン
をご参照ください。
2014/02/23(Sun) 21:32 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 膵癌切除後の血糖値管理
江部先生。お忙しい中、早速のコメント、ありがとうございます。
次回の診察時にαグルコシダーゼ阻害剤に変更するよう、主治医と相談することにします。
食後血糖値180mgを目標に、外食も糖質の少ないものを極力摂ることにします。

アイオワ大学の診療試験も拝見しましたが、スーパー糖質制限食で再発防止の可能性が高くなるとしたらやらない手はないです。膵癌の予後は厳しいものですから。

ありがとうございました。
2014/02/24(Mon) 14:21 | URL | pancan | 【編集
Re: Re: 膵癌切除後の血糖値管理
pancan さん

アイオワ大学とNIHが、肺がんと膵臓癌において、臨床試験を開始しているケトン食は
スーパー糖質制限食よりさらに、厳しい糖質制限が必要です。

興味がおありでしたら、

「ケトン食の基礎から実践まで ~ケトン食に関わるすべての方へ~」 診断と治療社

が参考になると思います。
2014/02/24(Mon) 18:29 | URL | ドクター江部 | 【編集
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