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米国デューク大學と糖質制限食、MTpro記事。後編。続き。
こんばんは。

米国デューク大學と糖質制限食、MTpro記事。後編。続き。

です。

例によって文字数が多すぎるのか、一度にアップできないので、分割して掲載します。


江部康二


以下、MT Pro [2013年12月26日(VOL.46 NO.52) p.09]
記事からの抜粋の後半です。

☆☆☆

高脂肪食は中身が問題

山田 では,動物性蛋白質と植物性蛋白質ではいかがでしょうか。

Yancy Jr. 動物性蛋白質と植物性蛋白質の比較はそのほとんどが観察研究であるため,交絡因子のある中で情報を引き出すことは難しいと考えます。

Westman ヒトは肉食動物でも草食動物でもなく,少なくともヒトと草食動物の消化システムは異なる。それなのに,菜食は抵抗なく受け入れられ,肉食は体に悪いイメージがあるのは面白いですね。

Yancy Jr. おそらく草食動物とは脂質代謝も違います。

Westman 最もヒトに近いのはギニアピッグです。

山田 マウスの検討では,なぜ高脂肪食で肥満を来すのでしょうか。

Westman 「高脂肪食」の定義が問題です。高脂肪食に関する学会発表で「食事の内容を教えていただけますか」と尋ねると,ほとんどが高脂肪なだけでなく炭水化物も多いものです。こうした食餌をマウスに与えれば,「高脂肪食が肥満を引き起こした」という結論が導き出されることになるでしょう。

Yancy Jr. 多くの疫学研究でも,「高脂肪食は肥満との関連が示された」とされています。しかしその内容を調べてみると,「高炭水化物・高カロリー食」でもあるのです。体重が増加した患者は,大量の脂肪とともに大量の炭水化物を食べているのです。

Westman 私が実践している「糖質制限-ケトジェニック食(ケトン食)」は炭水化物が5〜10%であり,内因性のインスリン分泌を生じません。食事の炭水化物が20%もあれば,分泌されたインスリンが肥満を引き起こすのに十分な量です。ケトン食は高脂肪ですが,高脂肪食という名の高炭水化物食と同じ効果にはなりえないのです。

Yancy Jr. 高脂肪食に関する研究結果を読み解くには,食事中の炭水化物,蛋白質の量や割合について常に確認することが重要です。

減量なしでインスリンが減らせることも

山田 ケトン食を始める際,インスリンを使用している患者はどうされていますか。

Westman クリニックでは,糖質20g/日未満のケトン食を実践しただけでインスリンが必要なくなった患者を数多く経験しています。ケトン食を開始した患者には,初日にインスリンを半量にするよう指示します。来院時にインスリンを173単位(速効型インスリン36単位×3回・持効型インスリン65単位/日)投与しており,HbA1c 8.65%,平均血糖値180〜200mg/dLの女性患者がいました。ケトン食を実施し,インスリンを初日に約半量(速効型インスリン15単位×3回・持効型インスリン30単位)に減量すると,翌日の血糖値は53〜180mg/dL,平均120〜130mg/dLでした。そこで翌々日にはインスリンのさらなる減量,または中止を指示し,それ以来この患者はインスリンを使用していません。血糖値が100mg/dL以下になったら,インスリンを使用してはならないのです。

Yancy Jr. この患者は肥満がありましたが,体重が減少する前に「疲れが取れた」と話しています。

Westman 疲れが取れたのは減量からではなく,過剰に摂取していた炭水化物を制限したためです。

Yancy Jr. インスリンの減量に,体重低下は必ずしも必要ないという好例ですね。ケトン食では数日で空腹感も低下し食事量が減りますので,徐々に体重や血圧も低下し,糖尿病が改善します。

Westman 無作為化試験ではないのであえてパイロットスタディと呼んでいますが,ケトン食開始6カ月で脂肪肝患者の肝臓剖検を行った検討では,組織所見の改善が認められました5)。一方,下痢型過敏性腸症候群患者では症状とQOLが改善し6),肥満のある胃食道逆流症患者ではpHモニタリングも使用しましたが,下部食道の酸曝露が低下し症状が改善しました7)。さらに,肥満の多嚢胞性卵巣症候群患者の検討でも,24週で体重だけでなく遊離テストステロン率やLH/FSH比,空腹時インスリン値が改善しました8)。

Yancy Jr. 健康関連因子を評価してみると,ほとんどの場合改善しますので,ケトン食の効果に驚かれることでしょう。こうした数々の知見から,糖質制限はもっと積極的・徹底的に研究し,治療選択肢として考慮する必要があると考えています。

山田 貴重なお話をありがとうございました。

1)Keys A, et al. Harvard University Press 1980.
2)Astrup A, et al. Am J Clin Nutr 2011; 93: 684-688.
3)Siri-Tarino PW, et al. Am J Clin Nutr 2010; 91: 535-546.
4)Mente A, et al. Arch Intern Med 2009; 169: 659-669.
5)Tendler D, et al. Dig Dis Sci 2007; 52: 589-593.
6)Austin GL, et al. Clin Gastroenterol Hepatol 2009; 7: 706-708.
7)Austin GL, et al. Dig Dis Sci 2006; 51: 1307-1312.
8)Mavropoulos JC, et al. Nutrition & Metabolism 2005; 2:35


デューク大学生活習慣医学クリニックの患者教育から
実践的なケトン食メニューで患者をサポート


ケトン食継続中,炭水化物をたとえわずかでも多く取り過ぎると,脂肪燃焼サイクルを脱し減量プロセスが3日間は止まる可能性がある。このため,クリニックでは患者に分厚いケトン食クッキングメニュー集を渡すなど,具体的かつ実践的指導を心がけている。「空腹時には糖質ゼロ食品〔肉類,魚介類,卵,バターなどの油脂,ポークラインズ(写真)など〕を満腹になるまで食べてよいので,思いの外継続しやすいと思います。開始当初,糖分への欲求,倦怠感,頭痛,体の痛み,集中困難などが出現した場合には,症状緩和に牛または鶏の透明なブイヨン(スープ)を1〜3回/日飲むよう指導しています」(Westman准教授)



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
お砂糖真時代協議会のCM 再び
お砂糖真時代協議会のCM、また始まりましたね。完全に確信犯ということですね。誰もこの嘘の流布を止められないのでしょうか。
2013/12/29(Sun) 09:04 | URL | 東京たぬき | 【編集
独立行政法人・農畜産業振興機構
http://sugar.alic.go.jp/japan/shiten/shiten0905a.htm

 砂糖関係8団体により構成されている「お砂糖"真"時代推進協議会」(会長:久野修慈精糖工業会会長)は、平成17年度より全日本菓子協会、全国菓子卸協同組合連合会と共同で、菓子および砂糖の需要喚起キャンペーンを実施している

 本キャンペーンの目的は、「菓子・砂糖の正しい知識を訴求する」ことであるが…
2013/12/29(Sun) 12:01 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: お砂糖真時代協議会のCM 再び
東京たぬき さん

お砂糖真時代協議会のCM、また始まったのですか。
困ったものです。
2013/12/30(Mon) 09:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 独立行政法人・農畜産業振興機構
精神科医師A さん

独立行政法人・農畜産業振興機構のサイト、見ました。

「お砂糖"真"時代推進協議会」
1.活動目的
 消費者に対してお菓子および砂糖の良さ・正しい知識の情報を発信し、理解促進に取り組み、お菓子および砂糖の需要拡大へとつなげる。
また、「お菓子憲章」に基づきお菓子の良さをアピールすることで、家族の愛情、やすらぎ、豊かな心を育てる「食育」の推進を図る。

お菓子憲章
1.お菓子は、楽しさや夢を広げ、豊かな食文化を創造します。
2.お菓子は、生活においしさ、安らぎ、だんらんをもたらします。
3.お菓子は、心と体の元気を育てます。


いやはや、おっとろしい事が平然と書いてありますね。ヾ(゜▽゜)
くわばら、くわばら。
2013/12/30(Mon) 11:12 | URL | ドクター江部 | 【編集
日本でケトン産生食は推奨できるのか

「糖尿病に対する糖質制限食治療」番外編

北里研究所病院糖尿病センター長 山田 悟



編集部から

 Medical Tribune紙では,2013年12月19日号と26日号の2回にわたり,「糖尿病に対する糖質制限食治療/米デューク大学研究者インタビュー」を掲載(関連記事1,関連記事2)。MT ProのDoctor’s Eye(糖尿病)でお馴染みの山田悟氏が同大学で実践している糖質制限食の実際について,Eric C. Westman氏とWilliam S. Yancy Jr.氏に聞いた。インタビューでは両氏の発言として,ケトン産生食を積極的に評価する記述を掲載したが,日本の一般臨床の感覚とは著しい隔たりがあるのも事実だ〔日本糖尿病学会は昨年,極端な糖質制限食は勧められないとする提言を発表している(関連記事)〕。そこで,山田氏にインタビューの番外編として,日本の現状でケトン産生食をどう考えるべきかをあらためて解説してもらった。

糖質制限食を第一選択肢に引き上げた誇り

 Westman氏とYancy氏の話を伺って感じたことは,“糖質は1日130g以上摂取しなければならない”(Diabetes Care 2002; 25: 148-198)あるいは“糖質の推奨量(集団の97.5%が必要量を満たせる量)である130g/日は平均最低必要量である”(Diabetes Care 2008; 31: S61-S78)といったこれまでの米国糖尿病学会(ADA)の食事療法に関するガイドライン(声明)に対して健全な猜疑心を抱き,糖質制限食の有効性を科学的に立証してきた臨床医・臨床研究家としての強い誇りである。彼らの数多くの研究報告により,ADAは昨年(2013年)のガイドライン改訂において糖質制限食を選択肢の1つとして完全に認めたわけである(Diabetes Care 2013; 36: 3821-3842,関連記事)。

 もちろん,2008年のガイドライン(Diabetes Care 2008; 31: S61-S78)においても減量法の1選択肢として糖質制限食の有用性を記述してはいたが,年数制限,脂質プロファイル,腎機能のモニタリングといった条件を付けており,手放しで認めていたわけではなかった。それが,2013年のガイドライン(Diabetes Care 2013; 36: 3821-3842)では,全くそうした条件付けはなされなかったわけである。

 2012年のMedical Tribune紙の企画でインタビューしたRichard K. Bernstein氏は,患者として糖質制限食の有効性に気付き,その有効性を主張してきた糖質制限食界の闘士である(関連記事一覧)。しかし,彼自身が主導した臨床研究があるわけではない。同氏の主張のみではADAのガイドラインが変わることはなかったであろう。やはり,Westman氏やYancy氏の地道な研究報告があればこその今回のガイドラインの改訂であったといえよう。
2014/01/10(Fri) 16:27 | URL | ym | 【編集
ケトン産生食はまだ一般医家は避けておくべき

 しかし,最近,1型糖尿病患者に対して盲目的になされた極端なレベルの糖質制限食に伴って糖尿病ケトアシドーシスが発症したという報告が日本糖尿病学会の機関誌『糖尿病』に掲載された(糖尿病 2013;56:653-659)。これは,(1型糖尿病の診断を付けることができない)一般医家が盲目的にケトン産生食を実施することの危険性を示しているといえる。そうした状況こそが日本糖尿病学会が憂うものであり,現状においては,ケトン産生食は1型糖尿病の診断を間違いなくできる糖尿病専門医が研究目的で取り扱うようにするところから始めるのがよく,一般医家においてはケトン体産生を来さない程度の緩い糖質制限食に限定して指導するのがよいと思われる。

 客観的に見て,ケトン産生食の副作用については,長い人類の飢餓(飢餓はそれ自体がケトン産生性である)との戦いの中でケトン体に人間が耐えられないわけはないとの意見もある(Am J Clin Nutr 2007; 85: 238-239)。しかし,その一方で,少数ではあるが症例報告(N Engl J Med 2006; 354: 97-98,Lancet 2006, 368, 23-24)やRCTにおける副作用報告(Am J Clin Nutr 2006; 83: 1055-1061)がある。しかも,緩い糖質制限食と臨床的有効性の点ではケトン産生食は同等で,ただ副作用だけが多くなっていたのである(Am J Clin Nutr 2006; 83: 1055-1061)。その意味では,絶対的に危険なわけではないが,絶対的に安全性が確保されているわけでもなく,(緩い糖質制限食に対する)臨床的な優越性も未確立,という状況であろう。まさに,専門医が研究の対象にすべきものといえる。

 ちなみに,Westman氏とYancy氏に「ケトン産生食は小児難治性てんかんの治療食であるが,多くの患児が数年でドロップアウトしてしまうと聞く。肉体的には耐えられても,QOLの面では耐えがたいのではないか? ちなみに緩い糖質制限食ならこんなものも食べられますよ」と拙著『奇跡の美食レストラン』(幻冬舎 2012年)の写真をお見せしたところ,強い関心を示された。単に医学的に有効性が高いか,という観点だけでなく,どれだけ患者さんが幸せな食生活を確保できるか,という観点も大切だということで彼らと大いに意見が一致したのであった。
2014/01/10(Fri) 16:34 | URL | ym | 【編集
糖尿病
糖尿病 Vol. 56(2013) No. 9

低炭水化物食開始に伴う急速なインスリン減量によりケトアシドーシスを発症した1型糖尿病の1例

福島 徹, 濱崎 暁洋, 浅井 加奈枝, 佐々木 真弓, 渋江 公尊, 菅野 美和子, 幣 憲一郎, 長嶋 一昭, 稲垣 暢也


症例は19歳女性.8歳時に1型糖尿病と診断されインスリン治療開始となった.2012年3月(19歳)にはインスリンリスプロ各食直前14~18単位,
インスリングラルギン眠前20単位使用下においても,食事量増加のためにHbA1c(NGSP)が15 %と増悪していた.低炭水化物食による食事療
法目的にて同年3月から前院に入院し,リスプロ中止,グラルギン眠前4~8単位/日の施行となった.しかし第2病日深夜から嘔吐が出現し,
翌朝の血糖値が532 mg/dlにて糖尿病ケトアシドーシスが疑われ,輸液とインスリン持続静注を開始されるも全身状態が改善しないため,
前院から当院への転院依頼があり,緊急搬送入院となった.入院後は輸液とインスリン持続静注を強化して改善し,最終的に強化インスリン療法
と食事療法の再調整にて退院となった.本症例から,1型糖尿病患者の低炭水化物食開始時にインスリン量を調整する際は,必要インスリン量の
注意深い評価が不可欠であると考えられた.
2014/01/10(Fri) 16:38 | URL | ym | 【編集
Re: 日本でケトン産生食は推奨できるのか
ym さん

情報をありがとうございます。

以下のメディカル・トリビューン、MT Pro の記事ですね。
山田悟先生の解説です。


http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1401/1401016.html

[2014年1月10日]
日本でケトン産生食は推奨できるのか
「糖尿病に対する糖質制限食治療」番外編
北里研究所病院糖尿病センター長 山田 悟
2014/01/10(Fri) 19:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
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