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胎児・新生児のケトン体は基準値より高値。ケトン体の安全性の証明。校正と追加。
こんにちは

2014年1月12日の本ブログで

「胎児・新生児のケトン体は基準値より高値。ケトン体の安全性の証明。」

という記事をかきました。

この記事で、ケトン体と記載していたのは、正確にはβヒドロキシ酪酸であり、基準値は76μmol/L以下です。

今日は、正確な記載の校正と追加です。


2014年1月12日(日)
第17回日本病態栄養学会年次学術集会(大阪国際会議場)で、宗田哲男先生が、世界初の画期的な研究成果を発表されました。

人工流産胎児(58検体)の絨毛の組織間液のβヒドロキシ酪酸値の測定です。

何と平均1730μmol/Lとかなりの高値です。

成人の基準値は76μmol/L以下なのですが、胎児の絨毛間液においては、1730μmol/Lていどが、基準値ということになります。

糖質を普通に摂取している成人の基準値の、約23倍ですね。

また生後4日目の新生児(312名)のβヒドロキシ酪酸も、生後1ヶ月の新生児(40名)のβヒドロキシ酪酸も高値です。

こちらもこれだけの数がまとまったのは、世界初と思います。

インスリン作用が保たれている場合、ケトン体が現行の基準値より高値でも、安全であることの証明がなされたと言えます。

そして、胎児・新生児のケトン体の基準値は、現行の基準値よりはるかに高値であることがわかりました。

ケトン体に関して、医学の進歩に寄与する画期的な研究です。

2014年1月12日(日)のブログ記事にもしたのですが、一部、表現が正確でなかったので、もう一度校正して記事にします。

2014年1月12日(日)
大阪国際会議場で開催された第17回日本病態栄養学会年次学術集会に参加してきました。

一般演題69 小児栄養・母子栄養②
第2日目1月12日(日)10:50~12:00  会議室801+802
O-431 妊娠糖尿病における糖質制限食事療法の導入効果の検証3糖質制限食による高ケトン血症は危険か?
宗田マタニティクリニック宗田哲男


宗田哲男先生は、普通に糖質を食べている女性における人工流産児の絨毛のケトン体値を、58検体測定され、平均βヒドロキシ酪酸1730μmol/Lで、通常の基準値(血中βヒドロキシ酪酸76μmol/L以下)に比し、はるかに高値であることを報告されました。

58検体全てが成人の基準値よりはるかに高値でしたので、胎児のケトン体の基準値は成人よりかなり高値であると言えます。

これは世界で初めての報告であり、極めて貴重なデータです。(^-^)v(^-^)v 

6週から18週までの胎児の絨毛間液のケトン体値がこれほど高値であることは、胎児の脳を始めとした組織の主たるエネルギー源はケトン体である可能性を示唆しており、このことはそのままケトン体の本質的安全性を証明するものです。

そして分娩時臍帯血は一般食、糖質制限食にかかわらず、胎児の70%は高ケトン血症であることがわかりました。

さらに糖質制限食を行うと程度によって妊娠中の母体のβヒドロキシ酪酸値が上昇し、最高5000μmol/L以上にもなることがありますが、インスリン作用が確保されている限り1000μmol/L以上であってもアシドーシスは起こしません。このことも宗田先生によりデータとして証明されました。

また生後4日目の新生児312名において、

一般食、糖質制限食にかかわらず、βヒドロキシ酪酸値の平均値は240.4μmol/L
同様に生後1ヶ月の新生児40名において、βヒドロキシ酪酸値の平均値は400μmol/L

と一般的な基準値よりはるかに高値であることを報告されました。

新生児のケトン体値の報告も、これだけの数がまとまったのは、おそらく世界で始めてと思います。

このデータからは、新生児においても血中ケトン体は重要なエネルギー源となっていることを示唆しており、ここでもケトン体の安全性が保証されたことになります。

ヒューマン・ニュートリション第10版(医歯薬出版)2004年、P748

脳の代謝の項目に

「・・・母乳は脂肪含有量が高くケトン体生成に必要な基質を供給することができる。
発達中の脳では血中からケトン体を取り込み利用できるという特殊な能力があり、新生児においてはケトン体は脳における重要なエネルギー源となっている。・・・」 


との記載があります。

ヒューマン・ニュートリションは、英国で最も権威のある人間栄養学の教科書です。

新生児においては、ケトン体は脳の重要なエネルギー源ということを明記してあるのはさすがです。

一方、新生児だけではなく、胎児においても、ケトン体は脳における重要なエネルギー源の可能性が極めて高いことは、世界で初めて宗田哲男先生が示されたわけです。

今回の宗田先生の研究成果は、英文論文での投稿を考えておられます。

論文化されれば今後「ヒューマン・ニュートリション」にも引用されていくと思います。

宗田哲男先生、糖質制限食やケトン食推進において、世界的なターニング・ポイントとなる貴重なご発表をありがとうございました。 m(_ _)m


江部康二


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
倹約遺伝子について教えてください
こんばんは。
昨日のブログで脂質代謝関連のお話が出てきましたが、それでどうしても気になったので初書き込みします。

私はTVで糖質制限を知り、江部先生の著書を買ったりして、「まずは2週間スーパー糖質制限を」ということだったので、実際に試してみました。
食べ過ぎないようにレコーディングし、糖質も計算した結果、2週間で800gしか減りませんでした。(160cm56.8kg→56.0kg)
運動は特にしておらず通勤で1日計50分くらい歩くくらいです。

もっと減ることを期待していたのにガッカリしたのですが、前にDHCの肥満関連遺伝子検査を受けたことがあるのを思い出しました。
それによると私はβ3AR遺伝子がヘテロ(+)、UCP1遺伝子がホモ(++)ということでした。
これは、先生が時々書いていらっしゃる「数%しかいない倹約遺伝子の持ち主」ということなのでしょうか。
だとするとカロリー計算が必要とのことですが、私はカロリー計算をしていると途端にストレスがたまって逆に食べたくなってしまうので、これからどうしようと暗い気持ちです。

お忙しいところ恐縮ですが、私は倹約遺伝子の持ち主なのか?教えていただけると嬉しいです。
2014/01/24(Fri) 22:28 | URL | れい子 | 【編集
合併症の「好酸球性副鼻腔炎」の治癒
江部先生、いつもご指導頂き誠にありがとうございます。本日ネットサーフィンをしていて

http://www.naoru.com/hukubikuu.htm

というページを見付けました。私らこが合併症を起こしていた「好酸球性副鼻腔炎」について記述されています。

◎食べてはいけないもの : 小麦、乳製品
◎食べた方がいいもの  : ガーリック

 私らこ は、糖質制限食開始前、上記3品目食いまくっておりました><

 スーパー糖質制限食開始後、2年以上経過の今は

◎ガーリック喰い放題 + 生乳ヨーグルト500gをストレッチ直後15分以内に摂取

です。小麦は「トンカツの衣」しか食べていない、と思います。

 これで「好酸球性副鼻腔炎」は『寒い朝に鼻水が多い』程度に収まっています。

◎好酸球性副鼻腔炎は糖尿病の合併症!

と感じていますが、江部先生のご見解を賜われれば幸いです(ペコッ
2014/01/24(Fri) 23:26 | URL | らこ | 【編集
ケトン体の新説について
ケトン体という名称だけ聞くと、どうしても急激なダイエットの負の要素的なイメージばかり想像します。
2014/01/25(Sat) 00:39 | URL | メタボX | 【編集
Re: 倹約遺伝子について教えてください
れい子 さん

拙著のご購入、ありがとうございます。

160cm 56.0kg
なら、BMIは21.86で、見事な標準体重です。

倹約遺伝子とは、特に関係なしに、すでに標準体重の人は
糖質制限食でも痩せません。

BMI17とか痩せすぎの人が、糖質制限食で、BMI18とかに改善することもあります。

「糖質制限食で痩せる」というのは、あくまでも、肥満している人のことです。

2014/01/25(Sat) 07:59 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 合併症の「好酸球性副鼻腔炎」の治癒
らこ さん。

好酸球性副鼻腔炎が改善して良かったですね。

好酸球性副鼻腔炎が糖尿病の合併症というよりも、
糖質の頻回過剰摂取が元凶で、糖尿病も好酸球性副鼻腔炎も発症するということだと思います。

他に、「糖質の頻回過剰摂取」が元凶で生じる疾患に
にきび、片頭痛、逆流性食道炎、アレルギー性鼻炎などアレルギー疾患、メタボリックシンドローム・・・
などの様々な生活習慣病があります。
2014/01/25(Sat) 08:04 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ケトン体の新説について
メタボX さん

医師の場合は、ケトン体と聞くと、
「糖尿病性ケトアシドーシス」を思い浮かべる人がほとんどです。

いずれにせよ、インスリン作用が働いている場合のケトン体高値は、
断食にせよ糖質制限食やケトン食にせよ、生理的で安全なものです。

胎児、新生児のケトン体もまた然りです。
2014/01/25(Sat) 08:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 倹約遺伝子について教えてください
>160cm 56.0kg

女性と男性の違いもあり、
20~49歳の女性ですと、
一般的には、BMI 19~20 位が
理想的とされているみたいです。

http://slism.jp/communication/ideal-bmi-value.html

160cmでBMI 19~20 は、
51~52kgです。

おそらく、そのあたりまでは、
落としたいのではないでしょうか。


もし、『現状のままで大丈夫です』という回答に
どうしても納得しかねる場合は、

私の経験から申し上げると、
糖質制限をして、ある程度まで体重減少して、
しばらくの間、体重減少が止まった場合、

次は、脂質に気をつけると、更に減りました。
※脂質の多いナッツ類の摂取を減らしたり、ストップした。
※家畜肉の脂肪を切り取ったり、湯引き調理にした。

脂質は1gで9キロカロリーのため、
厳密な計算をしなくても、脂質に注意すれば
自然とカロリー摂取は控えられますよ。
※ただ、行き過ぎると、痩せすぎて、パワー不足や体調不良になることもありますので、ご注意を。

あと、体重・BMIはそのままで、見た目を細く、という方法では、
筋トレして筋肉をつけ、脂肪の分を筋肉の重さに変える方法も考えられます。
この場合、BMIは変わらなくても、体組成が変わります。
2014/01/25(Sat) 13:21 | URL | 糖質制限食 | 【編集
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